第54話:ローゼンバーグ家の歓迎! 策士な母と、ツインテール妹の容赦なき姉いじり
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前回の第53話では、特注馬車を手際よくガレージへ格納し、古代シルヴァリス樹海の洋館アトリエへ無事到着!
第2章のメインヒロインである美貌の天才魔道学者、エレナ・ローゼンバーグが満を持して初登場いたしました!
しかし、徹夜の片付けで限界を迎えていたエレナは、散らかった玄関で転びそうになったところをミナトに抱きとめられ、恋人いない歴=年齢のウブさが災いして顔面から猛烈な蒸気を噴き上げ大自爆してしまいましたね。
そして迎える第54話は、ラストに姿を現したツインテール妹シエラに導かれ、広々としたリビングへ!
ここで一行とローゼンバーグ一家が揃って、正式な自己紹介を交わします!
そこで明かされる両親の規格外すぎる正体――!
王立学術院の最高名誉教授である父エルヴァンと、なんと元・王国筆頭軍師にしてユリアス公爵の育ての親である母ミレイユ!
伝説の軍師ママが、好青年のミナトを一目で気に入って光速で外堀を埋めにかかり、妖しい「特製・活力倍増ポーション」まで勧めてきて大波乱!?
さらにツインテール妹シエラの容赦なき姉いじりに、コハクが七色の尻尾を光らせて【もう一人のシエラ】へ変身!?
ダブルツインテールによる猛烈な煽りに、エレナの顔面が再び大爆発する爆笑の歓迎回を、どうぞお楽しみください!
散らかり放題だった玄関ホールを抜け、妹のシエラに案内されて足を踏み入れた先は、驚くほど広々とした木造のリビングだった。
高い吹き抜けの天井からは柔らかな木漏れ日が差し込み、壁際には赤々と火が灯る石造りの暖炉が据えられている。
部屋の壁という壁を埋め尽くしているのは、天井まで届く本棚にびっしりと詰め込まれた分厚い魔導書や羊皮紙の束、そして丁寧に吊るされた色とりどりの乾燥薬草。
奥の作業机には、複雑なガラス管が入り組んだ蒸留器や精密な天秤が並び、いかにも高名な研究者の工房といった厳かな雰囲気を漂わせていた。
使い込まれた無垢材の巨大なローテーブルを挟み、冷たいミントのハーブティーが人数分並べられる。
ようやく壁際から戻ってきたものの、まだ耳の先を林檎のように赤く染めているエレナを交え、まずは全員で改まった名乗り合いを行うことになった。
ミナトは居住まいを正し、一行を代表して一礼した。
「改めまして、王都より参りましたミナトです。神具による配信者と、一行の料理番を務めております」
「神聖アステリア大聖堂の聖女、ルミエラ・エル・ヴァレンティアと申します。どうぞルミアとお呼びくださいませ」
「アステリア近衛騎士団長、シルヴィアだ。我が主ミナト殿と、聖女様の護衛を務めている」
テーブルの端にちょこんと座ったコハクが、七色の尻尾をピンと立てて胸を張る。
「かっかっか! 妾は変幻の神獣、コハクと申す! よろしく頼むのじゃ!」
礼儀正しく落ち着いた挨拶に、テーブルの向かい側に座るローゼンバーグ一家がそれぞれ頷いた。
最初に口を開いたのは、柔らかな銀灰色の髪に、穏やかで澄んだ青い瞳をたたえた温和そうな男性だった。
「王都からはるばるよく来てくれたね。私がこの館の主であり、樹海の植物や古代生態系を研究しているエルヴァン・ローゼンバーグだ」
その名が告げられた瞬間、シルヴィアの金色の瞳が見開かれ、ルミアが息を呑んだ。
「エルヴァン・ローゼンバーグ博士……!? 王立学術院の最高名誉教授にして、大陸中の植物分類学の基礎を打ち立てられた、あの伝説の御方でありますか!?」
「大聖堂の薬草教本にも、博士のお書きになった論文が数多く引用されておりますわ……!」
思わぬ超大物の登場に恐縮するミナトたちに対し、エルヴァンは人の良さそうな笑みを浮かべて手を振った。
「はは、昔の話だよ。今はこうして樹海の自然に囲まれて、細々と標本を集めている隠居学者さ。……おや、ところでミナト君、君の衣服から漂うこのハッカと柑橘を組み合わせた爽快な芳香は……樹海の吸血害虫を寄せ付けない特殊な配合かい? 非常に興味深い。魔力反応がないのにどうして防虫効果が発揮されるのか、ぜひ詳しく成分を――」
青い瞳を少年のように輝かせ、前のめりになって学者としての知的好奇心を爆発させかけるエルヴァン。
だが、その言葉は、隣に座る女性の冷ややかに澄んだ一言によって遮られた。
「ちょっとあなた。初対面のお客様に、いきなり研究オタク全開で絡んではダメよ」
艶やかな黒と紫色の髪を優雅にまとめた、エレナによく似た美貌の女性。
紺色の落ち着いた服に身を包んだ母ミレイユが、紫水晶の妖艶な瞳を細めて夫を一瞥していた。
「そして私が、エレナの母のミレイユよ。昔は王宮で軍師をやったり、王立魔導アカデミーで総長をやったりしていたけれど、今はただのしがない主婦よ」
「……は?」
シルヴィアが、間抜けな声を漏らした。
次の瞬間、近衛騎士団長の顔からサァッと血の気が引き、ガタッ! と凄まじい勢いで立ち上がると、その場で背筋を凍りつかせて直立不動の最敬礼を取ったのだ。
「ま、まさか……! かつて隣国の侵略軍十万を、たった数枚の策謀書と魔導結界だけで無血降伏へと追い込み、さらにかのユリアス公爵閣下を筆頭魔導師へと育て上げられた……伝説の【紫苑の知恵袋】、ミレイユ元総帥閣下でありますか!?」
「あらあら、近衛の騎士長さんね。そんな古い肩書で呼ばないでちょうだい。肩が凝るわ。ユリアス坊やも元気にやっているかしら?」
カップを傾けて微笑むミレイユの纏う底知れない気迫に、シルヴィアは「は、ははっ! 息災にされております!」と額に冷や汗を浮かべて直立したまま微動だにできない。
あの最強の女騎士をここまでビビらせる人物がいたのかと、ミナトは背筋を正した。
しかし――伝説の元軍師の紫水晶の瞳が、ミナトをじっと値踏みするように捉えた瞬間、その妖艶な唇が三日月のように吊り上がった。
(……礼儀正しく誠実な立ち居振る舞い。聖女様からも騎士長からも絶大な信頼を寄せられている……。申し分ないわ、百点満点の優良物件ね!)
ミレイユは白い指先を口元に当て、満面の笑みを浮かべて身を乗り出してきた。
「それにしても……なんて礼儀正しくて素敵な好青年かしら! ねえミナトさん、うちのエレナはあんな見た目ですけれど、研究一筋で殿方とお付き合いした経験がゼロで、夜はとっても寂しがり屋なのよ?」
「ぶふっっ!? お、お母様っ!? な、何を初対面の殿方に仰っているのですかぁぁ!?」
吹き出しそうになったハーブティーを慌てて手で押さえ、エレナが真っ赤になって抗議の声を上げる。
だが、歴戦の軍師の猛攻は止まらない。
ミレイユは服のポケットから、妖しく虹色の光を放つ小さな薬瓶を取り出し、テーブルの上へトンと置いた。
「ねえミナトさん、これ……私が昔調合した【特製・活力倍増ポーション】よ♡ 一滴飲むだけで一晩中目が冴え渡って、疲れ知らずで元気いっぱいになれる秘薬なの。エレナと仲良くなるために、寝る前に二人で一杯いかがかしら?」
「明らかに飲んじゃいけない色と効能をしてますよね!?」
ミナトが全力でツッコミを入れる中、ミレイユはトドメとばかりに微笑んだ。
「ふふ、丁度いいわ。今夜はあいにく、客間の天井の雨漏りが酷くて使えないの。だからミナトさん、エレナの部屋のベッドを使ってね♡」
「お、おいミレイユ! 客間の屋根なら昨日私が完璧に修理したばかりだろう! 初対面のミナト君を困らせるんじゃない……!」
「あらあなた。余計な口を挟むと、向こう一週間夕飯抜きよ?」
「ひぃっ……! す、すまないねミナト君、うちの妻が……」
高名な名誉教授パパは一瞬で小さくなり、眉を下げてハーブティーを啜るしかなかった。
家庭内の絶対的な階級社会を前に、ミナトは乾いた笑いを浮かべるしかない。
「あはは! お母さんナイス〜! お姉ちゃん、顔が真っ赤を通り越して紫色になってるよ〜!」
ぴょこんと揺れる金褐色のツインテールを弾ませながら、シエラが身を乗り出してニヤニヤと姉の脇腹を小突いた。
「妹のシエラでーす! ミナトさん、うちの姉は魔導の才能だけは天才ですけど、私生活と恋愛偏差値は壊滅的なポンコツなんですよ? さっきも玄関先で抱きしめられて大爆発してたし! でもスタイルだけは抜群だから、返品不可でお嫁に引き取ってくれません?」
「シエラっ!? だ、抱きしめられたわけじゃないわ、私が足元を滑らせてミナトくんに支えていただいただけで……って、返品不可って何よぉぉぉ!!」
ぼふんっ! と頭頂部から再び白煙を吹き上げ、エレナがソファの上で両手をバタつかせてジタバタと暴れる。
その横で、分厚い魔導書をパタンと閉じた少年――弟のルシアンが、深く重いため息をついてミナトを見つめてきた。
「……弟のルシアン(十一歳)です。ミナトさん、見ての通り父さんは研究バカで母さんは謀略好き、次女はお調子者です。うちの常識人は僕しかいません。あんな中身がピュアすぎる残念な長女相手に、本当にお疲れ様です。男として深く同情します」
「ルシアン君、十一歳にしてその達観した目は何かな……!?」
思わず男同士の奇妙な連帯感を覚えるミナト。
だが、ルミアはそれどころではなかった。
「エレナさんの部屋に泊まるだなんて……いけませんわ、ミナトさんは私の……!」
顔を真っ青に染めたルミアが、ミナトのブレザーの裾をぎゅっと力任せに握りしめ、上目遣いで必死に訴えかけてきたのだ。
テーブルの上のドタバタ劇を眺めていたコハクが、目を細めてニヤリと笑った。
「かっかっか! 伝説の軍師と聞いて身構えておれば、実に愉快な家族じゃのう! 妾もひとつ、悪ノリに乗っかるとするか!」
コハクが七色の尻尾をキランと光らせると、ボフンッ! と白い煙がテーブルの上に立ち込めた。
煙が晴れた瞬間――そこには、金褐色のツインテールをぴょこんと揺らした、【もう一人のシエラ】が腰に手を当てて立っていた!
偽シエラ(コハク)は、本物のシエラと肩を組み、小悪魔のような笑みを浮かべてエレナを指差した。
「そうそうお姉ちゃん! ぐずぐずしてないで、今すぐミナトさんの膝の上に座っちゃいなよ〜♡ 既成事実作っちゃえ〜!」
本物のシエラも大喜びで悪ノリに加勢する。
「あはは! 私が二人いる! そうだよお姉ちゃん、膝枕してもらいなよ〜!」
「ひゃあああああっっ!? シ、シエラが二人ぃぃぃ!? やめなさぁぁぁい! 私をからかわないでぇぇぇっ!!」
ボッフォオオオンッ!!
エレナは顔面を完全に沸騰させ、両手を激しく振り回しながらリビング中を逃げ惑う大パニックに陥った!
ミナトの胸ポケットの中で、神具スマホが狂ったように震動する。
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『ママさん国を救った伝説の軍師なの!? 肩書ヤバすぎなのにやってること完全にオカンじゃん!』
【愛の女神フィリア】:『特製ポーションと客間雨漏り! お母様、国家レベルの完璧な作戦ですわーーっ!!』
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『ダブルツインテール煽り草ァァァ!! コハクちゃんナイス変身すぎ!』
【主神アルト】:『騎士団長ちゃんが直立不動になってて草www 家族総出でエレナを追い詰めるの面白すぎるww』
「み、皆さん、とりあえず落ち着いて……!」
逃げ惑う娘と煽り立てるダブルツインテールを前に、父エルヴァンがおろおろとお茶を配り直す。
あまりにも賑やかで、規格外すぎるローゼンバーグ家の歓迎。
笑い声と絶叫が響き渡る中、一行の樹海滞在は、嵐のような大騒動とともに幕を開けたのだった。
第54話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
アトリエのリビングへ案内され、全員揃って正式な自己紹介を交わした一行!
そこで明かされたローゼンバーグ夫妻の衝撃的な肩書――!
王立学術院名誉教授の父エルヴァンと、元・王国筆頭軍師にしてユリアス公爵の育ての親である母ミレイユ!
あの最強の女騎士シルヴィアが直立不動で震え上がるほどの生ける伝説でしたね!
しかし、伝説の軍師ママが繰り出したのは、怪しすぎる「特製・活力倍増ポーション」と「客間の雨漏り偽装」による光速の外堀埋め!
さらにツインテール妹シエラの容赦なき姉いじり、十一歳にして達観した弟ルシアンの同情、そしてミナトを取られまいと服の裾をぎゅっと握るルミアの焦り!
ラストにはコハクがシエラそっくりに変身し、ダブルツインテールによる猛烈な煽りでエレナが顔面大沸騰の逃走劇を繰り広げるという、大爆笑の歓迎回となりました!
次回――第55話も引き続きどうぞよろしくお願いいたします!




