魔力枯渇
十分後。
「あーし、復活ーっ!」
フェイスパックを付けたまま、フィオナがベッドから飛び起きた。
「早いな」
「早くない?」
「早いわね」
お顔のシート、就寝中にコンディションを整えるはずでは?
十分の休憩時間なんて、せいぜい小学生が校庭でドッチボールやる程度。
ん? 小学生のバイタリティと超スピードヤバくね? それと同格である。
「感じる! め~っちゃ潤ってんじゃん」
ご機嫌なエルフがパックをはがし、美顔を晒した。
透明感あふれるツヤとハリが眩しいきめ細かい白肌。
もっちりしながらフェイスラインが引き締まっている。
美容に無頓着な俺でさえ、コスメを買いに走るレベルだ。
「クリぴ、触ってみてちょ。マジでガチだから!」
「え、すごいっ。しっとりすべすべ……赤ちゃんのほっぺみたいな弾力性よ」
「お餅みたいじゃない。まるで十代の瑞々しさね」
「ミューっち、ハートはいつでもティーンだし」
美少女トリオの揉みくちゃお触りタイム。
おじさんも間に挟まりたいなぁ~。おじさんじゃないけど。
「ヤマちょ、サンクス! 肌荒れ治せるとか、神か! 今のあーし、魔力が漲ってるっしょ」
「何それ、知らん。怖っ」
「代謝が上がると、魔力の循環効率が高まるわ。不調だと魔法が暴走したり、消費量が増えたり……エルフにとって長年の悩みも解決できるのね。流石だわ」
「エルフなら、薬草とか飲み薬で対処できるだろ」
森の賢者の叡智がどうたらー。
「あーね? エリクサーより苦いじゃん。頭痛と肌荒れに効くやつ、一日休まなきゃだし」
「良薬は口に苦しじゃん」
「それな」
パリピ孔子。論語っちゃお。
「フェイスパックは一日一枚、寝る時使ってくれ。あとで量産しとく」
「あざまるー」
「できれば、わたしの分も……フィオナの肌、ツルツルで羨ましいわ」
クリスが赤面がてら、モジモジと指を合わせた。
「ふん、あたしは歳も肌も若いから不要よ!」
「「どういう意味!?」」
美少女パーティー崩壊の瀬戸際はさておき。
……新技、粘体精製ねえ。
便利だけど、使いづらいがガチレビュー。
なぜなら、俺は想像力豊かにあらず。
クリエイティブな能力を十全に引き出せる能力に乏しい自覚あり。
学生時代、クリエーターになりたかった。でも、才能ある瞬間がなくて秒で諦めた。
「屁理屈で解釈拡大しようとも、ビニールプール、ジャグジー、ヘッドスパ、温泉、リカバリーウェアくらいしか、健康グッズ思いつかん……イメージできなきゃ、作れないんだよなあ」
「中年の独り言が大きいじゃない。珍妙なアイディアばかり出して、あんた何者?」
「ただのヒーラー」
「戯言の初期症状ね」
呆れたようにため息を吐いた、ミュー。
どうせ触手ヒーラーなんてイロモノ枠ですよ。
「よっしゃぁあああっ! あーしの大活躍はここから捲りまくり的な!?」
フィオナがやる気マックス。
小休止を済ませ、再びダンジョン後半戦へ挑もうと進み始めた一行。
その後方で、俺はじっと佇むばかり。
フラフラと浮遊感。揺れる視界。
クリスがこちらに気づくと、急いで駆け寄ってきた。
「あなた、すごい顔してるわよ」
「マズい……一歩も、動けへん」
「やっぱり! 変よね! 初めてのダンジョンがこんなに簡単な訳――」
ひょこりエルフはん。
「どしたん、ヤマちょ? あーしが人生のパイセンとして、話聞いちゃるし」
シャルウェイダンス?
そんなノリで美人に手を引かれた俺。
「フィオナ! だめっ」
手汗もとい冷や汗噴出。緊張で卒倒しちゃったね。リアルガチで。
触手を操る余裕などなく、俺は顔から地面へごっつんこ。
スキルの使い過ぎで、絶不調。
ヤマト、魔力分与しんどいってよ。
悲報、シルバーランクの経験者さん。
才能の原石たちの足を引っ張ってしまう。
「依頼完了、したかった……」
――クエスト失敗。




