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第54章

 九回、ここを最終回にしたい。あとアウト三つを無失点で切り抜ければ勝ちだ。


 相手は円陣を組んできた。四死球狙いと言い、要の愛ちゃんを狙う死球と言い、ここまで本気できてくれている。まあ合コン目当てなんだけど。


 僕もこのメンバーが好きになってきた。みんな個性的で、純粋で、いい子ばかりだ。父親じゃないが、あんなチャラ男共と合コンなんてさせられるか。


 リズがマウンドへ。打者は一番、牧田。チェンジアップは使えない。


 しかし初球、フォームはチェンジアップ。まずい、そう思ったら投げたのは速球だった。空振りの後、慌てて打席を外す牧田。二球目、今度はチェンジアップのフォームからチェンジアップで見送りストライク。


 そうか。愛ちゃんが「投球の直前までチェンジアップのつもりで投げろ」とか助言してくれたんだ。これなら対等な勝負ができる。


 しかし相手は上位打線、簡単じゃない。牧田は追い込まれながら、しぶとく一二塁間を割った。同点の走者が出た。


 二番の小野寺。危険な相手が続く。


 リズの初球、牧田が走った。モーションを盗まれ、簡単に二盗が決まる。リズはクイックを意識して球が高めに浮いてしまい、四球で小野寺を歩かせてしまった。


「タイム、ターイム」姉が大声をあげ右翼から走ってくる。出せと言うんだろう。


 姉はリズに走り寄るや否や、抱きついて「ありがとう。よくやった」と優しく言った。雰囲気からして、もう替えざるを得ない。


「投手と右翼、守備交替でお願いします」僕は主審に告げ、「姉、任せた」とだけ言ってベンチに戻った。


「まっかせなさい」


 姉はいつもと同じように頼もしかった。

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