第10話 公開裁判
王城の謁見の間。獣人国の貴族と、ヴァルデンツ王国の側近たちが集まる中、ノーラ・セルデンの公開裁判が行われた。物的証拠は、アッシュの諜報部が、十年分すべて押さえていた。
ノーラの正体は、ヴァルデンツ王国の貴族たちにも知らされた。
そして――第二王子レオンも、ノーラの同伴者として、共犯の疑いをかけられた。
「私は知らなかった! セシリアに、騙されていたんだ!」
レオンは、必死に弁解した。
「私は、本当に、リリアーナを愛していた! セシリアの言うことを、信じすぎただけで――」
「黙れ」
ガレオン様の声が、謁見の間に響いた。
「貴様の判断ミスで、私のつがいは火刑にされかけた。獣人国としては、貴様も同罪と見做す」
「な、何――」
「だが、リリアーナの希望により、貴様の命は奪わない」
私を一瞥した。私は、頷いた。
「ヴァルデンツ王国に、要求する。第二王子レオン・フォン・ロイヤルマークの王位継承権剥奪。聖女セシリア――ノーラ・セルデンの、十年に渡る国家反逆・成りすましの罪で、生涯幽閉。これを、即時実施せよ」
「な、なぜ、私が幽閉に――」
「貴様の代わりに、貴族たちが疫病で死んでいるヴァルデンツ王国を、私のリリアーナが救ってやっているのだ。文句があるなら、治癒の魔石輸出の追加分を止め、上乗せ金を月額金貨三万枚に引き上げるぞ」
ヴァルデンツ王国の側近たちが、顔を見合わせ、青ざめた。
「お、お受けいたします! どうか、契約は予定通りに――!」
レオンが、最後に、私を見た。絶望と、哀願と、そして、ほんのわずかに残った、傲慢の混じった目。
「リリアーナ。私を、許してくれないのか」
「許しません」
即答した。
「あなたは、私を捨てただけじゃない。私の唯一の味方だった侍女エマも、火刑にした。あれを、許せると思いますか」
「エマ……? 侍女、一人くらい――」
「黙りなさい」
私は、彼に背を向けた。
「あなたの口から、エマの名前を聞きたくない」
レオンは、衛兵に引きずられて、謁見の間を出ていった。その後ろ姿は、もう、王子のものではなかった。ただの、惨めな男のものだった。
閉じていく扉の音を、最後まで、見届けた。仇の一人目。まだ、指の数ほど、残っている。
私の左手で、銀の指輪が、優しく光っていた。




