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全てを捧げた男は神の如き力を手にし、世界を統べる  作者: 神無月 瑠奈
第3章

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第53話

天使についての記述。それは確かにあった。しかし、それはレオンや皆が想像するものとは著しく違った。それもそのはず。天使という存在自体神が創り出した創造の使徒なのだから


「なんですか、それ……じゃ、じゃあ神々の行方はッ⁉」

「それについての記述は見当たらない。まだ、読んでないページに書き記されてるかもしれないけど……今明確にわかるのは天使の助力は得られないってことだけだわ」


その言葉がこの場にいる全員に重く圧し掛かる。神の使徒であり、その力は神々に次ぐと言われている。伝説の種族。その存在は皆の中で大きくなっていた。その期待が一瞬にして消えてしまったのだ。無理もない


「取りあえず得られる情報は全て貰いましょう。その中にまだ、時間はあるのだから」


そんな重苦しい空気を何とかしようとナターリリアはあえて明るく声を掛ける。そのお陰なのか皆の顔色が少しマシになったようにナターリリアは感じた。

その後、体感時間にして数時間を掛けてルーチェは全ての記録を読み終えた。そして、その後ほどなくして、脳と眼に多大なる負荷を長時間かけ続けたルーチェは眠りにつくように気を失った。ルーチェを担ぎユーティア一行はフォルティシアスの案内下宿へと帰るのだった




「結局手がかりはありませんでしたね………レオンさんにはどう報告しましょうか」


どんよりとした空気が部屋中に広がる。そんな中でも涎を垂らしながら心地よさそうに眠るルーチェに一同呆れ果てる


「そうじゃな……まさかアレが神の創造した人形じゃったとは。取り敢えず彼奴の下に戻るのは明日じゃな。ルーチェも酷使した脳を休ませる為当分は起きないはずじゃ。それにもう夜も遅い」

「そうですね。では、今日は私が見張りをします」

「そうじゃったな。では頼むぞ」

「よろしくお願いします」


その後は何も喋ることはなくユーティアに夜の見張りを頼みルニエルとナターリリアは眠りにつくのだった




「ぅう~~ん……あ、あれ?ここは?」


それは日の出前のことだった。窓辺に腰掛け読書に勤しんでいると(うな)され声と共に誰かが起きる音がユーティアの耳に入った。


「おはようございます。良く寝ましたね。ルーチェさん」


癖っ毛のある自身の髪を抑えようと撫でながらルーチェは立ち上がり、周囲を見渡す。


「ちょっと寝すぎたくらいね。ここからは私が起きてるから寝てていいわよ。みんなが起きるまでまだ時間はあるだろうし」

「いえ、遠慮しておきます。丁度読みたかった回復魔術に関する魔術書が見つかっていいところなんです。それに、いま寝てしまうとそのまま起きれなくなりそうですし……」


てへっっと照れ臭そうにはにかむ。その姿は大人びていながらもいたずら心を残した背伸びをしている子どもの様だった。


「そっかぁ~、じゃあ、私は得た情報の整理でもしようかな。口頭でも伝えるけど紙に残してあげたらランズちゃんも喜ぶだろうし」


そう言って、いそいそとペンを走らせ始める。

因みにランズというのはハイドランジーの愛称だ。そのままだと毎回言いづらいとのことで女性陣は皆この愛称を使用している。他の二人にもそれぞれローズマリンはそのまま『ローズ』。エルトロンは『エル』となった。三人ともそれを了承している。


「そうですね、ランズちゃんの知識欲は本当にすごい。ルニエル様にも暇さえあれば質問を投げかけていましたし……」

「ぐいぐい来られて流石のルニエルさんも戸惑ってましたよね。あの時の顔はそうそう見れるものじゃないってレオンさんも笑いながら言ってましたし」

「エルフの女王としての立場上あそこまでグイグイ行く人なんて本当に数少ないからでしょうね」


その後、談笑に花を咲かせながら各々のしたいことをしていると時間はあっという間にすぎてしまい、気が付けば日が昇り始めていた。しばらくすると、ナターリリア。ルニエルの順に目を覚まし、皆が身支度を済ませた後、宿の一階にある食堂で朝食を済ませた。その後、各自買い出しを済ませ、気が付いた頃には既にお昼を回っていた。

その後一度宿に戻り、ナターリリアの天啓でレオンが待つ天空雲城へ帰るのだった


・・・・・・・・・・・

「それで?イェルセシスは楽しかったかな?」


皆が両手に抱える治療の荷物を目にしながらレオンは尋ねる。その額には微かに青い筋が見えた


「い、いえッ……これは必要なものでして、決して楽しんだという訳ではなくッ!」

「はぁ……それで?なんで帰ってきたの?作戦に不具合でもあったのか?俺の差し金ってことがばれたか?」

「いいや、妾達の力のみで情報を入手してきたわい。しかし、おぬしが思って居るようなものではないとだけいっておこう」


重苦しい前置きをする。その瞬間他三人もバツが悪そうに視線をレオンから避ける。

ルニエルが渡した書類。それは早朝にルーチェが書いた物。書かれていた内容をルーチェが要約したものが詰まっている


「天使についての記述はあったわ。でも、天使は人間やエルフの様に一種族としては認知されていない。それによると天使とは神々が己の力を分け与え創造した存在。そうするに人形のようなものだと書いていたわ。そして、地上からその姿を消した今天使も叉地上には存在しないとも」


レオンは俯き、肩を震わす。ルーチェ達は一歩、二歩と後ずさる。期待していた譲歩を得られなかったどころかそもそもこの地上に存在しない。期待していた戦力が失われた今、仮称αとの戦いをどうするのか……大きかった期待の分だけ落胆も大きいだろう。レオンからにじみ出る魔力がルーチェ達を震え上がらせる。しかし、その反応はルーチェ達が考える者ではなかった。次の瞬間、レオンは今まで見せたことが無いほど豪快に笑い始める。

その反応に先ほどまでピりついていた空気が一気に緩み、後ずさっていた三人は腰を抜かし、地面にへたり込んでしまう。


「よくやってくれた。これならこの広い世界を探し出すより簡単だ。俺は少し、部屋に籠る。少なくとも一週間は出るつもりはない。その間、自由に過ごしてくれ。ご飯は扉の前にでも置いておいてくれ」


笑い過ぎて目の端に涙を浮かべているレオンは笑いながらルーチェ達に告げる。腰を抜かした三人は呆気にとられ、何もいう事は出来ず、その場を去るレオンをただ茫然とみるしかできなかったのだった


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