↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/21

入学準備と説明会

 家族と抱き合いながら合格を喜ぶ者、がっくりと項垂れる者、大声で泣き出す者、結果に納得がいかないと怒り出す者。そんな中、騒がしさをものともしないそこら中に響き渡る声がした。まるで拡声器を使ったかのようだった。


「合格者はこちらに来て手続きを行ってください。これより中で説明会があります」

 合格者達がこぞって声の元へと駆け寄って行く。リアナ達も慌てて後に続こうと足を向ける。すでに長い列ができていてその最後尾に並んだ。

 思いの外進むのは早くあっという間にリアナの番がきた。


「こちらの紙に名前と受験番号それから住所を記入して下さい」

 リアナはさっそく机に置かれている羽根ペンにインクをつけ書こうとすると、男がリアナに優しい声で話しかけてきた。


「お嬢ちゃん、これは本人が書かなくてはいけないものだから、お父さんに書いてもらおうね」

「......?」

 リアナは羽根ペンを手から離し顔を上げ、オルドと顔を見合わせた。


 もしかして勘違いされている?

 オルドさんが試験の合格者だと思われているのでは?

 それにお父さんって・・・ 


「あの、なにか盛大な勘違いをされているように思うのですが。この子が受験者で合格者です。僕はただの付き添いです。それに僕は独身です」

 オルドはそう言ってリアナの肩に手を置き、ずいっと受付をしている男の前に押し出す。


「またまた冗談がうまいですね!......ま、まさか本当に? あ、あのその子のお名前は?」

「リアナです」

 オルドが口を開くより前にぶすっとした声でリアナが答える。


 男は合格者一覧が載っている紙にリアナという名前が載っているのを見つけると顔色を悪くし頭を下げた。

「申し訳ありませんでした。まさかこんな幼い子が試験を受けてるとは思わなくて」

 男は一通り謝罪した後、今度はリアナの事を大げさなほど褒め始めた。男の行動でリアナが気分を害したことがわかったのだろう。聞いていて恥ずかしく感じるほどの称賛の言葉はリアナの心を解きほぐした。


 リアナは最近の感情の揺れ幅が大きくなっている自分に気づいた。「錬金術」の存在を知った日から、退屈でつまらなかった日々が色づいて見えた。自分の意識がどんどん子供のように若返っていくような不思議な感覚だった。


 紙に記入し、教えてもらった説明会が行われる教室まで足早に向かった。本人以外は入れないので、オルドは宿で待っていると言って帰って行った。

 中に入ると、三十人ほどの人がいた。リアナの方を見た人は皆目を見開き驚愕の表情を浮かべた。チラチラと見て来るものをスカッと無視して手頃な席に腰を下ろす。

 リアナの後にも数人が教室に入ってきた。顔に視線が集まっているのに気がついていたが、話しかけてくる者もいなかったので素知らぬ顔をして、心の中では早く説明会が始まることを願っていた。

 リアナの願いが通じたのか、時間になったからかわからないが、白いローブを着た男が入ってきた。そして教壇に立ち話し始めた。


「まずは、入学おめでとうと言っておこう。今年は八百名ほどが試験を受けたようだが、受かった者は三十八名。まずまずの結果だろう。授業は選択方式で、好きに選べるのでよく考えて決めるように。単位が足りない者、授業評価が低い者は卒業できないので気をつけるように。入学して一週間は試用期間としてどの授業にも出られるので、興味を持った授業には積極的に出席することをお勧めする」


 ええっ! そんなに受験者多かったの? それに合格者三十八人って。東大受かるより難しいんじゃない? 倍率高すぎだよ! 選択式授業かあ~、大学みたいだなあ。

 

「それから、入学金の千バルと一年次の授業料の五千バルは入学するまでに払うように。今年から特別に入学準備金として一万バルまで貸し付ける制度をもうけた。返済期限は在学期間と同じ五年。アイテムを作って売れば、返すのは難しくないだろう。申請を希望する者は説明会が終わった後もこのままこの教室に残っているように」

 

 入学金と授業料の話を聞いた瞬間リアナの顔から血の気が引いた。想像していたより遙かに多い途方もない金額だった。

 絶望感に襲われていたとき、希望の声が聞こえた。

 リアナは喜びで感謝の舞を踊り出したくなった。無表情で説明している男の周りだけキラキラと輝いて見える。気のせいかわからないが、リアナは話している男と度々視線が合い見られているように感じた。


「アイテムをつくるためには、素材がいる。町にある素材屋にもある程度は売っているが、種類は多くない。騎士科の生徒を護衛として雇い、野外で素材を集めることをお勧めする。彼らも強くなるためにモンスターを倒すことが必要なので、対価は必要だが引き受けてくれるだろう。学校としても錬金術師科と騎士科の生徒の交流を奨励しているので、採取のための授業の欠席は便宜をはかっている。受付でパンフレットに今日話したことの詳しい説明が書いているので家に帰ってよく読んでいて欲しい。以上で説明会を終了する」


 席を立って教室から次々と出て行く中、リアナの他に一人だけぽつりと教室に残っていた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。