第51話 王都を出発! 東部街道の快走と、神具スマホの天界アンケート機能
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前回の第50話では、王都東門前で数千人の民衆や仲間たち、そしてルミアの両親からの温かい見送りを受け、大歓声と紙吹雪の中で『第1章:神聖アステリア王都編』が堂々の完結を迎えました!
ユリアスから託された【ポータブル型・小型魔導水晶柱】を携え、ラストカットでは東部樹海のアトリエで神託を見て大パニックに陥る魔女エレナと、愉快すぎるローゼンバーグ一家が登場しましたね!
そして今回から、いよいよ『第2章:東部・古代シルヴァリス樹海編』が華々しく開幕いたします!
第1章の街中での生活から一転、青空の下を突き進む爽快な旅がスタート!
特注幌馬車の快適すぎる乗り心地に感動しつつ、ミナトの神具スマホにまさかの大型アップデートが到来!?
新機能【天界アンケート機能】とともに天界コメント欄へ乱入してきたのは、日本のサブカルチャーを愛してやまないオタク美少女神が登場します!
元気いっぱいの少女神による無茶振りアンケートのせいで、馬車の中は初日から甘々な赤面パニックに!?
第2章もどうぞお楽しみください!
ガタゴトという耳障りな車輪の軋みも、街道の窪みに足を取られたような突き上げる衝撃も、そこには一切存在しなかった。
アステリア王都の白亜の城壁が遥か西の地平線へと消え去り、どこまでも広がる濃い緑の平原を一本の白い道が貫いている。
その東部街道を、クラリッサ商会が誇る『風魔導サスペンション』を組み込んだ特注幌馬車は、まるで滑らかな氷の上を滑るかのような静けさで軽快に駆け抜けていた。
幌の内側には、革張りの柔らかなソファーと遮光カーテンが設えられ、昨夜ギルドの冒険者たちから贈られた黒魔獣革の特注収納バッグが、棚の上にしっかりと固定されている。
窓から吹き込んでくる初秋の乾いた風が、車内に心地よい草原の香りを運んできていた。
「すごいな……。時速三十キロくらいは出ているはずなのに、テーブルに置いた水瓶の水面が微動だにしないぞ」
「はい、ミナトさん。本当に驚きました。まるで大聖堂の奥にある静かな祈祷室で腰を下ろしているかのようですわ」
隣のソファーに座るルミアが、青い瞳を輝かせてふわりと微笑んだ。
王都を出発した直後は、生まれ育った街を離れる寂しさから少し緊張していた面持ちだったが、今やすっかり穏やかな表情を取り戻している。
前方の御者台との間にある小窓を覗くと、白銀の鎧を身にまとったシルヴィアが、凛々しい横顔で逞しい白馬の手綱を完璧にコントロールしていた。
「シルヴィアさん、乗り心地最高だよ! 疲れたらいつでも代わるから、無理しないで言ってね」
「ふっ、何を仰るか我が主よ。馬の調子も極めて良好、街道の視界も良好だ。主と聖女様に快適な旅路を提供することこそ護衛の務め。お気遣いなく、車内でごゆるりとお寛ぎくだされ」
鎧をかすかに鳴らし、振り返りもせずに力強く答える女騎士の後ろ姿は、頼もしさそのものだった。
王都のパン屋で買っておいたシンプルな丸パンにチーズを挟み、軽くつまんで腹ごしらえを済ませる。
穏やかで、どこまでも平和な旅立ちの午後――のはずだった。
――ピロリロリ〜〜ン♪ ファンファンファ〜〜ン!!
突如として、俺の胸ポケットから聞いたこともない電子音が鳴り響いた。
ゲームのファンファーレを三倍くらい陽気にしたようなド派手なサウンドに、ソファーの背もたれの上で丸くなっていたコハクが「ふみゃっ!?」と飛び起きる。
「な、なんの音じゃ!? 敵の奇襲か!?」
「いや、スマホからだ……えっ、なんだこれ!?」
ポケットから引っ張り出した神具スマホの画面には、見たこともない黄金の光の粒子が渦巻き、太文字のポップアップが踊っていた。
『【神具OS Ver.2.0:東部巡礼編】アップデートが完了しました!』
『新機能1:リアルタイム視聴者投票【天界アンケート機能】が解放されました!』
『新機能2:リスナー神託【天界クエスト(無茶振りミッション)】が解放されました!』
「アップデート……? アルト様、勝手に俺のスマホを改造したな!?」
俺が画面に向かって叫んだ瞬間、コメント欄が猛烈な勢いでスクロールを始めた。
【主神アルト】:『よおミナト! 東部巡礼記念にアプデしといたよ! リスナー参加型の双方向機能だ、感謝してくれ!』
【愛の女神フィリア】:『まあ! 素晴らしいですわアルト様! これでわたくしたちの想いを直接ミナト様へ届けられますのね!』
そして次の瞬間、画面の中央にドカンと紫色の光が炸裂した。
見たこともない【十万ポイント】の超巨大な赤スパチャの通知とともに、眩しいネオンカラーの神名が弾幕を切り裂いて飛び込んできたのだ。
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『初めましてミナトくんっ! わたし、遊戯と文芸の女神ルディナだよ! ずっと天界の自室で配信見てたんだよね!(30,000pt赤スパ寄付)』
「遊戯と文芸の女神様ですか!? 何かよくわからない神様がまた増えたんですけどっ!」
俺のツッコミを置き去りにするように、ルディナからの早口なコメントが怒涛の勢いで流れてくる。
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『王都のフェスも最高だったけどさぁ! 旅に出たならもっと刺激的なエンタメをあの子たちに布教しなきゃ損でしょ!? マンガとか、ゲームとかさぁ! わたしが最高の青春をプロデュースしてあげるからねっ!』
「ルディナ……様? マンガとかゲームを司る神様なのか……?」
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『様なんていらないよ、ルディナちゃんって呼んでね! それよりアルト、早速アレ使っちゃお! ぽちっとな!』
――ピロリン♪
けたたましいアラート音とともに、スマホの画面いっぱいに巨大な投票ウィンドウが割り込んできた。
『【緊急天界アンケート】:街道で暇を持て余したミナトが、今すぐ取るべき行動は!?』
[選択肢A]:隣でまったりしている聖女ルミアの頭をポンポン撫でて甘やかす
[選択肢B]:御者台へ行ってシルヴィアの隣に腰掛け、女騎士をドギマギさせる
「ちょ、ちょっと待てぇぇぇっ!? なんだその、どっちを選んでも地獄みたいな選択肢は!?」
俺の抗議など天界の神々には一切届かない。
パーセンテージを示すグラフが、目にも止まらぬ超スピードで激しく上下し始めた。
【愛の女神フィリア】:『当然Aですわ! ルミアちゃんの甘えん坊なお顔が見たいですわーーっ!!(100,000pt赤スパ寄付)』
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『いやいやここはBでしょ! クールな女騎士が赤面して手綱を落としそうになるギャップ萌えこそ至高じゃん!』
【主神アルト】:『どっちも捨てがたいが……僅差で[選択肢A]が競り勝ったぞwww』
『投票終了! 勝者:[選択肢A](得票率51%)』
画面に無情な「確定」の二文字が躍り、カウントダウンタイマーがピピピと点滅を始めた。
「ミナトさん……? あの、スマホを見つめたまま固まっておられますが、どうかされましたか……?」
何も知らないルミアが、心配そうに小首を傾げてこちらを見つめていた。
陽光を浴びて透き通る金糸の髪、無防備に瞬く青い瞳。至近距離で見上げられると、それだけで心臓が跳ね上がりそうになる。
(う、嘘だろ……。これ、実行しないと配信切られたり変なペナルティがあるやつか……!?)
俺は唾を飲み込み、覚悟を決めた。
「あ、あのさ、ルミアさん」
「はい、何でしょう?」
「その……王都を出て、慣れない長旅で疲れてないかなって思って」
震える右手をおずおずと伸ばし、ルミアの柔らかな頭の上にそっと手のひらを置いた。
そして――優しく、ポンポンと二度、三度と撫でた。
「……っ!?!?!?」
ルミアの華奢な肩が、ビクゥッ! と跳ね上がった。
次の瞬間、彼女の白磁のような首筋から頬、そして耳の先端に至るまでが、林檎よりも鮮やかな真紅へと染まり上がった。
「ミ、ミナト……さん……!? え、あ、あの……頭……撫で……ふぇぇ……!?」
あまりの恥ずかしさに身を縮め、両手で顔を覆いそうになりながらも、ルミアはそっと指の隙間から上目遣いで俺を見上げてきた。
そして、震える小さな手で、俺のブレザーの裾をぎゅっと握りしめて擦り寄ってきたのだ。
「恥ずかしいですわ……でも……すっごく……温かくて、嬉しい、です……♡」
ぼふんっ! と音がしそうなほどの破壊力に、俺の頭の芯までカッと熱くなる。
【愛の女神フィリア】:『ぎゃああああああっ!! 尊い! 尊すぎて天界の神殿が浄化されますわーーっ!!(100,000pt赤スパ寄付)』
【遊戯と文芸の女神 ルディナ】:『うわぁぁぁ可愛い! チョロすぎる! 破壊力カンストじゃん! 画面越しにルミアちゃんの可愛さが溢れてるよミナトくんっ!(50,000pt赤スパ寄付)』
天界が赤スパの嵐で沸き返る中、背もたれの上からその様子を眺めていたコハクが、目を細めてけたたましく笑い出した。
「かっかっか! たわけめが、神々の悪ノリに付き合って真っ赤になっておるわ!」
「うぐっ……コハク、お前は黙ってろ!」
「ふん、退屈凌ぎじゃ。妾もひとつ、極上の余興を見せてやるとするかのう!」
コハクがふさふさの尻尾をピンと立てると、先端が七色の光を放ち始めた。
ボフンッ!!
車内に白い煙が立ち込め、視界が遮られる。
「げほっ、な、なんだコハク!?」
煙が晴れた瞬間――そこには、ブレザーに身を包んだ、俺と背格好も顔立ちも寸分違わぬ【もう一人のミナト】が立っていた。
「へ……? ミナトさんが、二人……?」
目を白黒させるルミアの前で、偽ミナト(コハク)はキリッとしたイケメン顔を作り、流れるような所作でルミアの前に膝をついた。
そして、彼女の小さな手を優しく包み込み、甘いバリトンボイスを響かせたのだ。
「ルミアさん。俺……王都を出発してから、ずっと貴女の美しさに胸が張り裂けそうなんです。今夜はずっと側で居てくれませんか♡」
「ひゃあああああああああっっっっ!?!?!?!?」
ボッフォオオオオンッッ!!
ルミアの全身から猛烈な蒸気が噴き上がり、彼女はソファーの上で両手をバタつかせながら目を回して卒倒しかけた!
「こらあああーーーっ!! コハク、俺に化けてなんて事言ってんだぁぁぁ!!」
俺は慌てて偽ミナトの襟首を掴み、その頬をぎゅううっと力任せに引っ張った。
ポンッ! という間の抜けた破裂音とともに煙が散り、元の手のひらサイズの子狐に戻ったコハクが、腹を抱えて転げ回りながら大爆笑する。
「かっかっか! 痛いわミナト! じゃが実に見事な反応じゃったのう! からかい甲斐のある娘じゃ!」
「コハクちゃん……もう、意地悪ですわぁ……!」
涙目で頬を膨らませるルミアと、げらげら笑う子狐。
騒ぎを聞きつけたシルヴィアが、御者台の小窓から「我が主、車内で魔獣の襲撃か!?」と血相を変えて覗き込んできたため、俺は必死になって宥める羽目になった。
馬車の中にドタバタとした笑い声が満ちる中、俺は息を整えながら、開け放たれた窓の外へと視線を向けた。
街道の遥か前方――。
見渡す限りの草原の果てに、空を半分覆い尽くすかのような、濃密な青緑色の巨大な影が横たわっていた。
木漏れ日と古代の魔力が渦巻く、神代の原生林。
【古代シルヴァリス樹海】の雄大な樹冠である。
(いよいよ……あの樹海の中に入るんだな)
美しき魔女エレナの待つアトリエへ向け、特注馬車は夕暮れの心地よい風を切り裂きながら、力強く駆けていくのだった。
第51話を最後までお読みいただきありがとうございました!
いよいよ幕を開けた『第2章:東部・古代シルヴァリス樹海編』、いかがでしたでしょうか!
クラリッサの風魔導サスペンション付き特注馬車の快適すぎる快走から始まり、食事描写をスマートに流して旅の爽快感を描きました!
そして突如として訪れた神具スマホのVer.2.0アップデート!
新機能【天界アンケート機能】とともに、日本のマンガやゲームを愛する天界のオタク美少女神――【遊戯と文芸の女神 ルディナ】が10万赤スパとともに元気いっぱいに初登場いたしました!
記念すべき最初のアンケートによる「ルミアへの頭ポンポン」では、服の裾を握りしめて照れるルミアの甘々っぷりに全界が尊死!
さらにコハクが七色の尻尾を光らせてミナトに化け、「今夜はずっと側で居てくれませんか♡」と発言する変身イタズラで、ルミアが顔面湯気の大爆発を起こす爆笑展開となりました!
これからもミナトとコハク、そしてヒロインたちの旅を、どうぞよろしくお願いいたします!




