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世界がアップデートされたって? 〜地球に突如現れた迷宮、13年以内に攻略しないと大魔王が攻めてくるらしいです〜  作者: 青井あげは


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「……な?……嘘、だろ」


 土屋のこぼした言葉に、数人が振り返る。


「なんだ?どうした?」

 竹田が心配そうに問うが、土屋はそれに答えず、目をキョロキョロ動かすだけで、すぐに答えなかった。

 その表情が、ゆっくりと強張っていく。


「……な、なんて……数だ」

「数?」

「どういうことだ?」


 竹田が眉をしかめ、東間が聞き返す。

 数と言えば、今周囲にはドロップが散乱した状態だ。


「あ、ああ。こんなドロップの数は今まで見たこと無いよな!確かに多いが、そんなに驚くことじゃないだろ。」


 竹田の返答に、土屋はゆっくり首を横に振った。


「違う。まだ……終わってない」

「え?」


 誰ともなく、声が漏れた。


「だから、スタンピードは……まだ終わってないんだ」

「……え?」


 言っている意味が分からず、周囲のメンバーが顔を見合わせる。

 静かになった中で、何かの走る音が聞こえてきた。それはだんだん大きくなる。それも、最初の比とは比べ物にならないほど大量の足音だ。


「……お、おい」


 ドミトリオのダイキが、低く呟く。


「これ……ヤバくないか?」


 だんだん近づく足音、枝や木が薙ぎ倒される音。それに、獣達の声。


「おい……マジか、マジか!?」


 誰かが叫んだ瞬間、木々の隙間から、それが見えた。

 数えきれないほどのモンスターが、黒い波となってこちらへ向かってくる。


 先ほどの群れとは、比べ物にならない。

 桁が違う。


「……え?」


 思わず声が漏れる。


「……多すぎるだろ」


 誰かの呟きが聞こえたが、その声は震えていた。


「……おそらく、150体以上だ」

「ふざけんな……」


 土屋さんの声がするが、すんなり頭に入ってこない。

 東間さんが顔をしかめ、弱々しく悪態をつく。

 150体。それは冗談では済まない数だった。


「……撤退だ。村に戻るぞ!」


 その声に、全員が村の方へ駆け出そうとする。だが、それを号令を出した当の土屋が止めた。


「……待て!」

「どうした!?」

 駆け出そうとした東間が土屋に振り返り、問いかける。


「……回り込まれてる。」

「は?」

「別のモンスターの一団が……、側面から回って村に向かってる」

「な……!?じゃあどうするんだよ。」


 ダイキが声を荒げる。


「今から村に戻っても、間に合わない。挟み撃ちになるだけだ。」


 土屋が一瞬悩む素振りを見せ、顔をあげて告げる。


「撤退ルート変更だ!村は捨てる、別のゲートへ向かうぞ!」


 村を諦める?そこが1番近い帰還ルートのはずだったのに。


「今からあの数は捌けない!無理に突っ込めば全滅する!」


 土屋の声が、全員を引き戻す。


「それに、奴らの目的は解放済みのゲートだ。別方向に逃げれば見逃される可能性もある。少しでも生き残る方を優先する!」


 そう言っている間にもモンスターの群れが、距離を詰めてきている。


「皆走れ!東間は先導しろ!」

「分かった!」


 全員が東間の後に続き 、走り出す。


「殿は俺と竹田が受け持つ!」

「任せな!」


 後尾側に土屋と竹田が着く。


「友希、スキルで鎮静化を!」

「了解!効くかは分からないけどね。」


 友希が芳香庭園のラベンダーを展開していく。


「全員、限界まで走り続けろ!」


 芳香庭園のフィールドに入ったモンスターは少し速度が落ちたような気がするが、それでも足の早い森狼達が追い付いてくる。


「竹田、5秒後、左側二体!」

 土屋の声に反応して、竹田が左側に盾を突き出し、迫ってきた森狼一体を弾き飛ばし、右手の剣でもう一体を叩き切る。

 右側では土屋が目線も向けず、追い付いてきた森狼の脚を槍で薙ぐ。


 森狼達はこちらの攻撃で一瞬動きが止まるが、すぐにまた追いかけてくる。


「くそ!逃げながらじゃたいしたダメージも与えらんねー!」


 竹田がまた追い付いてきた森狼を弾き飛ばしながら悪態をつく。


「この先に大規模な遺跡群がある。まだ未解放のゲートがあるはずだ。そこまで諦めるな!」


 全員が死力を尽くして走る。

 土屋と竹田が追いすがるモンスターをいなしていく。


 そして、遺跡が見えてきた。

 遺跡には城壁跡のようなものがあり、その入り口に向かって走る。あいにく、朽ちてなくなってしまったのか門は無いが。


 入り口を潜ったところで、土屋が足を止める。


「大地の騎士団はここで奴らを足止めする。ドミトリオ、希望の花の5人はゲートの解放を頼む。それまであいつらは俺達で食い止めておく。」


 確かに、このまま全員で行っても、ゲート解放迄に後ろの集団に追い付かれて解放どころじゃなくなる。


「東間、お前もゲート解放側に付いていってやれ。」

「分かった!」


 ゲートの解放メンバーは一瞬逡巡したが、東間に続き走る。

 城壁の門を抜けた先は、家だったのか崩れた壁や柱が乱立する遺跡だった。


「東間さん、良いんですか?」


 走りながら東間に話しかける。


「ああ。未解放のゲート前にもモンスターがいる。そいつらを倒すにも人数がいる。」

「いや、でも。足止めに5人だけって。」


 確かに大地の騎士団はこの中で一番強い。けれど、東間さんまでこちらに来てしまえば、向こうは半数以下になる。


「……大丈夫、大丈夫だ。それよりこっちも早く倒さなくちゃいけないからね。ほのかちゃんの攻撃力、頼らせてもらうよ。」

「……はい!」


 気持ちを切り替えて走る。


「この先だ!」


 東間が指し示すその先、開けた空間に見覚えのある濃い青の光を放つゲートがあった。

 そして、その前に……。


「……二体、か」


 二体の森熊が、ゲートを背にしてこちらを睨み付けていた。

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