凛華の謎
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「黒龍王の臣下の霞夜が…蝋慧王子殿下…」
衝撃の事実に固まっていると淵慈様が、はいっと手を挙げた。
「そのことを確かめる為にも私達も黒龍国に戻ろうかと思います、ね?父上」
鷹人様も大きく頷かれた。
「ずっと淵慈と話していたのです。一国も早く国に帰って雷慈と共に国民を助けねば…と」
黒龍王は王配、旦那様に抱き付いた。良かった…取り敢えず龍一家は…良かっただ。
「さて、緋劉どうしようか?」
「えっと、色々とっ散らかっちゃったけど、整理すると霞夜も見つけ出さなきゃならない。蝋慧王子も見つけ出さなきゃいけない。やることは鱗をまだ持っているであろうこの同一人物の確保…だね。」
「そ、そっか、緋劉偉い!それが第一目標だね…あっ!そうだ」
私は緋劉の手を引くと耳打ちした。
「私ね、涼炎王のお世話をしたいのよ…可能なら白弦国にお連れしたいの…緋劉も手伝ってくれる?」
緋劉は目を丸くした後、私を思いっきり抱き締めた。
「わっ…へぶ…何?緋劉…苦しいよぉ…」
「やっぱり凛華はすごいっ…凛華こそ偉いよ!涼炎王、もし宜しければ私達と一緒に白弦国にお越し下さいませんか?涼炎紫龍国を再興するもよし、白弦国の相談役として留まっていただくもよし。俺と凛華が…翔緋と三鶴花がおりますのでご安心下さい」
涼炎王は目を潤ませると長衣で顔を隠された。
「翔緋っぃ…ああ、立派になって…親代わりとしては本当に嬉しいよ」
やっぱり涼炎王の涙腺の緩む所はソコだよね?緋劉はプリッと剥れた。
「何ですか!?人が格好良く話していたのにっ…!」
あんたね…格好良いとか、悪いとか体面ばかり気にしているから、一人で出来るもん!状態になるのよ?自覚ある?
と言う訳で涼炎王も龍の谷を出て行くことになった。
夕食は私が料理を振舞い、龍王達のお腹を満腹にさせた後、お茶を飲んでいる神龍王に気になっていた事を尋ねてみた。
「初めての転生の時に親から食事を与えてもらえなかっただと…」
そう言うと龍王達は皆が眉根を寄せた。神龍王が先程見せていた水晶を懐から出してきた。
「ここにお前が見てきた両親を映してみるがいい…声を聞いていたならばそれも思い出してみるがいい」
私はそう言われて戸惑った。
「で、でも…赤子の時だから何をされていたか、何を喋りかけられていたか分からなくて…」
「当時は分からなくても今なら分かるだろう。見たまま聞いたままを思い出すのだ」
神龍王に言われるがまま水晶に手を置いた。赤子だった自分…ぼんやりとした記憶だがそれを水晶に映していく。
『…って…どうしてこんなことに…』
若い女の人の声が聞こえる。
『村の術師も分からない…都の術師は神龍語魔術だって…?そんな私達でどうにも出来ない…』
今度は若い男の人だ。その男の人が私の近くに来る。
『なあ…本当にこの辺りにいるのか?』
『そう、言われたわ…』
女の人がそういうと男の人は私に手を出しかけて引っ込めた。
『見えないのに…どうしたらいいんだ!?娘が見えないなんて…こんなことあってなるもんか…』
「なんだこれ?」
緋劉が思わず呟いた声で一気に意識が覚醒した。
「これは三鶴花…お前、術を発動していたのか?見えなくする術…と言うと反射の術か」
「反射って術で空間を歪めて視覚から対象物を見えなくする神龍語霊術の高位術じゃないですか!?この当時…私、赤子ですよ?」
私はそう呟いた神龍王様と戸惑いながらこちらを見ている涼炎王を交互に見た。
「つまり高位の神龍語霊術を三鶴花は発動してしまっていて…ご両親からは姿が見えていない状態だったということ?それならご両親も戸惑っただろうね、だって子供がどこに居るのか分からないもの…よちよち歩いて移動しちゃったりしたら慌てただろうな…」
淵慈様の説明に、ストン…と納得した自分がいた。時々は話しかけられたりはしていた。しかし抱っことかはほとんどされた記憶がない。
だって見えないのだもの。親だって子供の顔や居場所が分からないんじゃ接しようがない。
私は震える手で水晶に触った。
また声と微かに映像が見える。
『お前よく触れるな…俺は怖いよ。もし触って…怪我でもさせたら…俺達じゃ治療もしてやれないじゃないか』
『でも、触るとね赤子の温かみは分かるのですよ。声も聞こえないなんてね…。高度な霊術過ぎて…誰も解術出来ないなんて…そんなことがあるのね』
『国の霊術師の面談はいつだ?』
『三月後だそうよ。兎に角この術に関しては極秘にしてくれって言われたわ』
『本当に他国からも狙われてるのか?』
『産まれた時に村の皆が奇跡の子だ、追憶の落とし人だ…って騒いだから情報が漏れたとか言っていたわ』
『俺達で国の保護がかかるまで何とかしよう』
声が途切れた…。緋劉と目が合った、段々核心に触れてきた。恐らく若い男女の声は両親だ。そこに複数人の声が混じる。
『解術出来ないですって?』
『じゃあ国も調べようが無い…って匙を投げられたってことか?』
『また捕まえようとする集団が来るのかしら…』
『村に居ると困るよ…出て行ってくれないか』
また両親だけの会話になる。映像が見えてきた。若い男女の困ったような顔が私を覗き込んでいる。
『国から支援金が貰えてて助かったわね』
『暫くここで隠れていよう』
『なあ…お前気づいてるか?妹羅は今…どこにいるんだ?もしかしてこの家から逃げたんじゃないのか?』
『そんな…妹羅?妹羅?いるなら物を投げて…地面に字を書いてぇ…』
複数人のおじさんの声がした。
『見失ったってどういうことだ。あれほど檻にでも入れておけと言ったのに』
『すみませんっでも呼べば来てくれるんです。まだ五才なんです…きっとその辺りに…』
女の人の声が途切れて…
皆が私を見ていた。そういうことか…私は赤子だが、三鶴花の時に記憶していた反射の術を無意識に使ってしまっていたのだ…。もしかすると三鶴花の死に際の感情に左右されたのかもしれない。
産まれた時から見えない私。触れば存在を確認出来るから、両親は赤子の時は世話はしやすかっただろう。勿論育ててもらっていたはずだ。
ところが歩き出して自分で移動し始めると、親は私を段々見失い始めたんだ…。恐らく歩き初めた3才頃から、そしてあの范師匠と会った日…私の術が解けたのか、勝手に解いたのか…。もしかすると
「范師匠に5才で保護された時に…無意識で翔緋の霊力を感じて…警戒を解いたのかも…」
「そうだな、村に近い所で保護されたって親父も言ってたし」
私は緋劉に聞いてみた。
「ねえ緋劉は知っている?私が保護された後、私の両親はどうなっていたのか…」
緋劉は頷いた。
「親父に後から聞いたんだけど村長さんと范さん達が小屋に踏み込んだ時はもぬけの殻だったんだって…。綺麗に片付けられていたから…恐らく凛華…えっと芙蓉を妹羅?を見失ったご両親と…国の人は…諦めてあの小屋から出て行ったんじゃないかな…」
私自身もその辺りは記憶が定かでない。何せ両親に気づいてもらえないので、子供過ぎてどうしていいのか分からなかったのだ。家には寄りつかずほとんど山の中で食料を探していた…記憶はある。
いくら私に言って聞かせてもまだ三、四才だ。歩き回って行方の分からなくなる見えない子供相手に両親も疲弊していたはずだ…。
「居るのだろうけど…見えない相手と会話するって…考えただけでも疲れるね、しかも相手は赤ちゃんだし」
両親の苦労が忍ばれる…おまけに他国から狙われる…と言ってたし。この古代語術を我が物にしようと…狙われても不思議はない。
原因が分かれば謎は解けた。全部私のせいだったのだ。両親は見えない私との共同生活で本当に困っただろうし、辛かっただろう。変わった術をかけてしまった私を連れてあの山小屋に逃げて来たに違いない。
恐らくではあるが、私を完全に見失ってしまったと両親は諦めて…悲しいけどホッとしたと思う。厄介な子供を探さずに…あの小屋を逃げ出したのだろう。
辛くて悲しいけど…誰だって解決策を見出せなかっただろう。唯一は文字を書くことだけど私はまだ文字を覚えて書くには幼すぎた…。
なんとか五才まで生きてこれたことを考えれば、言葉を憶えさせ…見えない相手に食事をさせ…両親は私を見捨ててはいなかった。私を見失わなければ…。
「凛華…」
「ありがとう緋劉…これで謎が解けた。私の術のせいだった…あははもう考えても仕方ないけど、両親に迷惑かけたな」
緋劉は何も言わず手を握っていてくれていた。
その夜、龍の谷に泊まったが、眠れずに廊下に出ると緋劉が廊下にいた。
お互いに無言で廊下に暫く佇んでいると、緋劉がポツンポツンと話し出した。
「もう時間が過ぎてしまったから、芙蓉…の本当のご両親とは話が出来ないけど、凛華には楼甘村に今のご両親がいる。親孝行は今からでも出来る」
「うん…」
「俺達だって生まれ変わって生き直している。芙蓉のご両親も生まれ変わっていると思わない?もしかしたら、漢羅少尉がお父さんで漢岱少尉がお母さんかも?」
「あっは…確かに二人共親みたいだね…」
「どこかに生まれ変わってるよ。だから会える人にはご両親かも…って接すればいいんじゃない?気休めだけどさ」
もうあの人達には会えない。
そうだね、ありがとうはこれから出会う人に伝えよう。
次の日
黒龍王の背中に乗る、乗れないで揉めて…またまた簀巻きにされて運ばれました。乙女の何かが減っていっている気がする…。そしてまた口から乙女の何かが零れた…。
簀巻きのまま丙琶についた。また簀巻きごとゴロンと落とされた。
黒龍王一家の三体の龍とその背に乗った涼炎王が丙琶に降りたのを見て、私達の帰りを待ってた人達は度肝を抜かれていた。
黒龍王一家はすぐに国に帰られた。雷慈王の顔は明るい。
「夫と息子を国の皆に紹介したいのだ。我が国は三体の龍が守護する!」
さて…と言う事で涼炎王を愁釉王と慶琉夏王にご紹介すると皇子達は大喜びだった。
「なんと…!では龍の加護を我が国にもたらして下さると言うことですか!?」
驚かれた慶琉夏王に涼炎王は艶やかな微笑みを向けた。
「三鶴花…凛華達が帰属している国ですし、私もお役に立てると宜しいのですが…」
「きゃああ!涼炎王なら勿論大歓迎ですわぁ!ねぇ!愁様ぁ!」
久々の漢莉お姉様の野太い悲鳴に皆がギョッとして漢莉…漢岱少尉を見た。
漢莉お姉様の好みの男なんだ…涼炎王。
「もう紫龍国もありませんので、王の称号は外してお呼び下さい」
そう言いながら涼炎王は漢莉お姉様に極上の笑顔を向けると、お姉様は真っ赤になった。涼炎王、もとい涼炎様、漢莉お姉様で遊んでいます?
と言う事で、涼炎様を囲んで皆に私達の過去に何があったのか…。そして黒龍国に何が起こっていたのかを話した。
慶琉夏王は聞き終ると目頭を押さえていた。
「緋劉も凛華も苦労をしたな…。しかし約五百年前だとまだ白弦国は建国したばかりか…私がその時代にいたのならばお力になれたものを…」
涼炎様は困ったような笑顔を向けられた。
「昔は人間の統治する国もそれほどの大国もなかったのです。もし下手に介入していて不死の者に目をつけられていたら…もっと被害が出ていたかもしれません」
「そうか…五百年以上前だと国として存在していたのって苅莫羽牟ぐらいじゃないですか?」
愁様の言葉にざわっと心が騒いだ。苅莫羽牟王国…。そういえば建国千五百年くらいの歴史ある国だった。
「そうか…苅莫羽牟軍が黒龍国に乗り込んで鱗を探したりして狼藉をおこなっていたのは…当時龍の国で起こった事を知っていたからか…」
螻 雪翔…雪様が唸るように呟いた後、緋劉に目を向けた。
「鱗は持っているな?失くしていないな?」
「はい、大丈夫です!」
緋劉は首から下げている巾着を取り出して、大きく頷いている。雪様は漢羅少尉(兄)を見た。漢羅少尉はゆっくりと話し出した。
「実はな昨日…苅莫羽牟から書簡が届いてな。明歌南公国と手を結び龍の力を独占するな…とか、すぐに龍の力を渡さなければ強硬な手段も辞さない…とまで言ってきているんだ」
私はびっくりして立ち上がった。隣に座っておられた涼炎様に制されて、ハッとして再び着席した。
「はっきり言うと脅しだな」
慶琉夏王はものすごい霊力を滲ませていた。怒っておられますね…。慶琉夏王の隣で洸兌様が鋭い目で涼炎様を見た。
「紫龍国の王よ、俺はさっきチビ達の話を聞いて確信したことがある。苅莫羽牟の後ろには…黒龍国の元臣下、霞夜がいるんじゃねぇのか?」
ああ!そうだ…そういえばそうだ。緋劉を見ると私を見て大きく頷いている。
「執拗に黒龍国に乗り込もうとしたり、鱗の行方を聞いてきたり…思えば最初からおかしな行動していたな」
愁様が呟いた後、涼炎様が「そういえば…」と言ったので皆が涼炎様に目を向けた。
「霞夜の前世は先程申しました通り、蝋慧王子殿下…という話でしたが…失念していましたね。どこの国の王子殿下なのでしょうか…」
「ああ!」
「そう言えば神龍王様に聞くの忘れてた!」
私と緋劉が叫んだ後に涼炎様は静かに手を挙げた。
「慌てない慌てない、今、聞いて見るよ」
そう言って目を瞑り…おもむろに
「神龍王様、今宜しいでしょうか?」
と喋り出した。あ!これが心話という龍同士で話す術かな?
「昨日お話頂いた霞夜の前世だと思われる、蝋慧王子ですが…どちらの国のご出身だったのでしょうか?」
涼炎様は、ギュッと眉根を寄せると「苅莫羽牟の王子でしたか…」と呟かれた。
「やっぱり…」
「そうか」
皆がドッと息を吐いてから個々で話し始めた。点と点が繋がった。
「緋劉…私もう一つ気になることがあるんだ」
「何?」
「神龍王様の所に霞夜がまた来て、『榛葉を見つけた』って言ってて、そのまま帰った時の捨て台詞憶えている?」
「捨て台詞…」
「もう手立てはあるので当てにはせん…だったか?」
涼炎様の言葉に私の周りに居た禁軍の、以前きりちゃんに辛辣な物言いをしていたお兄様の一人が、わかったぞ!と声を上げられた。
個々に喋っていた皆さんも静かになりお兄様の発言を待った。
「黒龍王が授けた鱗を使って永久の婚姻するつもりだったのでは?龍の霊力を秘めているのだから…」
「ええ、怖いわっ!」
「やだっ!」
美蘭さんと私の叫び声が重なった。そこまでする?いや…榛葉に対する妄執は計り知れない。
「不老不死…より永久の婚姻に使ったのか。うむ、確かに永久の婚姻は膨大な霊力さえあれば術自体は難しいものでもない。神龍王様も言っていたが…永久の婚姻とはお互いが記憶を持って生まれ変わるだけで、互いの霊力を認識し合えるという特質以外はこれと言った強制力を持たない術なのだ。極端な話、会いたくなければ避けていれば何度生まれ変わっても何も起こらない…自分達で起こさない限りは何も縛りは無い」
「でしたら…そんな術かけたって思い合っていなければ無駄ではないですか?」
伶 秦我中将がまた夢のないことをズバッと言ってきた。美蘭天女と漢莉お姉様、おまけに梗凪姉様にまで睨まれている。
「ちょっと、秦ちゃん!乙女なら好いた方と永遠に添い遂げたいと思うものなの!その、気持ちの悪い王子は絶対許されないけどっ…誰だって生まれ変わってもまた愛し合いたいと思うものなの!」
と、言って洸兌様と涼炎様にウフフ…と笑いかけた漢莉お姉様…。別の意味で怖い。洸兌様は見えない何かをパパッと払う仕草をした後に、手を挙げられた。
「取り敢えず~苅莫羽牟に潜らせている密偵に霞夜?でしたか、まさか生きているとは思えませんが不老不死になっている可能性も含めて探らせます」
「そうしてくれ。苅莫羽牟には龍の力とはすなわち、過去の膨大な知識と歴史を受け継ぐことなり。私達はその知識を各国に開示する準備もある…と伝えておくか。実際涼炎様に現在は忘れられている神龍語霊術の術式や過去の歴史などのご存じの事を皆にご教授頂きたいですし、何も間違った返答でもないしな。苅莫羽牟の牽制にもなるだろう」
慶琉夏王…さすがです。この短時間でこの対応力すごいね。チラリと横を見ると緋劉が憧れてます!みたいな顔をして慶琉夏王を見詰めていた。よし、頑張れよ!
と言う訳で…丙琶の宿泊所を一度締めて皆で燦坂に戻ることになった。
黒龍王が元に戻られたことで、異形のモノがほとんど見かけられなくなったからだ。
さて今は皆で夕食を頂いています。ようこそ涼炎様!の食事会を開催する為に、燦坂に帰るのは明日になりました。
「いやいや、凛華も料理が上手いと思っていたが、美蘭の点心も美味しいね!」
「お褒めに与り光栄ですわ」
美蘭さんは褒められて真っ赤になっています。しかし涼炎様めっちゃ食べますね…。実際は大きな龍だからかな?見た目細身の美青年なのにね…。
「でもよ、その気持ち悪いおっさんが鱗で不老不死になってたとしてさ、じゃあ、あの異形のモノはなんだっていうんだろうな?」
洸兌様が春巻きをモグモグ食べながら緋劉に聞いてきた。緋劉はちょっと考え込んでから顔を上げた。
「不死の血肉を食べれば食べたものも不死になるって聞きましたけど…俺が戦ったことのある不死の者とは違うんですよね、異形のモノって…なりそこないみたいに見えます」
「ああ分かる~不死の者って見た目普通なんですよ。人は人で…私は動物とかが不死になっているの見たこと無いわね…。ただ不死になる為に一回死んでいるのか…臭うんですよね、死臭…」
洸兌様はぶっとおかずを吹いた。
「食べてる時に食欲落ちそうなこと言うな!」
自分から話題振って来たくせに…。洸兌様めっ!
「なあなあ、緋劉!龍に乗った感じどんなだった?」
そわそわした感じの隗兌君が卓の向こうから身を乗り出して来た。
「背中に乗せてもらった感じだと風の抵抗はないんだよ。多分術で防御してくれてたのかな~」
「私は簀巻きの記憶しかないけどね…」
「凛華の場合は自業自得だろ?兄ちゃんに簀巻きにされる前にゴネてないで乗れば良かったんだよ」
「おおぅ?何だよ隗兌君よぉ~?やるのかああん?」
私と隗兌君は二人で裏庭に飛び出した。
「年下のくせに生意気だぞ!」
「私の方が軍で先輩よ!文句あるか?」
一発取っ組み合いでぶっ飛ばして挙げりゃ気が済むかね(参照:緋劉)と思って身構えた時に、裏庭の木戸から誰かが飛び込んで来た。
「きゃああ…」
ものすごい勢いで体当たりをされて胸の当たりを弄られた。
「いやああ…」
「凛…。」
必死に暴れていた時、視界に隗兌君が別の誰かに近づかれて体を触られているのが目に入った。
「ひ、緋劉ーー!」
叫んだと同時に私の上の誰かがぶっ飛び。私を抱き締める腕にしがみ付いた。緋劉!
「大丈夫かっ凛華!?」
「うんうん…」
「ってめーうちの弟になにしやがんだー!」
洸兌様が隗兌君の体の上にいた誰かを蹴っ飛ばした。すると蹴り飛ばされた…男だろうか?は、すぐに立ち上がりあっと言う間に消えた。私を襲っていたヤツ…男だろうも消えていた。
「体触られたぁー」
隗兌君の嘆きにギョッとする…私も無いに等しい胸を触られたし…胸?思わず胸の当たりを触る。
「どうした?り、凛華も胸触られたのか!?」
「何だと!?どういうこった!」
洸兌様がぐわっと怒った。私は緋劉と洸兌様の顔を見て泣きそうになった。
「う…鱗…鱗が無い、さっきので盗られたみたい。」
「ええ!?」
どうしよう、涼炎様から頂いた鱗を取られてしまいました…。




