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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第56話:オタク美少女神ルディナ降臨! 少女マンガに悶絶する聖女と魔女

お読みいただきありがとうございます!

前回の第55話では、ユリアスから預かった小型魔導水晶柱をエレナが解析し、樹海深部の古代遺跡探索という明確な目標が決まりました!

さらに水仕事で凍える若い魔女たちへ、ミナトが天界通販の『超吸水マイクロファイバータオル』を差し入れて大絶賛!

ミナトの生活サポートルディナから、ついに初の【天界クエスト】が発令!

その内容は……『日本の至高の精神文化【少女マンガ】を読ませて悶絶させろ!』!?

天界通販から取り寄せた王道学園少女マンガを前に、聖女ルミアと魔女エレナのウブな乙女心が完全にキャパオーバー!

夕暮れの教室での『壁ドン&告白』に、顔面を真っ赤にしてソファを転げ回ります!

日本のサブカルチャーが異世界の純情乙女たちを直撃する、爆笑の胸キュンパニック前編をどうぞお楽しみください!

美味しい夕食を終え、夜の帳がしっとりと下りたローゼンバーグ家のアトリエ。

暖炉の中でパチパチと心地よい音を立てて薪が爆ぜ、リビングには食後の温かいハーブティーの香りが漂っていた。

昼間のドタバタが嘘のように穏やかな時間が流れていたその時――ミナトの胸ポケットに収められていた神具スマホが、突然けたたましいファンファーレを鳴り響かせた。

ピロリロリロリロリロ――ンッ!!

「うわっ!? な、なんだ!?」

ミナトが慌ててスマホを取り出すと、画面には目も眩むような七色の光彩とともに、ド派手なポップアップウィンドウが画面いっぱいに展開されていた。

そこには、神界の神殿でポテトチップスを抱えながら満面の笑みを浮かべる、金髪碧眼の美少女神――ルディナの姿が映し出されている。

『【特別天界クエスト発令!!】

 対象:配信者・葉山湊

 指令内容:日本の至高の精神文化たる【少女マンガ】を現地のヒロインたちに回読させ、極上の悶絶顔をお届けせよ!

 達成報酬:500,000天界ポイント & 新機能アンロック!』

「ル、ルディナさん……!? 急に何を言い出すんですか!」

ミナトが思わず画面に向かって叫ぶと、天界コメント欄に猛烈な勢いで文字が流し込まれた。

【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『ふっふっふ、驚いたかねミナトきゅん! 我が司る文芸の力、そして日本の胸キュン文化の真髄を異世界に布教する時が来たのじゃ! ウブで可愛い聖女ちゃんや魔女さんに、至高の少女マンガを叩き込んで悶絶させるのじゃーっ!(50,000pt赤スパ寄付)』

【愛の女神フィリア】:『まああああっ! なんという素晴らしいクエストですの! ルディナ様、最高のアシストですわーーっ!!(50,000pt赤スパ寄付)』

【主神アルト】:『ルディナのやつ、完全に自分の趣味全開で草www』

「五、五十万ポイント……! 背に腹は代えられないか……」

今後の樹海探索や馬車の魔導燃料代を考えれば、この破格の報酬を見逃す手はない。

ミナトは観念し、天界通販アプリを素早く操作して『国民的学園少女マンガ・愛蔵版全巻セット』をカートに入れて購入ボタンを押した。

淡い光の粒子がテーブルの中央に収束し、ドンッと重厚な音を立てて現れたのは――美しい装幀が施された、全十巻に及ぶ真新しい単行本だった。

表紙には、夕暮れの街並みを背景に、見つめ合う美少年と美少女の姿が繊細なタッチで描かれている。

「まあ……! なんて綺麗で緻密な絵物語ですの……!」

最初に身を乗り出したのはルミアだった。

「絵本……? いいえ、台詞と絵が細かく組み合わさった、見たこともない形式の書物ね」

隣に座るエレナも、紫水晶の瞳を瞬かせて興味深そうに視線を落とす。

「ミナトさん、これ読んでいいの〜?」

ツインテールをぴょこんと揺らした妹シエラが、一巻を手に取ってテーブルの上に広げた。

母ミレイユもノーブルネイビーのドレスの裾を上品に整え、静かにカップを傾けながら視線を注ぐ。

さらに、主の安全を護るべく仁王立ちしていたシルヴィアまでもが、腕組みをしたまま怪訝そうに眉をひそめてページを覗き込んだ。

「ふむ……異世界の絵巻物か。我が主が取り寄せたからには、何か深遠なる意図があるに違いない」

女性陣全員が息を呑み、ページがパラパラとめくられていく。

吹き出しの文字は、神具の翻訳機能によって全員が読める共通語へと自然に変換されていた。

描かれていたのは、ごく普通の女子高生と、容姿端麗だがぶっきらぼうな同級生男子の、じれったい恋模様。

最初は物珍しそうに眺めていた一同だったが――第一話の終盤、夕暮れの放課後の教室のシーンに差し掛かった瞬間、アトリエの空気が一変した。

男子生徒が、立ち去ろうとするヒロインの肩越しに、無言で片腕を壁へと突き立てる。

ドンッ、という擬音とともに、逃げ場を完全に塞がれたヒロイン。

至近距離で見つめ合う二人。男子生徒が耳元へと顔を寄せ、低く呟く――『……勘違いすんなよ。俺が好きなのは、お前だけだ』。

その瞬間だった。

「きゃあああああっっっ!?!?」

静かなリビングに、ルミアの悲鳴にも似た黄色い絶叫が響き渡った。

「『お、お前だけだ』って……! 好、好きだって言っちゃいましたわーっ! まだ第一話ですのに、こんな至近距離で、はっきりと……っ!!」

ルミアは真っ赤に染まった顔を両手で覆い、ソファの上でクッションを抱きしめて足をバタバタと激しく暴れさせた。聖女の清楚な威厳は完全に消し飛んでいる。

そして、それ以上に甚大な被害を受けていたのが、隣のエレナだった。

「ひゃぅぅぅぅぅっっ!?!? な、ななな、何なのですかこの『かべどん』という行為は……っ!? 腕で退路を塞いで、逃げられないようにして見つめ合うだなんて……そ、そんな破廉恥な近接密着、心臓が爆発してしまいますわぁぁぁ!!」

ボッフオオオオオンッ!!

頭頂部から凄まじい勢いで真っ白い蒸気を噴き上げ、エレナは顔面を熟れたトマトのように真っ赤にしてソファに沈み込んだ。男性免疫ゼロの純情魔女にとって、日本の王道ラブコメの直撃は致死量に等しかったらしい。

「あはははっ! ルミア様もお姉ちゃんも顔が真っ赤〜! お姉ちゃん、湯気で前が見えなくなってるよ〜!」

シエラがお腹を抱えて大爆笑し、ツインテールを揺らして姉の肩をペチペチと叩く。

だが――そんな甘酸っぱい阿鼻叫喚の中で、一人だけ全く異なる反応を示している者がいた。

「…………ほう」

腕組みをしたまま、ページを食い入るように睨みつけていた近衛騎士団長・シルヴィアである。

その金色の瞳には、一切の照れや動揺はなく、戦場に立つ百戦錬磨の武人だけが放つ鋭利な光が宿っていた。

「腕一本を壁に突き立てることで、相手の左右の回頭と後退を完全に封じ……ゼロ距離から視線による威圧を加えることで、心拍数を跳ね上げ呼吸を乱させる。さらに、急所である首筋へと顔を寄せ、逃走の意志を完全に粉砕する拘束術式……!」

シルヴィアは深く頷き、感嘆の息を漏らした。

「なんと無駄のない、高度な近接制圧戦術なのだ……! 相手に一切の武器を抜かせず、無血で精神を屈服させる至高の戦法……! 我が主を外敵から護るため、私も一刻も早くこの『かべどん』の真髄を会得せねばならん!」

「団長、それ格闘技じゃないですからね!? 軍事演習の教本みたいに読まないでください!!」

ミナトが間髪を入れずに全力でツッコミを入れる。

その時、リビングの重厚な木の扉が、ギギィ……と不気味に数センチだけ開いた。

隙間から、二つの青い瞳が恐る恐るリビングを覗き込んでいたのだ。

「ひぃっ……! お、おいルシアン、あれを見るんだ……!」

青ざめた顔で震えているのは、父のエルヴァンだった。

「な、なんだいあの禍々しい書物は……! 開いた瞬間に、ルミア様とエレナが顔面を紅潮させて激しい錯乱状態に陥り、騎士団長殿は殺気を帯びた目で何かをブツブツと呟いているぞ……! 読んだ者の精神を破壊し、狂気に陥れる未知の古代呪具なのかい……!?」

学者としての観察眼が完全に裏目に出て、恐怖にガタガタと肩を震わせる名誉教授パパ。

その隣で、冷めた目をした弟のルシアン(十一歳)が、深く重いため息をついた。

「……父さん、落ち着いてください。あれはただの異国の恋愛絵本です。うちの姉貴たちが純情すぎて勝手に自爆しているだけです」

「えっ、そ、そうなの……? だ、だがエレナの頭から煙が出ているぞ!?」

「いつものことです。それより父さん、母さんを見てください」

ルシアンが視線を向けた先――テーブルの正面で、静かにページをめくり終えた母ミレイユがいた。

艶やかな黒と紫色の髪に指先を添え、ノーブルネイビーの服の胸元で手を組んだ美魔女ママは、紫水晶の瞳を怪しく細めていた。

「なるほどね……。好いた相手の動揺を誘い、懐に潜り込んで優位に立つ心理制圧……。実に合理的で美しい戦略だわ」

元・王国筆頭軍師の唇が、三日月のように妖艶に吊り上がった。

立ち上がったミレイユの視線が、ツッコミに疲れて肩を落としていたミナトへと、ロックオンされるように向けられた。

(……え? ちょ、ミレイユさん、なんで俺を見てるんですか……!?)

ミナトの背筋に、冷たい汗がツーッと伝った。

天界のスマホ画面が、狂ったような光を放ちながら激しく震動し始める。

【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『聖女ちゃんと魔女さんの悶絶顔たまらんんんん!! からの騎士団長の戦術的誤読草ァァァ!(100,000pt赤スパ寄付)』

【主神アルト】:『パパと弟が扉の隙間からビビり散らかしてて腹筋崩壊したwww』

【愛の女神フィリア】:『そしてママ様のあの獲物を狙う目……! 次回、絶対にとんでもないことが起きますわーーっ!!(100,000pt赤スパ寄付)』

不穏な予感を孕みながら、少女マンガが巻き起こす嵐は、さらなる大混乱の後半戦へと突き進もうとしていた。

第56話を最後までお読みいただきありがとうございました!

夕食後のアトリエで始まった、ルディナの初天界クエスト『少女マンガ回読会・前編』をお届けいたしました!

日本の国民的少女マンガが炸裂し、夕暮れの教室での『壁ドン&告白』に、聖女ルミアが足をバタバタさせて悶絶し、エレナが顔面大沸騰で頭から白煙を吹き上げましたね!

純情すぎる二人のリアクション、本当に可愛すぎました!

そして、生真面目すぎる女騎士シルヴィアによる、まさかの「近接拘束術式(壁ドン)」としての戦術的誤読!

一切ブレない武人気質に、ミナトのキレのあるツッコミが冴え渡りました!

さらに扉の隙間から覗き見て「精神を破壊する呪具か!?」と怯える学者パパ・エルヴァンと、冷静に解説する弟ルシアンの男同士のやり取りもシュールでしたね!

しかし、ラストで立ち上がった元軍師ママ・ミレイユの妖しい微笑み――!

彼女の狙いは、いったい何なのか……!?

次回――第57話もよろしくお願いいたします!

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