第50話:さらばアステリア王都! 変幻狐と行く新たな旅路へ!【第1章完結】
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前回の第49話では、旅立ち前夜の冒険者ギルドで、Fランクポーターのミナトのために冒険者たちがカンパして特注してくれた【魔導収納バッグ】をプレゼントされ、男たちの不器用な優しさに胸が熱くなりました!
さらに、団長シルヴィアの旅立ちによって全激務を丸投げされ、胃痛で過労死寸前だった副団長ヴィンセントへ日本の生薬胃腸薬とタウリンドリンクを差し入れた結果、驚異的な覚醒を遂げて救世主と拝み倒される大爆笑コメディをお届けしました!
そして迎える第50話は、ついに訪れた【第1章完結・堂々たる王都門出】の回です!
澄み渡る朝陽の下、王都東門前に集結した大聖堂、騎士団、商会、ギルド、そして数千人の王都の民衆たちによる感動の大見送り!
涙ぐむ父クリストフ司教と、優しく微笑む母マリアーナ(マリア)様から託される親子の絆。
対等な友人となったユリアスから託される、次なる展開への重要魔導具。
そして、特注馬車が青空の下を走り出し、第1章が大団円のフィナーレを迎えます!
さらにラストには、次なる舞台【東部・古代シルヴァリス樹海】のアトリエで、神託を見て大パニックに陥る美しき魔女エレナと、愉快すぎるローゼンバーグ家の面々が登場!?
笑いと涙と感動の第1章完結話を、どうぞ最後までお楽しみください!
澄み渡る秋晴れの青空の下、東から昇る眩い朝陽が、アステリア王都の白大理石の城壁を黄金色に染め上げていた。
王都東門前広場。
普段であれば旅商人たちの馬車が行き交うだけの巨大な石畳の広場は今――足の踏み場もないほどの人、人、人で埋め尽くされていた。
白銀の法衣をまとった大聖堂の聖職者たち。
抜き身の槍を掲げて威風堂々と整列する近衛騎士団。
真紅の旗を掲げたクラリッサ商会の面々。
手を振る冒険者ギルドの人たち。
そして――手作りの花束や紙吹雪を抱えた、数千人にも及ぶ王都の民衆たち。
中央に佇むのは、白木と真鍮の金具が朝陽を浴びて輝く、特注幌馬車。
その前で旅装に身を包んだ俺とルミアを、愛すべき王都の人々が温かな笑顔で幾重にも取り囲んでいた。
「ルミア……。王都と、大聖堂の孤児たちや貧しき民のことは、この父に任せなさい」
歩み寄ってきた父クリストフ司教が、ルミアの両手を包み込み、目頭を熱くして語りかけた。
「エルムの教区も、長年私を支えてくれた優秀な右腕の司祭が後任を引き継ぎ、信徒たちも皆、笑顔でお前の旅立ちを祈ってくれている。広い世界を見て、多くの民をその温かい笑顔で救っておいで」
「はい、お父様……!」
感極まって声を詰まらせるルミア。
そんな愛娘の前で、美形パパ司教の瞳からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
「うぅ……ルミアぁ……! こんなに小さかったお前が、世界を巡る大巡礼へと旅立つなんて……! 父は寂しい……寂しくて胸が張り裂けそうだ……!」
「まあまあ、あなた。人前でそんなに取り乱して、泣きすぎですよ」
クスッと鈴を転がすような優しい笑い声とともに、クリストフ司教の肩にそっと手を置いたのは、ルミアの母、マリアーナだった。
「ルミアが心配してしまいますよ。……ルミア、ミナトくん。身体にだけは気をつけて、元気にいってらっしゃいね」
マリアーナは穏やかに微笑み、俺の目を真っ直ぐに見つめて深々と頭を下げた。
「ミナトくん。不器用で甘えん坊な娘ですが……どうか、よろしくお願いいたしますね」
「はい、マリアさん! 俺の命に代えても、必ずルミアさんをお守りします!」
俺が背筋を伸ばして力強く誓うと、マリアーナは嬉しそうに目を細め、後ろのクリストフ司教も涙を拭って手を振ってくれた。
見守る聖職者たちからも、温かな拍手と歓声が湧き起こる。
「シルヴィア団長、ミナト殿!」
その横から、ビシッと見事な敬礼を決めて歩み出てきたのは、近衛副団長ヴィンセントだった。
昨日の夕方、机に突っ伏して胃痛に悶絶していた姿が嘘のように、その肌艶はピッカピカに輝き、青白かった顔には活力があふれている。
日本の生薬胃腸薬とタウリン三千ミリグラムの威力は絶大だったようだ。
「王都全域の防衛体制は完璧に整いました! 胃のキリキリも完全に消滅しております! 心置きなく、大巡礼路をお進みください!」
「うむ! 見事な気迫だ、ヴィンセント。王都の治安を頼んだぞ」
「ははっ!」
シルヴィアが満足そうに頷き、俺も「胃薬が効いて本当によかった……」と胸を撫で下ろした。
離れた場所からは、ギルドマスターのバッカス親父が腕を振り、ブルーノやフィンたちも手を振って叫んでいる。
「ミナトー! 美味いもん食って、魔獣に食われるなよー!」
「困ったら紹介状使えよなー!」
男たちの豪快な声援に、俺は笑顔で手を振り返した。
そこへ、美しい藍色の宮廷魔道服を翻し、ユリアスが歩み寄ってきた。
その背後では、従者たちが厳重に固定された高さ一メートルほどの荷物を恭しく運んでいる。
「ミナト、出発の前にこれを受け取ってほしい」
布が外されると、朝陽を浴びて青く透き通る、頑丈な金属台座に据えられた魔導水晶の柱が現れた。
大聖堂前に立つ魔導水晶柱を、持ち運び可能なサイズに精巧に凝縮した試作機だ。
「これは……?」
「王都の外へ通信網を広げるために試作した【ポータブル型・魔導水晶柱】だ。地面に設置して魔力を注げば、周囲百メートルに王都と同じ空中光スクリーンと音響を展開できる。……だが、まだ消費魔力の効率に課題があってね」
ユリアスは親友としての真剣な眼差しで、俺の肩に手を置いた。
「東部樹海へ行くなら、天才魔導学者エレナ・ローゼンバーグにこれを見せてほしいんだ。彼女の卓越した魔導工学の知見があれば、より広域・安定して誰でも設置できる簡易中継器へと完成させられるはずだ」
「分かった! エレナさんに必ず届けて、相談してみるよ、ユリアス!」
俺は昨日ギルドのみんなから貰った特注収納バッグを開き、小型水晶柱をすっぽりと大切に収めた。
ユリアスは満足そうに微笑み、俺の手を力強く握り返してくれた。
続いて、真紅のドレスの裾を揺らし、クラリッサが扇子を開いて進み出てくる。
「馬車の整備は完璧ですわ! 車軸の風魔導サスペンションも、車内の調理設備も最高品質です。街道沿いの商会支所にも話を通してありますわ。……ただし!」
クラリッサは扇子の先で俺の胸元をツンと突いた。
「旅先で新しい食材や料理を見つけたら、すぐにあの【魔導連絡箱】でわたくしへ試作品と書類を送ること! 良いですこと? 他の女商人になびいたりしたら、王国の全商業網を総動員して追いかけますからね!」
「あはは……肝に銘じておきます、クラリッサさん」
すべての言葉、すべての想いが、俺たちの胸の中に温かく満ちていく。
「ミナト殿、聖女様、馬車へ!」
シルヴィアが白銀の鎧を鳴らして御者台へと飛び乗り、逞しい白馬の手綱をしっかりと握り締めた。
俺とルミアは幌の中へと乗り込み、コハクが窓枠の上にちょこんと飛び乗る。
シルヴィアが凛々しい声を張り上げ、城門の守衛たちへ号令を下した。
「アステリア近衛騎士団長シルヴィア、主神の使徒ミナト殿、並びに聖女ルミエラ様の専属護衛の任に務めます! ――東門、開門ッ!!」
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
地響きとともに巨大な鉄格子の城門が左右に開き、果てしなく広がる東の地平線と、眩い青空が眼前に開かれた。
「ハッ!」
シルヴィアの手綱の合図とともに、白馬が力強く石畳を蹴った。
風魔導サスペンションが淡い光を放ち、大型馬車がまるで滑るように滑らかに前進を始める。
――その瞬間、広場を埋め尽くした数千人の民衆から、地鳴りのような大歓声が爆発した!
「「ミナト様ーーっ!!」」
「「聖女様ーーっ!!」」
「「気をつけて行ってらっしゃーーい!!」」
青空を埋め尽くすように、色とりどりの紙吹雪と花びらが舞い散る。
ルミアは窓から身を乗り出し、溢れ出す涙を拭いながら、千切れるほどに手を振り返した。
「皆さん、ありがとうございます! 行ってまいります……! 行ってまいります!!」
『ゴーーーーーン……ゴーーーーーン……』
遠く大聖堂の鐘楼から、祝福の鐘の音が澄み渡る秋空へと響き渡る。
胸のポケットで神具スマホがピロンと震え、画面いっぱいに温かいコメントが溢れ出した。
【主神アルト】:『うおおおお! 王都編完全クリアおめでとーー!! 最高にいい旅立ちだぜミナト!』
【愛の女神フィリア】:『感動で涙が止まりませんわ〜! 全界が見守る最高の門出ですわーーっ!!(100,000pt赤スパ寄付)』
【豊穣神デメトラ】:『新天地での美味い食材と飯テロロケ、楽しみにしておるぞ!』
コハクがふさふさの尻尾を広げ、風を浴びて誇らしげに鼻を鳴らす。
「かっかっか! 見事な見送りじゃったのう! さあ、美味い飯と未知の素材が待つ東の天地へ出発じゃ!」
白亜の城壁が、美しき大聖堂の尖塔が、朝陽の彼方へとゆっくりと遠ざかっていく。
放課後の通学路から一人飛ばされてきたあの日の俺は、もう一人じゃない。
仲間たちの温かい想いと、神々の見守る視線を背に、俺たちの新たな旅が今、始まったのだ。
◇
アステリア王都から遥か東――。
神代の巨木が生い茂り、淡い木漏れ日と青い燐光が漂う神秘の原生林、【古代シルヴァリス樹海】。
その鬱蒼とした樹海の奥深くに佇む静かな洋館――魔女エレナのアトリエ。
鳥のさえずりが響く静謐な館の窓から、突如としてけたたましい悲鳴が木霊した。
「ひ、ひえぇぇぇぇぇっ!? ど、どうしようシエラ! 大変よぉぉぉっ!!」
豊かな黒髪を振り乱し、妖艶な魔道ローブを身にまとった美しき魔導学者エレナ・ローゼンバーグが、青白く光る神託水晶の前で頭を抱えていた。
「ミナトさんが……王都を出発して、この樹海に向かってくるって神託が届いたのよ!? ど、どうしよう! 部屋が散らかってるわ! 散らかりすぎてるわ! おもてなしの準備もしなきゃ! わ、私、どんな服を着てお出迎えすればいいのぉぉ!?」
書類が散乱した床の上を、豊かな胸を激しく揺らしながらバタバタと駆け回るエレナ。
その横で、ぴょこんと跳ねるツインテールを揺らしながら、妹のシエラがお茶をすすってニヤニヤと笑った。
「お姉ちゃん落ち着いてよ〜。可愛いエプロンでも着て、玄関先で『ご飯にする? お風呂にする? それとも……わ・た・し?』って待ってれば一発じゃん〜」
「シ、シエラっ!? 何を破廉恥なことを言ってるのぉぉぉ!!」
ボフンッ! と顔から猛烈な湯気を吹き出してパニックになるエレナ。
その横で、本を読んでいた弟のルシアンが冷めた目でため息をついた。
「はぁ……また姉貴のポンコツパニックが始まった。ミナトさんって人、本当にお気の毒だな……」
そこへ、パタパタと小走りでやって来たのは、エレナの美貌の面影を残すおっとりとした母ミレイユだった。
「あらあら! ついにうちのエレナに殿方がいらっしゃるの!? お父さん、客間が壊れてるってことにして、ご馳走を用意しなきゃ!」
「お、おいミレイユ、落ち着きなさい! 初対面の若者を囲い込もうとするんじゃない……!」
奥からやって来た父エルヴァンがオロオロと妻を宥めようとするが、すでに館の中はお祭り騒ぎだった。
「わ、私……恋人いない歴=年齢なのに、殿方をおもてなしするなんて無理ですわぁぁぁっ!!」
美しき魔女の真っ赤な絶叫が樹海に響き渡る中――。
ミナトたちの乗る馬車は、新たな出会いと大冒険の待つ東の空へと、軽やかに駆けていくのだった。
【第1章:神聖アステリア王都編 完】
第50話を最後までお読みいただきありがとうございました!!
これにて、『第1章:神聖アステリア王都編』が堂々の完結となります!
王都東門前での大見送り、いかがでしたでしょうか!
大聖堂、騎士団、商会、ギルド、そして数千人の王都の民衆たちによる温かな歓声と紙吹雪!
涙ぐむ父クリストフ司教と、優しく微笑んで「娘をよろしくね」と託す母マリアーナ。
日本の胃薬で肌艶ピカピカに完全復活した副団長ヴィンセントや、豪快に見送るバッカスたち悪友冒険者。
そして、対等な友人となったユリアスから託された【ポータブル型・小型魔導水晶柱】と、ツンデレに釘を刺すクラリッサ!
第1話の「豚肉と卵を抱えた転移」から始まったミナトの物語が、王都中の人々から心から愛され、祝福されて新天地へ羽ばたく最高の門出を描くことができました!
そしてラストでは、次なる舞台【東部・古代シルヴァリス樹海】のアトリエが登場!
神託を見て大パニックで部屋中を走り回る美しき魔女エレナ!
ツインテールを揺らしてニヤニヤいじる妹シエラ、冷めた目で呆れる弟ルシアン、外堀を埋めようと暴走する母ミレイユ、オロオロする父エルヴァンという、愉快すぎるローゼンバーグ家の日常をお届けしました!
愉快すぎるローゼンバーグ家の日常をお届けしました!
次回からは、いよいよ『第2章:東部・古代シルヴァリス樹海編』が華々しく開幕いたします!
これからもミナトとコハク、そしてポンコツ可愛いヒロインたちの旅を、どうぞよろしくお願いいたします!




