第57話
お久しぶりです。
最近投稿をサボり気味になってしまい本当にすいません(/ω\)
あともう少し、この作品にお付き合いください!!
「………」
「……」
「……………」
重い空気が天空雲城内に広がる。誰も何も話さない。
三竜に至っては多くの感情が溢れ出した結果レオンによって貼られていた魔力による保護膜すら破り、各々の特性が感情の高まりと共に周囲一帯へ放出され、中庭は惨事と化していた。
その時だった。天空雲城周辺に張られていた雲の結界が霧散したのだ。それにいち早く気付いたのはローランだった
「ッ⁉オイッ、空を見ろッ!雲が霧散していく」
「……これはッ」
「戦いは終わったという事ですかッ⁉」
「いいえ、違うッ。まだ、終わってない……まずいことになったわ」
ルーチェは目を瞑り、苦々し気な表情を浮かべながらユーティアの問いに答える
「ッ……外は一体どうなっていますの⁉」
「レオンの天啓が奪われた」
「「「「「ッ⁉」」」」」
レオンにとっての最大の要。その天啓が奪われ、あまつさえその天啓が今度はレオンへ牙を剥いている。それを聞いた皆が絶句する。エルとローズは強固に練り上げられた結界をこじ開けようと魔力を練り始める
「なるほど、あれだけ豪語しておいてこの様か……全く、仕方のない男だのう」
ルニエルは深く吸い込んだ空気と共に悪態を吐き出す。
「アァッ!雷がレオンにッ……う、腕がッ………アァ……ァッ!」
ルーチェは天眼を用いて、レオンとアルファの戦いを皆に伝えよとするが、数舜の間に目まぐるしい変化をするその状況にルーチェの解説能力が追い付かない。しかし、それでも分かるがあるとすればそれは一つだけ。
しびれを切らしたローランはズカズカと荒い足音を立ててルニエルの目の前まで歩む
「おいッ本当にこの結界はあいつにしか解除できないのか?」
「はて、何のかとかのぅ」
「惚けるな。腐ってもエルフの女王が他人に魔法の主導権を放り投げる訳ないだろう。どうせ隠してるんじゃないか?」
「……………」
「出すならとっとと出せ。躊躇すればそれだけアイツの死が近づくぞ」
「面白いことを言う。童は彼奴の事を憎んでおるのではないのか?忘れたのか?その四肢を削いだのは彼奴じゃぞ?」
「ッ!」
全員がその問答に耳を傾ける。一瞬の静寂がその場を支配する
「黙れッ!ソレはそれだ。その件に関しては後でアイツに目にもの見せてやる。だが、ユーティアがアイツに協力した。例え俺が人質になっていたとしてもあそこまで協力的になったという事はそれなりの事情を知ったという事だ。いいか?クソババアッ!俺はアイツを信用したんじゃねえ。アイツを信用しているユーティアを信じているだけだッ!」
四肢を切り落し、守ろうとした国を眼前で滅ぼされた。
怒り。憎しみ。無力感。多くの感情がローランの中に渦巻く。それでも唯一信じられる女性が信じると言ったのだから。こうしてレオンは守りたいと言ったもの達を守ろうとしているのだから………
「フフ……本当に。本当に人間という生き物は面白い。彼奴も童も。良いだろう。童の言う通りじゃ。しかし、妾達は彼奴の加勢には行けぬ」
「何故ッ⁉」
「我々では足手まとい……という事ですが?」
「それもあるがのう。妾たちでは神を見た瞬間視神経を通して脳神経を焼かれるのだ。普通の種族では神の前に立つことすら叶わぬ」
「そんな………」
「案ずるな。一人だけ………アレなら彼奴の助けになるだろう」
「「「「「ッ⁉」」」」」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ハァハァハァ…………チッ」
片腕も失い目も擦れ始めた。本来であれば動けなくなっていてもおかしくない状態。しかし、そんなボロボロの体を無尽蔵の魔力で無理やり動かし続けている。その弊害か本来であれば傷つかないはずの魔力回路が徐々に摩耗され始める。命が削られていくのがよくわかる
(この感覚……あの時以来か)
「ずっと……不思議だったんだ」
そう。それは他人が天啓を行使するたびに考えてきたことだった
『何がかな?モドキ君』
今にも力尽きそうなレオンとは対極的に余裕をひけらかすように気色の悪い笑みを浮かべたアルファがレオンへと問う
「何故人は天啓を使う時、同時に魔力を用いないのか……魔力を用いれば天啓のみより威力が跳ね上がるはずなのに皆そうしなかった。だが……貴様を見ていてようやくわかったぞ。貴様、魔力を持っていない?」
『………それがどうした?魔力など神の前では汚泥にも勝るカスじゃないかな?』
「ハハ……そう思っているうちは、俺はお前を殺せる。尤も……気づいたところでお前に勝ち目なぞないがなッ!」
『虚勢かい?実に虚しいね。君が神である絶対的理由。その因子を失い。尽きぬ魔力でかろうじて立っているだけの君が』
「言ってろッ!」
(勝てッ!勝つ以外の選択肢はお前にはないッ!)
体内で練り上げ、高めた魔力で再び魔纏を発動させる。そして、アルファへ向けて肉薄しようとした瞬間後方から懐かしい魔力の気配を感じる。
「やぁ、相変わらず君は凄いことをしているね。オイラにも一枚かませてよ」
「ッ⁉お、お前はッ」
「母様からの言伝だよ。貴様に服従した覚えはないだってさ」
(ッ⁉まさかッ)
「そう、そのまさかだよ。結界の制御権を完全に君に一任するわけないでしょ」
「あんのクソババアッ」
「それにしても随分と苦戦しているね。魔力回路がズタボロだ。手助けは必要かな?」
「要らんッ………と言いたいところだが、正直一人じゃヤバかった。………お前なら大丈夫だろう」
(あぁ、つくづく反吐が出る)
レオンは心中でそう思う
本来それはレオン一人で成し遂げなければならないはずの使命。しかし、実力が足りない。我を通すだけの。
己の安いプライドと為すべき使命。
その二つを天秤にかければどちらを優先すべきかなど遠の昔から決まっている
「すまないが助けてくれ」
右拳をアレスへと突き付ける。それを見たアレスは微笑みながら左拳と合わせる
「当然ッ!」
『相談は終わったかい?』
余裕しゃくしゃくと上空から高みの見物をかますアルファを憎々し気に睨む
「あぁ、お前を殺す算段なら付いたよ。わざわざ待っていてくれるなんて優しいんだね」
「貴様を殺す。アレスッ!行くぞッ!」
「そうだねッ」
合図と共にレオンは魔纏・燐を発動し、アルファへと肉薄する。それに対応しようとレオンが肉薄してくる方向へ防壁系の天啓を発動しようとする。しかし、それと同時にアレスが上空から膨大な魔力を練り上げ、風属性の精霊魔法を放つ
『愚かな』
瞬間レオンの攻撃を防ぐために張ろうとしていた防壁をアレスの方へと向け、同時に黒い何かがレオンへ襲い掛かる。
「ッ!」
それは以前、喰らったことのある物質を吸収する何かだった
「それは一度見たッ!」
(思い出せッ!あの時をッ)
「ウォォォォォッ!」
魔力回路を経由しない。魔神の心臓からの直接放出。それはいわば血管を経由せず血を体全体に浸透させることと同義。故に反動も相応のものが来る
「ッ!」
目が充血し、筋繊維が破裂し、全身から血が噴き出し、骨が軋むのが分かる
「レオンッ」
「ぎにずるなッ!」
血と共に吐き出した言葉は己を鼓舞するものでもある
レオンの膨大な魔力放出にブラックホールはその吸収限界に達し、破裂する。その爆風に巻き込まれ数百メートル降下するが、魔力力場を形成し、かろうじてその場に踏ん張ることが出来た
「チッ⁉」
今も尚魔力と天啓の応酬が繰り広げられる場を見上げ、今にも崩れ落ちそうな肉体に魔力を流し込み上へと昇るのだった




