第13話:神界アーカイブの大反響と、高飛車公爵令嬢の来襲!
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地下迷宮からの無傷生還とエビフライ祝宴を経て、チャンネル登録者数はついに【10,000人】を突破!
しかし解放された新機能「神界アーカイブ」により、聖女ルミア様と女騎士シルヴィア様の悶絶デレシーンが天界でミリオン再生を達成してしまいます!
迷宮から生還した翌朝。
大聖堂裏手にある宿屋の部屋で、俺はベッドの上で目を覚まし、机の上の神具スマホを手に取った。
画面を開いた瞬間――
ピピピピピピピピピッ!と、鼓膜が破れそうな勢いで通知音が鳴り響いた。
「うわっ!? な、なんだ!?」
『新着通知:神界アーカイブの総再生数が【1,000,000回】を突破しました』
『あなたへのおすすめ急上昇ランキング第1位:【神回】清楚な聖女様が甘えん坊全開でおねだりする決定的瞬間(再生数:65万回)』
『急上昇ランキング第2位:【即オチ】氷の鉄血騎士団長、パンケーキ一口で「我が主」と跪く(再生数:35万回)』
「ミリオン再生いってるぅぅぅぅぅっ!?!?」
俺の絶叫が朝の部屋に響き渡った。
スマホのコメント欄を覗くと、昨夜のうちに天界の神々が狂乱の宴を繰り広げた痕跡が残されていた。
【主神アルト】:ルミアちゃんの「お祈りサボっちゃうぞ〜」をループ再生しながら寝たら最高の朝を迎えた件www
【愛の女神フィリア】:シルヴィア様がお口をティッシュで拭われて顔面沸騰するシーン、天界の国宝に指定いたしましたわ!
【豊穣神デメトラ】:ホットケーキを頬張る瞬間のスロー再生が至高じゃ! 何杯でも神酒が進むぞ!
「あ、アルト様たち……本当に容赦がない……! これルミア様やシルヴィアさんにバレたら、俺本当に打ち首になるんじゃ……」
「くふふ、何を怯えておるのじゃミナト。神々が喜んでスパチャを投げておるのだから、良いことではないか」
ベッドの毛布からひょっこり顔を出したコハクが、欠伸をしながら七色の尻尾を揺らした。
昨日のエビフライ祝宴とアーカイブ祭りで、通販ポイントはさらに十五万ポイント以上も加算されていた。
「まあ、起きたことは仕方ない……。バッカスさんのところへ行って、昨日のエンペラーベアの毛玉の換金結果を聞きに行こうか」
俺は身支度を整えると、コハクを肩に乗せて宿を出た。
爽やかな朝の風が吹き抜ける王都の目抜き通りを歩き、冒険者ギルド兼酒場『星の羅針盤亭』へ向かう。
だが――ギルドの正面広場に差し掛かった瞬間、俺は足を止めた。
「……ん? なんだあれ?」
いつもは荒くれ冒険者たちがたむろしている酒場の前に、息を呑むほど豪奢な【白銀と紫紺の巨大馬車】が横付けされていたのだ。
車体には純金のレリーフが施され、引いているのは毛並みの揃った四頭の白馬。
その周りを、揃いの豪奢な鎧を着込んだ十数名の私設騎士たちが物々しく警護している。
「おいおい、なんだありゃ……? 大貴族様の馬車か?」
「アルスハイム公爵家の家紋だぞ! なんで三大公爵家のお偉いさんが、こんな吹き溜まりのギルドなんかに……」
野次馬が遠巻きに囁き合っている。
俺が恐る恐る酒場の扉を開けると――
カランコロン……。
いつもなら昼前から酒を飲んで騒いでいる冒険者たちが、全員壁際にへばりついて息を潜めていた。
そして、酒場の中央。
粗野な丸太のテーブルの前に、優雅に脚を組み、扇子で口元を隠した一人の少女が腰掛けていた。
目を見張るような黄金の髪は、芸術的なまでに完璧な【縦ロール】を描いている。
深紅の豪奢なシルクドレスに身を包み、勝ち気そうな吊り上がったエメラルドグリーンの瞳。
まさに絵に描いたような――高飛車な大貴族のお嬢様だった。
「……遅いですわね。いつまでこのわたくしを、こんな埃っぽくて安酒の匂いが充満した下品な場所に待たせるつもりかしら?」
少女がパチンッ!と扇子を閉じ、冷淡な美声を響かせた。
カウンターの奥で、あの剛腕のバッカス親父が冷や汗をダラダラと流しながら直立不動になっている。
「お、お嬢様……ですから、ミナト坊主がいつ来るかは俺にも――」
「お待たせいたしました、クラリッサ様! 噂の不届き者が戻ってまいりましたぞ!」
私設騎士の一人が、扉の前に立っていた俺をビシッと指差した。
その瞬間、縦ロールの令嬢――クラリッサ・フォン・アルスハイムの鋭い視線が、俺を射抜いた。
「あら……? その奇妙な平民の制服……貴方が、例の『ミナト』ですのね?」
「え、あ、はい。葉山湊ですけど……あの、俺に何かご用でしょうか?」
クラリッサはすっと立ち上がると、ドレスの裾を優雅に翻し、俺の前へとツカツカと歩み寄ってきた。
そして、扇子の先を俺の胸元にピタリと突きつけて、フンッと鼻を鳴らした。
「わたくしの名はクラリッサ・フォン・アルスハイム。アステリア王国三大公爵家が一角、アルスハイム家の嫡女ですわ!
単刀直入に申し上げます。……貴方、あのオルデンブルク家の堅物女――シルヴィアに、一体どんな怪しげな術法を使いまして!?」
「……へ? シルヴィアさん?」
「とぼけないでいただきたいですわ!
王宮の神託水晶の噂、このわたくしの耳にも入っております!
幼少期よりわたくしと競い合ってきた、あの誇り高き『氷の鉄血騎士』が……平民の少年に膝を屈し、『我が主』などと呼んで傅いたと!
聖女様まで誑かし、オルデンブルク家の威光に泥を塗る不届きな詐欺師め! このクラリッサが、直々に貴方のメッキを剥ぎ取って差し上げますわ!」
高らかに言い放つクラリッサ。
どうやら、シルヴィアのライバルである彼女は、シルヴィアの弱み(スキャンダル)を暴いて鼻を明かすために乗り込んできたらしい。
胸ポケットの神具スマホが、一瞬で大歓喜の渦に包まれた。
【愛の女神フィリア】:キャアアアアアアッッ!!♡♡♡ ツンデレ高飛車お嬢様キターーーッ!!
【主神アルト】:見事な縦ロールで草ァ!ww シルヴィアちゃんのライバル登場かよww
【豊穣神デメトラ】:また面倒な小娘が来たのう! 少年、その傲慢な鼻を美味い飯でへし折ってやれ!
神々の野次をよそに、コハクが俺の肩からピョンとテーブルの上へ飛び降りた。
七色の尻尾がボワッと光り輝く。
ポンッ!
煙の中から現れたのは――なんと、クラリッサと瓜二つの縦ロール金髪に、ミニサイズのフリルドレスを着た【お嬢様姿のコハク】だった!
コハクは小さな扇子をパッと広げると、顎をクイッと上げて高笑いを響かせた。
「おーほほほほ! どちらの田舎貴族かと思えば、朝っぱらから酒場に乗り込んで喚き散らすとは、とんだお里が知れますわね! 恥を知りなさいまし、縦ロール女!」
「な……ななな、なんですのこの生意気なチビ狐はぁぁぁぁっ!? わたくしの完璧な縦ロールを真似するなんて、無礼千万ですわ!!」
クラリッサが顔を真っ赤にして扇子をバタバタと振る。
「こらコハク、煽るんじゃないの! 戻りなさい!」
俺が叱ると、コハクは「ちぇっ」と舌を出してポフンと子狐の姿に戻った。
俺は深呼吸をして、目の前で肩を怒らせているクラリッサに向き直った。
真っ赤になって息を荒げる彼女をよく見ると、目の下にうっすらと隈があり、唇も少し乾燥している。
(……この人、朝早くから馬車に揺られて、相当緊張して乗り込んできたんだな。おまけに乾燥と寝不足で肌が荒れかけてる……)
俺の料理人兼おかんセンサーが静かに作動した。
「クラリッサさん。朝早くからわざわざお越しいただいたんですから、そんなに立ったまま興奮しないでください。……朝からイライラして声を荒らげると、せっかくの綺麗なお肌が乾燥して荒れちゃいますよ?」
「は……? お、お肌……!?」
クラリッサがピクリと眉を跳ね上げ、思わず自分の頬に手を当てた。
「平民の分際で、わたくしの美貌にケチをつける気ですの!? だいたい貴方、わたくしが誰だか分かって――」
「はいはい。お話なら座って聞きますから。喉が渇いたでしょう? いま、温かいお茶とお菓子を淹れますね」
「な……っ!? へ、平民の淹れた安茶や粗末な焼き菓子など、このわたくしの口に合うはずが――」
クラリッサの抗議を笑顔で受け流しながら、俺は天界通販アプリを素早くタップした。
相手は大貴族の令嬢。
ならば、出すべきものは決まっている。
『英国王室御用達・ファーストフラッシュ極上ダージリン紅茶(手摘み最高級茶葉)』
『純銀製クラシックティーセット&ボーンチャイナ白磁カップ』
『銀座名店仕立て・最高峰ジュエリーマカロン詰め合わせ(ピスタチオ・フランボワーズ・塩キャラメル・ショコラ・シトロン)』
ポチッと購入ボタンを押した瞬間。
カウンターの上に、黄金の粒子とともに、目も眩むような純銀のティーポットと、宝石箱のような桐箱が具現化した!
「なっ……!? く、空間転移……!? 何もないところから銀器が……!?」
クラリッサのエメラルドグリーンの瞳が、驚愕で真ん丸に見開かれる。
ポットから立ち上る、マスカットのように甘く高貴なダージリンの芳香。
そして、桐箱の蓋が開いた瞬間――
パステルカラーに美しく輝く、サクサクのフリル(ピエ)が綺麗に立ち上がった、芸術的なマカロンたちが姿を現した!
「こ、これは……なんという甘美で高貴な香り……!? そして、この宝石のように愛らしいお菓子は一体……!?」
高飛車な令嬢のプライドを根底から揺るがす、至高のアフタヌーンティーの香気が、酒場全体を甘く支配し始めていた。
第13話をお読みいただきありがとうございました!
次回――第14話は高飛車令嬢のプライドが、サクとろ食感の前に完全崩壊いたします!
お楽しみに!
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