表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復がコンプラ違反だと追放された触手ヒーラー、もう働きたくないのに美少女パーティーから魔力をせがまれて全く休めない。  作者: うえき蜂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/38

サブクエ

 水面がピンク色に染まった湖。

 通称、ピンクレイクの塩湖。

 そのまんまやないかい!


 俺のツッコミは、しょっぱさの前に無力だった。

 トレニーの町から西へ徒歩一時間ほど。

 現代では、アニメのOPや観光スポットに使われるロケーション。


「湖、イメチェンかぁー? ウケるじゃん」


 フィオナはかけていたサングラスを上にズラし、湖岸から遠方まで眺めた。


「この依頼、やけに乗り気だったけど? フィオナさん、詳しいのでは?」

「あーしも初めて来たし。つか、ピンクソルトの結晶って化粧品の材料っしょ?」

「ここの岩塩はミネラルたっぷりで、美容液に使われたりするらしい」

「それな!」


 コスメが好きなギャルエルフ。

 報酬がオキニブランドの香水だったので、とりまクエこなすといった流れ。


「美人騎士と魔女っ子は?」

「クリぴはリザードマンとガチトレ。ミューっちはマジックアーマーのたいきゅーテスト」


「君たちって、結構まとまりないよね。パーティーの割に」

「今日は個人活動の日じゃん。むしろ、四六時中いっしょとか逆に息が詰まらなくね逆に?」


 フィオナがパチンと指を鳴らした。

 パーティーは団体行動。基本一緒に同じ活動する。

 連帯責任。それが当たり前。

 否、固定概念だった。


「完全週休二日制やら自分の時間の方が大事……まったく、近頃の若い連中ときたら」

「あはは! ヤマちょ、おじさん臭くて草」

「俺はまだ青年だ! 25歳。ナウでヤングだ。広辞苑にもそう載ってる」

「気にすんな。最年長はあーしだよん」


 まあ、エルフはご長寿種族で有名だしね。

 流石に、何歳か聞くほどデリカシー皆無ではなかった。


「ところで、なんで俺は連れてこられたんだ? 個人活動じゃないの?」

「ん~、暇そうだったし。なんかノリで!」

「何もしないをしたいタイプです。一応、回復アイテム売って生活費稼ぎ」

「しゃーっ! 採取しまくって、新作パフュームゲットだぜ!」


 フィオナは気合を叫びながら、ピンクレイクへ駆けていく。

 パシャパシャッ。

 文字通り、湖畔の中央まで一直線。


「マジか、ほんとに水の上走ってる……」


 俺は苦笑いせざるを得なかった。

 右足が沈む前に左足を出す。左足が沈む前に右足を出す。

 素早く交互にくり返せば、人は水の上を歩行できる。


 そんな有名な屁理屈を思い出した。忍者かよ。

 フィオナが手を振るや、すぐ戻ってくる。


「ヤマちょ、どったの? お腹痛いん?」

「頭痛がニンニン痛い」

「そこはズキズキっしょ」


 ギャルに笑われる。つーか、そっちがボケっしょ。


「人間、水上、歩けない」

「あ、そっかぁ~。この前、クリぴに怒られたわ。めんご」

「それ、スキル?」

「違うし。ただの加護じゃん」


 エルフは妖精さんと友達で、おまじないの効果だってさ。


「てか、乾季の塩湖じゃん? 塩分濃くて、水の密度が大きいなら浮力マシマシっしょ」

「うわぁ、このギャル賢い」

「あざまるっ」


 塩分濃度や密度と言われた瞬間、俺の頭が伯方の塩より真っ白だぜ。

 理科は小三で諦めた。洗剤でスライム作り以上はもうダメぽ。


「あーしに任せとけ。ヤマちょ、水面浮いちゃいなよ」

「アイドルデビューより難しいぞ」


 存在しない姉に履歴書送られる寸前、フィオナが手のひらに五芒星を描いた。


「あーしのスキル<ズッ友>は、マブダチに即レスかまして神サポよろ~」

「日本語でおけ」


 むしろ、こちらに傾倒しているゆえ分かりづらい。

 後にクリスの説明曰く――

 フィオナは、召喚系のスキル持ち。

 目星を付ければ、巫女、サモナー、精霊使い。

 個人でスキル名を弄れるの、かなり実力があるはずだが……


「解錠せよ、彼方へ通ずる門扉を開け。かまちょ、ティンクル!」


 ポンっと煙が立ち、蝶の羽を生やした小人が出現した。


「おひさー、フィオナ。ボクに何か用かい?」

「あいかわらず小顔じゃん。マジ羨ましいし」

「カラダだって小さいだろう? フィオナは可愛いね」

「それな!」


 同窓会かしら? 二次会はパスで。


「急な呼び出しでもうしわけ。とりま魔法の粉、ヤマちょにかけてくんね?」

「お安い御用さ」


 ティンクルと呼ばれた小人が、俺を囲うように一周した。


「怪しいパウダー!? や、俺、花粉症なんでっ」

「無害だよ、人間くん。しばらく油の性質を与えたんだ」


 油は水を弾く。

 なるほど、ちょうちょの鱗粉結構ベタつくよねー。


「これで終わりかい? じゃあね、フィオナ。たまには里に帰ってくるんだよ」

「あーしは過去を振り返らない女。伝統より流行を追いかけるっしょ」

「元気ならいいんだ。またいずれ」


 小人は華麗なお辞儀を済ませ、ポンっと瞬く間に姿をくらました。

 どんな関係か気になったが、プライベート重視系パーティーで詮索は控えよう。


「よっしゃ、ヤマちょ。あーしに続けぇーっ!」

「お、おおうっ」


 腕を掴まれ、湖へジャンプ。

 泥でぬかるんだっぽい表面張力、感じます。


「妖精の力ってすげー」


 パシャパシャッ。

 雨の日に水たまりで遊ぶ童心が出るも、全然沈まなかった。


「水上歩行ツアーで一儲けできるのでは? ティンクル氏に業務委託契約を結び、仲介手数料で俺の不労所得がウハウハ……これは大いなる一歩である!」

「あー、妖精は人間の欲望に敏感じゃん。魔法の粉が秒で切れるっしょ」

「心が綺麗な人にしか見えない設定は認めんぞ! 虫アミを持て!」

「樹木に黒糖塗りたくれば、夜中に行列作りまくり。人気スイーツ店でジワるしっ」


 カブトムシか。

 冗談は半分さておき。

 湖の中心付近に到着。


「ピンクソルトさ。沿岸に落ちてる欠片じゃダメなの?」

「純度の問題だってー。量より質にこだわっちゃう的な!?」

「俺も取るなら、角が立派で大きい方が欲しい」

「急にどした!?」


 カブトムシの話だろ。え、違う?

 俺は水面に顔を近づけ、目を凝らす。

 湖の深いところに岩礁が続き、ピンクの結晶がたくさんへばりついていた。


「海女さんよろしく、素潜りとしゃれ込むか」


 恰好から入るタイプの俺。

 磯メガネを用意してくれ。

 フィオナがなぜか、ニヤリと笑みをこぼした。


「ふっふっふ。ヤマちょを連れて来た真の理由――知りたいっしょ?」

「……何、だと……?」

「とりま、おかしな話じゃん。ソロ活好きなあーしが声をかけるとか」

「フィオナさん! まかさっ」


 脇が熱くなり、冷や汗が背中を濡らした。

 悪寒が予感へ。

 直感が確信へ――


「あーし……泳げないじゃん? 水中とかムリめのやばたにえん」

「ズコーッ!?」


 口から溢れ出すほど盛大にズッコケる。

 マジックパウダーが空気を読んだらしく、転げ落ちても水没しなかった。


「あははは! リアクション芸人目指せるしっ」

「あんさん、泳げへんのに湖底のピンクソルト目指してはったん?」

「新作コスメのため。あーし、将来はビューティサロン開くのがガチドリームじゃん?」

「そうなんだ。初めて聞いたけど、頑張って叶えてください」


 ちなみに、俺の夢は将来不労所得で食っていくこと。本気だから!

 思わず、ため息を吐いた。


「全て、理解した。あの二人に断られたな。はは、過去に何度手伝わせた?」

「鋭いじゃん。リアクション探偵さん」

「新しい迷探偵生まないでもろて。真実は……人の数だけ存在するッ!」


 そりゃそうじゃ!


「ここまで来ちゃった以上、今回は協力するよ。しかし、報酬は貰うぜ」

「任せろり。あーしのスタイリングでヤマちょを男前に変身っしょ」

「異世界くんだりまで来て、現実直視させないで」


 ――ただし、イケメンに限る。

 俺がファッションを意識すれば、あ~頑張ってんじゃーんと冷笑されるのがオチ。

 大人しくマネキンコーデを真似ろ。可もなく不可もなく平凡を享受せよ。

 嫌な記憶を振り払うため、ピンクレイクへダイブ寸前。


「ちょい待ち」


 フィオナが指先を浸し、ぺろりと舐めた。


「いかに?」


 彼女は珍しく、神妙な面持ちで。


「マジカルイオン濃度がめちゃマナ寄りだし。素潜り、ガチで身体に毒じゃん」

「アルカリイオン濃度のパクリじゃねーか! ほんまこの異世界っ」


 化学は高一で諦めた。炎色反応ぅ?

 小賢しく小難しい用語を羅列するから学生の理系離れが進むんだぞPHっ!

 パストロールのなんちゃってファンタジーへ、ツッコミ疲れを感じつつ。


「どうする? 諦める? 帰る? お土産、星の塩でおけ?」

「もち、あーしにいい考えがあるっしょ」


 すでに踵を返し、帰宅の意志を燃やした俺に対して。

 ノー残業デーを認めず許さない上司のごとく肩を叩いた、インテリギャルであった。


「ヤマちょの出番、ちゃんと用意してるぜしくよろ~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ