回想 樹都の姫君 6
「リリアンローゼ、大変だ!ビュリーが怪我をっ!」
ユグドラシルへの奉納舞をしていたリリアンローゼの元にエルフの男が走って来た。
ビュリーと一緒に人間の国の一つと交渉についていったメンバーの一人だ。
彼自身も薄いが、全身にいくつもの傷を負っていた。
「一体何が!?」
頭がついていけないリリアンローゼ。
「今はとにかく彼を診てやってくれ!」
自分の怪我を省みず、リリアンローゼの手を引いていく。小さな広場に今回ついていったメンバーが治療を受けていた。
「リリアンローゼ!早く、こっちだ」
そのうちの一人に呼ばれるがままについていくと地面が赤黒く染まっていて、その中心にいたのがビュリーだった。
「俺達を逃がすために殿になって戦っていたんだ。頼む、助けてやってくれ!」
現実を受け入れられずにいたリリアンローゼ。
「矢傷がひどい、こりゃ、左腕は落とすしかないね。腹部の傷も深い、急がなきゃおっ死ぬよ。役立たずは引っ込んでなっ」
ユグドラシルの治療師が叫ぶ。
「何を、何をすればいいですか?」
ビュリーが死ぬ、その言葉がリリアンローゼを動かした。
「腹部は私がやる。腕を落として傷口を焼きな」
そう言いながらすでに腹部の治療にかかっている。巧みな手捌きを見せながらも焦りがうかがえるのはよほどギリギリのところなのだろう。
「精霊たち、お願いを聞いて!」
広場に恐ろしいまでの魔力が満ちる。
「ウインドカッターでここから切り落として、火で焼いてくれる?」
緑の鳥の姿の精霊と緋色の獅子の姿の精霊に話しかける。
「ならばわらわはショック死せぬよう身体を留めると同時に血流を無駄にせぬようコントロールしよう。」
透き通った女性型の精霊がそう応える。
肉を焼く臭いに気を失いそうになりながらも耐えるリリアンローゼ。酷く時間が長く感じられた。
「思い切りのよい娘よ。とりあえずやれるだけのことはやった。あとはコヤツの生命力しだいよ」
数時間後、治療師は後片付けをしながらそう言った。
「ユグドラシル様、どうかビュリーを助けてください」
それから三日三晩にわたり、ビュリーが目を覚ますまで神楽を舞い、ビュリーと交代するように意識を失ったリリアンローゼ。
…目を覚ましたビュリーにとって、体に良くない目覚めであった。




