第51話
司教アルゴ=スタディエルとの話し合いより数日。ユーティアたちは聖教国の一般に公開されている資料が集まった図書館に通い詰めていた。『得られる情報は出来るだけ多いに越したことはないのでは?』というナターリリアの何気ない呟きにより、どうせ待つだけならとアルゴから連絡が来るまでの間。四人は、図書館にある物を時間の許す限り読み続けた。
「ねぇ、少し気になる文研を見つけたのだけれど……聞いてくれない?」
そんな日が続いたある日の夜のことだった。皆寝る準備をしていた時、徐にルーチェが四人に話しかけた。
「今日まで数日ずっと一般公開されている書物を皆で読み漁ってきたわけなんだけど。どの資料にも神様たちが突如としてこの地上から消え去った理由が明記されていない……それにアルゴ司教との会話に出てきた神の消失と共にその姿を消した神獣フェンリル。それと時を同じくして姿を消した天使……他にも神の使いと表される彼らは皆多少の誤差はあれどその近辺で消え去っている。一体その時代に何があったのかしら」
不自然な空白の謎。
ソレを知る者は今此処にいない。それは仮称αと対峙し、己の心臓の起源を知ったレオンのみしか知り得ないことだ。
「確かに……数多の神々がいたはずなのにその全てが残らず消え去るなんて……図書館の書物では神々は神界と呼ばれる神のみが立ち入ることが許されるとされる地に行ったと記されている。天啓はその神々が人間に授ける導きとも。でもそれではフェンリルが魔に堕ちた理由が分かりません。」
「それについては恐らくあと数日中にはわかることになる。その為にここに来たのだから」
「「………」」
「そうです。ルニエルさんのいう通りです。それより明日も朝一番から図書館へ行きます。二人も早く寝てください」
ユーティアはそう言うとひとり早く寝入ってしまった。三人もユーティアに習ってその日はそれ以上何も話すことはなく眠りにつくのだった
次の日~~
「さぁ、今日も張り切っていくわよッ!」
そう言ってドアノブに手を掛けようとすると、ドアが小気味よくノックされる。
「……?」
何事かとルーチェは三人の方へ振り返り首をかしげる
「ようやく許可が下りたのではないか?」
「あぁ、なるほど……本当にようやくですね」
待ちに待った分ナターリリアは意気揚々とドアノブを回し、扉を開くとそこには
「「「ッ⁉」」」
「ほぅ……」
そこには一介の聖騎士が着るには豪華すぎる鎧を着込んだルニエルにも劣らない美貌と存在感を持った女性の騎士が立っていた。しかし、そのオーラはハリボテなどではなく明確に幾重もの戦場を経験した絶対的強者の圧。腰に備わっているそのロングソードは彼女を象徴するかのような白を基調に黄金に装飾されていた。その立ち居姿にユーティア、ナターリリア、ルーチェの三人は瞬時に委縮してしまう。ルニエルでさえ感嘆を漏らす
「お初に御目にかかります。聖杖アスクレピアソスに選ばれし聖女様。私は聖騎士団総団長を務めています。名をフォルティシアス=カンディティウスと申します。今この瞬間を、あなた様にお会いするその瞬間をずっと夢見ておりました。本来であればあなた様が入国したその瞬間に立ち会いたかったのですが、少々遠征に行っておりまして………」
その後もフォルティシアスはユーティア……いや、聖女への熱い思いの丈を語り続け、部下の一人が止めるまでの数分間続いた。
(随分と熱狂的な信者ですね)
引きつった顔をしているユーティアに後ろからルーチェが小声で茶化す。それをナターリリアが叱るように頬を引っ張る
「イッ!イタヒィッ……」
(やめなさい)
涙目になって、引っ張られたせいで赤くなった頬をさすりながら叱られる
「コホンッ……失礼いたしました。あまりの感動につい口が滑りすぎました。大変お待たせいたしました。禁書庫の準備が整いましたので団長であるこの私めがご案内させていただきます。」
「そうですか……わかりました。では、よろしくお願いいたします」
その後、聖騎士団総団長の案内により馬車に揺られること約三十分。その場所は国家が最重要機密を書き記した書物を置くにしては似つかわしくない寂れた廃塔だった。
「こ、こんな場所に書庫があるというんですか?」
周辺には人が一人もおらず、虫や動物すら気配を感じられない。
「えぇ、これはただの見せかけです。見た目はただの廃城ですがその中は周囲には創始者イェル様が張った結界には劣りますが、許可したもの以外を絶対に拒む結界が張られており、このペンダントが無いと入れませんし、一度でも外せばそのものは魂まで焼き尽くされます。ですのでこの結界内にいる間はこのペンダントは肌身離さずつけておいて下さい」
フォルティシアスは四人にそれぞれペンダントを配る。全員が装着したのを確認すると外見は廃城のその中へと入っていくのだった
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「ふぅ……五日掛けてようやく三割か……流石数百年も国全体を覆うだけのことはある」
「あまり無理はしないでくださいね?いくらお父様とはいえ、このような無茶な解析の仕方……一歩でも間違えば大変なことになってしまいます」
不安げな表情でレオンの服の裾を掴む。その顔には不安や心配といった感情が載っていた。そんなローズマリンを安心させようとそっと頭に手を置いて優しく撫でる
「大丈夫だ。お前たちがいてくれるから俺は帰ってこらえる。お前たちを悲しませるようなことは絶対にしない。お前たちのお父さんは最強だ」
そう言うとレオンは燐を発動させる。そして、今度は全身を粒子化させ、結界解析を始めたのだった




