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千の刃のリリアンローゼ  作者: 夢辺 流離
18/36

双雷剣”ジェミニ”


「・・・出来た」


 リリアムの手にあったのは二振りの短刀・・・、いや棒手裏剣であった。鍛造で丁寧に作られていたが、それ以上の変化は見られない。

柄頭にひもを通すような穴が開いているが、携帯性に優れる程度といったところか。


 即席の鍛冶場である洞窟を出て、傾けるように月にかざせば、

艶やかな刀身に複雑な紋様が浮かし彫りになっている。

一見すれば実用目的ではない鑑賞用のモノであるが、

リリアムもその師も実用主義である。



 リリアムは刀身に異常がないことを確かめて"刃掛"に”二振り共”収めた。



「わからんな。それはなんなのだ?以前言ったと思うが、条件は切断用途の武器である。それはどう見ても・・・はっ、そういうことか。小癪な。よかろう、一振りとして認めようではないか、その性能を披露せよ」



 自身を覆う黒幕のような視界が開かれ、洞窟を出てすぐそばの平地の風景が広がる。


         先ほどはなかった異物と共に。


「よぉ、ダークエルフのお嬢ちゃん、探したぜ。まさかこんなところで打ってるとはなぁ。」


 軽薄そうな男、但し瞳には残忍さを宿しており、

何人かすでに手をかけているであろう。髪は荒れていて、衣服にも汚れや擦れが目立つが、元は上等なものだったことが伺える。


「手間をかけさせたんだ。それなりの成果をもらわねぇとなぁ。あんた、有名な鍛冶屋の唯一の弟子だってなぁ。俺の元で剣を打つってんなら可愛がってやるぜ」


 下卑た笑みを張り付けながら男が近づき、リリアムは棒手裏剣を両手に一振りずつ構えた。


「へぇ、やる気なんだ。まぁいいや、一度ダークエルフってのにこの剣を突き刺して見たかったんだァアア」


 以外にもその踏み込みは鋭い。

こちらの武器が投擲武器二振りと見てか、笑みを深めたまま突っ込んでくる。


 リリアムは相手の顔めがけて右手の棒手裏剣を打つ。

男は首を傾げてかわし、背後の木に意外と軽い音を響かせて刺さった。

もう一振りを打つ隙も見せずに男は斬りかかり、

いかに丹念に拵えたとはいえ、男の手にある剣を受け止めるにはあまりにも頼りなく、


「もらっt」


 男が勝利を確信して叫びきることなく、首が転げ落ち、慣性のままに身体は前に倒れ込んだ。



双雷剣”ジェミニ” ランクC


 二振りで一つの棒手裏剣。

真価は柄頭の雷の魔石の欠片に魔力を流すことにより発揮される。

柄頭の二つの輪を繋ぐ雷を収束した細い糸を形成する。

それ自体の切れ味鋭く、勢いをつけて引っかかればそれだけで簡単に腕一つ切り落とす。短時間であれば手元から離れていても”雷糸らいし”を形成した状態を維持できる。


 ランクが低いのは棒手裏剣自身の強度が低く、使い手に技術が求められるため。


「これで性能は示せたかしら?」


「よかろう。相変わらず面白いことを考える奴だ。次も楽しみにしておるぞ。」


 しかし、一つ条件を達成したにも関わらず、リリアムの表情は苦々しいものだった。


「ここもそろそろ潮時かしらね・・・」

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