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必ずその日はやってくるのだから、自死の誘惑は祓って

大手事務所の人気イケメン俳優のハヤトが相変わらずの態度でありながら、いまだにCMや映画の仕事が多いのは、

業界で大きな影響力を持つ人間の寵愛を受けているからだと言うまことしやかな噂が流れているのを耳にした。


長くリョウに専属で付いていたマネージャーのスドウが退社した理由も教えられないまま、もちろんスドウとの個人的な連絡も取れない業界の暗黙知に、

ユウコは仕事を通して人間関係が築けない違和感を高めていた。


新しいマネージャーは関東オフィスの責任者の甥でヤギといったが、

中学を出てからアメリカに10年居たがやりたいこともなく帰国した男で、

業界については何の知識もなく事務所とのつなぎの役割だけで、またアメリカ人の妻子がいるアメリカに戻りたいのだと言う。


ヤギからはトランプ政権下のアメリカの事やシリーズが長い人気ドラマのこと、ブロードウェイに関する英語の記事の要約をしてもらうくらいで、

リョウの取る仕事や彼の役については別段気にしている様子もなかった。


ある夜、

ヤギが黒いフードで顔を隠した長身の痩せた男とリョウを訪ねてきた。


ヤギは毎晩都内のあちこちで飲んでいるうちに顔が広くなってリョウに会いたがっている男を連れてきたというのだ。


ユウコはドアを開けるか迷ったが、すぐにフードの男がハヤトだとわかったのでリョウに確認した。


リョウとの仕事を急に降板してしまったいきさつをリョウに話したかったのだというハヤトは、やはり美しいままだったがずいぶん痩せていた。


自分の周りの人間には誰とも会いたくないという失踪したかのようなタイミングのハヤトを連れてくるヤギの度量の広さは、叔父の業界内の権力あってのものだろうから、

リョウがどうこうなることではないと思ったユウコは出来るだけのことをしてあげたいというリョウに従って、風呂やベッドや食べ物を用意した。


リョウは住まいとして5LDKの部屋を与えられているので、

大きなリビングと同じぐらい広いリョウの部屋、ユウコの部屋、衣装部屋、そして2つ小さな使っていないゲストルームがある。


これまでどんなに遅くなってもマネージャーのスドウが泊まることは無かったが、ヤギはたまに泊まっていき今夜はハヤトを泊めるつもりで連れてきたのだ。


ハヤトがユウコのことを妻だと気がつく様子はなかったが、事務所公認で同棲していることは理解したようで、

自分の周りは自分を搾取する者たちだけだと笑って話し、リョウに酔って何度も、頑張るな、と言ったりしていた。


ユウコが翌朝起きるとハヤトは居なくなっていたが、リョウは涙を流していた。


ハヤトと何を話したのか何があったのか、今度ゆっくりリョウと話が出来るまではそっとしておくことにして、ヤギに制されてユウコは同伴せずにリョウを送り出した。


ヤギとCMの撮影に出掛けたリョウが夜遅く帰宅してシャワーから出たとき、

テレビの特報ニューステロップが入り、2人はハヤトが飛び降り自殺をしたことを知った。


ユウコに入ったヤギからの連絡では、昨夜ここにハヤトが来たことは無かったことにするように、とのことだった。


今朝泣いていたリョウは、今は少しも泣いていなかった。


ハヤトと同じ側に生きるリョウを、

ユウコは強く抱き締めた。




















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