探索
今回は、遺跡型ダンジョン。
捻じれた塔の最上階を目指したり、砂漠の最下層へ潜ったり。
方向感覚を狂わせる樹海の迷路だったり。
ダンジョンは不思議空間ゆえ、いろんなタイプに派生している。
その存在理由や発生経緯など、全く解き明かされていない未知の領域。
かつて、偉い人は言いました。
……迷宮ってそういうもんじゃね? 英雄たれ、ラビリンスろうぜ。
「内訳としては、ブロンズ級の小規模三回、中規模二回。シルバー級の中規模一回だな」
「あなたのキャリアでその頻度は多いのかしら?」
「まあまあぼちぼちでんがな」
「どっちよ」
陣形の先頭を務めるクリスが、呆れた表情を作った。
「ダンジョン攻略系パーティーと比べたら、少ない。他と比べたら、多め」
「勝手が違うわけね」
ダンジョンに挑んで、一攫千金を目指すのは冒険者の定番と言えよう。
――他のテンプレ異世界では。
何度も繰り返しで申し訳ないけど、パストロールは魔力燃費の悪さが特徴である。
「小規模は日帰り。中規模は一泊二日程度。大規模はそれ以上……」
ダンジョンに潜る準備に対して、無策で挑めば戦利品などあまり稼げない。
シーフの罠避けや解錠スキルが欲しいし、測量士のオートマッピングも捨てがたい。装備のメンテや現地素材でアイテムが作れるサポーターも同行させたい。
利益を出すため、専門のトレジャーハンターを結成するべき。
しかし、一番のお宝は最奥のボスが守っているのがお約束。
前衛アタッカーを増やせば、バトル難易度は下がっていく。
その分、職業冒険者的に実入りも減っていく。
レアドロ狙い、レベル上げ。
明確な目的がなければ、コスパ・タイパが優れていない。現在の通説である。
「あーし、サウナフレに聞いたし。確変来ればアゲじゃん? 爆アドっしょ」
「ブロンズ級で時給10000ゴールドも余裕。逆確変来てサゲもあるじゃん?」
「ぴえん」
気落ちのフィオナ。整えてもろて。
俺は視線を落とし、ペンを動かした。
中世ナーロッパ風でも、印紙技術高めです。
「おじさん、こそこそと挙動が怪しいじゃない」
「地図描いてんの」
「地図ですってえ? マッピングできるわけ?」
「まさか。そっちのスキルは持ってない。素人お手製」
ぬるる? ぬるるん。
縮尺と目印決めた? 図形とアイコンは共通記号でまとめて。
周囲に展開した触手が現在地を見渡すや、アドバイスしてきた。
文字通り、触手製である。
「自分が把握できればオッケー。ダンジョンは帰路の方が大変だろ」
「ふん、年の功ってやつ? 褒めてあげる」
「幼女が迷子になっても、俺は直帰するからな」
「一応、ヒーラーよね? 別の使い方、上手くなってない?」
ぬるっふっふっふ!
褒められたの、お前じゃないぞー。
「フ、この程度で驚かれちゃ困るし。応用力、まだ発揮してねえから」
「勝手にハードル上げないで。全力でくぐる所存だ」
「ヤマちょ、秒でレベル上がるっしょ? 次の能力が楽しみじゃん」
フィオナに指摘され、俺は冒険者カードを覗いた。
獲得熟練度のゲージ、そろそろ溜まりそう。
エリクシールの製造や回復以外の活用が、経験値稼ぎになったらしい。
「あと数回戦えばって感じかな」
「あたしが協力してあげる。歓喜に咽びなさいっ」
「初手ブッパしたいだけだろ。次で何度目だ?」
「三発目よ。ミュー、ほんとご機嫌だわ」
エンカウントする度、魔法少女がエネミーを上級魔法で殴りつけた。
結果、相手は死ぬ。
対してヒーラー、ぶっ倒れた爆発魔に魔力を流し込んで復活させる。それを二回。
これが魔力ゾンビ戦法というやつか。そうだよ。
「俺より幼女がパワーレベリングしてね?」
「小物をいくら倒したところで、微々たる糧じゃない。この辺りのモンスターふぜい、あたしの渇きを潤せないのよ」
寂しげな表情を浮かべた、天才魔法少女。
バットで肩トントンやめな。
「二人も遠慮せず、技使ってくれ。俺の魔力とエリクシールが残ってるうちは」
「そうね。新しい技を試したいわ。ミューはしばらく温存してちょうだい」
「え~」
「あーしは、ズットモ呼びまくり。いいじゃんいいじゃん、パーリタイムっしょ」
魔力をケチらず、思いのままスキルの真価を発揮できる。
俗に言う、豪遊ムーブ。ダンジョン探索でも可能です。触手の魔力分与ならね。
流石に、無尽蔵じゃない。破産ラインを見極めよう。
かつて、昔の人は言いました。
――若い時の苦労は買ってでもしろ!
……それ、押し付けですよ? パワハラっすか。
異世界Z世代に通用しない言葉である。
「俺もなー、超売り手市場の時に会社選びたかったなー」
ギリギリ流行に入れなかった蒲生大和です。
はたして、ゆとり世代のゆとりとは何だったのか。
ちょっぴり、悟りたくなるのであった。




