第52話:静寂の古代樹海へ突入! シルヴィアの一刀両断と、強力虫除けスプレー無双
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前回の第51話では、風魔導サスペンションを備えた特注馬車で東部街道を快走し、神具スマホのVer.2.0アップデートが到来!
日本のサブカルチャーを愛するオタク美少女神――【遊戯と文芸の女神 ルディナ】が十万赤スパとともに元気いっぱいに初登場し、新機能【天界アンケート】の無茶振りでルミアが頭ポンポンに耳まで真っ赤になって悶絶する甘々な幕開けとなりました!
そして迎える第52話は、いよいよ神代の原生林【古代シルヴァリス樹海】の奥深くへと突入いたします!
青空から一転、日光を遮る巨木の森で一行を待ち受けていたのは――全長十五メートルを超える凶悪な緑鱗の巨大魔獣、樹海大蛇!
だが、ミナトを護るため近衛騎士団長シルヴィアが空へと跳躍!
神速の白銀抜刀による一撃両断、王国最強の騎士としての圧倒的なプロの武力が炸裂します!
さらに大蛇を退けた直後、湿地帯から押し寄せる無数の毒蚊や吸血ヒルに対し、ミナトが天界通販から取り出したのは――最高濃度ディート配合の『強力虫除けミスト』!
剣では防げない不快な害虫たちを一瞬で一網打尽にする現代科学の無双劇!
頼もしすぎる女騎士のカッコよさと、ミナトの生活サポートが完璧に噛み合う爽快な樹海突入回を、どうぞお楽しみください!
見渡す限りの青空が広がっていた平原の街道から一転、特注幌馬車が境界線を越えた瞬間、世界の色がガラリと塗り替えられた。
頭上を覆い尽くすのは、幹の太さが十メートルを優に超える神代の巨木たち。
幾重にも折り重なった濃密な枝葉が太陽の光を完全に遮り、昼間だというのに森の底は深い黄昏のような青黒い静寂に沈んでいた。
幹には淡い燐光を放つ青い苔がびっしりと群生し、人間の背丈よりも巨大なシダ植物が道端を埋め尽くしている。
東部の大自然が誇る神秘の原生林――【古代シルヴァリス樹海】。
ひんやりと冷たく湿り気を帯びた空気が漂い、肌の表面をかすかにチクチクと刺激するような、濃密で重苦しい大気中の魔力が車内へも伝わってきた。
「ここが……古代シルヴァリス樹海。王都の聖典にも記されている、神話の原生林ですわ……」
車内の対面ソファーに座るルミアが、遮光カーテンを少しだけ開けて窓の外を見つめ、緊張した面持ちで小さく息を呑んだ。
空間拡張魔導によって外見の倍近くに広がった車内には、防音と空調の結界が効いており、肌寒さは感じない。
張り巡らされた巨大な木の根が道路を横断している悪路にもかかわらず、風魔導サスペンションが段差の衝撃を完璧に吸収し、テーブルの上の水差しは微動だにしていなかった。
だが、どれほど馬車が快適であっても、森そのものが放つ威圧感までは消せない。
御者台との間にある小窓から、白銀の鎧を身にまとったシルヴィアが、引き締まった横顔で低く鋭い声をかけてきた。
「我が主、聖女様。外縁部とはいえ、ここは神代の魔力が色濃く残る樹海だ。王都周辺の平原に棲む野犬やゴブリンとは、魔獣の凶悪さも格が違う。決して窓から手や顔を出さぬよう。……むっ、気配が濃くなってきたな。来るぞ!」
シルヴィアが手綱を握り直した瞬間、遠くで鳴いていた森の鳥たちが一斉に羽音を立てて飛び去った。
風がピタリと止み、耳が痛くなるほどの異様な静寂が訪れる。
――ギシャアアアアアアッッッ!!
突如として頭上の巨木が激しく軋み、空気を切り裂くような凶悪な咆哮が木霊した。
太い枝葉を力任せに薙ぎ倒して姿を現したのは、馬車の胴回りよりも太い胴体を持つ、全長十五メートルを優に超える巨大な魔獣――【樹海大蛇】!
青黒い木漏れ日を反射して妖しく光る緑の鱗。
ナイフのような牙からは、滴り落ちるだけで草木をジュウジュウと溶かす紫色の猛毒が溢れ出ている。
獲物である馬車を丸呑みにせんと、巨蛇は真紅の瞳を爛々と輝かせ、樹上から真っ逆さまに急降下してきた。
「うわっ、デカい蛇……ッ!?」
ミナトが息を呑んだ、その刹那だった。
「――我が主の行く手を阻むなど、万死に値するッ!!」
ガアンッ! と御者台を蹴り飛ばす鋭い金属音が響いた。
重力を置き去りにするかのような勢いで、白銀の甲冑を纏った影が垂直に夜空へと吸い込まれるように跳躍したのだ。
シルヴィアだった。
宙を舞う彼女の愛剣から、眩い白銀の闘気――高密度のオーラが奔流となって噴き上がる。
急降下する大蛇の巨大な影と、舞い上がる白銀の一閃が、空中で交差した。
キィィィィィン――――ッ!!
抜刀の音すら置き去りにする、神速の閃光。
視界が白く染まったかと思うと、大蛇の獰猛な咆哮はピタリと途絶えていた。
光の刃は、大蛇の硬質な緑鱗を紙のように両断し、その胴体を寸分の狂いもなく真っ二つに薙ぎ払っていたのだ。
ドスウゥゥゥン……ッ!!
地響きを立てて、二つに分かれた大蛇の巨体が樹海の地面を激しく叩きつけた。
シルヴィアは血飛沫一滴すら馬車に飛ばすことなく、猫のように軽やかな身のこなしで御者台へと着地し、チャキンと小気味よい音を響かせて剣を鞘へと納めた。
息一つ乱れていない。
「……我が主、聖女様。お怪我はございませぬか」
何事もなかったかのように平然と振り返る女騎士の凛々しい姿に、ミナトは呆気にとられ、ルミアは胸元に両手を当てて瞳を輝かせた。
「す、すげぇぇぇ……! あんなバカでかい魔獣を一瞬で真っ二つかよ……!」
「息を呑むほどお見事な剣技ですわ、シルヴィアさん……! 本当に頼もしいです!」
ミナトのポケットのスマホが激しく震動し、神々のコメントが滝のように流れ落ちる。
【武神アーレス】:『見事ッ! 一点の淀みも迷いもない神速の一閃! まさに王国最強の騎士たる太刀筋であるな!(50,000pt赤スパ寄付)』
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『きゃあああ騎士団長さんイケメンすぎぃぃ! 一刀両断かっこよすぎでしょ! 画面越しに惚れちゃうよ!?(50,000pt赤スパ寄付)』
【主神アルト】:『瞬殺すぎて草。シルヴィアが前衛にいる安心感ヤバいわww』
天界の神々が大絶賛の嵐を巻き起こす中、ソファーの背もたれの上で丸くなっていたコハクが、七色の尻尾を揺らして小さくあくびを噛み殺した。
「ふぁあ……図体ばかりで鈍間な蛇よのう。妾が出るまでもなかったわ」
だが、胸を撫で下ろしたのも束の間だった。
大蛇の血の匂いに引き寄せられたのか、森の奥の淀んだ湿地帯から、低く不快な羽音が地鳴りのように押し寄せてきたのだ。
ブウウウウウゥゥゥン……ッ!!
「ひゃっ!? な、何ですの、この音は……!?」
ルミアが顔を青ざめさせ、シルヴィアも御者台から油断なく周囲を見回して眉をひそめた。
木々の隙間から黒い雲のように湧き出してきたのは、親指大の巨大な毒蚊の群れ、噛みつくブヨ、そして枝の上からポトポトと落ちてくる吸血ヒルの大群だった。
樹海特有の、生き血を求める害虫たちの襲来である。
「くっ……大蛇や凶獣ならば一刀のもとに斬り伏せられるが、この無数の羽虫とヒルまでは、いかに我が剣技とてすべてを防ぎきることはできん……!」
シルヴィアが悔しげに奥歯を噛みしめ、剣の柄を握り直す。
どれほど腕の立つ騎士であっても、鎧の隙間をすり抜けて刺してくる無数の虫までは防ぎようがない。
開け放たれた小窓の隙間から、黒い羽虫たちが車内へと侵入しようと群がり始めていた。
「よし、ここからは俺の出番だ!」
ミナトは神具スマホを素早くタップし、天界通販アプリを立ち上げた。
以前、王都のギルドで冒険者たちから「樹海は魔獣よりも虫刺されで熱を出して死ぬ奴が多い」と聞いていたため、あらかじめ目をつけておいたアイテムがあったのだ。
『購入完了:最高濃度ディート30%配合・強力虫除けミスト(爽快ハッカ&シトラスの香り)』
光の粒子とともにミナトの手の中に現れたのは、緑と白の清潔感あるデザインのスプレーボトルだった。
ミナトはキャップを外すと、小窓から身を乗り出した。
「シルヴィアさん、ルミアさん、ちょっと目を瞑ってて!」
「な、何をされるのですか、我が主!?」
「いいから、すぐに終わるから!」
プシューーーーッ! プシューーーーッ!
ミナトは御者台のシルヴィアの衣服や甲冑の隙間、そして馬たちの首筋に向けて、勢いよくミストを吹きかけた。
さらに車内へ戻り、ルミアの法衣の裾や自らの衣服、そして馬車の窓枠やカーテンの隙間に向けて、惜しみなくスプレーを散布した。
車内と御者台に、スーッとする清涼感あふれるハッカの刺激と、爽やかな柑橘類の香りが一瞬にして広がっていく。
その直後――信じられない光景が広がった。
「……えっ?」
ルミアが恐る恐る目を開けた。
馬車めがけて猛然と突っ込んできていた無数の毒蚊やブヨたちが、馬車の周囲一メートルほどの空間に到達した瞬間、まるで目に見えない強固な壁に激突したかのようにピタリと静止したのだ。
そして、激しい拒絶反応を示すように羽をバタつかせると、蜘蛛の子を散らすような勢いで、森の奥へと一目散に逃げ去っていったのである。
枝から落ちてきていた吸血ヒルたちも、馬車の屋根に触れることすら嫌がるようにポロポロと地面へ落下し、草むらの中へと這い戻っていく。
静寂が戻った。
耳障りな羽音は完全に消え去り、馬車の周囲には涼やかで心地よいハーブの香りだけが漂っていた。
「な……!? 害虫が一匹たりとも近寄ってこぬだと……!? 結界魔導の類いも見当たらぬのに、いったい何が起きたのだ!?」
シルヴィアが驚愕のあまり目を丸くして自分の肩や腕を見下ろした。
ルミアも胸元に手を当て、深く息を吸い込んで瞳を潤ませる。
「すぅ……なんて清々しくて、良い香りなのでしょう……! 森の嫌な湿気や淀んだ空気が、一瞬で洗い流されたようですわ。それに肌も少しもベタつかず、サラサラとしていて気持ちがいいです!」
「へへっ、これは虫除けスプレーっていうものだよ。俺たちの世界じゃ、山や森に入るときの必需品なんだ。これ一本で、蚊もブヨもヒルも一切寄り付かなくなるんだよ」
ミナトがボトルのノズルを指先で軽く叩いて笑うと、シルヴィアは深い感動をたたえた瞳でミナトを見つめてきた。
「我が主……! 敵を討つことしか能のない不甲斐ない私に代わり、このような神がかり的な道具で我らをお護りくださるとは……! さすがは我が主、その知恵と配慮の深さ、心より感服いたしました!」
「いや、ただスプレーを撒いただけなんだけどね……!?」
恐縮するミナトの横で、スマホの画面が再び眩い赤スパの弾幕で埋め尽くされた。
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『騎士団長のかっこいいバトルからの、虫除けスプレーの圧倒的実用性www ギャップ最高じゃん! 森の虫とかマジで無理だから超助かるやつ!』
【愛の女神フィリア】:『戦えないミナト様が、こうして乙女たちの肌を守り、清潔さと快適さを与えて支える姿……! これぞ真のパートナーの形ですわーーっ!!』
【主神アルト】:『虫除けスプレー無双は草。快適空間作りのプロだなミナトくん』
コハクがふさふさの尻尾で自分の鼻先を撫でながら、満足そうに喉を鳴らした。
「かっかっか! ツンと鼻に抜けるが、嫌な匂いではないのう。これで鬱陶しい羽虫に昼寝を邪魔されずに済むわい」
害虫のバリアを纏った特注馬車は、再び滑るように樹海街道を前進し始めた。
冷涼なハーブの香りに包まれた車内は、先ほどまでの張り詰めた緊張感が嘘のように、穏やかで快適な空気に満たされている。
それから三十分ほど森を進んだ頃だった。
御者台のシルヴィアが前方を指差し、明るい声を張り上げた。
「我が主、聖女様! 前方の森が開けてきたぞ! 清流の向こうに……建物が見える!」
ミナトとルミアが小窓から身を乗り出して前方を見つめた。
薄暗い巨木の天蓋が途切れ、木立の切れ間から眩い昼の光が差し込んでいる。
その先――澄み切った清流のほとりに、緑のツタが美しく絡まる大きな木造の洋館が静かに佇んでいた。
屋根の煙突からは細い煙が立ち上り、庭先には見たこともない不思議な薬草園が広がっている。
「あそこが……ユリアスが言っていた、魔女エレナさんのアトリエか!」
昨夜、神託を見て部屋中をバタバタと駆け回り、大パニックを起こしていた美しき魔女。
その運命の出会いが待つ館へ向け、特注馬車は心地よい風を切り裂きながら、軽やかに最後の直線を進んでいくのだった。
第52話を最後までお読みいただきありがとうございました!
いよいよ突入した神代の原生林【古代シルヴァリス樹海】!
初っ端から襲いかかってきた全長十五メートル級の巨大魔獣・樹海大蛇に対し、近衛騎士団長シルヴィアが神速の白銀抜刀で一刀両断する圧倒的武力をお届けいたしました!
血飛沫一滴飛ばさずに主を気遣うシルヴィアの凛々しさと強さ、最高に頼もしくてカッコよかったですね!
そして大蛇を倒した直後に押し寄せてきた無数の毒蚊や吸血ヒルに対し、ミナトが天界通販から取り出したのは――最高濃度ディート配合の『強力虫除けミスト』!
剣では防げない不快な害虫たちを一網打尽にし、爽快なハーブの香りとサラサラ肌でヒロインたちを完全サポートする、ミナトならではの生活無双が炸裂いたしました!
次回――『第53話:森の隠れ家アトリエ到着! 妖艶な魔女エレナの顔面大噴火』!
次回もどうぞよろしくお願いいたします!




