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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第46話:巨大屋台の解体と、日常の戻った広場

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回の第45話では、大豪商クラリッサ商会の本部へ乗り込み、フェスで王都中を熱狂させた『特製濃厚ソース』の製品化契約を締結!

さらに、ミナトの提案による「売上7割の孤児支援基金」と、金貨が自動で湧き出るチートアイテム【空間魔導財布】を手に入れ、広場を邪魔しない「光の空中スクリーン&風魔導スピーカー柱」も整備されました!

そして迎える第46話は、数万人の熱狂を生み出した屋台の解体と、【穏やかな日常の帰還×第1話からのエモい回想(走馬灯)×ヒロイン打ち上げ配信の約束】の回です!

巨大屋台が消え、美しい景観を取り戻した大聖堂前広場。

噴水の脇に新設された水晶柱の「推しボタン」を、街の人々が楽しそうに連打!?

そして青空の下、特製サンドイッチを頬張りながら振り返る、豚肉と卵を持って転移してきたあの日からの奇跡――。

第1章の集大成を感じられる心温まるひとときを、どうぞごゆっくりお楽しみください!

カカカン、トン、とリズミカルな木槌と工具の音が、広々とした石畳に心地よく響き渡っていた。

爽やかに晴れ渡る王都の秋空の下。

数万人の大群衆が押し寄せ、王都中を香ばしいソースの香りと熱気で包み込んだ神聖アステリア大聖堂前広場では、屋台の解体作業が大詰めを迎えていた。

あれほど頑丈に組み上げられていた木組みの梁やカウンター、巨大な鉄板が、屈強な大工職人たちの熟練の手際によって、みるみるうちに解体され、荷車へと積み込まれていく。

フェスのために設置された屋台は綺麗さっぱり撤去され、露わになった白大理石の石畳には、柔らかな木漏れ日と小鳥たちの影が揺れていた。

「ふぅ……。祭りのあとの片付けって、なんだか少し寂しい気もするけれど……やっぱり、この静かな広場もすごく綺麗だね」

大聖堂を仰ぎ見ながら俺が呟くと、隣に立つルミアが白い修道服の袖を揺らし、花がほころぶような笑みを浮かべた。

「はい。祭りの賑やかさも胸が熱くなりましたけれど、こうして鳩が羽を休め、風が吹き抜けるいつもの広場を見ると……心がじんわりと落ち着きますね」

鉄板や資材を大人数で荷車へ固定し終えた大工の棟梁が、首に巻いた手ぬぐいで汗を拭いながら、こちらへ豪快な足取りで歩み寄ってきた。

「よう、ミナトの旦那! 屋台の解体、午前中で完了したぜ! ゴミ一つ残さずピカピカに磨き上げておいたからな!」

「ありがとうございます! 皆さんのおかげで、あんなに頑丈で使いやすい素晴らしい屋台で料理ができました。本当に感謝しています」

俺が深々と頭を下げると、棟梁は日焼けした顔をくしゃくしゃにして笑い、太い腕で俺の肩をポンと叩いた。

「へへっ、礼を言うのはこっちのセリフだ! うちの若い衆も全員、旦那の特製焼きそばを腹一杯食わせてもらってな、おかげで力が有り余って作業が午前中で終わっちまったよ! また美味いもんを振る舞うデカい仕掛けを作るときは、いつでも声かけてくれよな!」

「はい! その時はぜひお願いします!」

職人たちを乗せた荷車がガタゴトと広場を去っていくと、大聖堂の前に本来の静寂が戻ってきた。

青空には澄み渡る鐘楼とステンドグラスが堂々とそびえ、噴水からは清らかな水音がサラサラと響いている。

【主神アルト】:『祭りのあとの片付けってなんかエモいよなー。あの巨大屋台が綺麗さっぱり片付いたぜ』

【武神アーレス】:『うむ! 立つ鳥跡を濁さず。見事な設営と鮮やかな撤収、実に天晴れな仕事ぶりであった!』

ふと噴水の脇に目を向けると、そこには昨日クラリッサ商会とユリアス様の宮廷魔導工房が設置してくれた、高さ一メートルほどの真新しい白石のモニュメント――【魔導水晶柱】がひっそりと佇んでいた。

繊細な彫刻が施された石柱は、広場の美しい景観に完璧に溶け込んでおり、信徒の通行を妨げる気配は微塵もない。

普段はただの優美な彫像にしか見えないが、配信が始まれば上空へ光を放って巨大な魔導スクリーンを展開し、風魔導で高音質の音声を響かせる最新鋭の装置だ。

そして、その石柱の台座に埋め込まれた青く輝く【神聖登録水晶】の前には、すでに何人もの街の人々が集まっていた。

「ねえ、これに触るとミナト様と聖女様の姿が見られるようになるのよね?」

「うん! 触るだけでいいらしいわよ!」

買い出し帰りの町娘が、興味津々で水晶玉へそっと指先を伸ばす。

水晶に手が触れた――その瞬間だった。

――『ピコン♪』

澄んだ可愛らしい電子音のような音が広場に心地よく鳴り響き、水晶がポワッと淡い青い光を脈打たせた。

「わぁっ! 本当に可愛い音が鳴った! 光ったわ!」

「すごい! 私にも触らせて!」

――『ピコン♪』『ピコン♪』『ピコン♪』

広場を通行する若い騎士や買い物客、子どもたちが面白がって次々に水晶に手をかざしていく。

そのたびに、軽快な「ピコン♪」という音が連続して広場に響き渡った。

胸ポケットの神具スマホを取り出して画面を確認すると、チャンネル登録者数のカウンターがチチチッと小気味よいスピードで跳ね上がっている。

「すごいな……クラリッサさんの言った通り、難しい作法が要らないから、みんなが楽しんで触ってくれてる」

「ふふ、皆様が楽しそうに笑顔で触れてくださるのが、何より嬉しいですね」

【主神アルト】:『推しボタン水晶めっちゃ好評で草ww ピコンピコン鳴りまくって早押しクイズ番組みたいで楽しそうだな!』

【愛の女神フィリア】:『街の皆様がミナト君とルミアちゃんを応援したくて自発的に並んでいらっしゃる……! なんて温かくて尊い光景ですの!』

「かっかっか! 人が集まって賑やかになってきたのう! ……ところでミナト、解体も見届けたことじゃし、そろそろ腹が減らぬか?」

俺の肩に乗ったコハクが、ふさふさの尻尾を揺らしながらお腹をぽんぽんと叩いてみせた。

「あはは、そうだね。二人とも、少し早いお昼にしようか。ベンチに座ろう」

俺たちは噴水の丸い石の縁に腰掛け、俺は時間停止ストレージから今朝宿屋の厨房で作ってきたバスケットを取り出した。

純白のクロスを広げると、トーストした厚切りパンの香ばしい匂いとともに、彩り豊かな特製サンドイッチが顔を覗かせる。

「わぁ……! すごく美味しそうです、ミナトさん!」

「うむ! パンの間から肉と卵が溢れそうじゃぞ! 妾は肉の多い方を所望するのじゃ!」

トーストしたパンには、自家製マヨネーズをたっぷり和えた角切り茹で卵のサラダ、みずみずしいフリルレタス、真っ赤な完熟トマト、そして弱火でじっくり香ばしく焼き上げた分厚いベーコンが贅沢に挟まれている。

「はい、ルミアさんの分。コハクはこれね」

「ありがとうございます、ミナトさん!」

「いただきますじゃ!」

両手でしっかりと抱え、大きく一口かぶりつく。

――サクッ!

心地よいトーストの音とともに、卵サラダのまろやかなコク、トマトのジューシーな酸味、そして厚切りベーコンの燻製の香りとジューシーな脂の旨味が、口いっぱいに広がった。

「んん〜っ……! パンがサクサクで香ばしくて……卵の優しい甘さと、お肉の塩気が合わさって、とっても美味しいです……!」

ルミアが両手を頬に当て、サファイアのような青い瞳をとろけさせて微笑む。

穏やかな秋の陽光を浴びながら、サンドイッチを頬張る二人と一匹。

噴水の水音を聞きながら青空を見上げていると、俺の胸の中にふつふつと感慨深い思いが湧き上がってきた。

「思えばさ……」

「はい?」

「俺が学校の帰りにスーパーで、特売の豚肉と卵のパックを買って……玄関のドアを開けたら神殿だったあの日から、まだそんなに時間は経っていないんだよな」

俺がポツリと漏らすと、ベーコンを器用に前足で押さえていたコハクが、ケタケタと喉を鳴らして笑った。

「かっかっか! 妾もよく覚えておるぞ! 卵が割れると叫びながら天界の雲の穴から落ちた時は、なんという情けない少年かと思ったものじゃ!」

「情けないって言うなよ! あの時は本当に何が起きたか分からなくて必死だったんだからな」

俺が苦笑いしながら視線を広場の奥――大聖堂の静かな裏庭の方向へと向けると、ルミアもつられるようにそちらを見つめた。

「あの裏庭で、ルミアさんと初めて出会ったんだよな」

「はい……。私、あの日も三時間もお祈りと説教で座りっぱなしで……お腹がペコペコで倒れそうでした」

「そうそう。ルミアさんにお腹が空いたから一緒に食べませんかとお部屋に誘われて、俺が持っていたあの特売の豚肉と卵で、ジューシーな生姜焼きとふわとろのスクランブルエッグを作ったんだ」

「ふふ、あの時の生姜焼きの香ばしさと、卵のふわふわとした温かさ……生まれて初めて食べるような衝撃的な美味しさで、胸がいっぱいになりました」

ルミアが愛おしそうに目を細める。だが、俺はニヤリと口元を歪めた。

「で……お腹がいっぱいになって緊張がほぐれたルミアさんがさ。俺の制服の裾を両手でぎゅっと握りしめて、上目遣いで『あたま撫でてぇ……!』って甘えてきたんだよな」

「――っっっ!?!?」

その瞬間、ルミアの手がピタリと止まり、白皙の美貌が一瞬で沸騰したヤカンのように真っ赤に染まった。

「ふぇぇぇぇっ!? も、もう、ミナトさん! な、なぜそのお話を今蒸し返すのですか……っ! 恥ずかしいですからやめてくださいましーーっ!!」

「しかも俺、スマホの終了ボタンじゃなくて最小化ボタンを押しちゃってたから、天界の神様たち全員にルミアさんの甘え顔が生中継されてたっていう」

「うわああああっ! 穴があったら入りたいです……っ!」

ルミアはサンドイッチを小皿に置き、両手で真っ赤な顔を覆って小さく丸まってしまった。

【主神アルト】:『あの切り忘れ事故こそが全ての伝説の始まりだったなぁwww あの時の聖女ちゃんの「あたま撫でてぇ」は悶絶したわ』

【愛の女神フィリア】:『あの日からミナト様とルミアちゃんの尊い愛の軌跡が始まったのですわ……! 思い出すだけで鼻血が止まりませんわーーっ!!♡』

【豊穣神デメトラ】:『豚肉と卵の生姜焼きから、極厚ホットケーキ、フェスの特製焼きそば、そして今日のサンドイッチ……! 食が繋いできた人の縁、実に美しき奇跡じゃ!』

指の隙間から真っ赤な瞳を覗かせながら、ルミアは小さく息を吸い、そっと手を下ろした。

その瞳には、照れ臭さと同時に、どこまでも澄んだ深い慈愛が宿っていた。

「でも……ミナトさん。私、あの日のことを……心から神様に感謝しているんです」

「え?」

「あの日、お腹を空かせていた私に温かいご飯を作ってくださって……ミナトさんの前で、生まれて初めて素の自分をさらけ出すことができました。あの瞬間があったからこそ、私は大聖堂の『作られた完璧な聖女』という重い仮面を脱ぎ捨てて……一人の人間として、笑うことができるようになったのですから」

ルミアの柔らかな言葉が、静かに心へ染み渡っていく。

「ルミアさん……」

「その後のことも、昨日のことのように思い出せますわ」

ルミアは微笑みながら、指を折って数え始めた。

「スパチャというもので取り寄せた道具で極厚のホットケーキを焼いたら、神託の水晶で見ていたシルヴィア様が『精神汚染魔術か!』と勘違いして抜刀突入してきて……」

「あはは! 焼きたてを一口口に突っ込んだら、『我が主!』って即座に忠誠を誓ってきたんだよね」

「冒険者ギルドで豪快なバッカスさんたち冒険者の皆様と出会い、クラリッサ商会やユリアス公爵様と手を結び……そして、昨日の数万人の大聖堂前フェスまで。お父様も、まさか数万人の前であんなに男泣きして『娘をよろしく頼む!』と叫ぶとは思いませんでしたけれど……ふふっ」

「本当に、あっという間だったけれど……たくさんの温かい人たちに出会えたな」

ただ一人、現代から放り出された孤独な男子高校生だったはずの自分の周りに、これほど心強い仲間たちの笑顔が満ちている。

胸の奥から込み上げる熱い充実に、俺は自然と笑みをこぼしていた。

その時だった。

「あ! ミナトのお兄ちゃんだ! 聖女様もいるー!」

広場の向こうから、パタパタと小気味よい足音が駆け寄ってきた。

パン屋の紙袋を抱えた小さな男の子と女の子の兄妹、そして優しげな母親が、満面の笑顔で小走りにやってくる。

「お兄ちゃん、昨日の焼きそば、すっごく美味しかったよ! お肉がいっぱい入ってて、お腹いっぱいになったの!」

「聖女様、いつもお祈りありがとうございます!」

子どもたちが駆け寄るなり、俺とルミアの膝元に嬉しそうに抱きついてきた。

母親も胸に手を当て、深々と頭を下げる。

「ミナト様、昨日のお祭りでは、子どもたちに温かいご飯を振る舞ってくださって……本当にありがとうございました。街の母親たちも、みんなミナト様と聖女様に心から感謝しているんですよ」

「そんな、喜んでもらえて俺たちも本当に嬉しいです」

「ふふ、美味しく食べてくれてありがとうね。風邪を引かないように、元気に過ごすのですよ」

ルミアが優しく屈み込み、兄妹の柔らかな髪を慈しむように撫でる。

顔を上げると、遠くの通りを行き交う八百屋の店主や、巡回中の騎士たちも、こちらに気づいて温かく手を振ってくれていた。

「ミナトの旦那ー!」「聖女様ー!」

ただの異世界人だった自分が、この街の人々の心に、確かに温もりを届けることができたのだ。

子どもたちを見送り、手を振り終えたところで、コハクが俺の肩にピョンと飛び乗ってきた。

「かっかっか! 王都の民は皆、良い顔をしておるのう! これで屋台の解体も街への挨拶も、一段落じゃな!」

「ああ。本当に、いい街だな」

「うむ! ならばミナト、今夜は宿屋でシルヴィアやクラリッサも呼んで、美味いもんを並べて打ち上げ生配信と洒落込もうではないか! 神々リスナーへの感謝祭じゃ!」

コハクの提案に、俺はポンと手を叩いた。

「いいね! フェスの大成功の打ち上げをやろう。天界通販で美味しいものを取り寄せて、打ち上げ会だ」

「まぁ! シルヴィア様もクラリッサさんも、きっと大喜びしてくださいますね!」

ルミアが目を輝かせたので、俺は先ほどの出来事を思い出しながら微笑んだ。

「あ、そういえばさっき、宮廷工房で通信水晶の量産調整をしてるユリアスさんのところに、夜食用の特製カツサンドを差し入れしてきたんだ」

「まぁ、ユリアス様に! とても喜ばれたでしょう?」

「うん。『工房の魔導師たちも大喜びするよ、ありがとう!』って、すごく感謝してくれてさ。そのお礼にと、王室御用達の特製フルーツワインを一本持たせてくれたんだ。『果汁たっぷりで甘くて、ジュースみたいに飲みやすいから、今夜の打ち上げでみんなで飲むといい』ってさ」

「ふふ、ユリアス様らしい素敵なお心遣いですね! まるでジュースのようなお酒……私、いただくのがとても楽しみです!」

ルミアは胸の前で手を合わせ、無邪気な笑顔を浮かべた。

「うむ! 美味い飯と甘い酒! 今夜の配信は最高の一夜になりそうじゃのう!」

コハクが上機嫌で尻尾を揺らす。

秋の穏やかな夕暮れが広場を黄金色に染める中、俺たちは今夜の打ち上げを楽しみに、宿屋へと歩みを進めた。

――だが。

このフルーティーで甘いワインが、新たな事故を招く引き金になることを、ミナトたちはまだ知る由もなかった。

第46話をお読みいただきありがとうございました!

巨大屋台の解体と、穏やかな日常の中での【エモい回想(走馬灯)×ヒロイン打ち上げ予告回】、いかがでしたでしょうか!

数万人の熱狂を生み出した巨大屋台が綺麗さっぱり片付き、大聖堂前広場は元の静謐で美しい日常へ!

噴水脇に設置された魔導水晶柱の「推しボタン」を街の人々が楽しそうに押し、主神アルトが「早押しクイズ番組みたい」とツッコミを入れる微笑ましい光景!

そして、青空の下で食べる特製サンドイッチとともに振り返る、第1話からの軌跡――。

放課後のスーパー特売の豚肉と卵を持って転移してきたあの日から、

第2話の生姜焼きからの「あたま撫でてぇ……!」という初切り忘れ事故、

第3話・第4話の極厚ホットケーキによる女騎士シルヴィアの抜刀&即落ち、

バッカスたち冒険者ギルドの皆、クラリッサ、ユリアス、そして数万人の大成功フェスまで!

大聖堂の鳥籠に縛られていたルミアが「ミナトさんのおかげで、一人の人間として笑えるようになった」と語るシーンは、二人の歩んできた日々の集大成として胸に迫るものがあれば幸いです!

ラストには、宮廷工房で頑張るユリアスへミナトが夜食カツサンドを差し入れし、お礼にもらった「まるでジュースのように甘い高級フルーツワイン」!

今夜は宿屋でヒロインたち(ルミア、シルヴィア、クラリッサ)との打ち上げ生配信の約束が結ばれました!

次回――第47話もどうぞお楽しみに。

第2章新たなる旅路まで、あと4話となります。

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