第43話:奇跡の義援金! 大司教からの特級感謝状
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前回の第42話では、フェス完全撤収後の深夜の大聖堂厨房にて、朝から何も食べていなかった仲間たちによる至福の深夜まかない飯!
背徳の『極上焼きそばパン』と、冷えた身体を芯から温める『生姜香るふわふわ鶏団子スープ』で至福の飯テロをお届けしました!
そして今日一日のドタバタを笑い合い、お腹がいっぱいになったルミアがミナトの肩にコテッともたれかかって眠ってしまう最高にエモい夜を過ごしました。
そして迎える第43話は、大聖堂の最高責任者・ヴァルフレート大司教の元へ向かう、【奇跡の義援金×全額寄付×最強の感謝状授与回】です!
クラリッサから発表される、王都の歴史を塗り替える莫大な売上と純利益。
そして巨万の富を目の前にして、ミナトが語る「料理を作る原点」とは――?
旅立ちに向けた最強のパスポートを手に入れる栄光のひと幕を、どうぞ温かい気持ちでお楽しみください!
荘厳なステンドグラスを透過した朝の柔らかな陽光が、神聖アステリア大聖堂の大理石の床に色鮮やかな幾何学模様を描き出していた。
長い白亜の回廊を抜け、俺たちは大司教執務室の前へと歩みを進めていた。
昨夜食べた熱々の焼きそばパンと生姜香る鶏団子スープ、そして泥のようにぐっすり眠ったおかげで、身体に溜まっていた激しい疲労感はすっきりと抜け、心地よい朝の涼風が肌を撫でていく。
だが――俺の右隣を歩くルミアの様子が、明らかに朝からおかしかった。
「お、おはようございます、ミナトさん……っ」
伏し目がちに挨拶を交わしたきり、ルミアは両手で顔を覆うようにして縮こまっている。
純白の神聖な聖女礼服に身を包んでいるものの、透き通るような白い肌は耳の先から首筋まで真っ赤に染まり、頭の上から目に見えるようにシュウシュウと白い湯気が立ち上っていた。
(昨夜、お腹がいっぱいになって……ミナトさんの肩に頭をもたれかけて、そのまま朝まで眠ってしまったなんて……っ! は、破廉恥すぎます、聖女として失格です……っ!)
必死に平静を装おうとしているが、胸の内の大パニックが全身からダダ漏れになっていた。
「昨日はぐっすり眠れた? 肩、全然重くなかったし大丈夫だったから、気にしないでね」
俺が苦笑いして優しく声をかけると、ルミアは「ふぇぇ……っ」と情けない声を上げてさらに小さく丸まってしまった。
「ふむ。我が主の肩はよほど寝心地が良かったと見えるな」
俺の左後ろを歩くシルヴィアが、磨き上げられた白銀の甲冑を鳴らして柔らかく目を細めた。
「まったく、朝からごちそうさまですわ。ですがルミアさん、今は気を引き締めませんと。これから大司教様への最終報告ですわよ」
豪奢なドレスを纏ったクラリッサが、分厚い決算書を抱え、いたずらっぽく微笑む。
【愛の女神フィリア】:『朝から昨夜の肩枕を思い出して悶絶するルミアちゃん……! 朝一番の尊い栄養補給ですわーーっ!!♡(30,000pt赤スパ寄付)』
【主神アルト】:『おはよう! さあ、昨日のフェスの集大成、収支報告タイムだな!』
「さあ、参りましょう」
端を歩くユリアスが静かに促し、重厚な執務室の扉が音もなく開かれた。
部屋の奥、陽光が差し込む大きなデスクから、アステリア大聖堂の最高責任者――ヴァルフレート大司教が、穏やかで慈愛に満ちた笑みを浮かべて立ち上がった。
「よく来てくれた。昨夜の広場の熱気と見事な魔導花火は胸が震えるほどであったぞ。誰一人として大きな怪我人も出ず、完璧な運営であったと聞いている」
大司教の温かい言葉に全員で一礼を返すと、クラリッサが一歩前に進み出た。
「神聖アステリア大聖堂前大屋台フェス、最終収支報告を申し上げますわ」
クラリッサは背筋をピンと伸ばし、分厚い羊皮紙の決算書を厳かに開いた。
「焼きそば及びお好み焼き数万食の完全完売。ルミア様のクレープなどのスイーツ、各種飲料水、さらには商業ギルド協賛の出店ブースからの出店料および売上歩合……これらすべての総売上より、食材費、魔導機材費、近衛騎士団および冒険者ギルドへの警備協力金等の諸経費をすべて差し引いた【純利益=慈善義援金】の最終総額は――」
クラリッサは一呼吸置き、凛とした声で数字を告げた。
「――金貨二千三百枚に達しますわ!」
しん、と執務室の空気が静まり返った。
一般的な平民の家庭であれば、家族全員が生涯贅沢に暮らしていける途方もない大金。大聖堂の年間慈善予算の数倍に匹敵する、国家規模の莫大な富だ。
「き、金貨……二千三百枚だと……!?」
威厳に満ちていたヴァルフレート大司教が、思わずデスクに両手をついて身を乗り出し、サファイアのような瞳を見開いた。
「わずか一日……たった一日の屋台フェスで、王都の年間慈善バザーの総額を遥かに凌駕する富が集まったというのか……!?」
「はい。王都の民衆がこれほど熱狂し、自ら進んで財布を開いた例は、王国の歴史上にも記録がございませんわ」
クラリッサが誇らしげに胸を張る。
【主神アルト】:『金貨2300枚www 一日で稼ぐ額じゃないぞwww 完全に国家予算レベルwww』
【豊穣神デメトラ】:『民が笑顔で腹を満たし、その喜びの対価がそのまま善意の金貨となったのじゃ! これぞ真の豊穣の奇跡よ!』
息を呑む静寂の中、大司教は震える手でデスクの上の決算書を見つめていた。
これほどの巨万の富があれば、王都に豪奢な大屋敷を何棟も建て、広大な領地を買い取ることすら容易にできる。
大司教は居住まいを正し、静かに俺へと視線を向けた。
「……ミナト殿。この事業のすべての発案者であり、奇跡の料理の根幹を担ったのは貴殿だ。この利益の配分、貴殿はいかに望まれるか?」
大司教の問いかけに、俺は迷うことなく、あっけらかんと笑って答えた。
「配分も何も、最初から決まっていますよ。約束通り――この純利益の金貨二千三百枚すべてを、大聖堂の教会孤児院の建て替えと、貧しい子供たちの食事や教育資金として全額寄付させてください」
「ぜ、全額だと……!?」
大司教が絶句し、息を呑んだ。
「金貨二千三百枚だぞ……!? 貴殿の取り分が一切残らんのだぞ!? いくら慈善事業とはいえ、これほどの大金を前にして、一握りの富すら我が物にしようとは思わんのか……!?」
驚愕する大司教の前で、俺は少し照れくさそうに頭を掻きながら、心の中にあった想いを素直に口にした。
「……俺、故郷にいた頃から、時々家族に料理を作っていたんです」
「家族、に……?」
「はい。共働きで忙しかった両親や、部活で疲れて帰ってきた妹に、夕飯や夜食を作って振る舞うことが多くて。みんな学校や仕事で疲れ切った顔をして帰ってくるんですけど……俺の作った温かいご飯を一口食べた瞬間、パッと顔をほころばせて『美味しい!』って笑ってくれるんです。その笑顔を見る瞬間が、俺にとって何よりも嬉しくて、誇らしい時間でした」
俺は振り返り、大聖堂のステンドグラスを見上げた。
「昨日の屋台フェスも、俺にとってはまったく同じなんです。王都のみんなが俺の料理を食べて、目を丸くして『美味い!』って笑って、お腹いっぱいになってくれた。料理を振る舞う人として、その笑顔を見られたこと以上の報酬なんて、どこを探してもありませんよ。だからこのお金は、あの子たちが毎日温かいご飯をお腹いっぱい食べて、笑顔で暮らせるように……全額使ってください」
「ミナトさん……」
ルミアが胸元で両手をぎゅっと握りしめ、翡翠色の瞳を潤ませて俺を見つめていた。
「我が商会としても、実費の経費のみを頂戴し、利益分はすべて寄付に回しておりますわ。クラリッサ商会の名声がこれほど高まったのですから、お釣りが来るほどです」
「私にとっても、大画面スクリーンと魔導花火の励起術式の運用実験として極めて有意義であった。金銭の報酬など不要だ」
クラリッサとユリアスも涼やかな笑みを浮かべて頷いた。
「おお……おおおっ……! なんという……なんという無私にして高潔な魂か……!」
ヴァルフレート大司教は両手で顔を覆い、ボロボロと感涙の涙を流した。
「私腹を肥やすことしか考えぬ貴族たちが跋扈する中……若き少年が、家族を愛するその温かい心をもって、我が教会の子供たちの未来を救ってくださった……!」
大司教は涙を拭い、居住まいを正して立ち上がると、部屋の奥にある重厚な金庫へ向かった。
厳重な魔導結界を解き、ビロードの布に包まれた小箱をうやうやしく取り出してデスクの上へ置く。
パカリ、と蓋が開かれた。
中に入っていたのは――純金箔の繊細な装飾が施された最高級の羊皮紙と、青白く神聖な光を放つ特大の銀製メダルだった。
羊皮紙の中央には、大聖堂とアステリア王国の最高位を示す二重の「聖印」が、魔導刻印によって厳かに焼き付けられている。
「ミナト殿。アステリア大聖堂の最高責任者として、神の御名において、貴殿へこの【特級慈善感謝状】ならびに【名誉大慈善聖印章】を授与いたします」
大司教は厳かに銀の鎖を手に取り、ミナトの首へとメダルをかけた。
ずっしりとした重みとともに、清らかな神聖魔力が全身を包み込む。
「……我が主。これは、アステリア王国の建国以来、過去数百年間で片手で数えるほどの聖者や大英雄にしか授与されたことのない至高の栄誉です」
シルヴィアが背筋を正し、誇らしげな眼差しで解説してくれた。
「この感謝状と聖印章を持つ者は、アステリア王国全土のすべての関所を顔パスで通過できるのみならず、近隣諸国や他国の領主、教会がある地域においても、王族の親書と同等の身分保証と最上級の保護を受ける権利を持ちます」
「ええっ!? そ、そんなパスポートどころじゃない国宝級のアイテム、貰っちゃっていいんですか!?」
「当然ですわ! 貴族の爵位すら軽々と飛び越える、大陸の大部分で通用する最強の身分証ですわよ!」
クラリッサが扇子を広げて微笑む。
【豊穣神デメトラ】:『全額寄付! 見事じゃミナト! 家族を想う温かき心が、異世界の民をも救ったのじゃ!(170,000pt赤スパ寄付)』
【武神アーレス】:『巨万の富を前にしても一切私欲に囚われぬその器量……真の英傑の器よな!』
【主神アルト】:『特級通行手形キタァァァ!! これで大陸の大部分はフリーパスじゃん! 大司教ナイス!!(58,000pt赤スパ寄付)』
「かっかっか! ミナト、胸を張るのじゃ! お主は正真正銘、王都を救った大英雄なのじゃからな!」
肩の上のコハクが、誇らしげに七色の尻尾を揺らした。
大司教への挨拶を終え、温かい拍手に見送られて執務室を辞した俺たち。
「ふぅ……なんか、とんでもない身分証をもらっちゃったな……」
首から提げた銀の聖印章を眺めながら回廊を歩いていると――。
トン、トン。
不意に、背後から優しく肩を叩かれた。
「……ん?」
振り返ると、そこには金髪碧眼の端正な美貌を持ち、神聖な司教服を上品に着こなした男性が立っていた。
ルミアとよく似た涼やかで美しい面立ちに、見る者を包み込むような温和で慈悲深い微笑み。
信徒たちから「慈愛の聖職者」として絶大な敬愛を集める、ルミアの父親――クリストフ司教だった。
「お、お父様……!?」
ルミアが驚いて目を瞬かせる。
クリストフ司教は、昨日の屋台で焼きそばを食べて感極まり「娘をよろしく頼む!」と叫んでしまったことを思い出したのか、頬をほんのりと赤らめて照れくさそうに笑った。
だが、その碧眼には、温かく穏やかな光が湛えられていた。
「ミナト君。先ほどの大司教様へのご寄付のお話……廊下まで聞こえていたよ。本当に、素晴らしいお心だね。……もしよければ、私たち家族と話せるかな?」
静まり返った大聖堂の回廊に、美形パパ司教の柔らかく穏やかな声が、心地よく染み渡っていったのだった。
第43話をお読みいただきありがとうございました!
フェス翌朝の【奇跡の義援金&特級感謝状授与回】、いかがでしたでしょうか!
クラリッサから発表された、歴史を塗り替える最終義援金はなんと【金貨二千三百枚】!
国家予算レベルの富を目の前にして、ミナトが語った「日本で家族(両親や妹)に料理を作っていた原点」――。
自分の作ったご飯で家族が笑顔になってくれた喜びこそが、料理をする人としての魂の根底にあるというミナトの温かい想いに、胸が熱くなっていただけましたら幸いです。
そしてラスト、回廊でミナトを優しく呼び止めたのは……ルミアのお父さん、慈悲深い美形パパ司教のクリストフ!
昨日の男泣きを照れながらも、穏やかな笑顔でミナトに声をかけてくれました!
次回――第44話もどうぞお楽しみに。




