学園生活過去編 8
第三王子メラクが最終的な判断を下すのは、ザーマが当初想定していた時間よりもだいぶかかった。
愛する人の命がかかわっているのなら、普通はさっさと判断するだろうに、いつまでも悩み続づける王子をザーマは腹立たしく思っていた。
ノイエを自分の物とする。自分のものだけにしたいとザーマ自身の欲が暴走する。
王子を見かけるたびにザーマは王子に判断を迫る。徐々に追い詰められて王子は卒業パーティー前日にノイエを呼び出し、婚約解消を口にする。そして、当日のパーティーに一人参加する王子を見て確信した。
ノイエをこれで自分のものできる。
そして、その日、一人でいるノイエを探し出し、気づいてしまう。
自分が、なんと愚かなことをしてしまったかという事に、実の母と同じように自分に振り向いてもらうために最低、最悪の方法をとったことに気づいてしまう。
ノイエが子供の様に声を上げて泣く姿見て、ようやくにザーマは目を覚ます。
学園大図書司書長ヨミトの報告
・・・以上の点より、第三王子メラク様がノイエ・ノーキン子爵令嬢との婚約解消に至った理由は、神子による予知の力によるものと推測されます。順序としては、ザーマ・ハイビッシャー侯爵令嬢が神子から未来予知の内容を受け王子に接触し、当施設の研究成果の使用を許可し、その成果をもってこの行動に至ったと推測されます。
これは、幾度もメラク王子が極秘裏にザーマ令嬢と相談している姿が学園内で目撃されておりますので、まず間違いないと思われます。
そして、一番の肝要たる点として、何が予知されたのかという事ですが、いまだに解明できておりません。
しかし、ノイエ令嬢との婚約を解消するという事から類推するにノイエ令嬢が関わると思われます。
問題となるノイエ令嬢を早急に王国から追放することを提言いたします。
大図書の賢人ヨミトは、あの日から不安を募らせながら、ザーマの動きを注意深く観察し、王国上層部にあてて報告書を書き上げた。
大図書には建国以来、各地の文献を、様々な研究者の成果を収蔵するという大任を担ってきた。もちろん、一般の生徒が利用できるように、文学作品などの娯楽も扱っているが、一番の意義は研究者の為にある。
特に重要な研究として、未来予知の研究、他種族の魔法、秘術、他国の魔術研究、第2研究所で進められている悪魔の研究成果など、本来ザーマのような一学生に閲覧許可は下りない。王国が指定した研究者のみに開示されるものであった。
そんな場所に、ザーマは一人で秘中の秘である未来予知のことを聞きに来た。
ヨミトは驚愕した。
その場で帰れと言えなかった。
ザーマは侯爵令嬢であり、王国に5人しかいない神子の一人だ。しかも、第3王子がここに行けと紹介したというのだから、何かあるのだと忖託した。
そして、調べ終わると間髪つけずに、王子に伝えることがあると言われる。明らかに何かあったのだ。ヨミトは早急に王子を探し出し、ザーマの下に連れてくる。
ザーマとの短い話が終わり、部屋には、青ざめた死人のような顔色の王子がいた。
何度も、どういった内容なのか訊ねたが、王子からは言葉は返されない。
その様子に、ヨミトは最悪の事態を想定し、ザーマと王子の行動に細心の注意を払う。しかし、二人は度々会うが、いつも二言三言を話をしてすぐに分かれる。
そんな中で、ついに卒業パーティーが行われる前日なって、王子が婚約者であるノイエ令嬢を呼び出し、婚約解消を告げるという大きな動きが現れる。王家からの一方的な婚約解消という前例のない暴挙を行うという事は、これが未来予知に関する内容だとヨミトは理解して、王子を責め立てる王宮内に理由の如何を説明する報告書を提出する。
王家内部では、いきなり婚約解消などという暴挙を行った王子を責める声が上がるが、ヨミトの報告書が入ると、王家の為の行動なのだと理解され、わずかな謹慎を命じるだけの処分がメラクに下る。
学園に通っていた同年代の学生は、この軽い処分に王子が本当の愛を選び、王家が理解を示したのだと思い込み、かつて流れた熱愛の噂が真実だと周囲に風潮する。
この動きに、王家は便乗して、ノイエ自身に問題があったという風に噂を作り替え、家財の没収など工作を行い、ヨミトの提言通りにノイエを王国から追放しようとする。
ザーマは、その動きを知らずに、いつの間にか婚約者を失った第三王子の本当の愛の相手だとされる。
そして、その事を知ったのは、王国中に自分が第三王子に嫁ぐのだと発表された後の事であった
過去編終了
また時間が戻ります。




