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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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42/50

第42話:深夜の特生まかない飯! 焼きそばパンと鶏団子スープ

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回の第41話では、大聖堂正面の白亜の大階段を舞台に、夜空を埋め尽くす大魔導花火と、広場数万人の地鳴りのような大歓声!

そんな中で紡がれた聖女ルミアの決死の一言が、歓声にかき消されてミナトの無自覚な難聴ムーブが炸裂しました!

さらに、神具スマホの神マイクが集音して天界が赤スパ乱舞する中、女の勘で察知したシルヴィアとクラリッサが詰め寄る修羅場をお届けしました!

そして迎える第42話は、数万人が熱狂したフェスが完全に幕を閉じた後の、【深夜の至福のまかない飯&打ち上げエモ回】です!

朝から水分補給と味見程度しかできず、極限の空腹と心地よい疲労のピークを迎えた仲間たち。

静まり返った大聖堂の厨房で、ミナトが振る舞うのは――

取り置き焼きそばをふわふわパンに限界まで挟んだ背徳の『極上焼きそばパン』と、冷えた身体を芯からポカポカに温める『生姜香るふわふわ鶏団子スープ』!

今日一日の激闘を笑い合い、仲間たちの絆が一つに溶け合う温かな深夜のひとときを、どうぞお楽しみください!

カチ、コチ、と規則正しい大時計の針の音だけが、静寂に包まれた空間に響いていた。

大聖堂前広場を埋め尽くしていた数万人の群衆は完全に引き払い、夜の静寂が王都を優しく包み込んでいる。

騎士団や冒険者たち、そして出店商人たちの全面協力のもと、広場周辺の屋台の清掃を終えていた。

時計の針は、すでに深夜の十一時を回っている。

薄暗いランプの灯火に照らされた神聖アステリア大聖堂の厨房に、俺たちはいた。

磨き上げられた大きな木製テーブルの周りに、仲間たちがめいめいに椅子を引き寄せて腰を下ろしている。

「……ふぅ。ようやく、フェスが無事に終わりましたわね」

クラリッサが分厚い最終帳簿をテーブルに置き、履いていた革靴をそっと脱いで細い足を休ませながら、深く息を吐いた。

「ああ。広場のゴミ一つ残さず、騎士団と冒険者ギルドで完璧に回収を終えた。近隣の警備体制も平常配置へと戻してある」

シルヴィアも、一日中身に纏っていた重い白銀の胸当てや籠手を外し、動きやすい藍色の騎士用インナー姿になって肩を回している。

「私の担当した音響増幅回路と遠隔起爆の魔石群も、すべて異常なく回収を完了した。魔力の逆流による事故も皆無だ」

端に座るユリアスが、プラチナシルバーの髪を指先で軽くかき上げ、椅子の背もたれにゆったりと身を預けた。端正な顔立ちには心地よい疲労感が滲み、若き公爵としての重圧から解き放たれた穏やかな表情を浮かべている。

全員、やりきったのだ。

あの途方もない大仕事を、誰一人欠けることなく、完璧な形で成し遂げた。

だが――張り詰めていた緊張の糸が切れた瞬間、アステリア大聖堂の厨房の空気が急変した。

――ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅ……。

静まり返った厨房に、誰のものともつかない盛大な腹の虫の音が、情けなく響き渡ったのだ。

「「…………」」

全員の視線が宙を泳ぎ、ルミアが林檎のように顔を真っ赤にして両手でお腹を押さえた。

「あ、あの……! い、今の音は、私ではなくて……っ!」

「いやルミアさん、恥ずかしがらなくていいよ。……俺のお腹も、さっきから大合唱してるから」

俺が苦笑いして腹部をさすると、シルヴィアが神妙な面持ちで小さく咳払いをした。

「……恥じることはない。朝から怒涛の客足で、一口二口の味見と水分を口にしただけであったからな。正直に申せば……今の私は、巨大魔獣の肉でも食べれるほど空いている」

「わたくしもですわ……! 数字の計算で頭への糖分はとっくにゼロ、クラリッサ商会の全資産を差し出してでも、今すぐ胃袋に炭水化物を流し込みたい気分ですわ……!」

「かっかっか! 妾もじゃ! お腹と背中がくっついて、狐の毛皮がペタンコになってしまうのじゃ!」

テーブルの上でコハクが仰向けになり、四肢をパタパタと動かして抗議の声を上げる。

「よし! みんな、本当にお疲れ様でした。……今夜は俺たちだけの、最高のご褒美夜食を作ろう!」

俺は立ち上がり、エプロンの紐をキュッと締め直した。

厨房の大きな魔導コンロへ近づき、種火を灯す。

「ミナト、何を作る気だ?」

ユリアスが興味深そうに首を傾げた。

「一日中、強い火力と濃厚なソースの油煙を浴び続けて、みんなの身体は疲労困憊です。だから今夜は――手軽に胃袋を満たせる極上の炭水化物と、夜風で冷えた身体を芯からポカポカに温めて胃を優しく洗い流す、最高の和風スープを用意しました」

俺は神具スマホを取り出し、「時間停止ストレージ」の画面をタップした。

青白い光の粒子が収束すると同時に、調理台の上へ、どっしりとした金属容器が現れる。

パカリ、と密閉されたフタを開けた瞬間だった。

――ボワァッ!

立ち上る猛烈な白い湯気とともに、甘辛く香ばしい特製ソースと焦がしラードの暴力的な香気が、深夜の厨房全体へ一気に解き放たれた!

「なっ……!? これは、あの屋台の焼きそばか!」

ユリアスがサファイアの瞳を見張り、身を乗り出した。

「ええ。試食会や仕込みの段階で、自分たちの夜食用として時間停止ストレージに密閉保存しておいたんです。出来立て熱々の状態のまま、水分も熱量も完全にキープされています」

さらに俺は、天界通販アプリを素早く操作した。

ポータルから取り出したのは、薄紙に包まれた、焼きたてのようにふっくらとした大きな「コッペパン」だ。

「ほぅ……? 柔らかな白パンか。だが、中央に切れ目が入っているな」

シルヴィアが首を傾げる前で、俺は手際よく作業を進める。

ほんのりと甘い小麦の香りが漂うコッペパンの切れ目に、トングを使って熱々の焼きそばをこれでもかと限界まで挟み込んでいく。溢れんばかりに盛り上がった太麺の上に、チューブからマヨネーズを美しい格子状に絞り出し、仕上げに真っ赤な紅生姜と青のりをパラパラと散らしたら、『極上焼きそばパン』の完成だ。

「パ、パンに……麺を挟むのですか!?」

クラリッサが目を丸くして息を呑んだ。

「パンという炭水化物に、さらに小麦の麺という炭水化物を重ねる……!? な、なんという悪魔的で、背徳感に満ちた料理ですの……!?」

「ふふ、驚くのはまだ早いですよ。もう一品あります」

俺は大鍋をパッと持ち上げた。

――ふわぁぁぁぁぁぁぁぁん……。

厨房に満ちていた濃厚なソースの匂いを優しく包み込むように、清涼でどこまでも澄み渡るような芳醇な香気が立ち上った。

昆布と鰹節の上品な合わせ出汁に、たっぷりとすりおろした「生姜」の爽やかな刺激。

大鍋の中では、透き通った黄金色のスープの中で、白菜、しめじ、長ネギがクツクツと優しく煮立っている。

俺はボウルの中で鶏ひき肉に刻み大葉と水切り豆腐、生姜の搾り汁を練り込んだ特製のタネをスプーンですくい、次々と熱々の出汁の中へ落としていく。

ふわり、と浮き上がってきた一口大の鶏団子は、信じられないほど柔らかく、鶏の上品な旨味を出汁の中へと溶け出させていく。仕上げに薄口醤油とごま油をひと垂らしすれば、完成だ。

「はい、お待たせしました! 今夜の特製まかない飯――『王都特製焼きそばパン』と『生姜香るふわふわ鶏団子スープ』です!」

一人分ずつ深めの木椀にたっぷりと鶏団子スープを注ぎ、湯気立つ焼きそばパンを添えてテーブルへと配膳した。

【豊穣神デメトラ】:『うおおおおっ!! 鶏の旨味と生姜の清涼出汁、白菜の甘みスープ! そして焦がしソースの小麦挟みじゃとぉぉ!? これぞ極限まで働いた肉体を芯から蘇らせる、神域の滋養飯じゃぁぁ!!(52,000pt赤スパ寄付)』

【主神アルト】:『深夜十一時の焼きそばパンと生姜スープはテロすぎるだろwww 腹減りすぎて耐えられん、俺もカップ麺のお湯沸かしてくるわwww』

【武神アーレス】:『大戦を終えた戦士たちが、同じ釜の温かき飯を食らい語らう夜……実に見事な情景よな!』

「「「いただきます……っ!!」」」

待ちきれないとばかりに、全員が両手で焼きそばパンを掴み、口を大きく開けてかぶりついた。

――サクッ、ふわぁっ。

柔らかなコッペパンの生地を噛んだ瞬間、濃厚なソースを纏ったモチモチの太麺が、津波のように口の中へ雪崩れ込んできた。

パンのほんのりとした甘みがソースの力強い塩気と酸味を完璧に受け止め、マヨネーズのまろやかなコクが全体を濃厚にまとめ上げる。そこへピリッとした紅生姜の辛味が絶妙なアクセントを加え、噛み締めるたびに強烈な多幸感が脳天を突き抜けていく。

「んんんんん〜〜〜〜っっ!!」

クラリッサが両頬を押さえ、身悶えしながら椅子の上で足をバタつかせた。

「な、なんですのこの美味さは……っ! パンのふんわりとした柔らかさと、ソースを吸った麺の弾力が完璧に一体化していますわ! 炭水化物同士なのに、重さを感じるどころか、噛めば噛むほど旨味が溢れて止まりませんの……っ!」

「……美味い。……言葉を失うな」

シルヴィアも夢中でパンにかぶりつき、口元に微かにソースをつけながら青い瞳を輝かせた。

「戦場で冷え切った乾パンを齧るのとは天と地ほどの差だ。パンの甘みとソースの塩分が、酷使した筋肉の隅々にまでダイレクトに染み渡っていくようだ……!」

「そして、このスープを一口どうぞ」

俺が促すと、仲間たちはお椀を両手で包み込み、ふーふーと息を吹きかけてから、縁に口をつけた。

ずずず……。

「…………っ、はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

ルミアが喉を鳴らして汁を飲み干した瞬間、全身の力がふにゃりと抜け落ち、とろけるような至福のため息を漏らした。

「温かい……。口の中に広がる生姜の爽やかな香りと、優しいお出汁の旨味……。鶏のお団子も、舌の上でふわっと崩れて……喉を通るたびに、お腹の芯がぽかぽかと温まっていくのが分かります……。生き返るようです、ミナトさん……」

「ふっ……素晴らしいな」

ユリアスもお椀を見つめ、静かに目を細めた。

「生姜に含まれる成分が末梢血管を拡張し、血流を促しているのが自覚できる。それに、鶏肉と和風出汁のアミノ酸が、濃厚なソースの後味を驚くほど上品にリセットしてくれるな。一日中回転し続けて焼き切れそうだった私の大脳が、急速に鎮静化されていくようだ」

「かっかっか! このふわふわの鶏団子と、お出汁をたっぷり吸った白菜がたまらんのじゃ! ミナト、焼きそばパンのおかわりを所望するぞ!」

コハクが小さな口の周りを真っ赤な紅生姜色に染めながら、尻尾を揺らして催促する。

空っぽだった胃袋が温かなご馳走で満たされるにつれ、厨房の空気は柔らかくほどけ、自然と今日一日のドタバタが話題に上った。

「それにしても、あの美食家で貴族のガストーネ伯爵が、食べることに夢中になって、屋敷へのお持ち帰りまで頼んできたのは痛快でしたわね!」

クラリッサが焼きそばパンを頬張りながら、誇らしげに笑う。

「ああ。昼間にいらした、あのアルさんとレノーラさん夫婦のために出した青いゲルクッションの喜びようも凄まじかったですね。奥さん、腰が信じられないくらい軽くなったって、夫婦揃ってお礼を言ってくれたし」

俺が笑顔で振り返ると、隣でスープを飲んでいたシルヴィアが、ピクッと肩を跳ねさせた。

椀を持ったまま、引きつった笑みを浮かべて喉を小さく鳴らしている。

(……我が主。貴方が気安く『アルさん夫婦』と呼んでいるあのお方は、この神聖アステリア王国の至高たるアルベルト国王陛下とエレオノーラ王妃様なのだが……。まあ、陛下や王妃もあのお忍びを心から満喫され、腰痛も劇的に治ったと破顔しておられたし……今は、黙っておくべきか……)

シルヴィアの内心の冷や汗に気づくはずもない俺は、さらに楽しそうに言葉を続けた。

「それに、ルミアさんのお父さんもあんなに喜んでくれて本当によかったよ」

すると、椀を置いたシルヴィアが、どこかからかうようにジトッとした視線をこちらへ向けてきた。

「それにしても……ルミア殿のお父上が焼きそばを食べて号泣し、数万の民衆の前で『娘をよろしく頼む』と叫んだ時は、いかなる軍略かと思いましたが」

シルヴィアがジト目を向けてくると、俺は吹き出しそうになりながら両手を振った。

「だ、だからあれは本当に予想外のアクシデントですってば! ルミアのお父さんがまさかあんなに情に厚い人だとは思わなくて……」

「も、もうやめてくださいまし……! お父様ったら、あんな大声で叫ぶなんて本当に恥ずかしくて……っ!」

ルミアが湯気を噴き出して縮こまり、その愛らしい姿に厨房中が温かな笑い声に包まれた。

「でも、本当にみんなのおかげだよ。シルヴィアさんの完璧な警備、クラリッサさんの的確な運営、ユリアスさんの素晴らしい魔導スクリーンと花火、そしてルミアさんの笑顔の接客……。誰か一人でも欠けていたら、数万食の完売なんて絶対にあり得なかった。みんな、本当にありがとう」

俺が心からの感謝を伝えると、仲間たちは一瞬驚いたように目を見張り、それから照れくさそうに、けれど誇らしげに微笑み合った。

「ふふ、ミナトさん。実は私からも……まかないがあります」

スープを飲み終えたルミアが、大切そうに抱えていた小さなボウルをテーブルの上へ置いた。

中に入っていたのは、綺麗に取り置かれていた薄焼きのクレープ生地だ。

ルミアは嬉しそうに微笑みながら、角切りリンゴの甘酸っぱいコンポートとふわふわの生クリームを手際よく包み込み、可愛らしい一口大のミニクレープを作って俺の前へと差し出した。

「フェスの間、ミナトさんは鉄板の前に立ちっぱなしで、私の巻いたクレープを一口も食べていませんでしたから……! はい、どうぞ!」

「うわぁ、ありがとうルミアさん! いただきます!」

口の中へ放り込むと、もっちりとした生地の中から、爽やかなリンゴの酸味と優しい生クリームの甘さがじゅわっと広がった。塩気のあるスープと焼きそばパンの後に食べるこの甘味は、まさに至高のデザートだった。

「美味い……! 甘酸っぱくて、生地がモチモチで最高だよ」

「ふふっ……よかった……」

ルミアは心底安心したように、花が咲くような満面の笑みを浮かべた。

温かいお茶をすすりながら、静かな時間が流れていく。

やがて、コクリ……コクリ……と、規則正しい揺れが隣から伝わってきた。

「……ルミアさん?」

「……ふぇ? ……あ、ミナト、さん……。なんだか、お腹がいっぱいに、なったら……急に、眠気が……」

ことん。

柔らかな感触と、甘いリンゴの微かな香りを残して。

ルミアの金色の髪を揺らした頭が、俺の右肩へともたれかかってきた。

すぅ、すぅ、と、穏やかで無防備な寝息が耳元をくすぐる。

「えっ!? ちょ、ルミアさん!?」

俺が慌てて硬直すると、左隣に座るシルヴィアが、お茶をすすりながら柔らかく目を細めた。

「……ふっ。今日ばかりは、大目に見て差し上げましょう。ルミア殿も、全身全霊で国民のために働かれていましたからな」

「ええ。明日の朝一番には、大司教様への最終収支報告がありますわ。今夜は泥のように眠るといたしましょう」

クラリッサも満足そうに帳簿を閉じ、伸びをした。

【愛の女神フィリア】:『肩にもたれかかってスヤスヤ眠るルミアちゃん……尊死確定ですわーーっ!!♡♡(80,000pt赤スパ寄付)』

【主神アルト】:『最高の打ち上げだったな! 全員本当にお疲れ様! ゆっくり休めよー!』

静まり返った大聖堂の地下厨房。

肩にかかる心地よい重みと、仲間たちの穏やかな寝息に包まれながら、大成功を収めたフェスの夜は温かな余韻とともに静かに更けていくのだった。

第42話をお読みいただきありがとうございました!

フェス完全撤収後の【深夜の特生まかない飯&打ち上げ回】、いかがでしたでしょうか!

朝から水分補給と味見程度しかできず、極限の空腹だった仲間たち。

フェスを頑張ってくれた仲間たちのために作る『極上焼きそばパン』と『生姜香るふわふわ鶏団子スープ』!

炭水化物×炭水化物の暴力的な美味さと、五臓六腑を芯からポカポカに温めてくれる生姜出汁の滋味に、シルヴィアもクラリッサもユリアスも骨抜きにされる至福の飯テロをお届けしました!

そして、ミナトの無自覚な「アルさん夫婦」呼びに内心冷や汗を流すシルヴィアの姿や、今日一日のドタバタ(ガストーネ伯爵の陥落や、ルミア父の男泣き公認)を笑い合いながらより深まっていく仲間たちの絆の話となりました。

そして物語は、祭りの翌朝になります!

次回――第43話もどうぞお楽しみに。

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