リアナとアルヴァ
リアナは入学準備金を一万バル借りることに決めた。もう一人の男の子もリアナと同じ一万バル借り受けることにしたようだ。二人して、契約書にサインをした。もし、五年以内に払えなかったら、全額返済するまでただ働きをさせられるようだ。詳しくは、騎士科の生徒が校外演習に行くときに持っていくアイテムをひたすら作るらしい。
大量に必要なのでお小遣い稼ぎに錬金術科の生徒も時々作って懐を暖めているらしい。ただ、真面目に勉強して授業をサボらなければ多くのアイテムを作れるようになるので、売ればお金には困らないらしい。
いろいろと話して仲良くなった少年の名はユイリーといった。二人ともお金がないという共通点があったため、妙に話が合い仲良くなった。ユイリーは貴族だったが没落気味で平民より貧乏なくらいだと嘆いていた。だから自分が錬金術を学んで、家を少しでも豊かにしたいと試験を受けたそうだ。家族が必死にためてくれたお金を入学準備金のおかげで使わずにすむと、心を撫で下ろしていた。
リアナはその話を聞いてちょっと恥ずかしく思った。寂れた村でこのまま一生不便な暮らしを続けていくのだろうと不満を抱えながら生きていたリオナは、ファンタジー要素あふれる錬金術に一縷の希望を見い出した。
魔法みたいな不思議なアイテムを作りたい、それがリアナが錬金術師を目指した理由だった。
ユイリーと入学式で会おうと約束し別れた。
宿屋に戻ると、オルドと女将が満面の笑みで迎えてくれた。その日のリアナのご飯には合格祝いにと、小麦粉と砂糖とバターで作られた甘いお菓子が付いてきた。村で年に一回食べることが出来るお菓子より数倍おいしく、リアナはゆっくりとかみ締めるように少しづつ口に入れた。オルドは物欲しそうな視線をよこしたが、余韻を味わっているリアナは気づかなかった。
やっと村が見えてきた。リアナは馬車の中から顔を出した。リアナに気づいた村人は何かを叫び手を振ってきた。
村に着くと村人総出で出迎えられた。両親が人々の間からすっと出てきてリアナを抱きしめてくれた。あちこち体を触りながら、怪我をしていないか確かめているようだった。
村長が試験はどうだったか聞いてきた。
リアナは笑って結果を伝えた。
うおおおぉぉっと耳が痛くなるような歓声が聞こえ、口々に褒められ髪がぐしゃぐしゃになるほど頭を撫でられた。
そして子供達がリアナに駆け寄り囲んだが、その中にアルヴァの姿だけがなかった。誰かを探すように目を彷徨わせるリアナにジーンがそっと教えてくれた。
「アルヴァはリアナが試験に受かっても村に住んだまま学校に通うと思ってたみたいでさ。少し考えればこの村から王都まで遠いのだから無理なのわかるけど、アルヴァはそこら辺全く考えていなかったみたいで.....。受かればリアナが王都に住むって言ったら呆然としていたから、すっごくショックを受けたんだろうなあ。あれからアルヴァの元気もなくてさ」
リアナはジーンの言葉を聞くとアルヴァがいそうな場所にむかった。リアナには確信があった。
アルヴァは村で一番大きな木によりかかるようにして膝を抱えていた。そこはいつもアルヴァが叱られたり落ち込んだりしている時にいく場所だ。
リアナは足音を立てないようにそっと近づき隣に座った。
「ねえ、アルヴァ。わたし、アルヴァが信じてくれたとうり試験に受かったよ」
「......知っている。出迎えたときに聞いたから」
リアナの問いかけにアルヴァはわずかに聞こえるくらいの小さな声でぼそっと答えた。
「アルヴァは喜んでくれないの?」
「......」
アルヴァはうつむいたまま何も言わない。長い沈黙の後、アルヴァが重い口を開く。
「リアナは村じゃなくて王都に住むんだろう? そうしたら一緒にもう遊べなくなるじゃないか」
まるでリアナを責めるような口調でアルヴァは言いつのった。
「確かに遊べなくなるけど。あのね、アルヴァ、わたし錬金術師になりたいって思ったのは自分のためだった。でも、試験で出会って友達になった人の話を聞いて村の発展の為に錬金術を生かしたいって思ったの。王都は錬金術のおかげで栄え、活気に溢れていたわ。わたしも、この村をそんな風にしたい」
リアナはまだ誰にも話していない目標をアルヴァに話した。リアナが試験を受けることが出来たのはアルヴァのおかげだ。そして誰よりもリアナの事を信じてくれたのも。だからこそ、誰よりもまずアルヴァに話したかった。
「ずるいよ、リアナ。なんだか俺だけがワガママを言っているみたいじゃないか。......言うのが遅くなったけど、おめでとう、リアナ。----俺はリアナの夢を応援するよ」
アルヴァはそう言ってやっとリアナに笑顔を見せてくれた。




