ファイアーラビット
「はぁあっ!」
掛け声に合わせて剣を振り下ろす。
が、相手は…額に緋色の角を持つ私の身長を越える巨大なウサギはその身にそぐわぬ速さでバックステップしてかわす。
そしてわずかに硬直した私に向かってウサギことファイアーラビットは一発一発は大したことはない炎の玉を
連射してくる。
額の角が輝きを増したのを見て取っていた私は、回避の動作に移ろうとするが、完全に回避するのは無理だと判断し、手に持つ剣で数発を弾く。じゅっと音がして炎が消え、
私の剣も質量を減らす。
私の左手にあるのは「水象刀」。
私が自らの手で打ったものであるが、これは「魔刃」と呼ばれるもので、魔力を流すことで特殊な効果を発動させる剣である。
水を剣の形に維持するだけの魔刃であるが、私のお気に入りでもあり、相手との相性を考えた結果でもある。
相手の放つ火の玉を打ち払えば、消し去ることができるのは良かったが同時に刀身を形成する水が蒸発してしまうのだ。
相手は遠距離攻撃ができるからか、間合いをとって戦うのを得手としているようだ。初めの二度ほど攻撃したのを境に、間合いを読んだのだろう。私の間合いに入らないように動くようになった。
初手で決め切れなかったのが悔やまれる。
---刀身を維持するのに必要な水量がギリギリになってきた。
千日手とも言える戦闘を繰り返し、お互いに疲労していた。が彼我の能力を鑑みれば相手のほうが余裕がありそうだ。
それでも私に退くという選択肢はなかった。
魔力を帯びた素材を持つモンスターはレアだ。ここで取り逃がして別の冒険者に狩られる可能性は低くはない。
意表を突くしかなかった。
にも関わらず、これまでの焼き増しのように同様に切りかかる。
ファイアーラビットはこれまでと同様に回避し、炎を放とうとした。
これまでより高速で。
角が光ろうとしたその瞬間に痛みがファイアーラビットを襲った。
これまでに把握していた間合いを保つように動いていたファイアーラビットは、予想外のダメージで混乱したのか動きが荒れ、その後は一方的に狩った。
剣を振ると同時に流していた魔力を止める。
剣を維持していた力が消えると同時に遠心力で水が飛ぶのを魔力を再度流すことで剣の形に戻ろうとする。はっきりいえば切断力も落ちている
攻撃力もほとんどない一撃だが相手を混乱させることができて助かった。
額の角を丁寧に切り取ると、次元刃を取り出して異空間を広げて角や遺体を放り込むと、少し場所を移して樹上に登り腰を下ろして仮眠を取り始めた。その表情は珍しく穏やかで年齢相応の可憐さを見せていた。




