第53話:森の隠れ家アトリエ到着! 妖艶な魔女エレナの顔面大噴火
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前回の第52話では、神代の原生林【古代シルヴァリス樹海】へと足を踏み入れ、樹上から急襲してきた十五メートル級の巨大魔獣・樹海大蛇を、近衛騎士団長シルヴィアが神速の白銀抜刀で空下一刀両断する圧倒的武力をお届けいたしました!
さらに大量に押し寄せてきた毒蚊や吸血ヒルに対し、ミナトが天界通販から最高濃度ディート配合の『強力虫除けミスト』を噴射!
不快な害虫たちを一網打尽にして快適な森のドライブを成立させる、ミナトの生活サポート無双が炸裂しましたね!
そして迎える第53話は、ついに目的地である樹海の洋館アトリエへ到着!
第2章のメインヒロイン――美貌の天才魔道学者、エレナ・ローゼンバーグが満を持して初登場いたします!
大人の色気と母性を漂わせる妖艶な美女……のはずが、ミナトがやって来ると知ってパニックになり、徹夜で片付けをしたせいで目の下にドス黒いクマを作ってヘロヘロ状態!?
さらに散らかり放題の玄関で転びそうになったところをミナトに優しく抱きとめられ、恋人いない歴=年齢のピュア魔女が全身から猛烈な蒸気を噴き出して大自爆!?
新神ルディナも大歓喜の赤スパを連投する、笑いと胸キュン全開の初対面回を、どうぞお楽しみください!
強力虫除けミストの爽やかなハッカの香りに包まれながら、特注幌馬車は樹海街道の奥へと進んでいった。
鬱蒼とした巨木の天蓋が不意に途切れ、木立の切れ間から、初秋の柔らかな陽光がキラキラと降り注ぐ。
視界が開けた先には、澄み切った清流がサラサラと心地よい水音を立てて流れていた。
その川辺の広大な敷地に、周囲を頑丈な木製の柵で囲まれた、見事な木造二階建ての洋館が静かに佇んでいた。
赤茶色の屋根には石造りの煙突が据えられ、外壁には青々としたツタが美しく絡みついている。
庭先には、淡い燐光を放つ珍しい薬草や青いキノコが几帳面に区画分けされて植えられており、森の隠れ家という言葉がこれ以上なく似合う趣だった。
「我が主、敷地の脇に立派な馬車小屋があるぞ。あちらへ馬車を入れよう」
御者台のシルヴィアが手綱を巧みに操り、敷地の東側に建てられた大きな木造ガレージの前へと馬車を寄せた。
中を改めると、大型の幌馬車が二台は余裕で収まる広さがあり、干草の束や真新しい水桶も整然と並んでいる。
シルヴィアは手際よく二頭の白馬の金具を解き、馬車をガレージの奥へと滑り込ませた。
「よし、梁も頑丈で雨風の心配は皆無だ。馬たちにも水と飼い葉を与えた。馬車はこちらへ置いておけば問題あるまい」
「ありがとうシルヴィアさん、手際がいいね」
「ふっ、主の足となる馬車の保全も騎士の務めだ」
ミナトは昨夜ギルドから貰った黒魔獣革の特注収納バッグを肩にかけ、ルミア、シルヴィア、そして肩に乗ったコハクと共に、洋館の正面玄関へと歩みを進めた。
「ここが……ユリアス様が仰っていた、魔道学者エレナ様のアトリエですわね」
ルミアが感嘆の息を漏らしながら、重厚なオーク材の玄関扉を見上げる。
「漂っている魔力がとても清らかで、淀みがありません。素晴らしい知性を持った方が住まわれているのが伝わってまいります」
「ユリアスも『天才だが少し変わり者だ』って言ってたからな。どんな人なんだろう……」
ミナトが真鍮製のドアノッカーへ手を伸ばそうとした――その瞬間だった。
バッガーーーーーンッッ!!
「ひゃうぅぅぅっ!? い、いらっしゃいませぇぇぇぇぇっ!!」
けたたましい破裂音とともに内側から勢いよく扉が開かれ、風圧とともに一人の女性が飛び出してきた。
「うわっ!?」
ミナトが思わず一歩後退る。
そこに立っていたのは――息を乱し、肩を上下させて激しく喘いでいる、信じられないほどの美貌を持つ女性だった。
艶やかな波打つ黒髪を無造作に後ろで束ね、白磁のような肌には吸い込まれそうな紫水晶の瞳。
身にまとっているのは、身体のメリハリある起伏をこれでもかと強調する深いスリットの入った濃紺の魔導ローブ。
その上から白いフリル付きのエプロンを着けており、漂う空気は大人の色香と、優しくすべてを包み込んでくれそうな母性そのものだった。
だが――その絶世の美女の顔は、完全に限界を迎えていた。
両目の下にはドス黒いクマがべったりと張り付き、豊かな胸元を激しく上下させながら、虚ろな瞳で視線を泳がせている。
「あ、あなたが……王都の神託にありました、ミナトくん……でしょうか? は、初めまして……魔道学者の、エレナ・ローゼンバーグと申しますぅ……」
か細く消え入りそうな声で名乗りながら、エレナはよろよろと玄関の壁に手をついた。
昨夜、ミナトが王都を出発した神託を受け取ってからというもの、彼女は「殿方をお迎えするのだから部屋を完璧に片付けねば」「失礼のないおもてなしの準備をせねば」とパニックに陥り、一睡もせずに館中を駆け回っていたのだ。
開け放たれた扉の向こう、玄関ホールを覗き込んだミナトは、思わず目を丸くした。
床の上には、片付けようとして逆に散乱したらしい古代語の羊皮紙の巻物、謎の歯車や魔導水晶、乾燥薬草の束、そして慌てて引っ張り出されたとおぼしき高級ティーカップのセットが、足の踏み場もないほどに散乱していたのだ。
「ご、ごめんなさい……っ! 綺麗にお掃除してお出迎えしようと思ったのですけれど、床の巻物を片付けている途中で、どうしても古代文字の術式式が気になって読み耽ってしまい……気づいたら朝になっていて、余計に散らかってしまってぇ……!」
エレナは今にも泣き出しそうな顔で、ぺこぺこと何度も頭を下げた。
大人の妖艶な外見とは裏腹に、その挙動はまるで宿題を忘れてパニックになっている少女のように初々しく、ポンコツだった。
「あ、いえいえ! 俺たちこそ突然押しかけてしまってすみません。お気遣いなく、大丈夫ですよエレナさん」
ミナトが苦笑いしながら優しく声をかけると、エレナはホッと胸を撫で下ろした。
「あぅ……お優しい殿方で救われました……。どうぞ、散らかっておりますけれど、中へ……あっ!?」
安堵して一行を招き入れようと慌てて振り返った瞬間、エレナのスリッパが、床に転がっていた円筒形の羊皮紙の巻物を踏み抜いた。
ツルッ! と足元が派手に滑る。
「きゃああっ!?」
バランスを完全に崩し、エレナの豊かな身体が、硬い石張りの玄関の床へ向かって真っ逆さまに倒れ込んできた。
「危ないっ!」
ミナトは考えるよりも先に身体を滑り込ませていた。
倒れ落ちてきたエレナの細い腰を左腕でしっかりと抱きとめ、右手でその華奢な背中を支える。
ぎゅっ――。
ふわりと鼻腔をくすぐったのは、乾燥ハーブと甘いラベンダーの芳香。
そして――ミナトの胸板へ、エレナの豊満で柔らかすぎる胸の感触が、布地越しにダイレクトに押し当てられた。
至近距離で重なり合う二人の身体。
息がかかるほどの距離で、ミナトの黒い瞳と、エレナの紫水晶の瞳が真正面から見つめ合った。
「……っ!?」
エレナの動きが、ピタリと停止した。
腰に回されたミナトの手のひらの温もり。
密着した胸元から伝わってくる、若々しい男子高校生の体温と鼓動。
自分を見つめる、誠実で優しい眼差し。
それらを認識するのに、天才魔道学者の頭脳は、わずか一秒しか要さなかった。
「だ、大丈夫ですか、エレナさん? お怪我は――」
ミナトが心配そうに問いかけた、次の瞬間だった。
――ボッフォオオオオオオオンッッッッ!!!!
信じられない轟音とともに、エレナの白磁のような顔面、首筋、そして尖った耳の先端に至るまでが、熟れすぎたトマトのように真っ赤に沸騰した。
そして、やかんでお湯を沸かしすぎたかのような猛烈な白煙が、彼女の頭頂部と両耳から噴水のように噴き上がったのだ!
「ひゃあああああああああっっっ!?!?!? ふぇ、え、あの、そのような、殿方に腰を抱きしめられるなどという事態は、わ、私のこれまでの人生設計には一切存在しておらず、耐性が……耐性が皆無でしてぇぇぇぇぇっっ!!」
ダバババババッッ!!
目にも留まらぬ超高速のステップで、エレナはミナトの腕から飛び退いた。
そして玄関ホールの突き当たりの壁まで一瞬で後退すると、背中を壁にぴったりと貼り付け、両手で真っ赤に熟れた顔を覆い隠してその場にへたり込んだのだ。
「ひぅ……っ! は、恥ずかしい……! 心臓が破裂しそうですわぁぁ……!」
指の隙間から猛烈な湯気を立ち上らせ、生まれたての小鹿のようにプルプルと震えるエレナ。
「え……? えぇっ!? お、俺、何か失礼なことしました!?」
両手を宙に浮かせたまま呆然と立ち尽くすミナト。
その横で、ルミアがぽかんと口を開けた後、クスリと小さく笑みをこぼした。
「まあ……。エレナさん、とても可愛らしい方ですのね」
「うむ……敵の奇襲かと思うほどの後方跳躍であったな。身のこなしだけは見事だが……」
シルヴィアも呆気に取られたように目を丸くしている。
ミナトの胸ポケットの中で、神具スマホが狂ったようにバイブレーションを響かせた。
取り出してみると、画面の中央に紫色の十万ポイント赤スパがドカンと炸裂していた。
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『ぎゃあああああああ新ヒロイン初対面から大自爆キタコレ!! 抜群のプロポーションで妖艶なのに恋人いない歴=年齢の乙女設定とか属性盛りすぎでしょ尊死するぅぅぅ!!(100,000pt赤スパ寄付)』
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【主神アルト】:『エレナちゃん一瞬で顔面トマトになってて草www 抱きとめただけでこれとかチョロすぎるだろww』
肩の上に乗っていたコハクが、七色の尻尾を揺らしてゲラゲラと笑い転げた。
「かっかっか! ルミア以上の初心な娘子がおったわ! こやつ、突けば突くほど面白い反応をしおるぞ!」
「コハク、笑うな! ……あ、あの、エレナさん、本当にすみません。お怪我はありませんでしたか?」
ミナトがおずおずと手を差し伸べると、壁際のエレナは「ひゃぅっ!」と小さく悲鳴を上げて身を縮めた。
「だ、だだだ大丈夫ですぅ……! わ、私、取り乱したりなどしておりません……! ただ、男性に触れられた経験が二十数年間の人生で一度もなかったもので、身体が過剰防衛反応を起こしただけでしてぇ……! うぅ……穴があったら入りたいです……」
両手で真っ赤な顔をパタパタと扇ぎながら、涙目で俯くエレナ。
その姿は、妖艶な魔女の見た目とのギャップがあまりにも激しく、ミナトの胸を不意にトクンと鳴らした。
その時だった。
散らかった玄関ホールの奥、リビングへと続く廊下から、パタパタと軽快なスリッパの足音が近づいてきた。
「あーあ、やっぱり。玄関先で叫び声が聞こえたから見に来てみれば……お姉ちゃん、初対面のミナトさんに盛大に自爆したでしょ〜?」
呆れ混じりのからかうような声とともに現れたのは、ぴょこんと跳ねる金褐色のツインテールを揺らした、小悪魔な笑みを浮かべた少女――エレナの妹、シエラだった。
第53話を最後までお読みいただきありがとうございました!
ついに到着した古代シルヴァリス樹海の洋館アトリエ!
特注馬車を手際よくガレージへ格納し、第2章のメインヒロイン――美貌の天才魔道学者、エレナ・ローゼンバーグが満を持して初登場いたしました!
大人の色気と母性を漂わせる美魔女……のはずが、ミナトの来訪にテンパりすぎて徹夜で片付けをした結果、目の下にドス黒いクマを作って玄関は逆に大惨事という突き抜けたポンコツっぷり!
さらに転びそうになったところをミナトに優しく抱きとめられ、恋人いない歴=年齢のピュア魔女が全身から猛烈な蒸気を噴き上げて超音速で飛び退く大自爆をお届けしました!
新神ルディナちゃんも十万赤スパとともに「属性盛りすぎで尊死する!」と大歓喜!
愛神フィリア様もアルト様も大盛り上がりでしたね!
次回――『第54話:ローゼンバーグ家の歓迎! 策士な母と、ツインテール妹の容赦なき姉いじり』!
次回もどうぞよろしくお願いいたします!




