真夜中の戦い
炉の造り方などを教えるかたわら、俺の作業を手伝わせるようになった。
弟子をとる、というのがうまく作用したのか、スランプを脱出することに成功した。
久々に満足な出来の剣を一本鍛えて、上機嫌だった俺は珍しく酒をかっくらって寝たのだった。
「っ!」
「あぁ゛っ」
酔いのせいか浅い眠りだったのだろう、短く切れる声と床の軋む音が聞こえてきて眼が覚めた。
自分で慰めているんだろう。
弟子たちの生活は厳しい。
俺の身の回りの世話に手伝い、できるやつなら余りの時間で自分の鍛錬と遊ぶ時間どころか下手をすれば飯を食う時間すらまともにとれないことも多々ある。
当然ストレスも溜まれば他にも…、な。タまるわけだ。
もっとも女で弟子入りするやつはまともに続いた試がなかったのでわからないが、女でも発散せずにはいられないのだろう。
せめて聞かなかった振りをしてやるのがせめてもの情けだろうか。
リリアムの部屋に背を向ける。
「んん゛っ」
「はぁっ」
言葉が通じる人種族をまとめて人種と呼んでいるが、その実別の生き物である。犬とねこが交尾をしないように、エルフ族とドワーフ族もお互いに性的な対象になりはしない。
例外として、人族はドワーフ族やエルフ族、亜人族を見下している癖に
性奴隷としたりするほか、極少数であるが、人族は異族と寄り添う例がある。
要するに、リリアムの嬌声を耳にしても俺が夜這いをかける、ということはないわけだが、流石に長時間耳にしていれば思うところもある。
が、違和感を抱く。聞こえてくる声に全く艶っぽいものが感じられないのだ。むしろ悲鳴に近いような。
酔いが一気に醒めて慌てて隣の部屋に駆け寄ると、ノックもそぞろに
「入るぞ!」
と声をかけて押し入る。
リリアムは手ぬぐいのようなものを口に銜えて、必死に暴れる体を押さえ込んでいた。慌てて近寄るも目に光はなく、胸を腕でかきむしるようにしている。
尋常でない様子に緊急事態ということで、上着をまくりあげれば小ぶりだがツンとした形のよい双丘の間に浅黒いシミのようなものがあった。
白く引き締まった身体の唯一の汚点は心臓の脈動に合わせて蠢いているようにも見えた。
慌てて医者を呼ぼうと反転したところで腰の辺りに抵抗があった。
振り返ってみれば息も絶え絶えなリリアムが俺の上着の裾を掴んでいた。微かに光の戻った瞳で頭を横に振る。
「病気じゃないんだな?」
そう問いかけると、力無さ気に、今度は縦に首を振る。
「おや・・す・み・・の邪魔・をして申し訳あり・ません」
そう言って起き上がろうとするのをなんとか押さえつけて
発作?が収まったのか、リリアムが眠りについたのは夜明けも間近の頃だった。




