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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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38/50

第38話:過保護な父クリストフ乱入! 「娘の隣にいる男は誰だー!」

お読みいただきありがとうございます!

前回の第37話では、教会孤児院の子供たちへチョコバナナとりんご飴を大盤振る舞い!

子供たちに高級ブラシでブラッシングされた神獣コハクが、威厳を完全に失って「ふにゃふにゃの液体」と化す最高の癒やし空間をお届けしました。

しかし……そんな温かな空気も束の間!

大画面スクリーンに映し出されたルミアの「無自覚な裾握り上目遣い甘え」を見た実の父親・クリストフ司教が、般若の形相で屋台へ殴り込んできてしまいました!

第38話は、地方教区から娘に会いに来た若々しい美男子パパが、娘のことになるとIQゼロになって大暴走!

荒れ狂う父親を、母マリアのおっとり笑顔の「熱々クレープ口封じ」が迎え撃ち、さらにミナトの繰り出す「特盛豚バラ半熟玉子焼きそば」の暴力的な焦がしソースが胃袋を揺さぶり始めます!

「――ちょっと待ったああああ!! 大画面の水晶に映し出されているあの破廉恥極まりない光景は何事だああああっっっ!!!」

広場の石畳を蹴破らんばかりの神速で、突風のように突進してきた人影。

翻る豪奢な司教法衣。その主は、大屋台のカウンターの真ん前で止まり、ズザザザッと砂煙を巻き上げて仁王立ちした。

妻のマリアと同じく三十代後半の若々しさを保ち、本来であれば彫刻のように端正で知的な美男子――。

地方教区を治める司教にして、ルミアの実の父親であるクリストフ司教その人であった。

だが今、その整った顔立ちは見る影もなく、青筋を浮かべて目を血走らせ、鬼神の如き形相でミナトをビシッと指差していた。

「き、貴様だなぁぁぁッ!! 私の目に入れても痛くない、天使のように清らかで愛らしいルミアを誑かし! 神聖なる大聖堂の聖女の身でありながら、あのようなフリルだらけの給仕服を着せて晒し者にし! あまつさえ、その服の裾を握らせて純真な心を弄んだ不埒者はぁぁぁッ!!」

「ひっ……!?」

凄まじい眼力と音圧に、ミナトは思わず半歩後ずさった。

地方教区の信徒たちから「若き人格者」「慈悲深き美形司教」と慕われている男の姿とは、とても信じられない。完全に娘のことになると知能指数がゼロになる、典型的な過保護親バカの暴走だった。

コハクはといえば、地響きが聞こえた瞬間に「うわっ、めんどくさいのが来たのじゃ!」と察知し、上空五メートルへ緊急退避。神具スマホを構え、ニヤニヤしながら安全圏から撮影を続けている。

【主神アルト】:『美形パパ司教、娘のことになると知能指数がマイナス突破してて草ァ!!www』

【愛の女神フィリア】:『キャアアアッ!♡ 「娘はやらん!」の王道イベント来ましたわーーっ!! お父様、お顔が良いのにやってることが完全に厄介オタクですわーっ!!(23,000pt赤スパ寄付)』

「お、お父様っ!? な、何を言っているのですか、人前で大きな声を張り上げないでください!!」

真っ赤な顔をして二人の間に割って入ったのは、ルミアだった。

純白のフリルエプロンをバタつかせ、両手を大きく広げてミナトを背後に庇う。

「ミナトさんは私の大切な恩人です! それに、この慈善フェスは孤児院のみんなのために、私からお願いして手伝ってもらっているんです! ミナトさんは何も悪いことなんてしていません!」

「か、庇うのか……!? あの素直で純真だった私のルミアが、出会って間もない正体不明の男を、父親よりも庇うというのかぁぁぁっ!?」

クリストフは胸をかきむしり、天を仰いで絶叫した。

「許さん……! このクリストフ、たとえ法皇様に破門されようとも、娘を惑わす不届き者だけは神の名において成敗してくれるわぁぁぁ!!」

「覚悟しろ、破廉恥料理人――」と、激情に任せてカウンターをよじ登り、ミナトの胸ぐらを掴もうとするクリストフ。

その時だった。

「――あなた? 取り乱して大声を出しちゃ、駄目よぉ?」

背後から響いたのは、鈴を転がすような、どこまでも優しくおっとりとした聖母の声音。

クリストフがハッと我に返り、背後を振り返ろうとした――まさにその瞬間。

妻のマリアーナが、焼きたて熱々で湯気を濛々と立ち上らせる三角錐のクレープを手に、一切の迷いなく踏み込んだ。

そして、大激怒で限界まで大きく開いていた夫の口元めがけて、容赦なくガバッとねじ込んだのだ!

――ズボッッッッッッ!!!!

「――むぐぐっ!? ほ、ほがぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」

クリストフの口内へ、一瞬で押し込まれた焼きたての薄焼き生地と、中からジュワリと溢れ出す熱々のカスタードクリーム!

「むぐ……!? あ、熱い……っ!? んぐっ、んんっ……あ、甘くて……もっちりして……美味い……っ!? ――ではなくてだなマリアぁぁぁっ!?」

反射的にゴクンと飲み込んでしまい、涙目で妻を振り返るクリストフ。

そこには、純白のトングを手にしたまま、小首を傾げてにこやかに微笑むマリアの姿があった。

「あら、美味しいでしょう? ルミアと一緒に、心を込めて焼いたのよ。でもね、愛する娘がお世話になっている方へ怒鳴り散らすなんて、私の夫として恥ずかしいわよ?」

「ひ、ひぃぃっ……! す、すまないマリア……」

般若の如き形相だった美男子司教が、一瞬にして生まれたての子鹿のように小さく縮こまる。

家庭内の絶対的な力関係が、白日の下に晒された瞬間だった。

【主神アルト】:『クレープで物理口封じwwwww お母さんノーモーションでねじ込んでて腹筋崩壊したwwwww』

【愛の女神フィリア】:『最強はお母様でしたわーーっ!! 完全に尻に敷かれていらっしゃいますわね!♡(47,000pt赤スパ寄付)』

「ふぅ……」と冷や汗を拭うミナト。

だが、妻に叱られてシュンと項垂れながらも、クリストフがミナトへ向ける視線には、依然として父親としての強い警戒心と、愛娘を奪われまいとする頑固な意地がギラギラと残っていた。

(……言葉で説得しようとしても、このお父さんには通じないな。それなら――屋台フェスの料理人として、胃袋に直接語りかけるしかない!)

ミナトは覚悟を決めると、両手に銀色の鉄板コテを力強く握り直した。

「お父さん。言いたいことは山ほどあると思いますが……まずはこれを食べて、落ち着いてください!」

「な、なに……?」

カンッ、カカカンッ!

小気味よい金属音とともに、ミナトの腕が閃いた。

高温に熱せられた巨大な鉄板の上へ、厚切りの豚バラ肉が豪快に叩きつけられる。

――ジュワァァァァァァァッッッ!!

激しい音とともに、鉄板の上でジューシーな豚の脂がパチパチと弾け飛んだ。

豚肉の香ばしい脂の香りが立ち上った刹那、ミナトは千切りのシャキシャキキャベツと太めの中華麺をドサリと投入!

カンカンカンと手首をリズミカルに返しながら、麺をほぐし、豚肉の旨味を吸わせるように手早く炒め合わせていく。

そこへ、天界通販で取り寄せた特製ブレンドの濃厚ソースを、鉄板の縁から一気に回し入れた!

――ジューーーーーッッッッッッ!!!!

凄まじい蒸気と咆哮が巻き起こった。

熱々の鉄板に触れたソースが瞬時に焦げ、甘辛くスパイシーな、暴力的なまでの芳香が広場中に爆散する。

「ぐっ……!? な、なんだこの強烈な匂いは……!?」

クリストフの鼻腔を、焦がしソースと豚肉の脂の香りがダイレクトに貫いた。

ただ甘いだけでも、ただ塩辛いだけでもない。野菜と果実のコクが凝縮されたソースが焦げる香りは、空腹の胃袋を直接鷲掴みにするような凶悪な引力を持っていた。

(馬鹿な……! 私は王都までの長旅で疲れているだけで……こんな誰ともわからないものの屋台料理の匂いになど……!)

必死に首を振るクリストフ。

だが、ミナトの攻撃はそこで終わらない。

鉄板の脇で手早く焼き上げていた、白身の縁がカリッと香ばしく、黄身がぷるぷると震える絶妙な『半熟目玉焼き』。

特盛りに盛り付けられた熱々のソース焼きそばの頂上へ、その目玉焼きをツルンと滑らせる!

仕上げに青のりをパラパラと散らし、鮮やかな紅生姜を添えて――ドンッ! とクリストフの目の前のカウンターへ突き出した。

「特製! 豚バラ半熟玉子焼きそばです! 冷めないうちにどうぞ!」

【豊穣神デメトラ】:『来たぞ、ミナトの必殺鉄板技! 焦がしソースの香気と豚肉の脂、これに抗える人の子などおらぬわ!』

【主神アルト】:『半熟目玉焼き乗せは反則だろww お父さんもう完全に喉がゴクリって鳴ってて草ァ!!』

大皿の上で、熱々の湯気を立てる山盛りの極太麺。

濃厚な焦がしソースを纏った黄金の麺の上で、夕暮れの光を浴びた半熟の黄身が、まるで宝石のようにぷるぷると妖艶に揺れている。

クリストフは生唾を「ゴクリ」と飲み込み、額にびっしりと冷や汗を滲ませた。

「お、お父様! 食べてみてください!」

ルミアが瞳を輝かせ、父親の袖を引っ張る。

「ミナトさんの焼きそば、本当に、ほっぺたが落ちるくらい美味しいんですから!」

「だ、騙されんぞ……! このような怪しげな料理で、この私の高潔な魂が誤魔化されるものか……! 私は娘を誑かす不届き者を成敗しに来たのであって――」

その時だった。

――グゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜ッッッ!!

広場中に響き渡るほど盛大な、情けない腹の虫の音がクリストフの腹部から轟いた。

「ふふ、お腹は正直ね、あなた」

マリアが口元に手を当ててクスクスと笑い、周囲を取り囲んでいた冒険者や町人たちからもドッと笑い声が上がった。

「司教様、いいから食ってみろって! 飛ぶぞ!」

「美味いもんに貴賎なんかないんだよ!」

「う、うぬぬぬぬ……っ!」

顔を真っ赤にして屈辱に震えるクリストフ。

だが、目の前から立ち上る焦がしソースの香気は、もはや理性の盾を完全に粉砕していた。

「ど、毒見だ……! 愛する娘が普段口にしているものが安全かどうか、父親として毒見をしてやるだけだぁぁぁっ!」

クリストフは震える手でフォークを掴むと、大皿の頂上でぷるぷると揺れる半熟目玉焼きの黄身へと、切っ先をプスリと突き立てた――!

ジュワリと溢れ出す黄金の黄身が、濃厚なソース麺へと絡みついていく……!

第38話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

娘を愛しすぎる若き美形パパ・クリストフ司教の襲来回、いかがでしたでしょうか!

地方教区の信徒から慕われる聡明な美男子でありながら、ルミアのことになるとIQがゼロになって暴走してしまうクリストフ。

殴りかかろうとした瞬間、妻のマリアに焼きたてクレープを口へガバッと押し込まれて「むぐぅっ!? ……美味い……ではなくてだな!」とパニックになる姿を楽しんでいただけたら幸いです。

次回――第39話もお楽しみください。

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