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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第39話:父の涙と胃袋陥落! 「娘を……よろしくお願いします」

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回の第38話では、大画面のルミアの甘え姿を見て殴り込んできた若き美形パパ・クリストフ司教が、母マリアの「熱々クレープ物理口封じ」を食らい、さらにミナトの「特盛豚バラ半熟玉子焼きそば」を前にして胃袋の敗北寸前まで追い詰められる爆笑劇をお届けしました!

そして続く第39話は、フェス後半の最高潮となる【父親の胃袋陥落×家族の絆と男泣き×父親公認】の感動&ラブコメ回です!

お父さん公認の割れんばかりの拍手喝采と、夕暮れ迫るフェスクライマックスへと繋がる熱い一幕を、どうぞ最後までじっくりとお楽しみください!

ぷすり、とフォークの先端が白身を突き破った瞬間。

ぷるぷると震えていた半熟目玉焼きの中心から、黄金色に輝く濃厚な黄身がとろりと溢れ出した。

夕暮れ前のやわらかな日差しを浴びて艶めく黄身は、熱々の極太麺と焦がしソースの上をゆっくりと滑り落ち、湯気を立てる山盛りの焼きそばを黄金色に染め上げていく。

ゴクリ、とクリストフの喉が大きく鳴った。

地方教区の信徒たちから「慈悲深き人」と慕われる若き司教は、もはや周囲の視線も、先ほどまでミナトを怒鳴りつけていたプライドも忘れていた。

ただ本能の命ずるままにフォークを回転させ、たっぷりと黄身を纏ったソース麺と、カリッと香ばしく焼き目のついた厚切り豚バラ肉を絡め取ると――大きく開けた口の中へと一気に放り込んだ。

瞬間。

クリストフの琥珀色の瞳が、カッと限界まで見開かれた。

「――っっっ!?!?!?」

噛み締めた刹那、大脳を直接殴りつけるような旨味の奔流が炸裂した。

熱々の鉄板で香ばしく焦がされた特製ソースの甘辛くスパイシーな風味。それが、もちもちと力強い弾力を持つ極太麺の小麦の香りと完璧に融合している。

そこへ、噛めば噛むほどジュワリと溢れ出す豚バラ肉のジューシーな甘い脂と、千切りキャベツの小気味よいシャキシャキとした食感が押し寄せる。

極めつけは、全体を包み込む半熟玉子の濃厚でまろやかなコクだった。

強烈な焦がしソースの角を優しく包み込み、すべての素材を黄金の調和へと昇華させている。

添えられた紅生姜のピリッとした爽快な酸味が、濃厚な余韻を瞬時に引き締め、次の一口を猛烈に要求してやまない。

(な、なんだこれは……ッ!? 甘辛いソースの芳香と豚肉の脂、そして玉子の黄身が……怒涛のように押し寄せてくる! 品格などという生ぬるい言葉では言い表せぬ、胃袋を力ずくで鷲掴みにされるような……抗えぬ暴力的な美味さだ……!!)

「お、お父様……?」

ルミアの心配そうな声も、もはやクリストフの耳には届いていなかった。

カカンッ、カシャッ、とフォークが皿を激しく打つ音が響く。

「むぐっ……! んぐ、んんっ……!」

一口、また一口。

我を忘れたクリストフは、なりふり構わず麺を巻き取り、貪るように口へ運び続けた。

三十代後半の引き締まった頬をリスのようにパンパンに膨らませ、喉を激しく上下させて特盛の焼きそばを飲み下していく。

【主神アルト】:『パパ司教、完全におかしくなってて草ァ!!www 一口で理性が消し飛んでワロタww』

【豊穣神デメトラ】:『大地の小麦を極太に打ち、豚の脂と焦がしソース、そこに半熟の卵黄を絡める! これぞ人の子の欲望を具現化した至高の鉄板技じゃ! 落ちぬ者などおらぬわ!』

【愛の女神フィリア】:『お父様、フォークを動かす手が止まりませんわ〜!♡ お上品な司教様が野生に還っていらっしゃいますわーっ!!(50,000pt赤スパ寄付)』

あっという間だった。

大人の男でも満腹になるはずの特盛焼きそばが、ものの三分と経たずに平らげられてしまった。

大皿の上には、ソースの一滴すら残っていない。

「ふぅ……っ、はぁっ……」

空になった大皿を前に、クリストフはフォークを握りしめたまま、呆然と荒い息を吐いていた。

「……美味しかったですか、お父様?」

恐る恐る尋ねるルミア。

その声に、クリストフの肩がビクッと跳ね上がった。

そして――。

美男子司教の端正な顔が、くしゃりと歪んだ。

ポタ、ポタポタッ……。

「えっ……? お、お父様……!?」

ルミアが息を呑んだ。

クリストフの瞳から、大粒の涙が次から次へと溢れ出し、空になった大皿の上へ零れ落ちていたのだ。

「……すまなかった、ルミア……」

クリストフは両手で顔を覆い、子供のように肩を震わせて泣きじゃくり始めた。

「すまなかった……! 私は……私は父親失格だ……ッ!」

「あ、あなた……」

マリアが困ったように眉を下げ、優しく夫の背中をさする。

「お父様、どうして泣いているのですか……? そんなに責めているわけでは……」

「そうではないのだ、ルミア……!」

クリストフは涙目になった顔を上げ、胸中を吐露した。

「この焼きそばを口にした瞬間……思い知らされたのだ。こんなにも温かく、力強く、食べる者を心の底から笑顔にする料理を……私は一度でも、お前に食べさせてやれたことがあっただろうか、とな……!」

クリストフの胸を締め付けていたのは、長年心の奥底に澱のように溜まっていた、父親としての深い罪悪感だった。

「お前が幼い頃、私は地方教区の司教としての務めに追われ、あまり娘のことをみてあげられなかった……。そしてルミアに強大な聖女の才が目覚めた時……私はお前を守るためと言い訳をして、王都の大聖堂へ送り出してしまった……!」

拳を握りしめ、石畳を睨みつけるクリストフ。

「父親らしい思い出など何一つ作ってやれず、寂しい思いばかりをさせて……! それなのに私は、久方ぶりに会いに来てみれば、娘の成長を喜ぶどころか、くだらない嫉妬と意地で怒鳴り散らし……! こんな美味い料理で娘を笑顔にしてくれているミナト君を、あろうことか不届き者呼ばわりしたのだ……! 情けない……父親として、あまりにも情けなさすぎる……ッ!」

大の男が、衆人環視の中で見せた剥き出しの後悔と男泣き。

その不器用で、けれどあまりにも深い親心に、周囲で見守っていた冒険者たちや町人たちも、茶化すことなく静まり返っていた。

【武神アーレス】:『うむ……! 己の至らなさを認め、子の前で涙を流す……。不器用なれど、あれぞ真に子を想う父親の姿よ……!(大号泣)』

【愛の女神フィリア】:『お父様……! 厳しかったのも全部、ルミアちゃんを愛するあまりの罪悪感の裏返しでしたのね……!(涙の100,000pt赤スパ寄付)』

静寂の中、ルミアは静かに歩み寄ると、クリストフの涙で濡れた大きな手を、自分の両手でそっと包み込んだ。

「お父様」

ルミアは、どこまでも澄み切った優しい聖母の笑顔を浮かべていた。

「自分を責めないでください。私、お父様が地方の信徒様のためにどれほど身を粉にして働いていたか、ずっと知っていました。王都へ送り出してくれたのも、私の未来を想ってのことだったと……一度だって、お父様を恨んだことなんてありません」

「ルミア……」

「それにね、お父様」

ルミアはふわりと微笑み、少し恥ずかしそうに頬を染めながら、鉄板の前に立つミナトへと視線を向けた。

「私はいま、この屋台で……ミナトさんの隣にいて、心から幸せなんです。ミナトさんの温かい料理と優しさが、私の寂しかった心を全部溶かしてくれました。だからお父様……安心してください。私、とっても幸せですよ」

愛娘の心からの笑顔と、曇りのない言葉。

それが、クリストフの胸に刺さっていた長年の棘を、綺麗に抜き去っていった。

「ルミア……ああ、ルミア……ッ! 立派に、こんなにも優しく育ってくれて……!」

クリストフは愛娘の手を握りしめ、再び涙を流した。だが今度の涙は、後悔ではなく温かな感謝の涙だった。

そして――クリストフは涙を袖で力強く拭うと、すっくと立ち上がった。

端正な顔立ちをキリッと引き締め、カウンター越しにミナトと真っ向から向き合う。

「え、あ、はいっ!?」

急に真剣な眼差しを向けられ、ミナトは思わず背筋を伸ばした。

クリストフはカウンター越しに身を乗り出すと、ミナトの両手をガシッと力強く握りしめた。

熱い体温と、骨がきしむほどの強い力が伝わってくる。

「ミナト君!」

「は、はいっ!?」

「先ほどまでの非礼、心から詫びる! 君の料理は……いや、君のその誠実な心根は、本物だ。愛する娘がこれほどまでに全幅の信頼を寄せている理由が、今の私には痛いほどよく分かる!」

クリストフは深く息を吸い込むと、大聖堂前広場全体に響き渡るような、よく通る美声で頭を深々と下げた。

「ミナト君……! どうか、この不束な娘を……よろしく頼むッッ!!」

「――ぶふっ!?」

ミナトは心臓が跳ね上がり、吹き出しそうになった。

「ちょ、お父さん!? よ、よろしくって、何がですか!? 俺たちはただ屋台を一緒にやってるだけで――!」

だが、周囲の観衆がそんな野暮な言い訳を聞き届けるはずもなかった。

「――ウオオオオオオオオオオッッッ!!」

広場を埋め尽くしていた冒険者や商人、町人たちから、地鳴りのような歓声と拍手が巻き起こった!

「ヒューッ! 言ったぞ、お父さん公認だぁぁぁッ!!」

「ミナトの旦那、聖女様を泣かせたら王都中の男が許さねぇからな!」

「結婚おめでとうーーーっ!!」

「ち、違いますぅぅぅ! 結婚とかそういう話じゃないですからぁぁぁ!!」

顔から火が出るほど真っ赤になって手をぶんぶんと振るミナト。

一方のルミアはといえば、父親の公認宣言と周囲の冷やかしに、耳の先まで茹でダコのように真っ赤になりながらも、どこか嬉しそうにモジモジとエプロンの裾を握りしめていた。

上空では、コハクが腹を抱えて大爆笑しながら神具スマホを連打している。

「かっかっか! 主神アルト様、見事なる父親公認の瞬間をバッチリ激写したのじゃ! 赤スパの雨を降らせるがよい!」

【主神アルト】:『焼きそば一杯で娘を完全に託すパパ司教チョロすぎて腹筋千切れるwww でも最高にスカッとするいい話だったわww(260,000pt赤スパ寄付)』

【愛の女神フィリア】:『公認! 父親公認いただきましたわーーっ!!♡♡ 全世界が二人を祝福しておりますわーっ!! 末永く爆発してくださいましーーっ!!(350,000pt赤スパ寄付)』

拍手喝采と冷やかしの嵐が吹き荒れる中、広場の大時計が重厚な鐘の音を響かせた。

午後五時。

西の空が茜色に染まり始め、王都の白亜の街並みに美しい夕暮れの影が伸びていく。

「ミナト! 焼きそば用の極太麺、これが最後の五玉だぜ!」

鉄板の脇からブルーノが叫んだ。

「ミナトくん! クレープ生地も、リンゴのキャラメリゼも、もうボウルの底が見えてきたわ!」

母マリアも笑顔で声をあげる。

「よし……!」

ミナトは照れを振り払うように両頬をパンと叩き、再びヘラを力強く握り直した。

「みんな、ラストスパートだ! 泣いても笑っても、用意した食材はこれで全部! 最後まで笑顔で、全部売り切るぞーーっ!!」

「「「おおおおおおっっっ!!!」」」

数万人が熱狂した慈善屋台フェスは、いよいよ全食完売と大魔導花火の打ち上がる、運命のフィナーレへと向かって加速していくのだった。

第39話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

若き美形パパ・クリストフ司教の胃袋陥落と、涙の家族和解回、いかがでしたでしょうか!

ぷるぷるの半熟玉子を崩した「特盛豚バラ焼きそば」を一口食べた瞬間、理性が消し飛んで無我夢中で完食してしまったクリストフ。

そして、幼いルミアを大聖堂へ預けた長年の罪悪感を吐露して男泣きする姿と、ルミアの「いま、ミナトさんの隣で心から幸せです」という温かい言葉……不器用な家族の絆に胸が熱くなりますね!

さらにラストは、「どうか娘をよろしくお願いします!」という特大の父親公認宣言!

広場中からの割れんばかりの拍手と祝福に慌てふためくミナトと、赤面しながら嬉しそうなルミアの姿は微笑ましいですね!

そして物語は、夕暮れから日没へ!

次回――いよいよ第1章フェス編の超特大クライマックスです!

次回――第40話もどうぞお楽しみに。

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