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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第21話:生真面目すぎる女騎士シルヴィアの私服護衛任務(腕組み赤面フリーズ)

第21話をご覧いただきありがとうございます!

聖女ルミア様との甘々買い食いデート(たこ焼き&クレープ)をなんとか切り抜け(?)、今回はフェス用の木工資材や調理器具を買い揃える市場視察編です!

聖女ルミア様との買い食いリサーチを終えた翌朝。

俺は王都の中央大通りから少し離れた、木工職人や金物問屋が集まる『工匠通り』の噴水前で待ち合わせをしていた。

目的は、数日後に迫った【王都屋台グルメフェスティバル】で使用する木製屋台の骨組みや、大型看板用の木材の下見である。

「クラリッサさんにお抱えの問屋を教えてもらったのはいいけど……さすがに一人で歩くには資材街は少し物騒だな」

俺は制服のスラックスに白ワイシャツの袖をまくり、背中の大型リュックを軽く背負い直した。

手元の神具スマホを操作し、配信枠を立ち上げる。

すかさず、俺の肩からふわりと金色の毛並みが舞い上がり、神獣コハクが空中に浮かび上がった。

「ミナトよ、カメラの同調は完了しておるぞ。今日も妾の見事なカメラワークで、下界の様子をバッチリ映してやるのじゃ!」

「頼むぞコハク。変なとこ映すなよ」

コハクの七色に輝く尻尾が淡く発光し、神獣の瞳がレンズとなって俺の姿を捉える。

ミナト自身がスマホを構える必要はなく、コハクが自律型ドローンのように最適な距離と高さをキープしてくれるため、両手は完全に自由だ。

胸ポケットにスマホを差し、上から画面を覗き込むと、すでに天界の常連リスナーたちがログインしていた。

【主神アルト】:お、買い出し配信始まった! ミナト君おはよー

【愛の女神フィリア】:皆様ごきげんよう♡ 昨日のルミアちゃんのクレープ指ペロ、天界の録画アーカイブで30回見返しましたわ!

【武神アーレス】:うむ! 今日は資材の調達か! 戦の前の輜重(兵站)集めは最も肝要であるな!

「朝から元気だな神様たち……」

俺が苦笑いしていると、噴水の向こうから、周囲の職人や歩行者たちがざわざわと振り返る気配が漂ってきた。

「おい見ろよ……なんだあの美人は……」

「貴族のお嬢様か……? いや、あの凛とした立ち振る舞いは……」

人混みをかき分けるようにしてこちらへ歩いてくる一人の女性。

その姿を見た瞬間、俺は思わず息を呑んで立ち尽くした。

「――お待たせいたしました、我が主!」

そこに立っていたのは、アステリア王国近衛聖騎士団長、シルヴィア・オルデンブルクだった。

だが――いつもの見慣れた冷徹な白銀のフルプレート甲冑姿ではない。

風になびく艶やかなプラチナブロンドの長髪は、ハーフアップにまとめられて淡い青色のリボンで結ばれている。

身にまとっているのは、波打つフリルが清楚な純白のブラウスに、膝下まで広がる落ち着いたネイビーブルーのフレアワンピース。

すらりと伸びた健康的な脚には歩きやすい革のショートブーツが合わされ、腰には重厚な宝剣『星輝剣』の代わりに、細身の目立たない護身用レイピアが下げられていた。

戦場を統べる『氷の鉄血騎士』の面影はどこへやら、そこには誰もが振り返るほどの、凛とした気品あふれる超絶美少女の姿があった。

「シ、シルヴィアさん……!? その格好、一体どうしたんですか!?」

俺が目を丸くして尋ねると、シルヴィアはピシッと軍人のように背筋を伸ばし、わずかに頬を桜色に染めながら直立不動で敬礼した。

「はっ! アルスハイム公爵令嬢より『平民の街へ甲冑のまま乗り込めば、ミナトの買い出しの邪魔になりますわ。この服を着て護衛なさい!』と、無理やりこの衣装を押し付けられまして……!

き、騎士の正装を脱ぐなど軍規に反するとは抗議したのですが、我が主の買い出しに支障をきたすわけにはいかず……! み、見苦しい姿をお見せして、誠に申し訳ございません……っ!」

恥ずかしさからか、シルヴィアの長い睫毛が小刻みに震え、青く澄んだ瞳が所在なげに泳いでいる。

俺は思わず、心からの言葉を口にしていた。

「見苦しいなんてとんでもない! すごく似合ってますよ。清楚で、上品で……本当に綺麗です」

「――っっっ!?」

ボッッッッ!!!!

シルヴィアの首筋から耳の先端まで、まるで火炎魔法でも受けたかのように一瞬で深紅に染まった。

「き、綺麗……っ!? わ、我が主が、私を……綺麗だと……っ!?!?♡♡♡」

シルヴィアは両手で顔を覆い、立ったままガタガタと震え出した。

その決定的瞬間を逃すはずもなく、空中に浮遊したコハクが斜め上四十度の黄金アングルへ回り込み、シルヴィアの真っ赤な耳と潤んだ瞳をどアップで捉える!

【主神アルト】:ギャップ萌えの破壊力エグすぎて草ァァァァァッッッ!!!wwwwwwww

【主神アルト】:シルヴィアちゃん私服可愛すぎるだろ! アルスハイム公爵令嬢グッジョブすぎるww

【愛の女神フィリア】:ぎゃあああああああああああっっっ!!!(尊死)

【愛の女神フィリア】:鉄血の女騎士団長様がワンピースを着て赤面敬礼!? こんなの全知全能の神でも耐えられませんわーーっ!!(100,000pt赤スパ寄付)

【武神アーレス】:ぬおおおおおっ! 鎧を脱ぎし乙女の姿、実に麗しいではないか! ミナト、よくぞ褒めた!(50,000pt赤スパ寄付)

『神々よりスーパーチャット:合計150,000ptが寄付されました』

「あ、あの、シルヴィアさん? 大丈夫ですか……?」

「は、はいっ! 問題ありませぬ! 我が主の護衛任務、命に代えても完遂いたしますっ!」

動揺を隠すように大股で歩き出すシルヴィア。

だが足取りはおぼつかなく、普段の堂々たる歩法とは程遠い。

俺たちは工匠通りへ足を踏み入れた。

通りには巨大な角材を積んだ荷馬車や、鉄パイプを運ぶ筋骨隆々の鍛冶職人たちが行き交い、熱気と埃でごった返している。

「どけよどけーっ! 材木通るぞーっ!」

背後から荷馬車の荒っぽい怒号が響いた。

「危ない……!」

馬車の巨体がシルヴィアのすぐ背後をかすめそうになった瞬間、俺はとっさに彼女の細い右手を取り、ぐっと自分の方へ引き寄せた。

「――きゃっ!?」

シルヴィアの華奢な体が俺の胸元へと飛び込んでくる。

ふわっと、白銀の髪から清潔な石鹸と微かな柑橘の香りが鼻腔をくすぐった。

「す、すみません! 馬車が来てたので……」

「い、いえ……我が主に守っていただけるなど、護衛として不甲斐ない限り……」

「ここ、人が多くて危ないですね。……はぐれたら困るから、手、繋いでいきましょうか」

俺は何気なく、握っていたシルヴィアの白く柔らかな指先を、ぎゅっと自分の手の中に包み込んだ。

いわゆる、指と指を絡め合わせるような形――現代の感覚でいう、自然なエスコートのつもりだった。

だが。

異世界の、生真面目一筋で生きてきた近衛騎士団長にとって、その行為は文字通りの『致死量』だった。

ピキィィィィィィィィン……ッッッ!!!!

繋がれたシルヴィアの右手から、カチカチカチ……と氷結するような音が聞こえてきそうなほど、彼女の全身が完全に硬直した。

「――っ……あ…………う…………っ!?」

シルヴィアの視線が、しっかりと絡み合った自分とミナトの右手に固定される。

ぷしゅうぅぅぅぅぅぅ……っ!!と、本当に頭頂部から蒸気が立ち上りそうなほど顔面が沸騰し、全身の毛穴という毛穴から冷や汗と熱気が噴き出していた。

「シ、シルヴィアさん……!?」

俺が呼びかけても、シルヴィアの瞳孔は完全に開いたまま、ピクリとも動かない。

足も完全に止まり、石像のように固まっている。

空中に浮いたコハクが、至近距離から繋がれた手元と、シルヴィアの魂が抜けたような蕩け顔をローテーションで激写した!

「くっくっく……! 見事なフリーズっぷりじゃ! 完全に脳の回路が焼き切れておるぞミナト!」

「笑ってないで助けてくれコハク!」

胸元の神具スマホからは、神々の狂乱コメントが音速を超えて流れていく。

【主神アルト】:フリーズしたァァァァァッッッ!!!wwwwwwww

【主神アルト】:鉄血騎士団長、恋人繋ぎ一発で完全沈黙ワロタwww OS強制終了してて草

【愛の女神フィリア】:キャアアアアアッ!♡♡♡ 手繋ぎ! 無自覚な恋人繋ぎエスコート!! 尊さの過剰摂取で天界が崩壊しますわーーっ!!(100,000pt赤スパ寄付)

【武神アーレス】:ぬぐっ……! 我が主の電撃戦、見事すぎる! 歴戦の騎士が一撃で武装解除させられておるわ!(50,000pt赤スパ寄付)

「あ、あの、シルヴィアさん! 嫌なら離しますから――」

俺が手を解こうとした、その瞬間だった。

ギュッッッッッ!!!!

「――は、離しては……なりませぬ……っっ!!」

シルヴィアの左手が、信じられないほどの万力で俺の腕に絡みつき、抱きしめるように胸元へと引き寄せられた!

薄いワンピース越しに、彼女の豊かな胸の柔らかさと、激しく波打つ心臓の鼓動がダイレクトに腕へ伝わってくる。

シルヴィアは涙目に潤んだ瞳で俺を見上げ、喘ぐような甘い吐息を漏らした。

「こ、これは……護衛の規律に……著しく反します……っ!

警備中に対象と手を握り合うなど、近衛失格の極み……死罪に値する不祥事です……っ!

ですが……ですが……っ!

我が主の温もりが……心地よくて……離したく……ありませぬ……っ♡♡♡」

「シ、シルヴィアさん……!?」

「我が主……このまま、任務を続行することを……お許しいただけますか……?

わ、私は今……世界で一番、幸せな護衛でございます……っ♡」

真っ赤な顔で蕩けるように微笑むシルヴィアの破壊力に、今度は俺の心臓が爆発しそうになった。

結局、その後の資材選びの間中、シルヴィアは俺の腕にぴったりと密着したまま離れず、木材店や金物屋の親父たちから「おいおい、騎士団長様が色男にベタ惚れじゃねぇか!」と温かいからかいの眼差しを浴び続けることになったのだった。

すべての資材の発注を終えた後、工匠通りのベンチに座り、俺は天界通販でキンキンに冷えた『果汁100%白桃アイスティー』を取り寄せてシルヴィアに手渡した。

「ふぅ……冷たくて、甘くて……火照った体に染み渡ります……♡」

ストローをくわえて顔をほころばせるシルヴィア。

ようやく体温が戻ってきた彼女は、空になったカップを両手で抱えながら、上目遣いでおずおずと俺の袖を引いてきた。

「あの……我が主?」

「はい?」

「また……資材の買い出しや視察の際は……私に護衛をお申し付けいただけますか?

そ、その……また、あの『私服』を着て参りますので……っ」

耳まで赤くしながら小さな声でおねだりするシルヴィアの姿に、コハクが空中で満足そうに頷いた。

「やれやれ、聖女に続いて騎士団長も完全に陥落じゃな。ミナト、罪深き男よのう」

「お前が煽るようなアングルで撮るからだろ!」

天界からの盛大な赤スパの嵐と、シルヴィアの甘い微笑みに包まれながら、買い出し任務はこれ以上ない大成功で幕を閉じたのだった。

第21話をお読みいただきありがとうございました!

次回は、第22話はコハクの煽り変身コントと、クラリッサのおねだり回です!

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