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第55章

 無死一二塁で三番森田。状況はかなり悪い。それでも姉は少し休めたのか、見た目は元気いっぱいだ。


 セットから眼で二塁走者の牧田を制し、姉は愛ちゃん目がけて投げた。


 ミットから破裂音が響く。綺麗なスピンのフォーシーム。百三十キロ近く出てるんじゃないか?それがアウトローに決まった。ここにきて凄まじい球を投げる。クイックは殆ど犠牲にして、全力で投げている。


「やっぱ化け物だわ、舞ちゃんは」森田が打席を外して笑う。姉も笑う。


 二球目、走者が二人ともスタートを切った。重盗だ。またアウトローに速球が決まる。愛ちゃんはすかさず三塁へ完璧な送球。前田も無駄のないタッチでアウト。


 悲鳴が相手ベンチから上がった。姉から安打は難しいと判断しての賭けだったんだろう。それだけに、この失敗は大きい。


 森田は三球目、ワンバウンドのフォークで空振り三振。しかし振り逃げを狙って一塁へ走る。愛ちゃんが落ち着いてボールを握り直し、一塁へ送球。


 それをあろうことか、三田村が触れることもできずに後逸。打者と被って見えなかったか、それとも振り逃げのルールを把握できていなかったか。


「リズ、中継まで」姉が大声で叫ぶ。リズは慌ててしまい返球が高い。二塁走者の小野寺はもう三塁を蹴っている。


 姉が二塁とマウンドの中間あたりで返球をカット、バックホーム。愛ちゃんは追いタッチ。


「セーフ」主審の絶望的なコールが響く。同点になってしまった。愛ちゃんが素早く送球、二塁を狙った森田はアウトかと思ったが、タッチの際に佐伯さんがグラブを蹴られて落とした。

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