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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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六話 割れた玻璃6


それから、たまにとうや様は3人に会いに来るようになった。





「兄上、あの方はどなたなのですか?」


3人と一緒にいることの多い流はとうや様の存在に気づいてしまった。今はこの弟の方が3人のそばにいることが多いのだから仕方ない。自分が一ノ宮家の後継としての勉強を終わらせるまではそちらに割ける時間は少ない。


「・・結愛様の知り合いの方であの3人とも面識があったらしい。昔よく懐いていたらしいから・・あれくらいいいだろう?」


本当のことを流に知られるわけにはいかない。知ったら大人の面倒ごとに巻き込まれてしまう。


「はい」







そしてまた春が来て・・


「結愛様、一体どういうことでしょうか?」


「・・麗華様との交渉が終わったの。私はあの子達を元の姿に戻してあげたい。とうや様がいれば、あんなことさせる必要はありませんから」


それから、3人がここの子供として育つことになった理由を聞いた。


色々とあって結愛様の実家は無く自身も追われるようになり、頼れる人が麗華様しかいなかったこと。色葉家の別荘に匿ってもらっている時に出会ったのがとうや様。2人は恋に落ちてやがて2人が生まれた。けれど長く幸せは続かない。ある日、2人の父親であるとうや様は出かけたきり戻って来なかった。

その頃、麗華様の息子が亡くなり優斗が生まれた。そして結愛様が体調を崩して山の中にあった別荘で暮らすのは難しくなった。そこで入れ替えることになったそうだ。


麗華様は自分の立場を守るために、結愛様は自分がいなくなっても3人の息子が暮らしていけるように。


「こんなことは言いたくありませんが・・とうや様はまた居なくなるなんてことはないのですか?」


「彼は家出してあの場所に来ていたらしいから連れ戻されただけだったの。家の人たちに子供のことも説明して住む場所も用意した上で迎えに来てくれたの。麗華様だって認めてくれているのよ」


ならば本当の両親の元で伸び伸びと育つ方が3人にとってはいいだろう。だけれど・・


「私の主人は誰になるのですか?」


「そこは私の知るところではないわ。私にはそんな情報入ってこないのよ」


杏様か華鈴様、もしくは親戚の中から探すか。どちらにしろ、選ばれた誰かが新しい主人になるのだろう。臣下には主人は選べない。







「陸」


夏になった頃、わざわざ一ノ宮家の屋敷まで優理が訪ねてきた。しかも1人で。どうして来たのかはわかっていた。


「久しぶりだな」


「忙しいの? 結理と優斗が寂しがってたよ」


「明日には行くつもりだ」


「2人のこと、みててね。優斗には説明したけどきっと結理は寂しがるから」


明日、優理は1人先にとうや様の元に行く。3人がいきなりいなくなっては怪しまれるからと1人ずつ時期を離して帰っていくことになった。


「結理にはちゃんと話したのか?」


「結理はおぼえてないもん。せつめいしたってわからないよ」


口を尖らせて、客の割には勝手にその辺りに座りそんなことを言った。


「母上のことからせつめいしようと思ってちゃんとはなしたよ。でも『なにいってるの?』って・・だからいい」


寂しさと諦め、それと悲しさ、そんなものを混ぜたような表情をしていた。


「それより、これ、おそなえしに来たの」


手にはその辺りに咲いているような草花が握られていた。


「ああ、こっちだ」


屋敷の端にある庭の隅にある、少し大きめの石が置かれている場所に優理を連れて行った。


「・・ごめんなさい。ぼくに代わりはできませんでした」


優理は小さな手を合わせて花を供えてその石に話しかける。この石の下には優理と結理の立場に本来いたはずの子供が眠っている。亡くなったこと自体を無かったことにされた以上、本来の色葉家のお墓には入れられずこうして目印代わりに名前もない石を置くことしかできなかった。


「十分、代わりをやったと思うが?」


「でも、この人がいたばしょは誰もいなくなる。・・やっともとにもどるのかな?」


「そうだといいな」


ここに眠っている彼だって別の者が代わりをすることを喜んでいたかどうかはわからない。むしろ逆の可能性だってあるくらいだ。


「優理?」


俯いたまま地面の一点を見つめている。


「結理がわるい。わすれちゃうのがいけないんだ。ぼくは・・母上のためにいっしょにがんばろうって言ったのに」


双子だからこそ、優理と結理はこの年にしてここまでのことをやってこれたのだろう。


「結理は父上のところにきてくれるかな? 結理はここでそだつ方がしあわせなのかな? ・・・かんたんにぼくのことだってわすれちゃうのかな?」


優理は今にも泣きそうだった。まだたった6歳なのだ。


「結理は優理のことが大好きだろう。簡単に忘れるはずがない。結理は結愛様のことだって簡単に忘れたのか?」


「ううん。あの時はね結理はつらそうだったのにぼくはなにもできなかった」


まだ幼く高い声に泣く声が混じった。


「ほんとうは・・ぼくがさいごにもどった方がいいの。でも、もうつかれたから、結理みたいにきようなことできないから」


落ち着くまではその小さな背中を撫でて過ごした。出会ってからはすでに四年が経っていた。お互いに出会った頃よりはだいぶ成長したものだ。


泣き止んだ頃、優理と会うのはこれで最後だと思い頭を撫でてやった。とうや様は藍国の人ではない。国が違えば簡単には行き来などできない。


「よく今まで頑張った」


兄弟の関係をうまく保つために、矛盾しているところを補うために、優理はいつも頑張っていた。


「陸もありがとう。あ、いっしょにくる? ぼくはそれがうれしい!」


こんなことを言ってくれるなんて。臣下としてはここまで必要とされるのはこれ以上ない喜びだった。


「私には立場がある。長男でなければそれもよかったかもしれないが、気持ちはとても嬉しい」


「陸はぼくにとって兄上みたいなの。おてがみかくからね」


「字が下手だったら添削してそのまま返すからな。それは嫌だろう? ちゃんと練習は続けるんだ」


いつか使者にでもなって大きくなった優理達を見に行こうか。


「うん。ひらがなだけじゃなくてかんじも書けるようになって陸のことびっくりさせるから」


「楽しみだ」


その日の夜、優理は攫われたことになってとうや様の元へと帰っていった。






「ゆうり、ゆうりがいないの」


やっぱり結理は泣いていた。攫われたことも聞かされて、生まれて一度も離れたことがない双子の片割れがいないことを悲しんでいた。


その日は城に行くしか無かった。まだ幼い流では結理を宥めきれないから。事情も知らないから。


「かえってくるよね。わるい人、すぐつかまってかえってくるよね?」


「・・大丈夫だ。ちゃんとまた会える」


結理が帰る順番が来ればちゃんと会える。それまで少しだけ我慢すればいいだけ。


「みんな、なんか変なの。ゆうりのこと聞いたら・・何かかくしてる顔するんだよ?」


結理は周りを見るのが上手かった。だからこそ察してしまう。


「また会える。それは絶対だ。結理、私が嘘をついたことがあるか?」


「ううん」


「少し時間はかかるかもしれない。それまで優理の代わりに・・はならないだろうが、私が城に来る時間を増やそうと思う」


「うん」






結愛様も今まで通り優斗と結理を支えまた会えると言い聞かせ、自分自身もできるだけ様子を見に行くようにしてなんとか調子を取り戻し、少し自分の勉強の時間を増やせるかもしれないと思い始めていた頃、その事件は起こった。



遊んでいる結理と優斗を流に任せて仕事関係の方に行っていた時だった。


先の角のところに見慣れた小さな着物が見えた。今は優斗と一緒にいるずなのに。どうしてこんなところにいるのかと近づいた。


「結理?」


角に座り込んで膝を抱え込み小さく丸くなっている。また優理を思って泣いているのかと思ったが・・


「・ーーーですな。これで後継は結理様と決まったでしょう」


「どこのーーーにーーわれたのかはわかりませんが、よかったですね。優理様がいなくなって」


「本当に」


高官である大人たちがそんなことを言いながら笑っている。


「ひどい。なんでみんなそんなこと・・」


大人は結理達を人としてみてはいないのだろう。だからそんなことを言えるのだ。


「本当に・・」


声をかけてこんな場所から速く離れようと思った。でもその前に結理は動き出して・・・


「優理はかえってくる! 優理のことわるくいうな!」


熱い空気が肌に触れた。結理の周りになぜか炎がパチパチと燃えている。


「!」


「これはその・・結理様、私は・」


結理が手を前へ向けると高官たちの方へ炎が広がっていく。


「結理、それ以上はだめだ」


声をかけても聞こえていない。その横顔はいつもと違う。薄い青色の髪はいつもより色が薄くなり、赤い瞳は爛々と輝いている。


高官に怪我をさせるようなことがあったらまずい。悪い噂にもなれば、大人に怪我をさせた事実が幼い結理には傷になりかねない。


「結理」


彼を纏う炎の中に手を伸ばして小さな体を抱きしめた。炎は熱い。火傷くらいしているだろう。けれどそのまま抱え、庭に造られていた池へ飛び込んだ。それくらいしか止める方法が思いつかなかった。







「ごめんなさい」


池に飛び込んだ途端、なぜか意識を失って気づいた時には部屋に寝かされていた。優理のことをヒソヒソと言っていた高官が騒いだおかげで人が集まり、それで集まった人が引き上げてくれたんだとか。


起きればすぐに結理が結愛様とやってきて弱々しい声で謝ってきた。


「悪いのはあの高官達だ。私でもおなじことをしたと思う」


「でも、けがさせたから」


「私が自分でしたことだ。悪いと思ったなら謝るよりもあの炎を抑えられるようになってほしい」


「?」


結理はキョトンとしたような顔をする。そんな結理と違い結愛様はサーっと青ざめた。


「陸、その時のこと教えてもらえる?」


「髪の色が今より一層薄くなって、目が爛々と光って・・・結理がいつもの顔をしていませんでした」


「奏様へ連絡して・・それよりも何か・・」


「結愛様?」


まだ何かあるのだろうかとそれを聞き出そうと思った。もう子供ではない。大人の顔色だって十分に読める。


「止めてくれてありがとう。でも、次同じことがあったら先に人を呼んでちょうだい。・・この子の能力は危険なものなの」


「きけん?」


「ええ、だから結理は使い方を覚えるの。覚えればたくさんの人の役に立てる能力よ。ほら、刃物だって振り回せば危険だけれど料理や何かと欠かせないものでしょう?」


「つかいかたをおぼえたら陸にけがさせない?」


「ええ、それにあなたのことを良くわかってくれる人とも出会えるわ」


結愛様は確実に何かを知っている。けれど、結理の手前その場では聞くことができなかった。











読んでいただきありがとうございます。

六月なのでま初めての投稿から3年目?を迎えました。

今年はとてもペースが遅くなりそうですがちまちま書いていきたいとおもいます。

次話も読んでいただけるとうれしいです。


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