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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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41/50

第41話 大階段の花火と、聖女の告白未遂

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回の第40話では、仕込んだ数万食が完全完売し、神具スマホに【チャンネル登録者数 100,000人突破】の黄金ファンファーレが鳴り響く最高のカタルシスをお届けしました!

そして迎える第41話は、大聖堂正面の白亜の大階段を舞台にした、【花火の余韻×聖女の告白未遂×配信事故&修羅場】のラブコメ神回です!

大屋台の喧騒を離れ、心地よい夜風が吹き抜ける大階段に並んで座る仲間たち。

眼下の広場を埋め尽くす数万人の笑顔と、夜空を彩るユリアスの大魔導花火。

そんな最高のシチュエーションの中、ミナトの隣に座るルミアが、意を決して服の裾をぎゅっと握りしめ――!?

胸ポケットの神具スマホが引き起こす奇跡の配信事故と、乙女たちの鋭すぎる勘が火花を散らす一幕を、どうぞ最後までじっくりとお楽しみください!

シュウウウウウウウ……ッ、パァァァァンッ!

大聖堂前広場に隣接するアステリア中央公園の大噴水から、七色の閃光が次々と夜空へ駆け上がり、星屑のような火花を撒き散らしていく。

王都の喧騒を見下ろす場所――神聖アステリア大聖堂の正面にそびえ立つ「白亜の大階段」の中央踊り場に、俺たちは腰を下ろしていた。

心地よい秋の夜風が、やりきった身体の熱を優しく冷ましていく。

一段高くなった大理石の段差に、俺を中心に仲間たちが横一列に並んでいた。

俺の膝の上には満足そうに丸まったコハク。

右隣には、純白のエプロン姿のまま夜空を見上げるルミア。

左隣には、甲冑の籠手を外して膝の上に置いたシルヴィア。

その隣には、分厚い帳簿を抱きしめたクラリッサ、そして端には手元の魔石を静かに弄るユリアスが座っている。

手前に広がるのは、数万人が熱狂した大屋台の余韻と、無数のランタンを掲げて笑顔を交わし合う民衆の光の海だ。

「綺麗ですね、ミナトさん……」

ルミアが紫水晶の瞳を細め、吐息のように呟いた。

「ああ。本当に、すごい光景だな……」

「ふっ……私の計算通りだ」

端に座るユリアスが、プラチナシルバーの髪を夜風に揺らしながら、手元の起動魔石から顔を上げた。端正な顔立ちには、昨夜の疲労の色はなく、天才魔導師としての知性と穏やかな誇らしさが満ちている。

「光魔石の励起術式と発色薬草の圧縮比率は完璧だ。大気中の魔力減衰も誤差の範囲内に収まっている。燃焼による煤や火の粉は上空で完全に消滅するよう術式を組んであるからな。地上にいる民に危険は一切ない」

「さすがユリアスさんですわね。安全対策まで完璧ですわ」

クラリッサが感心したように頷き、シルヴィアも柔らかく目を細めた。

「うむ。騎士団の警備としても、これほど安全で美しい終幕はない。……我が主の料理が、この王都の夜を完全に一つにしたな」

大階段の最上段――大聖堂の重厚な正門前には、ヴァルフレート大司教と、ルミアの両親であるクリストフ司教、母マリアが静かに佇んでいた。

「クリストフ。あの子のあんなに屈託のない笑顔……見たことがあったかな?」

大司教の穏やかな問いかけに、クリストフは自らの胸元に手を当て、深く息を吐いた。

「……いえ、大司教様。私の前では、いつも良い娘であろうと無理をさせてしまっておりました。ミナト君たちと共にいる時のルミアは……私の知らぬほど、強く、眩しく輝いております」

「ふふ、あの子はもう、自分の足で歩き出しているのよ、あなた」

マリアが夫の腕にそっと手を添える。不器用な父親は、大階段の真ん中で仲間たちと笑い合う娘の背中を、静かな祈りを込めた眼差しで見つめていた。

連発花火の合間、ふっと夜の帳に静寂が訪れた。

広場の人々が、息を呑んで夜空の次の輝きを待っている。

その時だった。

俺の右隣から、衣擦れの微かな音がした。

ふと視線を向けると、ルミアが俯き、小刻みに震える指先で俺の制服の裾をぎゅっと握りしめていた。

夕暮れの茜色とは違う、熱い朱を帯びた横顔。

ルミアは意を決したように顔を上げると、心臓の鼓動がダイレクトに伝わってきそうな至近距離まで、俺の胸元へ身を寄せてきた。

「ルミアさん……?」

「ミナトさん……」

微かに震える声。潤んだ瞳が、真っ直ぐに俺の瞳を射抜いていた。

すぐ隣に仲間たちがいる恥ずかしさからか、ルミアは消え入りそうな、けれど魂を絞り出すような小さな囁き声で唇を開いた。

「私……ずっと、伝えたいことがあって……。ミナトさんのことが、だい――」

その刹那だった。

ヒュオオオオオオオオオオオオッッッ!!

ユリアスが仕掛けた今夜最大級の特大号花火が、夜空の天蓋を真昼のように切り裂いて大炸裂した。

――ドォォォォォォォォォォォンッッッ!!!!

そして、眼下の広場を埋め尽くしていた数百人の民衆から、大地を揺るがすほどの地鳴りのような大歓声と拍手が一斉に巻き起こった!

『――ウオオオオオオオオッッッ!!!!』

『すげえええええええええっ!!』

『最高のお祭りだーーっっ!!』

大地が震え、空気が激しく振動する。

数百の歓喜の嵐が、津波のように大階段へ押し寄せていた。

「――っ!?」

あまりの轟音と大歓声の波に、ルミアの最後の言葉は完全に掻き消されてしまった。

唇が動いたのは見えた。だが、耳に届いたのは地鳴りのような「うおおおおお」という歓声の残響だけだった。

「えっ!? ごめんルミアさん、広場のみんなの歓声が凄すぎて、最後のところが全然聞こえなかった! なんて言ったの!?」

俺が悪気ゼロで首を傾げると――。

「…………っ!!」

ルミアの顔が、一瞬で耳の先、首筋に至るまで林檎のように真っ赤に染まった。

「な、なんでも……なんでもありませんっっっ!!」

ルミアは両手で顔を覆い、膝の間に顔を埋めるようにして完全に縮こまってしまった。頭の上から、目に見えるようにシュウシュウと白い湯気が立ち上っている。

「えぇ……? 本当になんだったんだ?」

困惑する俺の胸元で、突如として異変が起きた。

『ブブブブブッ! ブブッ! ピロリロリロリ〜〜〜ン♪』

「うわっ!?」

制服の胸ポケットの中で、神具スマホが尋常ではない勢いで激しく振動し始めたのだ。

ポケットに手を当てると、まるで発熱したかのように熱い。

広場の大画面スクリーンは、完売宣言とともに中継を終了していたはずだ。

だが――俺は完全に失念していた。

天界への生配信は、切られないまま接続され続けていたのだ。

そして、主神アルトが改造した神具スマホの性能を、俺は甘く見ていた。

内蔵された神界製ノイズキャンセリング機能が、花火の轟音も、広場数百人の地鳴りの大歓声も、すべて『環境ノイズ』として完璧にシャットアウト。

胸ポケットの超至近距離で囁かれた、ルミアの小さな吐息混じりの「大好きです……っ」という音声だけを、超高音質のハイレゾ音源で天界へダイレクト送信していたのだ。

天界の神々が、狂乱の弾幕コメントと赤スパの雨を降らせていた。

【主神アルト】:『おいおいおい!! 神マイクが超クリアに拾ってて草ァ!!www「大好きです」ってハッキリ言ったぞオイ!!www(53,000pt赤スパ寄付)』

【愛の女神フィリア】:『「大好きです」!! 吐息まじりの「大好きです」いただきましたわーーっ!!♡♡ 天界の全スピーカーから極上の囁きが響き渡って尊死しましたわーーっ!!(240,000pt赤スパ寄付)』

【武神アーレス】:『うむ! 大歓声に紛れ込ませた乙女の渾身の一撃……天晴れな気迫であった! だが肝心の男に届いておらぬとは、これぞ風流よな!』

【主神アルト】:『ミナトだけ大歓声で聞こえてなくてワロタwww 伝統芸能の難聴ムーブかましてるんじゃないよwww』

胸ポケットの激しいバイブレーションに耐えかね、スマホを取り出そうとした俺の手が、ピタリと止まった。

ゾクッ、と背筋に氷を押し当てられたような寒気が走ったからだ。

恐る恐る左隣へ視線を向けると――。

そこには、夜空を見上げるのを完全にやめ、半眼でじとーっとこちらを凝視するシルヴィアとクラリッサの姿があった。

「……ひっ?」

「――我が主」

シルヴィアが、外していたはずの白銀の剣の柄へ静かに指を添え、音もなく身を乗り出してきた。青い瞳の奥に、夜風よりも冷たい光が宿っている。

「花火の閃光に照らされたルミア殿の顔が、熟れきった果実のように染まり、貴方の裾を握る指先が小刻みに震えていたのを……このシルヴィアの目は見逃しませんでした。……大歓声のどさくさに紛れ、貴方の胸元へ顔を寄せ、一体何を囁かれたのですか? 納得のいく報告を求めます(ゴゴゴゴ……)」

「そうですわミナトさん!!」

クラリッサもバッと立ち上がり、腰に手を当てて顔を極限まで近づけてきた。

「そのあからさまに湯気を噴き出している態度、そして今の異様な空気……! 何か決定的な言葉をミナトさんへ投げかけましたわね!? 運営責任者であるわたくしに隠れて、歓声に紛れた抜け駆けは商人道にもとりますわーーっ!!」

「だ、だから本当に聞こえなかったんだって!!」

俺は両手を上げて必死に叫んだ。

「広場のみんなの『うおおおお』って歓声しか耳に残ってないから! 本当に何も聞こえてないってば!!」

「な、何でもありません……! シルヴィアさんもクラリッサさんも、近いです、何でもありませんからぁぁぁっ……!」

ルミアはさらに小さく丸まり、顔から火が出そうなほど真っ赤になって震えている。

「ふむ……術式の収束現象も美しいな」

端に座るユリアスだけが、一人涼しい顔で夜空に広がる最後の光の輪を見つめていた。

膝の上のコハクが、腹を抱えてケタケタと笑い転げる。

「かっかっか! 声は歓声に呑まれようとも、あの二人の女の嗅覚からは逃げられんのじゃ! ミナト、今宵は眠れそうにないのう!」

【主神アルト】:『女騎士と令嬢の勘が鋭すぎて腹筋崩壊したwww 音は聞こえてねぇのに完璧に察してて草ァ!!』

【愛の女神フィリア】:『フフフ……女の勘を侮ってはいけませんわ!♡ この甘酸っぱい修羅場こそ至高のデザートですわーーっ!!(200,000pt赤スパ寄付)』

夜空いっぱいに広がった最後の大魔導花火が、惜しみない光の粒子となって夜風に溶けていく。

広場からは、いつまでも鳴り止まない拍手と歓声が響いていた。

「はぁ……はぁ……。もう、みんなお腹空いて殺気立ってるんじゃないですか……?」

冷や汗を拭いながら俺が肩を落とすと、ヒロインたちの視線が一斉にこちらへ突き刺さった。

「夜食……ですか!?」「我が主の手料理……!」「食べますわ!」

「よし、片付けが終わったら、厨房で温かいものでも作りましょう。」

数万人が熱狂したフェスの夜は、仲間たちだけで囲む至福の深夜まかない飯へ向けて、賑やかに更けていくのだった。

第41話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

大聖堂の大階段での花火と、聖女ルミアの告白未遂回、いかがでしたでしょうか!

仲間たちと並んで見る美しい夜空、そして最上段で見守る両親と大司教の温かい眼差し……。

そんな最高の空気の中、意を決してミナトの裾を握りしめたルミアの決死の「大好きです」!

しかし、広場数百人の地鳴りのような大歓声にかき消され、ミナトは無自覚な難聴ムーブをかましてしまいます!

そして――本作の真骨頂である【配信切り忘れ】!

胸ポケットの神具スマホが、花火も大歓声もノイズキャンセリングして、ルミアの小さな吐息告白だけを超高音質で天界へダイレクト送信!

神々の狂乱赤スパでスマホがバイブ地獄になる中、乙女の勘で「抜け駆け」を察知したシルヴィアとクラリッサが詰め寄る修羅場コメディは最高に笑っていただけたかと思います!

次回――第42話もどうぞお楽しみに。

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