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英雄譚  作者: 枕木きのこ
7/9

ナナ

 決闘は、間もなく訪れた。

 彼らの側から、招待という形で、僕たちは彼らの根城へ赴いた。警戒していた警備体制も、客人であれば丁重に扱う。僕らの心配をよそに、簡単に教祖まで辿りついてしまった。

 教祖は、若かった。まだ、二十代だろう。

 僕たちを見ると、まず、拍手をした。そして男に向け、

「すばらしい方だ。私のほかに、このように能力を授かった人間が居るとはね」おまけのようにこちらを見ると、「そちらはお弟子さんかな」

 そんなことを言った。彼は全く、僕を警戒していない。

「招待されたところ悪いが、私はお前を殺す気で居る。そんな相手を褒めたところで、何も得はしないぞ」

「結構です。私を殺そうといきがる人間が居ると言うのも、また一興。しかし誰もそれを果たせていない。あなたは、どのようにして私を殺すんですか?」

「悪いが」男は繰り返し、視線を教祖へ向ける。「お前の能力はわかっている。場に、影響を与えることができる。そうだろう? お前には、私の能力がわかるか?」

 しかし教祖は高笑いを上げる。

「これは驚いた、私の能力はばれてしまっているわけですね。ええ、たったそれだけの能力ですよ。そして、私にはあなたの能力は、わからない。これは、本当に、殺されてしまうかもしれないな」

 それは、馬鹿にしているわけではなさそうだった。そして何か秘策を持っているわけでも、なさそうに見えた。本当に、予測が的中し、そして彼は、本心から、殺されてしまうかもしれないと思っているかのような、そんな顔に見えた。

「余裕だな」

「余裕なんてありませんよ。私が力を使おうと思えば、この建物の中に居る全ての人間に影響が出る。もちろん、私自身にも、です。その中、私はあなたにどうやって勝てばいいのでしょうね。困ったことに、私はまだ目的を成し遂げていないと言うのに」

 この台詞は、こちらには好都合だった。

 何せ男も、なんてことのないただの人間だからだ。もう、何の能力も持っていない。

「ならばこういうのはどうだろうか。お互いに、能力を使わず、人間らしく、肉体で勝負をする」

「人間らしく、ですか」

 男は白々しく、嘘を続ける。

「私も能力を持って生まれた身。自分が異端である認識は、常にあった。自分は人間ではない何かなのだと。そう思わざるを得なかった。しかしどうだ。この、まさしく勝負をするために能力を与えられたかのような二人が、最後の最後、人間として誰もが持っているこの身で、決着をつける」

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