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配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


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第10話:夜の安全エリアと、男泣きの極上豚汁

第10話をご覧いただきありがとうございます!

スライムやモフモフ角ウサギをおやつで手懐け、無傷で第一層最深部の安全地帯に辿り着いたミナトたち!

今回は迷宮野営キャンプ飯の真骨頂――昨晩から仕込んでおいた「具だくさんの極上豚汁」が大鍋で煮え立ちます!

冷えた体に染み渡る合わせ味噌の香りと男泣き、そして画面越しに悶絶する東部樹海の魔女エレナさん!

さらにラストには、豚汁の香気に釣られた「あの巨大なボス」が襲来……!?

神々の大盛り上がりコメント欄とともにお楽しみください!

地下迷宮第一層の最深部――『碧水晶の広場』。

天井から鍾乳石のように垂れ下がる巨大な群青色の水晶が、月明かりのように柔らかな青い光を空間全体に投げかけていた。

中央の澄んだ泉からは静かにせせらぎが響き、広場の入り口に埋め込まれた古代の結界石が、魔物を寄せ付けない不可視の防壁を張り巡らせている。

「ふぅ……! ここなら結界石が効いてるから、夜になっても魔物は絶対に入ってこれねぇ。今夜はここで野営だな」

ブルーノが背中の重いタワーシールドを岩肌に立てかけ、肩の筋肉を回しながら安堵の息を吐いた。

「いやぁ、それにしても信じらんねぇよ。一回も武器を振るわずにここまで来ちまうなんてな!」

フィンが泉の冷たい水で顔を洗い、さっぱりした顔で戻ってくる。

だが、二人の口からは白い息が漏れていた。

迷宮の夜は、地上のそれとは比べものにならないほど冷え込むのだ。

湿った石壁から冷気が這い上がり、鎧を着込んだ体から容赦なく体温を奪っていく。

「寒いな……。フィン、乾燥薪を並べろ。火を熾して、硬いパンをふやかす湯を沸かすぞ」

ブルーノが火打石を取り出そうとした、その時だった。

「ブルーノさん、火熾しなら任せてください!」

俺は平らな岩の上に陣取ると、背負い袋から天界通販で召喚してあった『アウトドア用ポータブルガスコンロ』を取り出してカチリとセットした。

つまみを回せば、ボシュッ!と一瞬で力強い青い炎が立ち上がる。

「な、なんだその便利な箱は……!? 煙も出さずに一瞬で火がつきやがった……!」

目を白黒させる二人の前で、俺は深型の大型ステンレス鍋をコンロに載せた。

「さあ、夜のキャンプ飯タイムです! 冷えた体には、温かい汁物が一番ですからね」

神具スマホを背負い袋に立てかけ、天界への生配信をオンにする。

タイトルは【迷宮の夜! 冒険者たちの体を芯から温める具だくさん極上豚汁】。

【豊穣神デメトラ】:待っておったぞ豚汁ッッ!! 昼からずっと楽しみにしておったのだ!

【主神アルト】:迷宮キャンプ飯枠キター! 夜食の時間にこれは効くww

【愛の女神フィリア】:青い水晶の光に照らされるお鍋……とても幻想的で素敵ですわ!

神々が見守る中、俺は背負い袋から、昨晩のうちに宿屋で仕込んでおいた【大容量密閉式保存袋】を取り出した。

中に入っているのは、薄切りの豚バラ肉、乱切りにした大根、人参、薄切りごぼう、コロコロとした里芋、そして一口大のこんにゃくだ。

すべて下茹でとアク抜きを済ませ、軽くごま油を絡めて密閉してある。

「鍋が温まったら、まずはこれをごま油ごと投入します!」

ジャッッッッッ!!

鍋肌に具材が触れた瞬間、香ばしいごま油の芳醇な香りと、豚肉の焼けるジューシーな脂の匂いが、冷え切った洞窟内に爆発的に立ち込めた!

「ぐっ……!? な、なんだこの香りはぁぁぁ!?」

ブルーノが鼻腔をひくつかせ、ゴクリと喉を鳴らす。

「木の実を搾った油か!? 香ばしさと肉の脂の匂いが混ざり合って……胃袋が直接掴まれたみたいに悲鳴を上げ始めたぞ……!」

「豚肉と根菜をしっかり炒めることで、旨味を閉じ込めてコクを出すんです」

菜箸で手早く炒め、豚肉が綺麗な白色に変わり、根菜の表面にツヤが出たところで――

俺は水筒から清らかな水を注ぎ、天界通販の【濃縮かつお昆布だしパック】をポンと投入した。

ジュワァァァァ……と白い湯気が上がり、灰汁を丁寧にお玉ですくい取る。

かつお節と昆布の、優しく奥深い出汁の香りがふわりと広がっていく。

「うわぁ……すっげぇ良い匂い……なんだか嗅いでるだけで、体の底からホッとしてくるぜ……」

フィンが鍋の縁に吸い寄せられ、うっとりと目を細めている。

「そして、味の決め手はこれです」

俺が取り出したのは、【信州産特選合わせ生味噌】だ。

大豆の粒がほのかに残る、熟成された赤褐色の味噌。

お玉に味噌を取り、鍋の熱い出汁を少しずつ注ぎながら、菜箸で溶き伸ばしていく。

ふぁぁぁぁぁぁぁぁん……!

味噌が黄金色のスープに溶け込んだ瞬間、広場全体が温かな香気に包まれた。

大豆の発酵した深いコク、だしの旨味、豚肉の甘い脂、そして大根やごぼうから溶け出した大地の恵みが、完璧なハーモニーを奏でている。

「仕上げに、薄切りの青ネギと、天界通販で炊いておいたホカホカの白米です!」

湯気を上げる大鍋から、木製のお椀へとたっぷりと豚汁を注ぎ分ける。

黄金色に輝くスープの上には、ツヤツヤの豚バラ肉と柔らかな根菜が山盛りに顔を出し、青ネギが鮮やかな彩りを添えている。

お好みでパラリと七味唐辛子を振れば――

「お待たせしました! 特製・具だくさん合わせ味噌の豚汁定食、完成です!」

「うむ! 妾が一番にいただくのじゃ!」

待ちきれなかったコハクが、小さな両手でお椀を包み込むように持ち、ふーふーと息を吹きかけてからズズズッと汁を啜った。

「はふぅぅぅぅぅぅぅ……っ♡」

コハクの七色の尻尾がピーンと伸び、次の瞬間にヘニャンと脱力した。

「し、染みる……! 五臓六腑の隅々まで、温かいお味噌とお出汁の慈悲が染み渡っていくのじゃ……! 豚肉の甘い脂が根菜の滋味と溶け合って……天界の神酒より美味いぞよ……!」

「くそっ、たまらん! いただきます!」

ブルーノが太い腕でお椀を鷲掴みにし、熱々の汁を一気に口へと流し込んだ。

フィンも木のスプーンで大根と豚肉を掬い上げ、口いっぱいに頬張る。

ズズッ……ハフッ、ハフハフッ……!

「――ッッッ!?!?!?」

二人の動きが、雷に打たれたようにピタリと停止した。

次の瞬間――

ブルーノの厳つい目から、ボロボロと滝のような大粒の涙が零れ落ちた。

「な……なんだよこれ……あったけぇ……うめぇよぉ……っ!」

大柄な重戦士が、子供のように鼻をすすりながら震える声で叫ぶ。

「冷え切ってた腹の底が、じわぁぁぁっと温かくなっていく……! 大根は出汁を吸って口の中でとろけるし、豚肉を噛めば旨味がジュワッと溢れてくる……! 味噌ってこんなに……こんなに優しい味がするのかよぉぉぉっ!!」

「米だ! この白い米と一緒に食うと、完全に脳が弾け飛ぶぞ!!」

フィンが白米を口に放り込み、すかさず豚汁を流し込んで絶叫する。

「甘い米と、しょっぱくてコク深い味噌汁の無限ループだ! 箸が止まらねぇ! 生きててよかった……俺、冒険者やってて本当によかったぁぁぁっ!!」

ガツガツ、ズズズッ!と猛烈な勢いでお代わりを重ねる二人。

冷え切っていた男たちの頬が、林檎のように赤く染まり、額には心地よい汗が浮かんでいた。

【豊穣神デメトラ】:大根と豚肉の調和! そしてあの味噌という万能調味料……! 天界にも樽ごと奉納せんかぁぁぁ!!

【主神アルト】:ダンジョンで食う具だくさん豚汁とか美味くないわけがないだろ! 反則だわww

【愛の女神フィリア】:ふふっ、厳しい冒険者様たちが、お母さんの手料理を食べた子供のように泣いて笑っていますわ……!

『主神アルトよりスーパーチャット:50,000ptが寄付されました』

『豊穣神デメトラよりスーパーチャット:50,000ptが寄付されました』

◇

――その頃。

王都から遠く東に離れた、鬱蒼たる木々が生い茂る秘境『静寂の古代樹海』。

木漏れ日に隠された洋館のアトリエで、一人の美女が身悶えしていた。

「は、はふぅぅぅぅぅんっ……♡」

研究机の上の自作水晶球を両腕で抱きしめた魔女エレナは、画面から漂ってきそうな湯気を見つめ、お腹を「ぐぅぅぅ〜〜〜」と激しく鳴らしていた。

「な、なんて温かそうで美味しそうな汁物なのですか……!

大根がとろけて、お肉の脂が光っていて……あんなものを優しく食べさせられたら、私、一瞬でお嫁に行ってしまいますわ……!

ああっ、ミナトさん……私にも、私にも一口恵んでくださいましぃぃぃ……っ!!」

恋人いない歴=年齢の純情魔女が、深夜のアトリエで一人赤面しながら悶絶していることなど露知らず――。

◇

迷宮の安全地帯では、鍋をすっかり空っぽにした男たちが、満足げに腹をさすっていた。

「ふぅ……食った食った! こんな美味い飯、生まれて初めてだぜ」

「ああ。体が芯からポカポカして、迷宮の寒さなんて完全に吹き飛んじまったな」

笑顔を交わす俺たち。

――だが、その時だった。

スゥ……クン、クン……。

ズズズ……。

安全地帯を取り囲む結界の境目――

通路の奥の暗がりから、地響きのような重苦しい鼻息が響いてきた。

「……ん? なんの音だ?」

ブルーノがピクリと耳を動かし、松明を通路の闇へと向けた。

その光に照らし出されたのは――

結界の外側に張り付くようにして、涎を滝のようにダラダラと垂らしながら鍋を見つめている、身の丈五メートルを超える漆黒の巨躯と、ギラリと光る赤い瞳だった。

「グ……グフゥッ……」

「「ひ、ぎゃああああああああっっっ!?!?」」

ブルーノとフィンが同時に悲鳴を上げて飛び上がった。

「で、出たぁぁぁぁぁっ!! 第一層の主……『エンペラーベア』だぁぁぁぁぁっっっ!!」

豚汁の凄まじい匂いに釣られて、迷宮の生態系の頂点に君臨する巨大ボスが、安全地帯の結界のすぐ目の前までやって来てしまったのだ!

第10話をお読みいただきありがとうございました!

冷え切った迷宮の夜を温める、具だくさんの極上豚汁定食!

ブルーノとフィンの男泣きとともに、男たちの胃袋を完全に掌握いたしました!

そして東部樹海では、水晶球の前でエレナさんが「お嫁に行っちゃう」と一人で大悶絶!

しかし安全地帯の外には、豚汁の匂いに釣られた迷宮の主『エンペラーベア』が襲来!?

次回――『第11話:迷宮の主(巨大ベア)出現!? 戦わずにブラッシングと極上肉でペット化』!

Cランク冒険者が絶望する凶悪ボスを前に、ミナトの現代ペットグッズと極厚ステーキが炸裂します!

お楽しみに!

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