第12話:無傷の生還! ギルドのエビフライ祝宴と登録者1万人突破
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身の丈5メートルの迷宮の主『エンペラーベア』を、極厚ステーキと特大ブラシでモフモフのペットに変えてしまったミナトたち!
今回は地上への凱旋帰還回――ギルド『星の羅針盤亭』へ持ち帰ったボスの高級換金毛玉に、歴戦の剛腕マスターが腰を抜かします!
そして、神々との大盛り上がり配信をお楽しみください!
第一層の出口となる大階段を登りきると、朝の澄み切った青空と、柔らかな太陽の光が俺たちを包み込んだ。
地下迷宮のひんやりとした湿気から解放され、肺いっぱいに地上の新鮮な空気を吸い込む。
「ふぁぁぁ……! やっぱり太陽の光は最高じゃのう!」
俺の肩の上で、子狐姿のコハクが前足を伸ばして気持ちよさそうに伸びをした。
「ああ……本当に無傷で戻ってこられたんだな……」
隣を歩くブルーノが、自分の両手と傷一つない青銅の大盾を見つめ、どこか夢見心地のような声で呟いた。
「第一層最深部の安全地帯まで行って、主と出くわしたってのに、擦り傷一つ負わずに朝日を拝めるなんて……冒険者歴十年で初めての珍事だぜ」
「まったくだよ! ミナトと一緒にいると、ダンジョン探索がただのピクニックになっちまう!」
フィンが快活に笑い、俺の背中をバシバシと叩いてくる。
時刻は午前十時。
朝の賑わいを見せる王都の大通りを抜け、俺たちは冒険者ギルド兼酒場『星の羅針盤亭』の重い木製扉を押し開けた。
カランコロン、とドアベルが鳴り響く。
「おい見ろ……『青銅の盾』が戻ってきたぞ!」
「昨日の朝潜ったばかりだろ!? もう第一層の遠征を終えて帰ってきたのか!?」
朝酒を煽っていた荒くれ冒険者たちから、ざわめきが広がった。
カウンターの奥から、エプロンをつけた赤ひげの剛腕親父――ギルドマスターのバッカスが、ドカドカと重い足音を立てて歩み出てくる。
「おう、ブルーノ! 無事の生還は何よりだが……えらく早いお帰りじゃねぇか。途中でトラブルでもあって撤退してきたのか? そっちのミナト坊主が足手まといになったりしなかったか?」
バッカスが太い眉を寄せて尋ねてきた。
ブルーノは不敵な笑みを浮かべると、背負い袋から『ドサッ!』とカウンターの上に【巨大な漆黒の塊】を叩きつけた。
「トラブル? とんでもねぇ。親父、これを見て驚くなよ。第一層の主『エンペラーベア』の、特級換金素材――最高品質の背中毛だ」
「…………は?」
バッカスの厳つい顔が、ピキリと静止した。
恐る恐る手を伸ばし、カウンターの上の漆黒の毛玉に触れる。
泥一つなく、まるで夜空を織り上げたシルクのように艶やかに光り輝く、魔力を帯びた極上の剛毛。
「ば、馬鹿なッッ!?!? ほ、本物のエンペラーベアの毛玉だとぉぉぉっ!?」
バッカスが目を剥いて飛び上がった。
「嘘だろ!? エンペラーベアっつったら、Bランク相当の迷宮の主だぞ! お前ら、あんな化け物を討伐してきたってのか!?」
「いや、討伐はしてねぇ」
フィンが腕を組んで、得意げに胸を張った。
「ミナトが極厚の牛ステーキを焼いて食わせて、特製ブラシでブラッシングして手懐けちまったのさ! これはその時に気持ちよさそうにお腹を出して転がった熊から、抜けた毛を貰ってきたんだよ!」
「………………はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
酒場中の時間が、完全に止まった。
歴戦の元Aランク親父が、口をパクパクと金魚のように開閉させ、魂が抜けた顔で固まっている。
周囲の冒険者たちも「ステーキで餌付け……?」「ブラッシングでお腹見せ……?」と、理解不能の言葉の羅列に頭を抱えていた。
「ま、まあまあバッカスさん! 無事に戻って素材も手に入ったんですから、細かいことはいいじゃないですか!」
俺は笑いながら空気を和らげるため、胸ポケットの神具スマホをカウンターの端に立てかけた。
画面の上では、神々が早くも宴会の始まりを察知してコメントを流し始めている。
【主神アルト】:ギルマス親父の顔面フリーズ草ァ!!www
【豊穣神デメトラ】:素材の換金など後回しじゃ! 少年、朝から美味い祝宴の飯を食わせんのか!
【愛の女神フィリア】:ふふっ、無事にお戻りになられて本当によかったですわ!
「バッカスさん、換金の手続きをお願いします! その代わりと言っちゃなんですが……俺から無事生還の祝宴メシを差し入れしますから!」
俺は天界通販アプリを素早く操作し、前回の唐揚げで男たちに大好評だった揚げ物ジャンルから、とっておきのご馳走を具現化させた。
『特大天然車海老の極上エビフライ盛り合わせ(メガ盛り20本)』
『具だくさん濃厚タルタルソース(ピクルス&刻みゆで卵たっぷり)』
『フレッシュ国産レモンくし形切り&山盛り千切りキャベツ』
黄金の光の粒子が収まると、カウンターの上に巨大な大皿がドン!と現れた。
そこには、黄金色に揚がった極太のエビフライが、美しくピラミッド状に積み上げられていた!
「う、うおおおおおおっ!? なんだこの黄金の棒はぁぁぁっ!?」
バッカスの鼻腔がピクピクと激しく震え、理性が瞬時に吹き飛んだ。
「特大エビフライです! 冷めないうちにどうぞ!」
俺がフレッシュなレモンをギューッと絞りかけると、ジュワッと心地よい音が鳴り、香ばしい揚げ油の香気と爽やかな柑橘の酸味が弾け飛んだ。
「うむ! エビフライは妾の大好物なのじゃ!」
コハクが我先にと大皿へ飛びつき、エビフライに濃厚なタルタルソースをたっぷりディップしてかぶりついた!
ザクゥゥッ……プリリッッッ!!
「んふぅぅぅぅぅぅぅっ♡」
コハクの七色の尻尾がプロペラのように激しく回転した。
「外は香ばしくサックサクで、中の海老は跳ねるようにぷりっぷりじゃ! 酸味と卵のコクが詰まったこの白いソースが絡み合って……噛むたびに海老の甘みが口の中で大爆発するのじゃ〜〜っ!」
「くそっ、我慢できるか! いただきます!」
ブルーノとフィンが太いエビフライを鷲掴みにし、タルタルソースを山盛りにすくって口へ放り込んだ。
バッカスもゴクリと喉を鳴らし、たまらず一口かじる。
ザクッッッ! ジュワァァァッ!!
「――んんんんんまぁぁぁぁぁぁいっっっ!!!」
バッカス親父の咆哮が、酒場の天井を突き破らんばかりに響き渡った。
「衣の軽やかなサクサク感の奥から、肉厚で甘い海老の肉汁が弾け飛んできやがった……! この刻んだ卵と酸味のあるソースが揚げ油の重さを綺麗に消し去って、いくらでも食えちまう! おい野郎ども、冷えたエール樽を全部開けろぉぉぉっ! 祝宴だぁぁぁっ!!」
「「「うおおおおおおおおっっっ!!!」」」
酒場中の冒険者たちが歓声を上げ、ジョッキを打ち鳴らし、大皿のエビフライに群がった。
エールを喉に流し込み、男たちが満面の笑顔で肩を組み合う。
その歓喜の絶頂の中――。
胸ポケットの神具スマホが、ピロリロリ〜〜ン♪と、これまでにないほど神聖で煌びやかなファンファーレを鳴り響かせた。
画面を覗き込むと、目も眩むような黄金の文字が画面全体を埋め尽くしていた。
『祝! チャンネル登録者数 10,000人 突破!』
「うおっ……! 1万人!?」
俺が声を上げると、画面の中から神々の歓声が弾幕となって押し寄せてきた。
【主神アルト】:1万人突破キターーーーーッ!! おめでとおおおおお!!
【愛の女神フィリア】:おめでとうございますミナト様! 神界中でお祝いの鐘が鳴り響いておりますわ!
【豊穣神デメトラ】:美味い飯の勝利じゃ! これでお前は名実ともに神々の人気配信者じゃな!
さらに、画面に荘厳な金文字で新たなシステム通知がポップアップする。
『登録者1万人達成報酬:新機能【神界アーカイブ(録画・切り抜き保存機能)】が解放されました』
「録画……切り抜き機能?」
俺が首を傾げると、スマホからアルトの愉快そうな声が響いてきた。
【主神アルト】:そう! 今までは生配信でしか見られなかったけど、天界のサーバーに眠ってた過去の配信データが全部解放されて、神々ならいつでも、何度でも、高画質で見放題になる神機能だよ!
【主神アルト】:早速、私が個人的に保存しておいた『聖女ルミアちゃんの甘えん坊切り忘れシーン』と、『シルヴィアちゃんの我が主即落ちシーン』を天界のオススメ急上昇・殿堂入りに固定しておいたからね!
「ちょ、ちょっと待ってくださいアルト様ァァァッ!? それ、本人たちにバレたら俺確実に首を刎ねられますよ!?」
【愛の女神フィリア】:ふふっ、ご安心なさいませミナト様♡ 天界の至宝として、全神々で大切に永久保存・布教いたしますので!
――その頃。
アステリア大聖堂の祈祷室で祈りを捧げていた聖女ルミアと、王宮の執務室で報告書を検閲していた近衛聖騎士団長シルヴィアが。
ゾクッッッ……!
「……ふぇっ!? な、何かしら……今、とてつもなく恥ずかしい自分の姿を、何千人もの神々に見せびらかされているような悪寒が……!?」
「ぬぅっ……!? 背筋に走るこの身の毛もよだつ悪寒……我が誇りと純潔が、神々に弄ばれているような気配が……!?(ジャキリ)」
二人の美少女が同時に身震いし、大聖堂と王宮でそれぞれ警戒態勢に入っていた。
さらに、王都の中央にそびえる豪奢な貴族街――
名門公爵家の屋敷のサロンでは、神託水晶の噂を聞きつけた一人の高飛車な巻き毛の令嬢が、紅茶のカップを置いて優雅に微笑んでいた。
「ふふん……平民の分際で、聖女様やシルヴィア様を誑かしている不届き者がいるそうですわね? ……オルデンブルク家の鼻を明かすためにも、この私が直々に正体を暴いて差し上げますわ!」
波乱の予感を孕みながら、ミナトの配信生活は、次なるステージへと動き出そうとしていた。
第12話をお読みいただきありがとうございました!
次回――第13話は平民を見下すワガママお嬢様が、ミナトの元へ乗り込んできます!
お楽しみに!
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