師と弟子 1
俺は現役の鍛冶師である。
弟子を取った、と言っても手取り足取り槌の振り方を教える、なんてことはない。
むしろ俺の身の回りの世話や、雑用をさせる。
食事の準備や水瓶の補充などだ。
俺の元へ来るのにかかった負担や、耳の傷の手当など体調が完全に回復するまで3日、殆どを少女は寝ていた。
眼が覚めるたびに早速仕事を始めようと言うのが面倒くさくて、拳骨を落としていたからそのせいかもしれない。
ともかく、3日ほど眠って完全に体調が戻ったと思われたところで
再度自己紹介をさせた、というより、リリアンローゼ、名前が長過ぎるのだ。いちいち呼んでいられない。
「リリアム、とお呼びください」
少女はそう言った。
普通、女の場合、「リリア」が略称として一般的である。
「リリアム」は男の略称である。
最も男にリリアンローゼと名づけるやつはそういないだろうが。
とまれ、これは男女の差別無く扱ってくれというメッセージだろう。
最も俺は男女で教え方を分けるどころか「教える」こと自体不慣れであったので意味はなかったが。
食事はともかく、水瓶の補充でさえ中々に厳しかったのだろう。
俺が使うのよりも小さい甕で何往復もしなければいけないのだから。
ちがう!別にいじめとかじゃない!
俺はエルフというのは精霊を通じて水など幾らでも出せるものだと思っていたのだ。
リリアムが小さい甕を持って小川へと走り出した時には唖然とした。
日が昇る前に起きて、水を汲み終え、朝食の準備。
俺が朝食を食べにいくまでに鍛冶場の準備だ。
できていなければ遠慮なく叩く。
正直、厳し過ぎるだろうかと思いもしたのだが、
リリアムは1週間もすればちゃんとやるようになった。
起きる時間がさらに早くなったようだが、火事場に入れば寝ぼけた顔をしていればやはりひっぱたくつもりだった。
が、むしろリリアムの視線は鋭過ぎるくらいで、俺の行動の一切を把握しようとしているようだった。
一体どうして、何がリリアムをここまで駆り立てるのか気になるが今はまだそのときではないと思い見守ることにした。




