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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第3話:天界スパチャと初めてのホットケーキ

第3話をお読みいただきありがとうございます!

前回の前代未聞の配信切り忘れ事故から一夜……ではなく直後!

神々から集まった莫大なスパチャを使い、「現代グルメ(飯テロ)」が炸裂します。

そしてラストには、「氷の女騎士」がついに動き出します!

「切れた! 今度こそ切れたぞぉぉぉぉぉっ!!」

俺は半狂乱になりながらスマホの画面を連打し、赤く点滅していた『● LIVE中継中』のアイコンを力任せにタップして完全にシャットダウンさせた。

画面が真っ暗になり、静寂が訪れる。

額から流れ落ちる冷や汗を手の甲で拭い、俺はその場にへたり込んだ。

「ふぅ……やれやれじゃな。初配信から特大のやらかしをしおって、肝が冷えたのじゃ」

俺の肩からぴょんとテーブルに飛び降りたコハクが、七色の尻尾を器用に揺らしながら呆れたようにため息をつく。

「……? ミナトさん、さっきからその黒い板に向かって何を騒いでいるのですか?」

目の前では、俺の制服の裾を両手で握りしめたままの聖女ルミア様が、不思議そうに小首をかしげていた。

……まったく気づいていない。

自分がさっきまで見せていた無防備すぎる甘え顔が、天界の神々全員にバッチリ生中継されていたなんて夢にも思っていないのだ。

真実を告げるべきか一瞬迷ったが、これ以上聖女様の尊厳を破壊するわけにもいかない。俺は乾いた笑いを浮かべてごまかした。

「い、いや! 何でもありません! ちょっと独り言を言ってただけです!」

「そうなのですか? ふふ、不思議なお方ですね……あっ」

ルミア様が言葉を途切れさせた瞬間――

ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜……ッ。

静かな部屋の中に、信じられないほど立派な腹の虫の音が鳴り響いた。

ルミア様の顔が一瞬で林檎のように真っ赤に染まる。

「うぅ……っ! 恥ずかしい……穴があったら入りたいです……っ!」

両手で顔を覆って小さく丸まるルミア様。先ほどの清楚な姿とのギャップが凄まじい。

だが、そんな彼女のお腹を満たす手段は、すでに俺の手の中にあった。

ふとスマホの画面を見ると、通知センターに目を疑うような数字が並んでいたのだ。

『愛の女神フィリアよりスーパーチャット:100,000pt』

『主神アルトよりスーパーチャット:50,000pt』

『豊穣神デメトラよりスーパーチャット:30,000pt』

『現在の所持ポイント:180,000pt』

「ひ、ひゃくはちじゅうまん……!? いや、一万ポイントが日本円で一万円相当だとしたら、十八万円分!?」

一回の配信事故で高校生の一ヶ月のバイト代を遥かに超える大金が転がり込んできた!

画面の端には、アルトが言っていた『天界通販アプリ』のアイコンがピカピカと黄金に輝いている。

タップして開くと、日本のネット通販サイトと全く同じ検索バーが現れた。

「よし……ルミア様、待っててください。今すぐ甘いものを作ります!」

「えっ、本当ですか……!? 何を作ってくださるのですか?」

「ホットケーキです。極上のやつを焼きますよ」

俺は通販アプリを素早く操作し、必要なアイテムをカートに放り込んだ。

『直火式ホットサンドメーカー』

『北海道産小麦使用・極厚ふんわりホットケーキミックス』

『北海道特選・高級発酵バター』』

『カナダ産純度100%特級メープルシロップ』

購入ボタンをポチッと押した――その瞬間。

スマホの画面からキラキラとした光の粒子が溢れ出し、テーブルの上に注文した道具と食材がドンッと音を立てて具現化した!

「な、何もない空間から鉄の調理具や包みが現れましたわ……!? ミナトさん、高位の空間転移魔法の使い手なのですか!?」

目を丸くして驚愕するルミア様。

「いや、ただのネット通販……まあ、魔法みたいなもんです! せっかくだから神様たちには飯テロという名のご褒美を見せますか」

俺は神具スマホを壁に立てかけ、再び配信アプリを立ち上げた。

タイトルは【神様への飯テロと感謝の極上ホットケーキ作り】。

通知が飛んだ瞬間、待ってましたとばかりに神々がなだれ込んできた。

【主神アルト】:枠取り直しキターーー!!

【愛の女神フィリア】:ルミアちゃんのお顔が赤いですわ! 可愛い!

【豊穣神デメトラ】:おい少年! その小麦の袋と美味しそうなシロップでどんなパンケーキを作ってくれるんだ?

「神々の皆様、先ほどはお見苦しいところを……いや、たくさんのスパチャありがとうございました。いただいたポイントで最高のおやつを作ります!」

部屋の隅にある給湯用の魔導コンロを借り、調理を開始する。

ボウルに卵と牛乳を注ぎ、ホットケーキミックスを投入。泡立て器でさっくりと混ぜ合わせる。あえて少しダマを残すのが、ふっくら分厚く焼き上げるプロのコツだ。

温めたホットサンドメーカーの両面に、たっぷりと発酵バターを滑らせる。

ジューーーーーッ……!!

途端に立ち上る、濃厚で香ばしいバターの暴力的な香り!

「ふぁ……っ! な、なんて芳醇でいい匂い……!おいしそうですわっ」

ルミア様が鼻をひくひくさせ、吸い寄せられるように鉄板を覗き込んできた。

そこに、とろりとした濃厚な生地を惜しみなく流し込む。

プツプツと小さな気泡が浮き上がってきたところで、ホットサンドメーカーの蓋をパチンと閉め、密閉状態で蒸し焼きにする。

両面を弱火でじっくり、均一に熱を通すこと数分。

「よし……そろそろいいかな」

「ごくり……」

ルミア様とコハク、そして画面の向こうの神々が見守る中、俺は慎重にホットサンドメーカーのロックを外し、カパッと開いた。

ふわりと立ち込める真っ白な湯気。

そしてそこに現れたのは――

「うわぁぁぁぁ……っ!!」

完璧なきつね色に焼き上がった、厚さ五センチはあろうかという巨大な黄金の円盤だった!

密閉された鉄板の中で蒸気を閉じ込めて焼き上げたため、まるで高級カフェのスフレパンケーキのように、ぷるぷる、ふわふわと震えている。

皿へと滑り込ませ、熱々の頂上に贅沢な厚切りの発酵バターを一切れオン。

さらに上から、黄金色に透き通るメープルシロップを惜しげもなく、たらぁ〜りと回しかける!

溶け出したバターとシロップが混ざり合い、ホットケーキの表面を艶やかにコーティングしていく。

「よしっ、完成!我ながら上手く出来た!」

【豊穣神デメトラ】:なんという神々しい輝きだああああああっ!!

【主神アルト】:飯テロすぎる!! 天界にも

オーバーイーツ頼むって本当に!!私、そちら(下界)に行こうかな。

【愛の女神フィリア】:アルト様、下界に行ってはなりません。ですが、あああっ、バターが溶けていく……尊い……! 美味しそうですわ

「さあ、ルミア様。焼きたてをどうぞ」

ナイフを入れると、外側がサクッと微かな音を立て、内側から湯気とともに甘いバニラの香りが爆発した。

フォークで一口大に切り分け、バターとシロップをたっぷりと絡めてルミア様の口元へ差し出す。

「あ、あ〜ん……してください」

「えっ、あ、あ〜ん……?」

真っ赤になりながらも、ルミア様は小鳥のように小さく口を開けた。

「はむっ……もぐ……」

口に含んだ瞬間。

ルミア様の青い瞳が大きく見開かれ、次の瞬間には、とろけるように細められた。

「ほわぁぁぁぁぁぁぁ……っ♡」

両手を頬に当て、全身の力が抜けたようにへなへなと椅子に崩れ落ちる聖女様。

「お、美味しい……っ! 外はサクサクなのに、中は雲を食べているみたいにふわっふわです……! それに、このシロップの優しい甘さと、バターのしょっぱさが合わさって……止まりません……!」

「うむ! 妾にも寄越すのじゃ!」

横からコハクがフォークを奪い取り、自分の顔ほどもあるホットケーキにかぶりつく。

「んまーーーーいっ!! ミナト、そなた料理の神の生まれ変わりか!?」

ルミア様は夢中でフォークを動かし、見る見るうちに巨大なホットケーキを平らげてしまった。

最後の一口を飲み込み、メープルシロップで少し濡れた唇をペロッと舐めると、彼女は潤んだ瞳で俺の両手をぎゅっと包み込んできた。

「ミナトさん……決めました」

「は、はい?」

「私、今日からミナトさんの専属聖女になります……! ですから、明日も……明後日も、私に美味しいご飯を作ってくださいね……?」

清楚な聖女の、上目遣いによる完全なる陥落宣言。

「聖女様、それは反則です!可愛すぎるでしょ」

俺はあまりの可愛さに思わず言ってしまった。

画面のコメント欄は、愛の女神の絶叫と赤スパで再び埋め尽くされたのだった。

◇

――その頃。

大聖堂から少し離れた場所にそびえ立つ、王宮アストラリス宮殿。

その最深部『星見の儀式の間』にて。

部屋の中央に鎮座する国宝『神託の水晶球』には、ホットケーキを食べて蕩けた笑みを浮かべるルミア様と、彼女に手を握られて照れているミナトの姿が、鮮明に映し出されていた。

「……なんということだ」

水晶球の前に立ち、その光景を食い入るように見つめていた白銀の甲冑の女性が、低く震える声を漏らした。

プラチナシルバーの長い髪をポニーテールに束ね、氷のように冷徹なアイスブルーの瞳を持つ美貌の女騎士――

アステリア聖騎士団長、シルヴィア・オルデンブルクである。

彼女の握りしめた拳が、怒りと使命感によってカタカタと小刻みに震えていた。

「我が国の至宝である聖女様が、見知らぬ異国の青年にあのような痴態を晒させられているとは……! あの淫らな甘味……もしや、精神を狂わせる禁忌の精神汚染魔術か!?」

シルヴィアの脳内で、危険な勘違いが猛スピードで加速していく。

「許せん……断じて許せんぞ! 聖女様、今すぐこのシルヴィアがお救いいたします……!」

ジャキィィィィィンッッ!!

静まり返った儀式の間に、冷たい抜刀音が響き渡った。

彼女の腰から抜かれた宝剣『星輝剣(ステラブレード)』が、鋭い殺気を放って青白く煌めく。

「近衛第三小隊、直ちに出撃せよ! 目標は大聖堂裏庭――不届き者を一刀両断し、聖女様を奪還する!!」

勘違いに燃える「氷の鉄血騎士」が、大聖堂に向けて動き出したことを、まだ誰も知らない――。

第3話をお読みいただきありがとうございました!

燕三条製のホットサンドメーカーで焼く極厚ふわふわホットケーキ……深夜の飯テロ失礼いたしました!

ルミア様の胃袋を完全に掌握したミナトでしたが、王宮ではとんでもない勘違いをした女騎士団長シルヴィアが抜刀出撃してしまいました!

次回――『第4話:氷の鉄血騎士、甘味の前に沈黙す』!

怒り狂って突入してきたシルヴィアを待ち受ける運命とは!?

(※主神アルトの悪ノリ神託と、残ったパンケーキの餌付けが炸裂します)

お楽しみに。

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