第55話:樹海の魔女たち集結! ユリアスの水晶柱と超吸水マイクロファイバータオル
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!
前回の第54話では、ローゼンバーグ家との爆笑の初対面をお届けいたしました!
名誉教授の父エルヴァンと、元・筆頭軍師にしてユリアス公爵の大恩師である母ミレイユという規格外すぎる両親が登場!
策士ママによる「特製・活力倍増ポーション」と「客間雨漏り偽装」の外堀埋めに加え、コハクが妹シエラそっくりに変身した【ダブルツインテール】による容赦なき姉いじりで、エレナが顔面大沸騰の逃走劇を繰り広げましたね!
そして迎える第55話は、アトリエでの歓迎騒動が一段落し、本来の目的である「魔導水晶柱の改良プロジェクト」が本格始動いたします!
近隣の若い魔女たちが集まる中、ミナトがユリアスから預かった【ポータブル型・小型魔導水晶柱(試作機)】を提示!
先ほどまで赤面自爆していたエレナが、一瞬にして鋭利な知性を宿す「プロの天才魔道学者モード」へとスイッチ!
術式の構造的欠陥を見抜き、次なる目的地となる樹海深部の古代遺跡探索が決定します!
さらに夕暮れ時、冷水での薬草洗浄で手荒れと濡れに凍える魔女たちへ、ミナトが天界通販から取り出したのは――現代科学の結晶『超吸水マイクロファイバータオル』!
軽く触れるだけで一瞬で水分が消え去る奇跡の布に、魔女たち全員が骨抜きに!?
知的な魔導開発と、ミナトの生活サポート無双が光る第55話を、どうぞお楽しみください!
リビングでの嵐のような歓迎騒動がようやく一段落した頃、アトリエの玄関扉がコンコンと控えめにノックされた。
「エレナ様、エルヴァン先生! 夕方の薬草の納品と、蒸留器をお借りしに参りました!」
扉を開けると、そこにはバスケットいっぱいに摘みたての薬草を抱えた、十代半ばから後半ほどの若い少女たちが数名立っていた。
とんがり帽子をかぶり、軽装のローブをまとった彼女たちは、樹海に点在する集落からアトリエの設備を借りに来ている見習いの魔女たちだった。
「あら、リリィにマヤ。入ってちょうだい。ちょうど今、王都から大切なお客様がいらしたところなのよ」
母ミレイユに促され、一行はリビングから地下へと続く幅広の石階段を降りていった。
地下に広がっていたのは、吹き抜けのリビング以上の広さを持つ、重厚な石造りの大工房兼研究室だった。
無数の棚には鉱石や乾燥植物が整然と並び、中央の作業台では複雑なガラス管が組み合わさった大型の蒸留器が、コトコトと琥珀色の液体を沸き立たせている。
作業台の周りに一同が集まると、ミナトは肩から提げていた黒魔獣革の特注収納バッグに手を伸ばした。
「エレナさん、実は王都を発つ前に、ユリアス公爵から預かってきたものがあるんです」
「ユリアス坊やから……? いったい何かしら」
ミナトが収納バッグから取り出し、分厚い布の結び目を解いて作業台の中央へ置いたのは――高さ五十センチほどの、鈍い銀色に輝く八角形の金属台座だった。
その天面には、淡く青白い光を帯びた水晶が据えられており、側面には精巧な歯車と、指で押し込める形状の小さな魔導ボタンが組み込まれている。
「これ……王都の大通りに設置されているという、神託水晶の小型版ですか!?」
「持ち運べるサイズなんて、初めて見ました……!」
見習い魔女たちが目を丸くしてどよめきの声を上げた。
「ユリアスさんが開発した【ポータブル型・小型魔導水晶柱の試作機】です。これを樹海や地方の村に置くことで、誰もが俺たちの配信を視聴できるようにしたいそうなんですが……まだ実用化には課題があるらしくて、エレナさんに改良を頼みたいと」
ミナトの説明を聞いた瞬間――先ほどまでリビングで顔を真っ赤にしてジタバタしていたエレナの空気が、ガラリと一変した。
紫水晶の瞳から先ほどまでのウブな気配が完全に消え去り、研ぎ澄まされた刃のような冷徹な知性が宿る。
大人の色香漂う魔女の佇まいの中に、大陸屈指の学究だけが持つ圧倒的な威厳が立ち込めた。
「……術式展開、解析。全属性共鳴理論、第三節を展開」
エレナがすっと白く細い指先を水晶にかざし、滑らかな声で呪文を紡ぐ。
次の瞬間、水晶の周囲に幾何学的な幾重もの紫色の魔法陣が浮かび上がり、目にも留まらぬ速さで回転を始めた。
「すごい……一瞬で無詠唱の多重解析陣を展開したわ……!」
見習い魔女のリリィが息を呑む。
エレナは指先を滑らせ、台座の金属に刻まれた魔導回路を透視するように見つめながら、滑らかな口調で課題を指摘した。
「流石はユリアスさんね。極限まで術式を圧縮して小型化に成功しているわ。……けれど、この構造ではダメね。受信感度を保つために、周囲の大気中からではなく、触れた術者本人の魔力を強制的に吸い上げる設計になっているわ。これでは魔力の少ない一般の村人や子供が扱えば、数分で魔力枯渇で倒れてしまう」
エレナは作業台にあった羽ペンを手に取ると、白紙の羊皮紙へ猛烈なスピードで改良術式と立体回路図を書き殴り始めた。
「台座の循環回路を三重スパイラル構造に組み替え、周囲の自然魔力を自動で集約する自立稼働型に書き換えるわ。そうすれば、誰でも地面に置くだけで受信できる【簡易設置型】に生まれ変わる。……ただし、そのためには一つだけ、絶対に足りない素材があるわ」
「外部魔力を吸収し、術式を半永久的に自立循環させるための核……【古代星霊鉱石】だね、エレナ」
傍らで見守っていた父エルヴァンが、穏やかな声で頷いた。
「ええ、お父様。樹海深部にある古代遺跡【シルヴァリス霊廟】の最下層にしか眠っていない希少鉱石よ。危険な魔獣が跋扈する場所だけれど、あれさえ手に入れば、世界中の誰もがミナトくんの配信をボタン一つで楽しめるようになるわ!」
エレナが自信に満ちた笑みを浮かべて胸を張る。
その堂々たる姿に、シルヴィアが頼もしげに腰の剣の柄に手を当てた。
「深部の古代遺跡か。どんな魔獣が待ち受けていようと、我が剣で主の道を切り拓いてみせよう」
「ふふ、ミナトさん、うちのエレナ、研究になると格好いいでしょう?」
母ミレイユが横からクスリと微笑み、エレナが「お、お母様、今は真面目なお話の最中ですっ!」と微かに頬を赤らめる。
研究の方針が決まり、見習い魔女たちは自分たちの薬草調合の作業へと戻っていった。
だが、それからしばらくした時だった。
「ひゃっ、冷たい……!」
工房の隅の水場で、少女たちの悲鳴のような声が上がった。
見ると、清流から引き込んだ水槽の冷水で、見習い魔女たちが大量の薬草を素手で洗浄していた。
樹海の夕暮れ時は急激に気温が下がり、湧き水は氷のように冷たい。
少女たちの手先は赤くかじかみ、袖口や長い髪は跳ね返った水でびしょ濡れになっていた。
使い古された粗末な麻のタオルで何度も拭いているものの、湿った麻布は水分を吸わず、床にポタポタと冷たい水滴が滴り落ちていた。
「うぅ……樹海は湿気が多いから、一度服や髪が濡れると夜まで乾かないのよね……」
「指先が荒れてヒリヒリ痛いよぉ……早く終わらせたいのに、冷たくて感覚がなくなってきちゃった……」
寒さに肩を震わせる少女たちを見て、ルミアが心配そうに駆け寄った。
「皆様、大丈夫ですか……? 少し手を温める祈りを捧げましょうか」
「待って、ルミアさん。それなら俺に任せて」
ミナトがすかさず神具スマホを取り出し、天界通販アプリを素早くタップした。
『購入完了:極細繊維・超吸水マイクロファイバー速乾タオル(パステルカラーお得用10枚セット)』
淡い光の粒子とともに、ミナトの両腕いっぱいに、ふんわりと柔らかそうなパステルピンク、ミントグリーン、ラベンダー色の極上タオルが現れた。
「みんな、これを使って! ゴシゴシ擦らなくていいから、濡れた手や髪に軽く当てるだけでいいよ!」
「えっ……? この布、すごくふわふわ……」
見習い魔女のリリィが、恐る恐るピンク色のタオルを受け取り、びしょ濡れになっていた自分の長い髪を包み込んだ。
そして、ミナトに言われた通り、上から優しくきゅっと押さえた――その瞬間だった。
「……えっ!? うそ、髪の毛の水気が、一瞬で消えた……!?」
リリィが信じられないといった様子で目を見開いた。
滴り落ちていた水分が、まるで魔法のようにタオルへと吸い込まれ、髪がサラサラに乾いていたのだ。
「本当だ! 手についた水滴も、触れただけで完全に消えちゃった……!」
「なにこれ、ふわっふわの雲に触れているみたい……! 全然冷たくない、むしろじんわり温かいよ!」
他の魔女たちも次々とタオルを手に取り、歓喜の声を上げた。
ルミアも自分の手を拭いてみて、目を輝かせた。
「まあ……! 軽く触れるだけで水滴を吸い尽くしてしまうなんて、まるで奇跡の布ですわ! 肌触りも信じられないほど優しくて、ずっと触れていたくなります!」
「ふふ、日本のマイクロファイバータオルだよ。極細の繊維が水分を一瞬で吸い上げてくれるんだ。速乾性もあるから、干しておけばあっという間に乾くよ」
ミナトが笑うと、エレナも自分の濡れた前髪にタオルを押し当て、目を丸くした。
「な、なんて緻密な織り構造なの……! 魔力も付与されていないのに、純粋な物理構造だけでこれほどの吸水力を発揮するなんて……ミナトくんの世界の技術は、本当に底が知れないわ!」
その横で、コハクがテーブルの上に置かれていたラベンダー色のタオルを一枚器用に巻き取り、ミノムシのように包まっていた。
「ふあぁ……柔らかくて温かいのう……。極上の寝床じゃ……」
そのまま丸くなって喉をゴロゴロと鳴らし始める神獣。
ミナトの胸ポケットの中で、スマホがピロピロと心地よい音を立てて震動した。
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『エレナさんの知的な魔法解析かっこよすぎ! からのマイクロファイバータオルの吸水力無双草! 実用性高すぎて全女子が泣いて喜ぶやつじゃん!(50,000pt赤スパ寄付)』
【武神アーレス】:『己の知恵と手腕で仲間を支える、それもまた立派な戦士の道であるな!(50,000pt赤スパ寄付)』
【愛の女神フィリア】:『献身的な気配りで乙女たちの心を掴むミナト様……! 全乙女が落ちてしまいますわーーっ!(50,000pt赤スパ寄付)』
【主神アルト】:『魔女たち一瞬で懐柔されててワロタ。ミナトは相変わらず胃袋と日用品で無双するなww』
「ミナトさん、本当にありがとうございます!」
「こんな素晴らしいもの、大切に使わせていただきます!」
見習い魔女たちに囲まれ、満面の笑みで感謝されて照れ笑いを浮かべるミナト。
その様子を、母ミレイユが「ふふ、ますます逃がせない優良物件ね」と満足そうに眺めていた。
だが――その平穏な空気を切り裂くように、ミナトのスマホの画面に突如としてド派手な七色のポップアップが割り込んできた。
『【特別天界クエスト予告】:遊戯と文芸の女神ルディナより、至急のミッションが発令されます!』
(……え? ルディナさん、一体何を企んでるんだ……!?)
不穏な予兆にミナトが息を呑む中、アトリエの窓の外では、樹海の深い夜が静かに幕を開けようとしていた。
第55話を最後までお読みいただきありがとうございました!
アトリエの地下工房を舞台に、いよいよ本格始動した「魔導水晶柱の改良プロジェクト」!
ユリアスから託された小型魔導水晶柱を目にした瞬間、先ほどまでのポンコツ自爆が嘘のように、鋭利な知性と圧倒的な理論構築力を発揮するエレナの「プロの魔道学者モード」をお届けいたしました!
術式の構造的欠陥を見抜き、誰でも地面に置くだけで使える【簡易設置型】への道筋を立てる姿、めちゃくちゃ格好よかったですね!
そして冷水での薬草洗浄で凍える見習い魔女たちを救ったのは、ミナトが天界通販から取り寄せた現代科学の結晶『超吸水マイクロファイバータオル』!
触れただけで一瞬にして水分を吸い尽くし、ふわふわの雲のような肌触りで魔女たち全員を骨抜きにする、ミナトならではの生活サポート無双が炸裂いたしました!
コハクもミノムシのように包まってすやすや眠りかけて可愛かったですね。
次回――第56話もどうぞよろしくお願いいたします!




