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緋華の追憶  作者: 浦 かすみ
紫の龍

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23/32

異形と不死

私の気持ちは地の底を這っていた。


龍の鱗を取られてしまった…。そのことで先程から涙が止まらない。


「チビ~もう泣くな、な?裏口の結界が緩んでいた可能性もある。俺の失態だ」


さっきから洸兌様によしよしと頭を撫でられている。


「鱗持ってないのにどうして俺まで体弄られたんだよ…」


隗兌君がげんなりした顔で緋劉と美蘭さんを見た。


「体躯が似ているからな…緋劉と隗兌は…。緋劉に間違われたんだろう」


凱 霧矛…きりちゃんがユラリと戸口に現れた。き、きりちゃんっっ…ぶわっと涙が溢れた。


きりちゃんは手に鱗の入った巾着を持っていた!きりちゃんは珍しく素早く歩いて来ると私の首に巾着をかけてくれた。


「鱗は無事。賊は確保した」


「ぎじじゃゃぁぁん…」


思わずきりちゃんに抱き付くときりちゃんは優しくフアッと抱きしめてくれると


「もう大丈夫だから…」


と、男前な低音の良いお声で囁いてくれた。これは!普通の女の子は落ちますわ、はい。


私が禁軍の強さも美しさも一番手二番手の二人に囲まれてチヤホヤされている時に、緋劉は青ざめた表情で隗兌君に頭を下げていた。


「ごめん、隗兌」


「なんで緋劉が謝んの?悪いのは狼藉者のあいつら!凛華と俺の珠の肌を触ったあの糞野郎共なの」


美蘭さんが隗兌君の背中を撫でている。


禁軍のお兄様と話しをしながら慶琉夏王が食堂に戻って来られた。


「おお、二人共怪我などをしていないな?賊も捕まえた、安心せい」


「やはり、苅莫羽牟の手の者かな?」


涼炎様がそう聞くと愁釉王が漢羅少尉と秦我中将とを伴って外から帰ってきた。


「念のために明歌南にお伺いした所、苅莫羽牟側からの動きはあの書簡が届いた以外は特に無いそうだ。やはり、凛華達が鱗を持っていると確信して、狙ってきたな」


愁様の言葉にまたドヨンと気持ちが沈む。私のせいで皆さんに迷惑をかけてしまった。鱗を涼炎様にお返しする?ううん、これは涼炎様から頂いて…臣下の証だけれど…私にとっては緋劉との気持ちを繋ぐ物であり、涼炎様との親子の絆でもあるんだもの、簡単には返せない。


「涼炎様、俺…もし可能なら鱗を体に入れる術をして頂いても構いません。そうすれば少なくとも奪われてたりしませんし…」


と緋劉が涼炎様に訴えているけれど、私は一つ懸念していることがあり、体に取り込むのは今はしたくない…。


すると涼炎様もチラリと私を見てこう言った。


「緋劉はそれでも構わないと思うけど…凛華が困ると思うよ?もう少し大人になるまで待ってあげてなさい」


「大人?」


「鱗を取り込んだらそこで成長は止まるよ?お前だけ少年のままで…凛華が年上のお姉様になっちゃったら、それこそ見た目に良くないし…。凛華はもう少し大人になりたいよな?」


皆の視線が私の頭からつま先までを舐めるように見詰め、主に胸の辺りに視線を感じ始めた時に気が付いた。


「り…涼炎様っ!当たってますけど、こ…こんな所で言う事ないんじゃ…」


「確かにチビは今、成長が止まったら色々やべぇ…色々な」


「洸兌様っ!分かってますけどいちいち言わないで下さいよ!」


「ちょっと洸ちゃん?女の子になんて言い方なの!」


美蘭天女が私を引き寄せて頭を撫でながら、そのふくよかなお胸に抱き込んでくれた。ボヨンとお胸が当たります。私もこれになれるかな…。なりたい、その為にはどんな努力も致しますっ!


「美蘭さんっ私も大人な女性になりたいので秘訣を教えて下さいぃぃ!」


「まあまあ、年齢が上がれば張りも出て来るものだから、ね?」


と梗凪姉様が取り成してくれたけど、姉様だってまあまあある方だ…。羨ましい。


「凛華…ゴメン」


「謝られるとなんか惨めよ!私激しく惨めになるよ!」


緋劉がしょんぼりしながら、私の手を取った。


「でも三鶴花だってそんなに大きくなかったし、俺、胸で凛華の事選んでないから…」


私は最強の風魔法と重力を加えて緋劉をブッ飛ばした。ヒューンと緋劉が落ちた先には漢莉お姉様が待ち構えてて、その胸筋に抱き締められていた。


「こええぇぇ、こえぇぇぇ!俺、凛華と殴り合うのやめるわ!」


と隗兌君が急いで私の背後に回り…その瞬間、私の舎弟になった…。


「そりゃそうとな、明歌南の空守公子殿下が白弦国に留学して来られるそうだ」


よっこいせ…と椅子に座り、漢羅少尉は私に向かってそう言いながら微笑んだ。


「神龍語霊術をもっと学びたいそうだ。お前や緋劉から教わるなら、構わないと大公様も許可されたそうで宜しく頼むよ」


「空守公子殿下?」


と隗兌君が聞いてきたので説明してあげた。


「対岸の明歌南公国の第二公子殿下なの、十四才であんた達と同い年よ。霊術が得意で実際、治療術は素晴らしかったわ。公子様だけど気さくな方だから仲良くしてあげてね」


と言う訳で四日後


空守第二公子殿下は本当に留学して来られた。来た早々、涼炎様がおられることに大感激して緋劉と、すぐに仲良くなった隗兌君とで龍を囲んでキャッキャッしていた。


「あいつあんな調子で軍の試験受かるのかな…」


そのわちゃわちゃしている弟の姿を見て、お兄様の洸兌様が気にしておられたので…愁釉王にご相談すると


「おお、それな。涼炎様に是非にとお願いしようと思っていたんだ。凛華達が神龍語霊術を操れることが霊術師団に知れ渡ってな。師団に指南に来てくれるように催促されていたのだよ〜。だからいっそ、涼炎様を筆頭に学舎を設けてみようか、という話になってね。第一門下生は空守殿下に決定だな」


とにこやかに笑われた。


それを聞いた涼炎様はすぐに了承し、まず手始めに隗兌君と空守殿下に武術から霊術まで教えてくれることになった。めっちゃ喜んでいる空守殿下と洸兌君。そんな二人を私と緋劉は何とも言えない気持ちで見詰めていた。


「あ~あ皆知らないから…穏やかに見えて涼炎様、指導とかになるとめっちゃ怖いのに」


「知らぬが仏よ。緋劉は余計な事を言わないようにね」


燦坂に戻って来た私達は、涼炎様の学舎起ち上げのお手伝いをしていた。


『第壱特別遊撃隊』は異形のモノが事実上壊滅したので、形だけを残して解散し、梗凪姉様は愁釉王に輿入れするために除隊された。


「お嫁に行ってもここに遊びに来てもいいかしら?」


と梗凪姉様に聞かれたので、美蘭さんと私は「勿論!」と答えて三人で泣きながら抱き合った。嬉し涙だ。


それから数日が過ぎたが、隗兌君と空守殿下は涼炎様にしごかれて毎日ヘロヘロだった。


「つーかさぁ、龍に戻ったでかい涼炎師範の炎なんて避けれる?ええ?もう死ぬ気で避けてるけどさっ!」


「人間の足で避け切れないよ。その為の防御術だろ?霊術防御の術式…覚えてるか?」


今日も隗兌君は桃饅頭をモグモグ食べながら休憩中の緋劉とそんな話ばかりをしている。


因みに


涼炎師範は今は霊術師団の術師の皆様に講義の授業の最中だ。元龍王は毎日忙しい。私達はその涼炎師範のお手伝いにこれもまた結構忙しい。


この遊撃隊の詰所内の広間を学舎の教室として使うというので、今はお掃除の真っ最中だ。そして内装工事が済めば、春から新規門下生を募集する予定なのだが、市井の金持ちのお子様から他国の貴族の子供まで、ものすごい人数の事前申し込みが殺到していて、そのあまりの数に皇帝陛下の栢祁羅帝(はくぎらてい)


「もうさ、学舎の横に塾生の寮作っちゃえば?」


と言ったらしいので、遊撃隊の詰所の横に寮の建物を急遽建設中なのである。


「隗君、注文していた野菜が厨房に入って来たから運ぶの手伝って」


「は~い」


美蘭さんが隗兌君を呼びに来たので隗兌君は立ちあがった。今、工事に来ている職人の方々に詰所の空き部屋を解放して、お食事を提供したり休憩所に使って頂いている。私達も昼食の炊き出しは総出で配膳係をしているので今はその後の休憩時間だ。


「緋劉~後で剣術の稽古付き合ってよ」


「うん、いいよ」


そうそう、隗兌君はまだ正式隊員ではないので、軍の寮に入れないのでこの詰所に住み込んでいる。夜は一人では流石に不用心なので男性陣、主に緋劉と禁軍のお兄様とかと一緒なのだが、なんということか空守殿下も時々泊まりこんでいるらしい。そして一緒になって夜な夜な喋り倒しているとか…。しかし先日、夜ふかしが過ぎて、見回りに来た伶 秦我中将に見つかって廊下に立たされていた…と聞いたんだけど?まさか空守殿下も?まさか…ね。


いよいよ試験が近づいて来たある日


朝議から戻って来た愁釉王が若干渋い顔で皆の前に顔を出した。


「もうぅ…どうしようか、困ったぞ」


「どうしましたか?」


漢羅少尉がそう声をかけると愁様はうん…と小さく返事をされた。


「霊術師団長と医術師団長と涼炎様の三人がな…。異形のモノを見に行くと言ってきかないんだ。確かに黒龍国にはまだいるかもしれんが…」


「なんでまた?」


漢莉お姉様が聞くと愁様は美蘭さんの入れたお茶を一口飲んで大きく溜め息をついた。


「涼炎様が先日討伐した異形のモノのご覧になられてな、黒龍王の鱗を使った術式…不死の呪いだと断定された」


「ええ!?」


皆が驚愕の声をあげた。愁様はうんうん頷きながら皆を見た。


「雷慈王の鱗を使って異形のモノが動いている…とするとだな。霞夜…つまり蝋慧王子殿下は不老不死になろうとしたという可能性が高いということだ。永久の婚姻は諦めたのかな?」


愁様は首を捻っている。


すると、あの…と緋劉が手を挙げた。皆が緋劉に注目する。


「その異形のモノなんですけど…俺も凛華も同じ意見なのですが、不死の呪い…というか本当に不死なら剣で切ったくらいじゃ死なないんですけど、だから本当の不死の者じゃなくて未完成なんじゃないかって…」


「未完成…つまり術を失敗したと言う事ですか?」


眼鏡をキランと光らせて伶 秦我中将が緋劉を見た。緋劉は秦我中将に一度頷いてから言葉を続けた。


「俺達の知っている不死の者って、もっと原型を留めているっていうか…見ただけでは不死の者だと気が付かないぐらいです。ですが異形のモノって本当に異形じゃないですか?何か違うとしか…」


「鱗を飲んで不老不死になるには何か条件があるのかな…」


私の呟きにガタンッと秦我中将は椅子から立ち上がった。


「少しお待ちください。」


秦我中将は部屋を出て行くと、しばらくして籐籠を抱えて戻って来た。


「ここ二十年間に行った異形モノの検体の解剖記録です」


秦我中将は記録を読みながら右、左と記録を二つに分けて置き出した。


右側が圧倒的多いけど…なんだろう?秦我中将は右側の多い方の解剖記録を取り上げた。


「こちらの多いほうが、直接の死因は外傷ではないものです。そしてこちらの少ないほうが討伐の外傷が原因で死亡したものです。分かりますか?異形になっていても死にはしない…。異形になると身動きが取れないので病気…あるいは食事が取れずに死亡してしまう。つまり異形の元になる何かに憑りつかれてしまうので異形のモノになってしまう」


異形の元…。


「つまり異形に取りつかれてもしばらくは異形の体内と言いましょうか?で生きていられると言う訳です。紗衣さんがおっしゃっていましたよね?以前は異形を術師が祓っていたと。そして黒龍王も凛華も祓っていましたよね。呪詛を祓うとどうでした?」


「私が遭遇した異形は祓った後、猪は生きていたし…鹿は死んでいた。人も死んでいました…」


「うむ、取り込まれていた時間の長さによって生存の有無が決まっているようですね。やはり異形の元のような何かに憑りつかれて異形になる…が正解でしょうね」


「その大元の異形の親玉?みたいなのは見つかっているのでしょうか?」


緋劉がそう聞くと秦我中将は首を捻っていた。


「もしかすると…ですけどその異形の元が霞夜という可能性もあるのではと、私は仮説を立てています」


あの黒くてブヨブヨしたのが霞夜?性格も気持ち悪い人だったのに更に見た目にも気持ち悪くなるなんて…。


「雷慈王にお知らせしておこうか、もしや国内に異形の親玉がまだいるやもしれん。それに万が一取り込まれても早期に祓えば助かる可能性も分かったしね」


愁様はそう言って秦我中将と急いで出て行かれた。


「俺、異形のモノ見たことないんだけど、どんななの?怖い?」


隗兌君がそう呑気に聞いてきたのでクケケ…と笑いながら隗兌君の肩を掴んだ。


「黒いブヨブヨした大きな塊がゾワリゾワリと這い寄って来るんだよぉぉ~おまけに臭いが臭いのなんのって…」


「ねえ、凛華…今思い出したんだけど…。その生きている猪を祓った時にさ、生首を持った不死のおじさんが居たよね…」


緋劉が真剣な顔で聞いてきたので、あのおっそろしい光景を思い出してガクブルした。


「ぎゃあやだっ思い出したじゃない、気持ち悪い…」


「ええ!?生首ぃ!?こわっ怖すぎるよ!」


私と隗兌君が叫んで緋劉を見ると、緋劉も真っ青になって腕を摩っていた。


「俺の思い違いならいいんだけど、あのおじさんさ、霞夜に似てない?」


なんだって?


「蝋慧の生まれ変わりの霞夜…あの生首おじさん…霞夜に似てたよ」


言われてみれば、これと言って特徴の無いおじさんだったが、似ていたか?自信が無い。


「兎に角、これ報告しておこうよ。涼炎様と愁様にも…」


私と緋劉、隗兌君は三人でまずは涼炎様の元へ押しかけた。偶然にも涼炎様が講義を終えられて事務所におられた。霊術師団のあのふくよかなお姉様とお茶をしている所にお邪魔して説明すると


「なんだって?じゃあその場所に霞夜が居たということか…。これは慶琉夏王と洸兌にも話さねば…」


とまた皆で今度は禁軍の詰所にお邪魔した。幸いにも慶琉夏王と黒龍国でご一緒だった禁軍のお兄様達がいらっしゃった。


あの時の生首おじさんが霞夜ではないか…との話をすると慶琉夏王とお兄様達は目を見開かれた。


「何だって!?それは本当か?」


慶琉夏王に詰め寄られて緋劉はオタオタしていた。私に向かって何度も助けて~助けて~と視線を投げかけてくる。一人で出来るもん!じゃなかったのかい、緋劉さんよ?


そんな緋劉を見かねて自称お父さんの涼炎様が間に入られた。お父さん甘やかし過ぎ…。


「私達が霞夜の姿を確認したのは、神龍王の記憶を映し出す特殊な水晶越しなのです。その皆が見た不審な者が霞夜かどうか…直接見て頂いて確認して頂くには神龍王のご助力が必要なのですが…」


「ならば神龍王にお頼みして頂けますか?」


だよね、慶琉夏王。涼炎様はすぐに心話で神龍王にご連絡して下さった。


「神龍王、ご無沙汰しております。実は…」


事情を説明すると神龍王はすぐに龍の谷を出て白弦国に来て下さる…とのことだった。


白弦国の宰相以下役人の方々は大慌てだった。龍の最高権力者…龍の長老、龍の神をお迎えするのだからだ。


「そういえば、神龍王っておいくつなんでしょう?」


「年齢…という概念はないよ?だって私が子龍の頃からアレだもの」


と涼炎様に言われて確か涼炎様は二千六百才くらいだから…ひええ…。さすが神様。


神龍王の到着を待っている間に洸兌様が禁軍の詰所に帰って来た。


「おいっ聞いたぜ、あの生首のおっさんが霞夜らしいじゃねぇかって!」


生首のおっさん…とんでもない呼称だね。すると涼炎様が立ち上がった。


「来られたよ」


「ええ!?三十分刻くらいしか経ってないけど…お迎えの準備って間に合うの?」


涼炎様の後を皆でゾロゾロとついて行った。役人の方々が走り回っている。間に合う?


「皇宮の中庭なら広さ的に降りて来られやすいかな」


とか涼炎様は言いながら、中庭に移動された。


「ちょっと~神龍王が来られるんだって!?」


浮かれた空守公子殿下が走り寄ってきて男の子三人でまたわちゃわちゃしている。煩いって怒られるわよ?


そうして皆で中庭に立ち、何となく虚空を見詰めていると…


「龍の谷って案外近いのかな~」


と、のんびりした声が近くで聞こえて振り向くと、愁様と同じ髪色のもう少しお兄さんな顔立ちの綺麗な男性が私達の後ろに立っていた。


周りの人達は皆慌てて叩頭している。ま、まさか!?私も慌てて叩頭した。


「あ、帝も来られたのですか?」


と、慶琉夏王がかる~くそう問いかけて


「うん、ご挨拶しておこうかと思ってね~」


とか言って栢祁羅帝(はくぎらてい)はニコニコと笑っておられる。この感じ愁様に似ている…と思う。


「来られました」


涼炎様の声に皆が空を見上げた。どこ?やがて空に黒い点が見えて段々大きくなり、バサァ…と上空を旋回する大きな青龍が現れた。


「わあっ格好良い!」


「かっけーー!」


「綺麗!」


皆が感嘆の歓声をあげた…そしてヒューンと空中から何かが降りて来て、人型になった神龍王が中庭にちょこんと立っておられた。相変わらず可愛い…。そしてトトト…と小走りに駆けて来ると相変わらずの渋い声で


「何だか人が多いの?」


と答えられた。皆ずっこけてたと思う。まさかのこんな可愛い男の子が神龍王で尚且つこんな渋い声?だとは思わなかったに違いない。


「お呼び立てして申し訳ございません」


「良い良い、お前の看病をしなくなって暇を持て余していたのだ。私もこっちに戻るかのぉ~」


とか可愛い顔の渋い声で話しているこの感じ懐かしい。


「神龍王お久しぶりです」


「おおっ童達、元気か?ん…榛葉!?」


神龍王がいきなり叫んだので、ハッとして榛葉と呼ばれた洸兌様を見た。呼ばれた洸兌様は首を傾げている。


「やはり、榛葉に似ておりますか?」


涼炎様にそう問われて神龍王はハッとしたように私達と洸兌様と隗兌君も見ている。


「ああ、これはスマンの。既知の者に似ておったのでな」


とおっしゃった神龍王の前に栢祁羅帝が静かに立たれた。


「御前を失礼致します、白弦国の栢祁羅と申します」


神龍王は目を細めた後、微笑んだ。


「白弦国の皇帝陛下か…ふむ、まだ童だの?」


童…と言われた帝は一瞬目を丸くされた後、微笑んだ。霊質が明るく跳ねておられる。


「はい、神龍王に比べてそれはそれは童で御座います」


「うちの涼炎が世話になっておるな」


「いえいえ…」


と帝と神龍王は歩き出したので、皆で後をついていく。


「嘘だろ?あれ、本当に龍の神様なの?」


「可愛いけど、涼炎師範より年上なのですか?」


「しーっ静かに!確実に二千六百才よりは上だから!」


隗兌君、空守公子殿下、緋劉の十四才三人衆はゴソゴソと話しながら歩いている。ちょっと…本当に怒られるわよ?すると案の定漢羅少尉に緋劉と隗兌君は拳骨を食らっていた、流石に岩(兄)も他国の公子殿下には手を挙げないようだ。


やがて大広間に栢祁羅帝、慶琉夏王、愁釉王、黒龍国でご一緒だった禁軍のお兄様達と洸兌様と四天王の皆様と童達(四人)は涼炎様と共に神龍王の水晶を見詰めていた。


「では映すぞ」


神龍王の手の中の水晶に人物が浮かび上がってきた。


「これが霞夜の姿だ」


洸兌様とお兄様達が覗き込む。


「確かに背格好このような感じでしたね」


「似てるな…」


緋劉も私も水晶を覗き込んで見た。確かに普通のおじさんだけど、顎の張った感じとこの怖い目は似ている。


「似ているな」


「そうだね」


神龍王は一つ息を吐くと


「榛葉も見てみるか?」


と洸兌様に声をかけた。洸兌様は頷かれた。隗兌君も近づいて来て覗き込んだ。


そして水晶の中に倒れて目を瞑っている榛葉の姿が現れた。


「これ俺?似てる?」


「ホントだ兄ちゃんに似てる!あれ、てことは俺も似てるのか」


「そうだな、お前達に榛葉は似ておるな」


確かに似ている…似ている…ん?そういえば…。


突然思い出したことでアワアワしながら緋劉を見てしまった。


「どうした?凛華…」


これ言っていいのかな?言ったら洸兌様激おこしそうなんだけど…。


「あの…私その霞夜っぽいおじさんを見た時に…そのおじさんが木の陰からどこかを見ているな…と思って、そのおじさんの視線の先を見てみたんですよ」


「うんそれで?」


涼炎様が相槌を入れてくれた。


緋劉が思い出そうしているのか頷きながら目を瞑っているのが視界に入った。


怖いけど…言うしかない!



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