双雷剣”ジェミニ”
「・・・出来た」
リリアムの手にあったのは二振りの短刀・・・、いや棒手裏剣であった。鍛造で丁寧に作られていたが、それ以上の変化は見られない。
柄頭にひもを通すような穴が開いているが、携帯性に優れる程度といったところか。
即席の鍛冶場である洞窟を出て、傾けるように月にかざせば、
艶やかな刀身に複雑な紋様が浮かし彫りになっている。
一見すれば実用目的ではない鑑賞用のモノであるが、
リリアムもその師も実用主義である。
リリアムは刀身に異常がないことを確かめて"刃掛"に”二振り共”収めた。
「わからんな。それはなんなのだ?以前言ったと思うが、条件は切断用途の武器である。それはどう見ても・・・はっ、そういうことか。小癪な。よかろう、一振りとして認めようではないか、その性能を披露せよ」
自身を覆う黒幕のような視界が開かれ、洞窟を出てすぐそばの平地の風景が広がる。
先ほどはなかった異物と共に。
「よぉ、ダークエルフのお嬢ちゃん、探したぜ。まさかこんなところで打ってるとはなぁ。」
軽薄そうな男、但し瞳には残忍さを宿しており、
何人かすでに手をかけているであろう。髪は荒れていて、衣服にも汚れや擦れが目立つが、元は上等なものだったことが伺える。
「手間をかけさせたんだ。それなりの成果をもらわねぇとなぁ。あんた、有名な鍛冶屋の唯一の弟子だってなぁ。俺の元で剣を打つってんなら可愛がってやるぜ」
下卑た笑みを張り付けながら男が近づき、リリアムは棒手裏剣を両手に一振りずつ構えた。
「へぇ、やる気なんだ。まぁいいや、一度ダークエルフってのにこの剣を突き刺して見たかったんだァアア」
以外にもその踏み込みは鋭い。
こちらの武器が投擲武器二振りと見てか、笑みを深めたまま突っ込んでくる。
リリアムは相手の顔めがけて右手の棒手裏剣を打つ。
男は首を傾げてかわし、背後の木に意外と軽い音を響かせて刺さった。
もう一振りを打つ隙も見せずに男は斬りかかり、
いかに丹念に拵えたとはいえ、男の手にある剣を受け止めるにはあまりにも頼りなく、
「もらっt」
男が勝利を確信して叫びきることなく、首が転げ落ち、慣性のままに身体は前に倒れ込んだ。
双雷剣”ジェミニ” ランクC
二振りで一つの棒手裏剣。
真価は柄頭の雷の魔石の欠片に魔力を流すことにより発揮される。
柄頭の二つの輪を繋ぐ雷を収束した細い糸を形成する。
それ自体の切れ味鋭く、勢いをつけて引っかかればそれだけで簡単に腕一つ切り落とす。短時間であれば手元から離れていても”雷糸”を形成した状態を維持できる。
ランクが低いのは棒手裏剣自身の強度が低く、使い手に技術が求められるため。
「これで性能は示せたかしら?」
「よかろう。相変わらず面白いことを考える奴だ。次も楽しみにしておるぞ。」
しかし、一つ条件を達成したにも関わらず、リリアムの表情は苦々しいものだった。
「ここもそろそろ潮時かしらね・・・」




