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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第16話:翌朝の奇跡! 筆頭パトロン就任と大聖堂前広場

第16話をご覧いただきありがとうございます!

昨夜、日本の極上ヒアルロン酸フェイスパックによって、ゆで卵のような奇跡の生ツヤ美肌を手に入れた公爵令嬢クラリッサ様!

今回はその翌朝――鏡の前で感動の絶叫を上げた令嬢が、特大のプレゼントを引っ提げてギルドへ再来します。

王都中央区にそびえる、白亜の巨城――アルスハイム公爵邸。

その最上階にある天蓋付きベッドの主室で、朝の静寂を切り裂く悲鳴が木霊した。

「きゃあああああああああああっっっっっっ!!!???」

「お、お嬢様!? いかがなさいました!?」

控え室から数十名の専属侍女たちが、顔色を変えて雪崩のように飛び込んでくる。

しかし、ドレッサーの巨大な三面鏡の前に立っていたクラリッサは、震える両手で自らの両頬を包み込んだまま、ぽろぽろと大粒の涙を零していた。

「み、見て……見てごらんなさい、アンネ……!」

「は、はひっ……? お、お嬢様のお顔……?」

恐る恐る鏡を覗き込んだ筆頭侍女が、目を見開いて息を呑んだ。

朝日を浴びるクラリッサの素肌は――昨夜のサロン帰りどころか、一晩眠った後だというのに、枕の摩擦や寝室の乾燥など微塵も寄せ付けず、朝露を抱いた白百合のようにみずみずしく光り輝いていたのだ。

「柔らかい……モチモチですわ……! 指が、指がお肌に吸い付いて離れませんの……!

昨夜、あのミナトという少年が施してくれた、あの濡れた布と透明な雫……!

あれは一時的な幻覚などではございませんでしたわ! 本物の……正真正銘の神の奇跡ですわぁぁぁっ!!」

クラリッサは狂喜の笑みを浮かべ、ドレッサーをバンッ!と叩いて立ち上がった。

エメラルドグリーンの瞳が、獲物を狙う猛禽類のようにギラリと燃え盛る。

「マリア! 馬車を出させなさい! 今すぐにですわ!

公爵家の宝物庫から金貨の山を積み、あの執事の爺に命じて『あの権利書』を持ってこさせなさい!

あのような至高の奇跡を司る少年、誰にも……特に、オルデンブルク家の堅物女には絶対に渡しませんことよ!!」

「は、畏まりましたぁぁぁっ!」

◇

一方、王都の冒険者ギルド兼酒場『星の羅針盤亭』。

「ふぁぁぁ……よく寝たのじゃ」

カウンターの上で、コハクが前足を伸ばしてあくびをしていた。

「コハク、おはよう。朝ごはんできたぞ」

俺は天界通販で召喚した厚切りトーストに、バターとイチゴジャムをたっぷり塗って皿に載せてやった。

「うむ! 甘酸っぱくて香ばしいのじゃ!」

コハクが器用に両手でトーストを持ち、サクサクと心地よい音を立ててかじりつく。

俺は胸ポケットから神具スマホを取り出し、朝の配信枠をスタートさせた。

タイトルは【朝のギルドでほのぼの朝食ロケ! 本日の仕込み準備】。

【主神アルト】:おはよー! 朝からジャムトースト美味そう

【愛の女神フィリア】:ミナト様、おはようございます♡ 昨夜のクラリッサ様のパックシーン、アーカイブで何度も見返してしまいましたわ!

【豊穣神デメトラ】:少年、今朝の果実ジャムも良い香りじゃのう!

神々の穏やかなコメントを眺めながら、俺がバッカス親父に淹れてもらった温かいハーブティーを口に含んだ――その時だった。

ドガァァァァァァァンッッッ!!!

昨日の夕方と同じ……いや、それ以上の轟音とともに、酒場の頑丈な両開き扉が勢いよく蹴破られた!

「ぶふっ!?」

俺は吹き出しそうになったお茶を慌てて飲み込んだ。

朝の光を背負って現れたのは、見事な黄金の縦ロールを揺らし、燃えるような真紅のシルクドレスに身を包んだクラリッサ・フォン・アルスハイムだった!

その後ろには、白銀の甲冑を着込んだ私設騎士たちが、息を切らしながら巨大な鉄の宝箱をドスン!と担ぎ込んできている。

「ごきげんよう、ミナト! 約束通り、迎えに来て差し上げましたわ!」

パチンッ!と優雅に扇子を鳴らし、ツカツカとハイヒールを鳴らしてカウンターへ迫ってくるクラリッサ。

その顔面は、昨日とは比べものにならないほど内側から発光しており、ファンデーションなど一切塗っていない完全なすっぴんにもかかわらず、息を呑むほどの透明感を放っていた。

「く、クラリッサさん!? 扉は静かに開けてくださいって言ったのに……って、お肌、めちゃくちゃ調子良さそうですね!」

「ふふん……! 当然ですわ! 今朝のわたくしの美しさは、鏡に映った自分自身に見惚れてしまうほどでしたもの!」

クラリッサは自慢げに顎を上げ、ツンと胸を張った。

「約束通り、わたくしが貴方の【生涯筆頭パトロン】になって差し上げますわ!

あなたたち! 宝箱を開けなさい!」

騎士たちが鉄箱の鍵を開けると――

バァァァァァンッッッ!!

朝の酒場が、黄金のまばゆい輝きで満たされた。

中に入っていたのは、数千枚に及ぶ純金貨の山、そして見事な細工の施された宝石類だった!

「ひ、ひえぇぇぇっ!?」

カウンターの奥で皿を拭いていたバッカス親父が、腰を抜かして床にへたり込んだ。

「ば、馬鹿野郎! 王都の家が十軒は買える額だぞ! 公爵家は何を考えてやがるんだ!?」

「これだけではありませんわ」

クラリッサは勝ち誇った笑みを浮かべ、胸元から紫色の封蝋が押された一枚の羊皮紙を取り出し、カウンターの上へと滑らせた。

「これを受け取りなさいな、ミナト」

「これは……?」

「『アステリア大聖堂前中央広場・特別占有可能使用許可証』ですわ!」

「えっ……!?」

俺は目を丸くした。

「貴方、以前の配信で言っていましたでしょう? 『もっとたくさんの街の人たちに、自分が作った温かい出来立てのご飯を振る舞ってみたい』と。

あの大聖堂前の広場は、本来王室の式典や宗教行事でしか使えない神聖な土地。

ですが、このわたくしがアルスハイム家の名において、王宮の財務局と大司教をねじ伏せて、広場の全面使用権をまるごと一週間分買い取って差し上げましたわ!」

クラリッサは扇子で口元を隠し、得意げに目を細めた。

「そこで、貴方の手料理を振る舞う【大規模な屋台フェスティバル】を開催なさい!

食材の手配、調理機材の搬入、人手の確保……費用はすべてこのクラリッサが出資して差し上げます!

これで、オルデンブルク家の堅物女など足元にも及ばぬほど、貴方の名は王都中に轟くはずですわ!」

「クラリッサさん……! す、すごい……! これがあれば、本当にみんなを呼んで屋台フェスができる……!」

俺が感動して羊皮紙を握りしめた、まさにその瞬間だった。

――ズドォォォォォォォンッッッ!!!

「待ちなさぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっ!!!!」

酒場の壁がビリビリと激しく震動し、今度は扉どころか、正面の木枠がバキバキと音を立てて軋んだ。

飛び込んできたのは、フードを激しく乱し、息を切らして両目を吊り上げた金髪の美少女――聖女ルミア様だった!

そしてその真後ろから、白銀の甲冑を鳴らし、鞘から半分抜き放たれた『星輝剣(ステラブレード)』から吹雪のような殺気を噴き上がらせたシルヴィアが突入してきたのだ!

「ミナトさんッ! 抜け駆けなんて許しません! 私という専属聖女がいながら、公爵令嬢に囲い込まれるなんて絶対にダメですぅぅぅっ!!」

「アルスハイムの小娘ぇぇぇッ!! 我が主に財力で怪しげな首輪を嵌めようとは万死に値するッ! 直ちにその金貨を引っ込めて我が主から離れよ!!(ジャキリ)」

「「ぎゃあああああっ!? また来たぁぁぁっ!?」」

俺とバッカス親父の絶叫がハモった。

ルミア様は猪突猛進の勢いで俺の腰にしがみつき、豊満な胸元をぎゅっと押し当てて涙目で睨みつけてくる。

シルヴィアはクラリッサの喉元へ切っ先をピタリと突きつけ、氷点下の眼光で威嚇した。

しかし、相手は百戦錬磨の高飛車令嬢・クラリッサである。

彼女は切っ先を向けられても眉一つ動かさず、パチンッと扇子を開いて高笑いを響かせた。

「おーほほほほ! どちらの野蛮人かと思えば、大聖堂の甘えん坊聖女様と、頭の固い負け犬騎士団長ではありませんの!

抜け駆けとは心外ですわね。わたくしはただ、ミナトの才能に相応しい正当な対価と、晴れ舞台を用意して差し上げただけですわ!」

「晴れ舞台ですってぇ!? 大聖堂前の広場は教会の管轄です! 勝手に買い取るなんて聞いてません!」

「黙れクラリッサ! 我が主の筆頭守護者はこのシルヴィア! 金に物を言わせるパトロンなど、我が主には不要であるッ!」

「あら、悔しければ貴女たちも金貨の山を積んでみたらよろしくて? ……あぁ失礼、清貧を旨とする教会と、堅物すぎて色気の欠片もない騎士団長様には、これほどの財力も粋な計らいも用意できませんでしたわね!」

「な……なんですってぇぇぇぇっ!?」

「貴様ぁぁぁっ! オルデンブルク家の名誉にかけて成敗してくれるッ!!」

バチバチバチッッッ!!!

三人の視線が交錯した瞬間、酒場の中に目に見えるほどの火花が飛び散った。

ルミア様はミナトを奪われまいと抱きつく腕に力を込め、シルヴィアは抜刀し、クラリッサは扇子を構えて不敵に笑う。

神具スマホのコメント欄は、全天界の神々が狂喜乱舞するお祭り騒ぎとなっていた。

【愛の女神フィリア】:キャアアアアアアッッ!!♡♡♡ 正妻VS守護者VSパトロン令嬢の三つ巴キターーーーーッ!!

【主神アルト】:朝から修羅場濃度が高すぎて草ァ!!wwww シルヴィアちゃん抜刀早すぎ定期ww

【豊穣神デメトラ】:大聖堂前広場で屋台フェスじゃと!? 素晴らしい! 少年、そのフェスで美味い肉と粉物をたらふく焼くのじゃ!!

【愛の女神フィリア】:尊死……! 美少女たちの嫉妬の嵐、赤スパ10万pt投下ですわーーっ!!

『愛の女神フィリアよりスーパーチャット:100,000ptが寄付されました』

「くふふ……また妾の出番かのう?」

コハクが七色の尻尾を光らせて、また変身して燃料を投下しようとする。

「コハク、お前は絶対に変身するな! 余計にややこしくなる!」

俺はコハクを静止させると、大きく深呼吸をして腹の底から声を張り上げた。

「――3人とも、いい加減にしてくださいっっっ!!」

ピタッ……。

怒鳴り声に、シルヴィアの剣が止まり、ルミア様とクラリッサがビクッと肩を跳ね上げた。

俺は腰にしがみつくルミア様を優しく引き剥がし、シルヴィアの剣の腹を指で押し下げ、クラリッサの扇子を見据えた。

「クラリッサさん。広場の許可証を用意してくれたこと、本当に感謝しています。……でも、ルミア様やシルヴィアさんを馬鹿にするような言い方はやめてください」

「うっ……そ、それは……」

クラリッサが気まずそうに目を泳がせる。

「そしてルミア様、シルヴィアさん。クラリッサさんは悪巧みでこれをくれたんじゃありません。俺が『王都のみんなに美味しいご飯を食べてもらいたい』って言った夢を、本気で応援するために用意してくれたんです」

「ミナトさん……」

「我が主……」

二人がしゅんと眉を下げ、毒気を抜かれたように息を吐いた。

俺は3人の顔をまっすぐに見つめ、満面の笑みを浮かべた。

「喧嘩してる暇なんてありませんよ! 大聖堂前広場を丸ごと使った【第1回・王都屋台グルメフェスティバル】……! 俺一人の力じゃ絶対に成功させられません。

ルミア様、聖女として広場の安全と信徒の皆さんへの案内を手伝ってくれませんか?

シルヴィアさん、騎士団を率いて、お祭りの警備と秩序を守ってくれませんか?

そしてクラリッサさん、筆頭パトロンとして、全体の統括と食材の流通を仕切ってくれませんか?

……3人とも、俺に力を貸してください!」

俺が深々と頭を下げると、静まり返った酒場に、美少女3人の小さな吐息が重なった。

「……もう、ミナトさんは本当にずるいです……。そんな真剣なお顔で頼まれたら、断れるはずありません……っ♡」

ルミア様が頬を染めて微笑む。

「我が主の頼みとあらば、たとえ火の中水の中……! 騎士団総出で、アリ一匹通さぬ鉄壁の警備をお約束いたします!」

シルヴィアが胸に拳を当て、凛々しく敬礼した。

「ふ、ふん……! わたくしを誰だと思ってますの? アルスハイム家の手腕、その目に焼き付けて差し上げますわ!」

クラリッサもパチンと扇子を閉じ、嬉しそうに目を細めた。

「よし、決まりだ! ……そうと決まれば、フェスで出す『最高のメインメニュー』を開発しなきゃな!」

王都中の人々を笑顔にし、天界の神々をも熱狂させる、前代未聞の屋台グルメフェスティバル。

最強の仲間たちと共に、ミナトの新たな挑戦が、今ここに動き出したのだった!

第16話をお読みいただきありがとうございました!

次回――第17話はフェスの成否を分ける、最強の屋台飯の開発がスタートします!

お楽しみに!

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