第8話:先輩パーティ『青銅の盾』からのポーター依頼
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男泣きの唐揚げパーティーを終え、正式に地下迷宮への遠征依頼を受けたミナト!
今回は遠征前の準備回――大聖堂近くの宿に戻ったミナトを待っていたのは、夕方のお務めを終えた聖女様と、軍議帰りの女騎士団長!
コハクの「ミナト影武者変身」が炸裂し、ヒロインたちが大暴走する夕暮れの爆笑日常をお楽しみください!
「おうミナト! 明後日の朝八時、ギルドの正面広場に集合な!」
「はい、よろしくお願いします! ブルーノさん、フィン!」
王都の冒険者ギルド兼酒場『星の羅針盤亭』のカウンター前で、俺は『青銅の盾』の二人と正式な依頼契約を交わした。
薬草採取の納品も無事に完了し、エルフの受付嬢から銀貨数枚の報酬を受け取る。
俺のステータスプレートには、しっかりと【地下迷宮第一層・資材運搬および野営補助(受託中)】の刻印が刻まれていた。
「へへっ、ミナトのメシがまた食えると思うと、今から涎が止まらねぇぜ!」
「フィン、涎を拭け見苦しい。……ミナト、第一層はスライムや大ネズミくらいしか出ねぇ安全な回廊だが、油断は禁物だ。荷物は俺たちがしっかり守るから安心しろよ」
「ありがとうございます、ブルーノさん!」
豪快に手を振る二人と別れ、俺はギルドを後にした。
時刻は夕暮れ時。茜色に染まる王都の運河を渡り、シルヴィアが手配してくれた大聖堂裏手にある清潔な宿屋へと戻る。
部屋の鍵を開け、長机の上に背負い袋を下ろした、その時だった。
トントンッ、ガチャリ!
「ミナトぉ〜〜〜っ! 入るよぉ〜〜っ!!」
ノックもそこそこに、白いフード付きマントを深く被った人影が、滑り込むように部屋へ飛び込んできた。
フードを脱ぎ払うと現れたのは、黄金色の柔らかな髪と、息を切らして潤んだ琥珀色の瞳――聖女ルミア様だった。
「ふぇぇ……今日のお務め、信徒さんが多くてすっごく大変だったんだよぉ……! ミナト、頭撫でてぇ……!」
入室一秒で俺の懐に飛び込んできたルミア様は、胸元にすり寄るように顔を埋めてきた。
ふわりと高貴な白百合の香りが鼻腔をくすぐる。
……って、ちょ、ちょっと待ってください!?
「る、ルミア様!? 大聖堂の公務が終わったのは分かりますけど、いきなり抱きつくのは――って、配信! スマホの画面がオンのままです!!」
机の上に置いた神具スマホの画面が、ピカピカと鮮やかに点灯している。
ギルドからの帰り道をコハクが撮影していたため、配信枠が開きっぱなしだったのだ!
【愛の女神フィリア】:キャーーーーッ!! お忍び聖女様の帰宅凸キターーーッ!!
【主神アルト】:公務終わりのルミアちゃん、甘えん坊メーターが限界突破してて草
【豊穣神デメトラ】:待て! 聖女の鼻がヒクヒクと動いているぞ!?
「んんっ……? すー……はー……」
俺の胸元に顔を埋めたまま、ルミア様が小動物のように激しく鼻を鳴らした。
「ミナト……これ、何の匂い……? すごく香ばしくて、お醤油とにんにくの……お肉の美味しそうな匂いが染み付いてる……! 私を置いて、何か美味しいもの食べたの……!?」
「うぐっ、鋭い……! いや、昼間に採取依頼に行った丘で、ブルーノさんたちと唐揚げを――」
「ずるいぃぃぃっ! 私だってミナトの揚げたお肉食べたかったのにぃぃぃっ! もう許さない、今夜は離してあげないんだからぁ!」
ルミア様がむくーっと頬を膨らませ、俺の腰に両腕を回してぎゅっと抱きついてくる。
その豊満な胸の柔らかい感触が制服越しにダイレクトに伝わり、俺の理性へのダイレクトアタックが凄まじい。
そこへ――さらに部屋の扉が勢いよく蹴破られた。
「我が主! 定例軍議より直ちに戻りまし――ぬああああああっっっ!?!?」
甲冑姿のプラチナブロンドの女騎士――シルヴィアが、直立不動のまま目を見開いた。
腰の『星輝剣』に右手が伸びる。
「せ、聖女様!? 我が主の腰に抱きついて何をなさっているのですか! 破廉恥な! 直ちに我が主から離れなさい!!」
「嫌です! 先に抱きついたのは私です! シルヴィア団長こそ、ノックもなしに入ってくるなんて不作法です!」
「ぐぬぬっ……! 私は我が主の専属護衛! 我が主の純潔をお守りする義務があります!(ジャキリ)」
「二人とも落ち着いてください!!」
俺が叫んでも、バチバチと火花を散らす美少女二人の耳には届かない。
シルヴィアが俺の手首を引っ張り、ルミア様が俺の腰にしがみつき、俺の体は完全に引き裂かれる寸前だ!
「くふふ……やれやれ、相変わらず世話の焼ける女たちじゃのう」
ベッドの上で優雅に毛づくろいをしていたコハクが、呆れたようにため息をついた。
「ミナトよ、妾が助け舟を出してやるのじゃ」
コハクの七色の尻尾が、ボワッとまばゆい煙を吹き上げた。
ポンッ!という軽快な破裂音とともに現れたのは――
「おい貴様ら! 俺の体を引っ張るんじゃない! 離れろ!!」
俺とまったく同じブレザー制服を着た、完璧な容姿の【もう一人のミナト】だった!
「えっ……ミナトさんが、二人……!?」
ルミア様が驚愕して手を緩め、シルヴィアも「なっ……我が主が増殖された!?」と目を丸くする。
(ナイスだコハク! そのまま二人をなだめてくれ!)
と俺が心の中でガッツポーズした、次の瞬間だった。
影武者ミナト(コハク)は、腕組みをして顎をクイッと上げ、ふてぶてしいドヤ顔で言い放った。
「フッ……いいか、愚かな女どもよ! 俺を奪い合って見苦しく騒ぐでない! 明後日、俺は男たちとダンジョンへ行き、極上の豚汁を作るのだ! 女子供は黙って家で留守番しておれ!!」
「ちょ、コハク!? なんでオラオラ系キャラになってんだよ!?」
俺のツッコミも虚しく、影武者ミナトは「もっと俺を敬え!」と偉そうにふんぞり返る。
絶対に怒られる――そう思った瞬間だった。
「「――っっっ♡♡♡」」
ルミア様とシルヴィアの顔面が、ボフッッと同時に真紅に染まった。
「な、なんという……なんという男らしい覇気……! 普段は優しい我が主が、私を支配するかのような強引な命令……たまらん……っ♡」
「み、ミナトに『女子供は留守番しておれ』って見下ろされた……っ! ぞくぞくしちゃう……すっごく格好いいよぉ……っ♡」
「なんで惚れ直してんだよぉぉぉぉぉっっっ!?」
俺の絶叫が部屋中に木霊した。
スマホのコメント欄は、爆笑の弾幕で完全に崩壊している。
【主神アルト】:草ァーーーーーーッッッ!!!wwwwwwww
【主神アルト】:コハクのオラオラミナト、性癖に刺さっててクッソワロタwwww
【愛の女神フィリア】:尊死……! 尊死してしまいますわ! 強引なミナト様も大好物ですのね!!
【豊穣神デメトラ】:それより豚汁とは何だ少年!? 唐揚げに続いてまた新たな神の肉料理を作る気か!?
「ふははは! もっと妾……いや俺にひれ伏すがよい――ふぎゃっ、お腹すいたのじゃ!」
カッコつけていた影武者ミナトの腹が「ぐぅ〜〜」と激しく鳴った瞬間、ポフンッ!と白い煙が上がり、あっけなく手のひらサイズの子狐の姿に戻ってしまった。
「あ……戻った……」
「コハクちゃん、だったの……?」
正気に戻った二人が、真っ赤な顔のまま瞬きをする。
「はぁ……はぁ……もう勘弁してください」
俺は息を整えながら、二人に向き直って真剣に頭を下げた。
「ルミア様、シルヴィアさん。明後日の遠征は、ギルドの先輩たちと地下迷宮の第一層――モンスターもほとんど出ない安全地帯へ行くだけです。二人を危険な場所へ巻き込むわけにはいきません。……それに、帰ってきたら、二人にもちゃんと作りたての温かいご飯を食べさせますから」
俺が目を見て微笑みかけると、二人は胸を押さえて小さく吐息を漏らした。
「……ずるいです、ミナトさん。そんな優しい顔で言われたら、断れません……」
「我が主の仰せのままに……。ですが、無事に戻られた暁には、私にもその……とんじる、という料理を振る舞ってくださいね……?」
「はい、約束します!」
二人を笑顔で見送ったあと、俺は部屋の机に向き直り、天界通販アプリを開いた。
ダンジョン内での野営――カチカチの携帯食に頼る冒険者たちに、本物の温かいキャンプ飯を届けるための仕込みだ。
『信州産特選合わせ生味噌』
『大容量密閉式保存袋』
『下処理済み豚バラ肉&国産根菜水煮パック(大根・人参・ごぼう・里芋)』
『濃縮かつお昆布だしパック』
「よし……下味と具材を密閉袋で小分けにして持っていけば、ダンジョンの中でも短時間で最高の豚汁が作れるぞ」
画面の向こうでは、豊穣神デメトラが待ちきれない様子でコメントを連投していた。
戦闘力ゼロの男子高校生による、初めての地下迷宮お散歩ロケ。
美味しいご飯の準備は、すでに万全だった。
第8話をお読みいただきありがとうございました!
次回――第9話では、王都の命がけの地下迷宮を、現代グッズと美味しいおやつでピクニックに変えていくミナトたちをお楽しみに!
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