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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第34話:立ちはだかる四巨頭! 頑固貴族の試食と爆買い

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!

前回の第33話では、看板娘ルミアの奇跡のように可愛い開会宣言、数万人の怒涛の雪崩込み、そして焦がしソースの香気テロと時間停止ストレージによる神速無双をお届けしました!

しかしその最高潮の熱気の中、営業妨害を目論む教会の保守派貴族・ガストーネ伯爵が乱入!

「下品極まりない俗悪な催事など即刻中止せよ!」と迫る冷徹な伯爵の前に、ミナトを守るため四巨頭が立ち塞がります!

「神聖なる大聖堂の御前で、賎しい平民どもを集めて怪しげな煙と下品な匂いを撒き散らすとは何事か! このような下品極まりない俗悪な催事、伝統ある我が国と教会の権威を冒涜するものだ! ガストーネ伯爵の名において、即刻中止を命ずる!!」

静まり返る広場。

私設衛兵を引き連れたガストーネ伯爵は大屋台を睥睨していた。

胸元に光る教会保守派閥の黄金紋章をこれ見よがしに指先で弾き、貴族の特権意識にまみれた冷たい視線で民衆を圧迫する。

だが――屋台の前に並び立った四人の男女から放たれた威圧感は、伯爵のそれなど足元にも及ばないほどに濃密で、絶対的だった。

まず一歩前へ出たのは、純白フリルエプロンを身にまとった聖女ルミアだった。

「ガストーネ伯爵。神の前において、身分の貴賤など存在いたしません」

鈴を転がすような美声。だがそこには、全信徒の信仰を背負う聖女としての揺るぎない神威が宿っていた。

「孤児院の子供たちへ温かい冬を届けるための慈愛の行いを、貴方様は『俗悪』と切り捨てましたね? ……貧しき者にパンを分け与えよと説く、神の神聖なる教理そのものに異を唱えるおつもりですか? もしそうであるならば、大司教へ貴方様の信仰に関する異端審問を請求いたしますが」

「なっ……!? い、異端審問だと……!?」

教理を完璧に盾に取られ、伯爵の顔が一瞬で引きつる。

そこへ、白銀の甲冑を鳴らしてシルヴィアが冷酷に踏み込んだ。

すらりと腰の鞘から長剣の柄に手をかけ、氷点下の眼光で伯爵の衛兵たちを射抜く。

「この催事は、近衛騎士団および王都警備統括府が治安認可を下した正式な祭礼だ。数万の民が密集する広場へ私兵を展開し、威圧によって騒乱を煽る行為は明確な治安妨害罪。……これ以上騒ぎ立てるなら、国家反逆および国王令違反の現行犯として、貴殿並びに私兵全員をその場で拘束するが?」

「ひっ……!」

歴戦の女騎士の放つ冷徹な殺気に呑まれ、伯爵の私設衛兵たちが恐れをなして槍の穂先を下げ、数歩後ずさった。

さらに、優雅に扇子を広げたクラリッサが、艶やかな笑みを浮かべながらトドメの言葉を紡ぐ。

「お久しゅうございますわね、ガストーネ伯爵。ですが、我がアルスハイム公爵家が威信を懸けて出資した筆頭投資事業に、泥を塗るのは感心しませんわ」

クラリッサは扇子の隙間から、冷徹な商業貴族の瞳を細めた。

「現在、会場には数万の客と巨額の資金が動いておりますの。貴殿の軽挙妄動によって事業が中断され、損害が生じた場合……その賠償請求額は白金貨数千枚に及びますわ。ガストーネ伯爵領の全資産、並びに領民の徴税権をすべて差し押さえれば……まあ、半分くらいは補填できますかしら?」

「ば、バカな……! アルスハイム家の独占投資だと……!?」

額から脂汗を噴き出させ、ガタガタと震え始める伯爵。

そしてトドメとばかりに、左のブースから腕を組んだユリアスが、冷ややかな視線を投げかけた。

「おい、銀髪の男。私の最新音響術式と圧力制御サーバーを『怪しげな煙』と愚弄したな?」

「ユ、ユリアス・フォン・クロイツェル卿……!?」

「宮廷筆頭魔導師の技術を冒涜した罪は重いぞ。明朝の魔導学会において、ガストーネ伯爵領への通信水晶の配備、並びに魔導農具の技術ライセンス供与を全面凍結する議案を提出しよう。精々、蝋燭の火と錆びた鍬で領地を治めることだな」

「あ、あばばばばばっ……!!」

宗教(ルミア)、軍事(シルヴィア)、経済(クラリッサ)、科学(ユリアス)――。

王都を支配する四巨頭の完璧すぎる包囲網に叩きのめされ、伯爵の痩身は生まれたての小鹿のようにガクガクと震え、銀髪は冷や汗で顔に張り付いていた。

振り上げた拳の降ろしどころを完全に失い、青筋を立てて絶句するしかない。

【主神アルト】:『四巨頭の圧が強すぎて草ァ!!www 宗教・軍事・経済・科学の四方から完全論破されててワロタww 逃げ場ゼロじゃん』

【愛の女神フィリア】:『ミナト様をお守りするために一致団結する皆さま……! なんて美しく尊い絆ですの!♡(250,000pt赤スパ寄付)』

一触即発の凍りついた空気が広場を支配する中――。

「まあまあ皆さん、そこまでにしましょう」

カチャリ、とコテを置く小気味よい音が響いた。

俺はカウンターの前に歩み出ると、困ったように笑いながら伯爵に向き合った。

「伯爵様も、混雑した大通りを歩いてきて、お腹が空いてイライラしていただけなんですよね?」

「な、なに……!?」

「せっかく足を運んでくださったんです。まずは毒味だと思って、これをお召し上がりください。話はそれからです」

俺がカウンターの上にことりと置いたのは、二つの舟皿だった。

一つは、分厚く丸く焼き上げられ、表面で甘辛い濃厚ソースと格子状のからしマヨネーズがツヤツヤと輝く『極上ふわとろ豚玉お好み焼き』。熱気を受け、たっぷりと振りかけられた鰹節が、まるで生きているかのようにユラユラと妖艶に踊っている。

そしてもう一つは、湯気とともに暴力的な焦がしソースの香気を立ち上らせる『特製焼きそば』だ。

炭水化物と炭水化物。日本の鉄板が誇る、至高の粉物二連撃である。

「ば、馬鹿にするなァ! 私がこのような……平民の泥臭い粉物などに、口をつけるはずが……っ!」

伯爵は虚勢を張って怒鳴ろうとした。

だが、その鼻腔を、芳醇な出汁の香りと焦がしソースの甘辛い匂い、そしてマヨネーズのコク深い酸味が容赦なく貫いた。

神経質そうな喉仏が、コクリと情けなく上下する。

「かっかっか! 怖いなら食わんでもよいぞ? 妾が代わりに美味しく平らげてやるのじゃ!」

頭上でコハクが尻尾を揺らしてニヤニヤと煽ると、伯爵のプライドに火がついた。

「だ、誰が怖いなどと言ったか! 賎しい料理の底の浅さを暴き、叩き潰してやるまでだ!」

伯爵はひったくるようにフォークを掴むと、踊る鰹節ごと、分厚いお好み焼きの端を切り取って口の中へと放り込んだ。

その瞬間――。

カッと、伯爵の灰色の瞳が見開かれた。

「…………っ!? ――な、なんだこれは……っ!?」

サクッとした表面の香ばしい歯ごたえ。

それを突破した刹那、口の中で爆発したのは、信じられないほどきめ細やかで「ふわふわ、とろとろ」の極上の生地だった。

出汁の奥深い旨味が舌全体を包み込み、そこへ絡みつく濃厚な甘辛ソースのコク、からしマヨネーズのツンと抜ける芳醇な酸味。さらに噛み締めれば、カリカリに焼かれた豚バラ肉のジューシーな甘い脂と、シャキシャキのキャベツの水分が溢れ出し、怒涛の旨味の濁流となって脳天を直撃する!

「柔らかい……っ! なぜ粉物がこれほどまでに軽く、とろけるのだ……!? 肉の脂とソースの濃厚さを、この白い酸味のソース(マヨネーズ)が見事に調和させている……! う、美味い……美味すぎる……!!」

一口で、厳格な貴族の理性の防壁が音を立てて崩壊した。

「いかん、止まらん……! 手が勝手に動く……!」

伯爵は左手に二本の割り箸をむんずと掴むと、隣の舟皿の焼きそばへも食らいついた!

「ンんんっ!? この縮れ麺の力強い弾力、焦がしソースのスパイシーな香気……! お好み焼きのふわとろ感と、焼きそばの噛みごたえ……交互に食べることで、快楽の波が無限に押し寄せてくるぞぉぉぉっ!!」

ここから、広場の誰もが目を疑う光景が幕を開けた。

「シュバババババッッッ!!!!」

右手にフォーク、左手に箸。

伯爵の両手が、完全に視認不可能な超神速の残像を描き始めたのだ!

あまりのスピードに、まるで背後から十数本の腕が生えているかのように残像が扇状に広がる。

風圧が巻き起こり、舞い上がる青のりと鰹節!

お好み焼きが削り取られ、焼きそばの麺がブラックホールに吸い込まれるように、猛烈な勢いで伯爵の口の中へ消え去っていく!

周囲の民衆も、衛兵たちも、そして四巨頭すらも、口をあんぐりと開けて豆粒のような顔で固まっていた。

【主神アルト】:『おい誰かあの厳格オッサン止めろwww 両手の動きが速すぎて腕が十数本に見えるぞwww 完全に神話の邪神(クトゥルフ)形態になってて草ァ!!www』

【武神アーレス】:『す、凄まじい気迫……! まるで千手観音、飢えた多腕の魔神の如き神速咀嚼演武であるな! 見事な双剣(箸とフォーク)さばきだ!』

しかし、怒涛の勢いで詰め込みすぎた代償が即座に訪れる。

「ンブッ、ゴホッ、ンフッ……!?(胸を激しく叩いて喉を詰まらせる伯爵)」

「はいストップ! 喉詰まりますよ! これで一気に流し込んでください!」

俺はすかさず、ユリアスのブースから運んできた『朝採れリンゴスカッシュ』の特大カップを伯爵の手へ押し込んだ。

伯爵は藁にもすがる思いでカップに食らいつき、喉を鳴らして一気に煽る!

「ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ……プハァァァァッッッ!!!!」

涼やかな氷の音とともに、弾ける強烈な魔導炭酸の泡が喉を駆け抜け、濃厚なソースの脂っこさを一瞬で洗い流した。

そして――。

「な、なんという爽快な喉越し……! 弾ける刺激が食道を突き抜け、洗い流された胃袋の隙間が……強制的に拡張されたようだ……! まだ入る、もっと食えるぞぉぉぉっ!!」

「シュバババババッッッ!!!!」

伯爵は再び人間をやめた神速で、残りの焼きそばとお好み焼きを貪り食い始めた!

【主神アルト】:『炭酸で流し込んで胃袋再起動すなwww ドリンクブースの完璧な販促になっててワロタww』

そして数秒後――。

「フハァッ……ンマィィィッ……!!」

二つの舟皿のソースの一滴までピカピカに平らげたガストーネ伯爵は、両手をだらりと垂らし、完全に白目を剥いて天を仰いでいた。

几帳面に撫で付けられていた銀髪は乱れ、厳格な貴族の威厳は木っ端微塵に消え去り、そこにあるのは究極の快楽に蕩けきった一人の男の姿だった。

広場に、一瞬の静寂が訪れる。

やがて、ハッと我に返った伯爵は、顔を耳まで真っ赤に染め上げると、激しく咳払いを響かせた。

「ゴ、ゴホンッ……!! ――み、見事だ! 認めよう! 伝統の形式など、この神速の美味の前には些細な問題にすぎん!」

伯爵は震える手で懐へ手を突っ込むと、ずっしりと重い金貨が詰まった革袋を二つ、カウンターの上へドスンと叩きつけた!

「お、おい貴様ら! 何を呆けている、すぐに屋敷へ馬車を回せ! 百食……いや、屋敷の者と領地の親族全員の分だ! この『おこのみやき』と『やきそば』を、包めるだけ包んでまいれぇぇぇい!!」

【主神アルト】:『屋台に石油王が現れて草ァ!!www 金の力でねじ伏せにきててワロタ、 100食はお持ち帰り(テイクアウト)のレベル超えてんだろww』

【武神アーレス】:『うむ! 兵糧の大人買い、実に見事な散財ぶりであるな!』

「「は、ははっ!!」」

衛兵たちが慌てて大通りへ走り出していく。

「へい毎度ありっ! ブルーノ、百食分特急でいくぞ!」

「うおおお! 任せとけぇぇ!!」

瞬間――わぁぁぁぁぁぁっっっ!! と、広場全体から地鳴りのような歓声と爆笑が沸き起こった!

「あの頑固なガストーネ伯爵が即落ちしたぞ!」「爆買いだー!」「美味いもんに貴族も平民も関係ねぇな!」

ルミアは「ふふっ、良かったです」とエプロンの胸元を押さえて微笑み、クラリッサは「現金な殿方ですこと」と扇子で口元を隠して笑う。シルヴィアとユリアスも顔を見合わせ、呆れたように肩をすくめていた。

午前中の難敵を胃袋一つで完全攻略し、特設大屋台の評判と売上は天井知らずで跳ね上がっていく。

やがて太陽は天頂へと昇り、王都の広場に最も強い日差しが照りつける正午を迎えた。

(……それにしても、シルヴィアさん。さっきからずっと炎天下で警備指揮を執ってるな)

重い甲冑を着たまま、汗を流して直立不動で広場を守り続ける白銀の女騎士。

俺は氷でキンキンに冷やした麦茶の入ったジョッキと、天界通販の冷却シートを手に、愛すべき護衛の元へと歩み寄っていった――。

第34話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、炎天下の広場で任務に徹する愛すべき女騎士・シルヴィアの個別回です!

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