第19話:街頭巨大魔導スクリーン稼働! 王都パブリックビューイング試験中継!
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頑固なヴァルフレート大司教を「極厚スフレパンケーキ」で完全陥落させ、大聖堂前広場の全面使用許可を勝ち取ったミナトたち!
今回は――筆頭パトロンである公爵令嬢クラリッサ様の財力とお抱え魔導具師たちが総力を挙げた超兵器が稼働します!
ギルドの男たちや王都の市民たちを巻き込む、前代未聞のお祭り騒ぎをお楽しみください!
雲ひとつない快晴の午後。
アステリア大聖堂前の中央広場には、王都の腕利き大工や魔導具師たちが総出で組み上げた、とんでもない建造物がそびえ立っていた。
高さ十メートル、幅十五メートル。
頑丈なミスリル合金のフレームに張られた特殊な純白の魔導遮光幕――その正面には、王宮の儀式用大水晶を贅沢に三基も並列配置した、超弩級の魔導映写プロジェクターが鎮座している。
「ふふん……! どうですのミナト! これがアルスハイム公爵家のお抱え魔導工房が誇る、至高の技術の結晶ですわ!」
燃えるような真紅のシルクドレスに身を包んだクラリッサが、パチンッ!と扇子を鳴らし、誇らしげに豊かな胸を張った。
その素肌は、今朝もゆで卵のようにツルツルと光を反射している。
「す、すごい……! 渋谷のスクランブル交差点にある街頭ビジョンよりデカいんじゃないかこれ……!?」
俺は制服のスラックスに白ワイシャツの袖をまくり、天界通販で新調した紺色のカフェエプロンをキュッと締め直しながら、見上げるような巨壁に圧倒されていた。
さすがは大貴族の財力。金と権力と一流職人が揃えば、中世風の異世界でもここまでの大型映写機が突貫工事で作れてしまうのだ。
「元々、王宮や大聖堂には神託を受信するための儀式水晶がありましたの。それを我が工房の技術者たちに命じ、光を何倍にも増幅してあの白幕へ投射できるよう魔改造させましたわ!
費用は金貨三百枚ほどかかりましたけれど……わたくしの美肌と、貴方の晴れ舞台のためですもの。安い買い物ですわ!」
「さ、三百枚……! クラリッサさん、本当に足向けて寝られません……」
俺が冷や汗を流していると、隣にいたルミア様が、心配そうにワイシャツの袖をギュッと握りしめてきた。
「あ、あの……ミナトさん……? その巨大な幕に、ミナトさんのスマホの映像がそのまま映るんですよね……?」
「ええ、そのはずですけど……どうかしました、ルミア様?」
「も、もしもですよ!? あの画面に、あの……私の『切り忘れアーカイブ』とか、甘えていた過去の映像が間違えて大音量で流れたりしたら……わ、私、王都にいられなくなっちゃいますぅ……っ!!」
ルミア様が両手で真っ赤な顔を覆い、ふるふると震え出した。
清楚な聖女の「お祈りサボっちゃうぞ〜」が広場中に特大ボリュームで響き渡ったら、大聖堂の権威は一瞬で灰燼に帰す。
「だ、大丈夫です! 生配信の映像しか中継しない設定にしますから、過去ログは絶対に流れません!」
俺が必死になだめると、ルミア様は「ホントですね……? 信じてますからね……っ」と涙目で俺のエプロンの裾を握りしめてきた。
そこへ、白銀の甲冑をガシャリと鳴らし、広場周辺の近衛兵たちにテキパキと指示を出していたシルヴィアが戻ってきた。
「我が主! 広場および大通りに通じる交差点の警備配置、完了いたしました! 何万人もの民が押し寄せようと、我が主の爪先一本傷つけさせはいたしません!(ジャキリ)」
「シルヴィアさん、警備はありがたいですけど剣を抜くのはナシで頼みます」
「はっ! 承知いたしました!」
「さあミナト、準備は整いましたわ! 王都の民に、貴方の姿と【王都屋台グルメフェスティバル】の号外を叩きつけてやりなさいな!」
クラリッサの合図に、俺はゴクリと唾を呑み込み、胸ポケットから神具スマホを取り出した。
画面を点灯させると、見慣れない金色のポップアップ通知が浮かび上がっていた。
『外部魔導映写スクリーン(超大型)を検出しました』
『映像および音声の外部キャスト(同期中継)を許可しますか?【はい/いいえ】』
(すげぇ……スマホのキャスト機能まで神力で互換性持たせてるのかよ!)
俺は迷わず【はい】をタップした。
キィィィィィィィン……ッッッ!!
大水晶プロジェクターに術式が走り、青白い魔力光が幾何学模様を描きながら収束していく。
そして――。
バシュゥゥゥゥゥッッッッ!!!!
巨大な純白の幕に、眩い光の奔流が叩きつけられた!
映し出されたのは――澄み渡る王都の青空、そして神具スマホを片手にエプロン姿で立つ俺と、肩の上でふさふさと尻尾を揺らすコハクの超高精細なフルカラー映像だった!
「おおおおおおっ!? 映ったのじゃぁぁぁっ!!」
コハクが両前足を上げて歓喜の声を上げる。
大水晶に組み込まれた拡声魔導具がその声を何倍にも増幅し、広場中にクリアな美声がビリビリと木霊した!
同時刻――広場から大通りを挟んだ先にある冒険者ギルド兼酒場『星の羅針盤亭』。
「おいバッカス、もう一杯エールを……って、あん? 外が急に騒がしくねぇか?」
カウンター席でジョッキを傾けていた重戦士ブルーノが、ふと耳をピクつかせた。
「なんだぁ? 王宮のパレードにしちゃあ、妙な音が響いてやがるな……」
バッカス親父が布巾の手を止め、怪訝そうに眉をひそめる。
「おい見ろよ! 広場の方の空がピカピカ光って……うわあああっっ!? な、なんだあれぇぇぇっ!?」
窓際で外を見ていた斥候フィンが、椅子から転げ落ちて絶叫した。
「おいフィン、何事だ――」
バッカスとブルーノ、そして店内にいた数十名の荒くれ冒険者たちが一斉に表の大通りへ飛び出した。
そして、全員が石のように硬直した。
大聖堂前広場の天高くそびえ立つ巨大な幕に、見上げるほど巨大なミナトの顔が、肌の質感まで鮮明に映し出されていたのだ!
「「「ぎゃあああああああああああっっっ!? ミ、ミナトが……ミナトが巨大化して壁になってるぅぅぅぅぅっっっ!?!?!?」」」
「バカ野郎、巨大化じゃねぇ! ありゃあ王宮の神託水晶の光だ! だが……なんであんなとんでもねぇデカさでミナトが映ってやがるんだ!?」
バッカス親父がビールジョッキを地面に落として粉砕させ、顎が外れそうなほど口を開け放った。
広場の大画面の中のミナトが、照れくさそうに頭を掻きながらマイク代わりのスマホに語りかける。
『えー、王都アステリアの皆さん、こんにちは! 冒険者ギルド所属のFランクポーター、葉山湊です!』
ズドォォォォンッ!と大音量が王都の中央区全体に響き渡る。
『驚かせてすみません! 本日はアルスハイム公爵家様、ならびにアステリア教会様、近衛騎士団様のご協力のもと、この大聖堂前広場から重大な告知中継を行っています!』
画面がふわりと切り替わり、カメラを回すコハクのプロ顔負けのアングル調整によって、純白の法衣をまとった聖女ルミア様、白銀の甲冑に身を包んだ近衛騎士団長シルヴィア、そして扇子を優雅に構えた公爵令嬢クラリッサの三人が横並びで映し出された!
王都の目抜き通りを歩いていた何千人もの市民、商人、馬車の御者たちが、全員足を止めて空を仰ぎ見た。
「せ、聖女ルミア様だ……!」
「嘘だろ!? オルデンブルク家の騎士団長様と、アルスハイム家の令嬢様まで並んでるぞ!?」
「あの三大名士が一堂に会するなんて、建国祭でもあり得ねぇぞ!?」
ざわざわ、ざわざわと、王都中が地鳴りのようなざわめきに包まれていく。
『近々、この大聖堂前広場を丸ごと使い、王都のすべての皆さんに向けた【第1回・王都屋台グルメフェスティバル】を開催します!
他では絶対に食べられない、天界直伝の至高の鉄板料理――【関西風豚玉お好み焼き】や、冷たい甘味を山ほど用意してお待ちしています!
入場は完全無料! 大人も子供も、お腹を空かせて広場へ遊びに来てください!』
大画面のミナトが満面の笑みで呼びかけると、広場に集まり始めていた市民たちから、割れんばかりの歓声が巻き起こった!
「屋台フェスだってぇ!?」
「聖女様と公爵家が公認の祭りかよ!」
「あのお好み焼きって何だ!? めちゃくちゃ美味そうじゃねぇか!」
一方、ミナトの神具スマホの画面上には、この前代未聞のパブリックビューイングを目撃した天界の神々からの弾幕コメントが、猛烈な速度で濁流のように流れ込んでいた。
【主神アルト】:王都パブリックビューイング草ァァァァァッッッ!!!wwwwwwww
【主神アルト】:渋谷のスクランブル交差点で巨大ビジョンを見上げてる群衆そのまんまでワロタww ミナト君、完全に王都のスターじゃん!
【愛の女神フィリア】:キャアアアアアッ!♡ ルミアちゃんもシルヴィアちゃんもクラリッサちゃんも、大画面で見ると一段と輝いておられますわーーっ!!
【豊穣神デメトラ】:素晴らしい! これぞ祭りの熱気! 大衆の腹を鳴らせ、少年! 天界からも赤スパ花火を打ち上げてやるぞ!(50,000pt赤スパ寄付)
【武神アーレス】:うむ! 大画面に映る我が主の姿、実に堂々たる覇気である! 警備の騎士団も良い顔をしておるぞ!(50,000pt赤スパ寄付)
『神々よりスーパーチャット:合計100,000ptが寄付されました』
「ふふん……! 大成功ですわね、ミナト!」
クラリッサが広場を埋め尽くす民衆を見渡し、満足そうに扇子で胸元を叩いた。
「ああ、本当にすごい反響だ……! クラリッサさん、このスクリーンを作ってくれて本当にありがとう!」
「な、何言ってますの……! わたくしは筆頭パトロンとして当然の仕事をしたまでですわ! か、勘違いしないでくださる……っ!?」
ミナトにまっすぐお礼を言われ、クラリッサが赤面して扇子で顔を隠す。
「むぅ……クラリッサさんばかり褒められてずるいです……! ミナトさん、広場の視察も終わりましたし、さっき約束した【市場の買い食いリサーチ】に行きましょう!」
ルミア様がミナトの腕にギュッと抱きついてきた。
「あ、ルミア様、引っ張らないで……! コハク、一旦配信を閉じるぞ!」
「あいよっ! 妾も甘味の買い食いに賛成なのじゃー!」
巨大スクリーンに映し出されたミナトの日常とフェスの告知は、瞬く間に王都全土を駆け巡り、お祭りへの期待感を最高潮へと跳ね上げたのだった!
第19話をお読みいただきありがとうございました!
次回――第20話は二人きりのお忍び買い食いデート編がスタートします!
お楽しみに!
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