魔力操作と初アイテム
あれっ、とリアナは思った。
入ってきた教師はリアナに入学準備金というすばらしい制度の説明をしてくれた人ではないか!
相変わらずの無表情だが、内容はわかりやすく魔力操作についての授業をさくさく進めていく。
授業を真剣に聞いていたリアナだったが次の教師の言葉にピンっと耳がたった。
「前の授業で魔石に属性魔力をそれぞれ込めたな。それを使って各属性のアイテムを作ってもらう。基礎となる最も簡単なアイテムなので必要なのは、属性に染められた魔石と水、それだけで出来る」
いよいよアイテムを作れるのだと聞いたリアナのテンションは一気に上がった。
早く早くと教師をせかしたくなった。
どんなアイテムなんだろう? ポーションがいいな! ポーションがいいな!
理科の実験で使うよな水が500ccは入りそうなビーカーが配られた。それに教師が半分ほどの水を入れていく。
「さて、それでは魔石を入れて授業で説明したとうりに魔力を注いで欲しい。二種類以上の属性がある者は魔石に注いだ属性と同じ属性を込めるんだ」
『二種類以上の』という言葉を発する時、リアナの顔をチラリと教師が見た。
川に流れる水をイメージして魔力をビーカーに向けて放つ。なんでも流す魔力の量が注いでる途中で多くなったり少なくなったりするとアイテムの品質が悪くなるようだ。一定の量を流し続けることが大事らしい。
なかなか難しい。少しでも気を抜くと魔力の量が少なくなる。かといって気合いを入れすぎるとドッと魔力が流れてしまう。まるで、理科の授業で天秤と分銅を使って重さを量った時のように、さじ加減が難しい。
そうする内に魔石がグニュっと溶けてきた。すると、光を発しながら透明な水がどんどん金色に変わっていく。
おおおぉ! すごい! 授業で先生が言ったとうりに本当になった!
最後まで気を抜かないようにしないと!
リアナは細心の注意を払いながら魔力を流していく。
どのくらいたっただろうか?
二分ほどだろうか?
水が全て金色に染まり、光を放っていたビーカーが普通の状態に戻ったのを確認して、リアナは魔力を注ぐのを止める。
リアナは出来上がったアイテムを見てにまにまっと笑う。
キョロキョロと周りを見回すと、まだ魔力を注いでいた者が多くいた。
「あら、リアナも作り終えましたの? 私も出来ましたのよ。見せてあげてもよろしくてよ」
アデリーヌはふふんっと自慢するように作ったアイテムをリアナに見せた。アデリーヌの水は紫色に染まっていた。
うわあ、見るからに毒々しい色だなあ。
アデリーヌ属性は闇なので、出来たアイテムは毒である。ちなみにリアナは光属性なので聖水が出来た。
魔石と水で属性によって違うアイテムが作れることが面白いと思った。
浮かれている二人にため息をつく声が聞こえた。
ユイリーである。
ユイリーは灰色に染まった水を見て項垂れていた。
灰色は失敗の証である。一定の魔力を一定の時間注ぐことができないとアイテムは灰色に染まるらしい。
リアナはおずおずと慰めの言葉をかけた。
「ユイリー、元気だして。初めてだったんだし、しょうがないよ。私も運良く成功したようなものだし。それにほら見て、失敗した人の方が多いみたいだよ」
リアナの言うように成功者はクラスのおよそ三分の一ぐらいだった。失敗した者はしょんぼりしていて成功した者の落差が激しかった。
ユイリーにはそう言ったが、もしリアナが彼の立場ならそれこそ激しく落ち込んでいただろうなあ、と思った。
「うん、そうだよね」と弱々しい笑顔をリアナに向けた。
「もう! 一度失敗したぐらいでぐちぐちと! 男ならもっとしゃんとしなさい!」
そんなユイリーを見るに見かねたのか、アデリーヌが口を開いた。
言葉はきついがアデリーヌなりの励ましだろう。
ユイリーはいきなりアデリーヌに声をかけられた事に目を白黒させた。
教師は生徒が作ったアイテム見て回っている。手に持っている道具でどうやらアイテムの品質や効果がわかるらしい。
褒められた生徒は顔を綻ばせ喜んでいた。
リアナ達の方にもやって来た。
最初にアデリーヌの毒々しい紫色の水が入ったビーカーをじっとみて、計測装置をビーカーに浸し、浮かび上がった情報を見て、初めてにしてはよくできていると言った。
品質は中の下で小動物なら殺せるといったところのようだ。
アデリーヌは当然ですわ、という顔で誇らしそうに笑う。
リアナの番がきた。
教師はしげしげと見た後に同じように計測装置を浸し情報を見て、ぎりぎりだと言った。どうやらとても品質が低いらしくもう少しで失敗するところだったようだ。
モンスターを遠ざけるほどの効果はもちろんなく、気休め程度らしい。
ちょっと落ち込んだが、まだまだこれからだ! と思い直した。
ちなみにユイリーは魔力操作の訓練をしっかりとしろ、と言われていた。




