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そのうち、花言葉を贈らせてもらっていい?

リョウは少しずつ子供のいないホームステイ先のうちに慣れて、ホストマザーと一緒に料理をするようになり、ユウコは毎晩いろんな料理が出てくる食事タイムに訪れるのが何よりの楽しみになっていた。


契約社会では信頼できるlawyerが必要だがなかなか信頼できる者との出会いは難しく、学生時代からよく知っている人物か親族が望ましい。


リョウのためには、ホストファーザーが弁護士なのはこの先の英語圏での仕事のことを考えると有り難かった。


ユウコは最近、大切なリョウと過ごせる時間に限りがあるような気配を感じはじめていた。


一般的に子宮がんになりやすいのは、未出産、がんで過去にエストロゲンの単独療法を受けた、などといった要素を持つ女性だとされているが、

ユウコは過去に出産した際に卵巣を摘出し子宮がんの定期検診を勧められていたが症状も無かったので先延ばしにしたままで過ごしてきていた。


リョウと出会った頃もなにも自覚症状は無かったのに身体のなかでは病魔は進行していたようで、

アメリカに来てからユウコには時おり異常なおりもの、不正出血、性行為後の出血、昼夜を問わない下腹部痛など、子宮がんの分かりやすい症状がポツポツ出てきていた。


ユウコはリョウが学校に行っている間に検索した専門医のクリニックを受診し、細胞診では前がん病変も発見されていた。


もし、自分の時間が限られているのならその時間をリョウの人生に役に立つように過ごしたいとなんとなく思ってきたが、

どこかでいつも、もし、を付けていた。


ユウコのもし、は、現実となってしまい、リョウには知らせずに抗がん剤点滴の通院治療が始まっていた。


リョウにもったいをつけて、自分が死んだ後もいつまでも忘れないでいて欲しい、などというしばりは絶対にのこしたくないので、

仕方なかった、あれで良かった、と演出したいユウコは、自分の外観や顔貌が病的にやつれて誰がみても死が近づいていると気づかれるようになるまでは、リョウには何も告げ無いことにした。


そのうちリョウが楽しみにしていた3週間の学校のホリデーがきて、リョウの顔が分からないように気をつけることを前提に、

またブロードウェイ観劇三昧のNYC滞在に出かけることになった。


NYCではユウコの体調も良く、予定を14日間だけにして経口薬で治療を済ませるプランが可能だったのでユウコはリョウとの楽しい日々を充分味わうことが出来た。


リョウはユウコの変調には気づかず、毎夜ブロードウェイで輝く役者たちに感動させられながら、アメリカの大学には進まずに日本に戻って芝居の舞台に立とうと決めていた。


日本に戻ることについては2年前に所属していた事務所がウェルカムしてくれ、

すぐに都内の住まい探しや新しいマネージャーの人選も始めるという。


ユウコはリョウの想いのままを可能な限り応援しようと決めていたので反対することもなく、

成田への帰りの機内雑誌に載っていた花言葉に関する記事を読んで、

リョウに遺したい花を見つけた。


真っ赤なハイビスカス。


夫であるリョウは若くて真っ直ぐな性格で優しく繊細すぎるところが今もって変わらないので、

どうかいつまでも悲しんでいないで前に進んで欲しい、

という自分の想いが、そう遠くなく来るべき時につぶさに伝わりますように。


ユウコにとってリョウの笑顔は本当に本当にキラキラしていて眩しくて、いつまでも見ていたいし、

リョウの温かくて優しくつないでくれる手は、いつまでも離したくない。










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