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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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七話 割れた玻璃7


それからまたいくつかの季節が過ぎて・・・賑やかだった城は静かになった。




数ヶ月前の雨の日に、出かけたっきり優斗は帰って来なかった。これは誰が何かしたわけではなくただの事故だった。崖から落ちたらしく、崖の下も森の中も総出で探し回ったけれど着ていた上着の一部以外何も見つからなかった。




そして一週間前、二ノ宮家の反乱があった。


陽が落ちて、弟達と過ごそうかと思っていたら呼び出され、何があったのかと思えば城が燃えていた。一ノ宮家は色葉家と運命を共にしている。滅ぶときは同じだからそうならないようにいかなければいけなかった。


家には城へつながる裏道がある。それを狙ってなのか一ノ宮家にまで敵は来ていた。

下の弟2人は目立たない物置に隠して、迎えが来るまで絶対に出ないように言いつけてから城へ向かった。


ただ、その頃には子供3人は逃げ出した後だった。大人を付けずに3人だけで、それだけ余裕がなかったのだろう。すでに敵に囲まれていて探しにいくことも難しかった。そして私は城で敵と応戦することになったけれど、どうして無理をしてでもすぐに探しに行かなかったのかと後で深く後悔することになった。


道が開けたら、すぐに追いかけた。どちらに行ったのかわからない状態で、広い森の中から見つけられたのは奇跡に近いだろう。


ただ、見つけた時は姫2人しかいなかった。その姫たちでさえ、ボロボロで敵に捕まりかけていた。


「おにいさまが」


「わたしたちがにげるのおそいから」


泣く2人を宥めて寝かしつけ、それから結理を探すように手配して、城の後片付けをして、状況が落ち着いて何があったのかやっと把握できたのは3日後だった。



「結愛様、申し訳ありません」


敵を捕らえ、情報を引き出したけれど川へ落ちたことしかわからなかった。下流の町へ行き子供が流て来なかったか尋ねたけれど誰も知らない様だった。あの川は深い。流れは速く水量も多い、今は冬だから水温も冷たい。大人だって溺れる可能性が高い川だ。


「陸が謝ることではないわ」


もう少し早く、ここから離れていれば巻き込まれずに済んだのに。


「冷たかったでしょうね。あんな重い体に合わない着物を着ていれば・・」


よく水を吸って沈んだだろう。その格好で逃げ回ったのも大変だっただろう。どれほど怖かったか・・


「これから、どうされますか?」


いつまでも後ろを向いているわけにはいかない。いくら後悔したって戻ってこないのだから。


「葬儀が終われば優理の元へ行くわ。残ったあの子は2人の分まで隣にいて育てるわ」


「優理は大丈夫でしょうか?」


「悲しむでしょうね。でも、どうしようもないもの」


「・・手紙は待っているとお伝えください」





そして今日、結愛様もいなくなった。


他の貴族は3人ともいなくなってしまったから後継はどうするのかなんて話している。何代か遡れば親戚くらいいるだろう。その人が将来の主人かもしれないし、姫がその席に座るかもしれない。


どっちにしろ、今までの充実した日々は戻ってくることはない。







そうして何年も過ぎ・・


「兄上、これ置いておきますね」


「助かる」


優斗と同じ年齢の末弟である星ももうすぐ成人という年齢になった。けれど、いつまでもふにゃふにゃとしていて家から出ない。ちょっと出かける気配もない。


こうして簡単な仕事の手伝いをしてくれるのはいいけれど、もう少しどうにかならないものか。


「明日は城に行く。ついて来て手伝ってくれるか?」


「すみません。僕・・・家でお留守番しています」


あの頃はたまに一緒に行っていたのに、賑やかな三兄弟がいなくなってからは半引きこもり状態になっている。


「・・わかった」


「母上のところにいますから、何かあれば呼んでくださいね」


他の弟と違ってどうしてここまで違うのか。母が違うからなのか、それとも本人の性格ゆえなのか。ちゃんと勉強はやっていて頭もいい方なはずなのに。


「この計算は代わりにやっておいてくれ」


「はい」


あれから何年も経つのに何故か後継が誰になるのか決まっていない。姫のどちらかがなるというのが有力な説だけれど実際のところはそんな話は無い。


どこからかやって来るのなら、仕える側としては早く連れてきてほしい。そうすればどんなに駄目なやつが来ようが何かしらの対策ができる。そんな風に考え、何か諦めた頃のことだった。





「おかえりなさい。頼まれてた分はやって兄上の机の上においておいたので確認してください」


城から帰って来れば弟が出迎えてくれた。


「助かる」


「それくらいならしますからいつでも言ってください」


外にほとんど出ないからなのかとても純粋なまま育っている。そのせいで余計に外へ出られなくなった部分もある様だけれど。


服の襟を緩めながら部屋に戻れば星が言っていたものがおいてあった。ただ、その横に心当たりのない手紙と思われる物があった。


手にとって見ても宛名も何も書かれていない。書いたのが兄弟ならばわざわざ封をすることはない、どこからかの私への手紙ならば名前が書かれているはずである。


こんなに怪しい手紙を見ないまま捨てることもできない。


『結理は生きている』


綺麗な筆跡でただその文が書かれていた。その後にも文章というより情報が書かれていて・・


『現在14歳。住居地は水崎村、行動範囲は〇〇町くらいーーーーー』


生きていれば今年で16歳、本当の年齢はちょうど14歳だろう。水崎村といえばずっと南にある辺境の村だ。


『元気に生活しているものの、当時の記憶は無い』


そこまで書かれて文章は終わっていた。


喜びと困惑と不信感が心の中でぐるぐると渦巻く。これが嘘だとして、そんなの誰も得しない。すでに亡くなっていて忘れられている存在だからだ。ならば、誰がどんな目的でこれを送ってきたのかは不明だけれど本当の情報の可能性が高い。


こうなったらすぐにでも動くしかない。部屋にいるはずの弟たちを呼びつけて、どう動くか早速考え始めた。





「話、とはなんですか?」


「珍しいですね。何かいいことがありましたか?」


「僕も必要ですか?」


3人の反応はバラバラである。話したところで3人の反応は薄いかもしれないけれど。


「この手紙を見てほしい」


葉は驚き、流は困惑して、星は首を傾げた。星なんかは当時のことなど覚えていないかもしれない。


「一体、どこからこの情報を?」


「知らない。今日、帰ってきたら机の上にこれが置かれていた」


「この人だれですか? 知り合い?それとも仕事関係の人ですか?」


「・・まあそんなところだ。とにかくこのことは内密に。だが、本当にここにいるのか探しに行きたい」


「ですが、生きていらっしゃるならば16歳になっているはずでは?」


ちゃんと覚えているらしい葉がそう言った。


「詳しいことは話せないが、本当の年齢はこれであっている」


「報告はしたんですか?」


「してない。それにするつもりも無い。この情報が事実なのがわかってからでいいだろ」


「誰に行かせるつもりですか? というか誰がこれを?」


「文字に見覚えがあるような無いような・・・、これを持って来たやつのことも誰も心当たりが無いらしいからわからない」


ただこのことを知らせたいのならば私のところではなく色葉家に届ければよかっただろう。


「それも併せて調べるつもりだ」


「結理様が見つかったら、どうするつもりですか? 連れ戻しますか? 七年も離れていたのですよ」


見つかったら、まずは結愛様と優理へ知らせたい。それからは?


「結理に選ばせる。大人には決めさせない」


この土地にこだわる理由が無いのなら親の元へ帰したいし、ここで暮らすのを望むならばそれはそれでできることをしてあげたい。


「だから流、行ってきてほしい」


本当は自分で確かめたくもあるけれど抜けるわけにはいかないし、葉が離れるともっと仕事が増えるためそれもできない。星はそんなことができる性格ではない。消去方で残ったのが流だった。


「わかりました」


「頼んだ」





そうして、帰ってきた時の流は嬉しい知らせを持って帰ってきてくれた。



読んでいただきありがとうございます。

もう少し、過去のお話が続くようです。

陸視点のお話は意外に書くのが楽しく、私も予想外の動きをしてくれました。

陸はもっと冷たくて大人側の人のはずだったのですが、いつの間にか四兄弟で一番の存在になっていました。

次話もよんでいただけると嬉しいです。

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