表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復がコンプラ違反だと追放された触手ヒーラー、もう働きたくないのに美少女パーティーから魔力をせがまれて全く休めない。  作者: うえき蜂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/38

最強の弱点

 緊急クエスト・マナコンディショナーの暴走を収拾せよ。

 これは――トレニーの町、存続をかけた戦いである!

 意気やヨシ。現場猫もにゃっこり。


「……結局のところ、何をすればいいんだ? 設備まるっとデストロイ?」

「いいわけ、ないじゃない。おじさん、少しは頭使ってちょうだい」

「解体業も恐れおののく破壊王に言われたくねー。リーダー、作戦は?」

「魔力干ばつの発生原因を叩くのは間違ってないわ」


 ギルドを後にし、中央通りを進む中。

 クリスは、道端でぐったり倒れた人々を案じた様子で。


「マナコンディショナーの中央制御装置のコントロール権を確保。それが不可能な場合、強制停止させる。手段は問わない」

「っぱ、デストロイや! まあ、悪用されないよう対策済みだよな」


 テロや災害に弱い重要施設なんぞ、ただの的当てゲームですやん。


「場所は、魔法学園旧校舎。以前、あなたたちは見学したんですって?」

「あそこが本丸ね。確かに、難しそうな機械と偏屈そうな学者いっぱいだった」

「魔導工学のフィールドワークっしょ? あーし、機械イジリは苦手だし」


 フィオナはリケジョじゃないん? どちらかと言えば、物理より化学だ。


「エルフのエンジニア、逆に映えるぞ」

「そ、マ?」

「マ!」


 ギャルが新たな副業を模索していく。


「さっそく、乗り込むか? いや、待った。魔法学校なら、優秀なウィザードたくさんいるはず。異変が起きた時、旧校舎に詰めてたスタッフは対処できただろ」


「魔力干ばつなんて、ウィザードと相性最悪じゃない。天才のあたしはともかく、その辺の有象無象が近場で巻き込まれたわけ。構内にいた全員、欠乏症でぶっ倒れたのよ」

「じゃあ、そいつらを助け」


 全員、診療所送り? ベッドが足りんよ、チミィ。町人分、用意してくれたまえ。


「救出は時間がかかりすぎるのよ。事態収拾に全力を向けます」

「あのにっくき機械人形が、学校に集まってる。防衛装置、ちゃんと機能してるのよ」

「ガーディアンを突破するん? あーしら、めっちゃアウトローじゃん。ウケるし」

「正面突破は厳しいわね。アレに囲まれたら、こちらの戦力だと倒しきれないでしょう」


 クリスは極めて冷静に、最悪の事態を想起する。

 魔導アーマー一機であれば、ギリギリごり押し可能。

 たとえ、マナを圧倒的防御力に変換しようとも、火力以外で機能停止に陥らせよう。


 しかし、恐怖のオートマタ集団であれば話は別。

 無限スタミナによる質量爆撃はお手上げである。戦いは数だよ、兄貴!


「裏口からこっそり忍び込みましょ」

「ダメ。あいつら、熱源センサー搭載してる。マナコン周辺は警戒ゾーン」

「警備兵の鑑か。休息0秒待遇悪すぎぃぃイイ! ストライキしろよこの野郎!」


 ブラック企業で使い捨てだった俺でさえ、一日三時間睡眠取れたぞ。

 お前ら、たいそう頑張った……永遠に休め。


「現状、こちらの切れるカードが少ないわ。魔力枯渇はヤマトさんが防いだけど、最小戦闘数でゴールまでたどり着かなきゃいけない。奥の手、切り札は使えても一回限りよ」


 リソース管理で難易度上げるのは、昭和のRPGだけにしてくれ。

 クリスが、うんうんと思考を巡らせる。

 彼女は王道を征く聖騎士。奇策妙計に富んでいるとは言えない。


 トンチキと屁理屈は俺の役目だな。

 たった一つの冴えないやり方を、閃け閃け閃け閃け!

 魔女っ子にうるさいと背中を叩かれた。


「そろそろ、先人の知恵でも披露してちょうだい」

「ヤングアダルトだしっ。てか、フレッシュギャル?」

「そういうのいいから。ホコリかぶっても、叡智の結晶。あたしよりほんのちょっと賢いところ、認めてあげなくもないんだからね」

「素直じゃないぜ、ミューっち。思春期かー?」


 フィオナがりょ! と返事がてら、虫歯ポーズ。


「……」

「何よ、その構え? 虫歯?」

「名探偵ギャルが考える時の仕草だろ。知らんけど」


 昔、プリクラで小顔効果を演出するって聞いたことがある。


「魔導アーマーさあ、プロトタイプじゃん? 流石に、レーダーはまだ付いてないっしょ?」

「そこまで詳しくないけど、先生は魔力障壁に熱心だったみたい」

「あーね。オートバリアはコストやばたにえん。資金繰りマジつらたんぴえん丸」

「日本語でおけ」


 失礼、ここパストロールだ。

 ギャル語は実質、異世界言語だね。それは違うよ。


「ピカーンッ! 天啓神ってる!」

「そりゃまあ、主の啓示なれば?」

「ふふふ、ヤマちょ。あーしにいい考えがありまくり」

「い、いかほどなりや?」


 古今東西、いい考えはいい考えにあらず。大体失敗するやつ。

 ドヤ顔エルフ、自信満々に。


「正面突破はガチ無理め。渋滞まぢムリ。もっと空いているとこ、あるべ」

「地下通路でも掘るか? スキル禁止縛りでトンネル掘りはきついぜ」


 魔法学園と言えば、秘密の通路。隠し坑道があるかもしれないぞ。

 若干、ワクワクしたところ。

 ギャルは細長い指を、真っ直ぐ上へ向けていく。


「もち、真上からソッコー攻めるじゃん。電撃戦みたいな?」

「それができれば苦労しないでしょ。わたしたち、飛行スキルなんて持ってないわ」

「機械人形の視界から外れるほど上空高く飛べるわけ? ふん、魔法使いがほうきに跨るとか見当違いじゃない。どうせ、おじさんみたいな奴の妄想ね」

「いや、ロリにメルヘンチックは期待してない。逆に童話に謝って、逆に」


 俺とミューが仲良く徒手空拳を捌き合うと。


「クリぴ、青いな! ミューっち、青いぜ! ヤマちょ、アオハルかよ!」

「青春に特別思い入れがない成人さ」

「ぴえん」


 本気で悲しそうにしないで。傷つくわ。


「あーしにいい考えがあるって言ったし」


 フィオナはパチンと指を鳴らす。


「今時、飛べねえギャルはただのギャルじゃん!」


 スマホっぽい端末を取り出すや、ピポパポピ。


「カモン、ズットモ! マブダチ召喚ッ!」


 道のど真ん中に大きな魔法陣が展開された。

 バチバチと空気が弾ける音。

 光の奔流が、巨躯なるシルエットを映し出す――っ!


「この我を呼び出すとは、褒めてやろうぞ。エルフの娘」

「さんくす」


 はたして、フィオナが召喚したのはドラゴン。

 ご立派な角、猛々しい逆鱗が強者の証。


「お前は!? 腰痛のっ」

「久しいな、矮小なる人の子よ。我が真名、ペイン――」

「中腰ドラゴン!」

「違うわッ。ペインバックロアだ。忘れたと申すか、ヤマト」


 流石、幻想種。ツッコミの圧が魔力ビンビン。


「いや、ペインさん? 何で? ダンジョンボスでは? マブダチなん?」

「一度拳交えたら、ズットモっしょ?」

「「いや、その理屈はおかしい」」


 図らずも、ドラゴンとシンクロ。これで俺も最強や!


「そもそも、我はエルフの娘と試合ってないのだがな。貴様との縁。その中継役をエルフの娘が名乗り出たわけだ」

「ヤマちょ、ドラぴとマブじゃん。マブのマブはズットモだし」

「うんうん、それもまたズットモだね」


 細かいこと気にしたら負け。

 この世界を楽しく生きるための不文律。


「魔力干ばつは我も他人事――他竜事ではないのでな。詳細は与り知らぬが、特別に力を貸してやろう」

「まかさ、伝説のドラゴンさえ干乾びちゃう?」

「フン、侮るな小僧。我の心臓こそ、無尽蔵の魔力を生み出す体内機関だ!」


 すげーよ、ドラゴンハートは。


「……無尽蔵は言葉が過ぎた。大量精製、減退しておる。大量消費、抑制中」

「……まるで資本主義だな。ファストドラゴン」


 ペイン何某が気まずそうに舌チロチロ。

 この表情なら、戦っても恐るるに足らず。


「ドラぴが協力してくれるじゃん。遊覧飛行としゃれこむべー!」

「さしづめ、ドラゴンライダーってわけ? いいじゃない、最強魔法使いの進軍に相応しいじゃない!」

「聖騎士的には対峙する方よね? でも、力を借りて共闘も悪くないわ」


 ミューとクリスが、ドラゴンに挨拶した。


「才能の原石たちよ、この我を送迎扱いするのだ。必ずや、禍根を断ち切るがいい。失敗は許されんぞ」

「上等よ!」


 ドラゴンは中腰からさらに姿勢を下げ、二人を背に乗せた。


「作戦名・青天の霹靂! オペレーション・サンダーボルト! ぶちかませーっ!」


 かっくいい。稲妻のごとき電光迅雷の襲撃である。

 悪いな、石火と疾風。

 お前らはこの先の戦いに付いてこられないから置いてくぜ。


「むしろ、疾風に全部任せなさい」


 セルフツッコミをしながら、ドラゴンの背中に失礼すれば。

 ――ガッ。

 刹那、踏んだ箇所が悪かったと悟る。


「ほぎゃぁぁあああアアアア~~っっ!?」


 最強が吼えた。

 否、鳴いた。


「ごめん! 腰痛の!」

「く、クク……我、幻想の王なるぞ? 全然、痛くないんですけどぉ~?」

「なんと度量の広さ! これがファンタジー業界大御所の懐か!」

「此度の件が終わり次第――貴様に奉仕する名誉を与えん。触腕によりをかけておけ」


 そして、翼を羽ばたかせた大空の支配者。

 飛翔直後はフラフラで、いつ墜落するか冷や汗ダラダラだった。

 魔力が尽きるが先か、気力が尽きるが先か。

 その命運、竜のみぞ知る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ