弱者の一撃
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「ドラゴンは天候をも支配するというのですか…。」
僕たちの上空には、分厚い雲の塊が鎮座していた。
ぽつりぽつりと落ちてくる雨水は、次第にざあざあと音を立て始める。
「まずい!ドラゴンの体温が下がり切ったら、また炎の息吹をやってくる可能性があります!クララちゃん、いけますか!?」
「こんな雨の中じゃ、私の炎も焼け石に水だよ!」
うまいことを言うクララちゃんを尻目に、ハービットさんがウララちゃんに指示を出す。
「ウララ、降ってくる雨粒を可能な限りドラゴンから遠ざけるんだ。」
「こんな数をですか?正気ですか師匠!」
「できるだけで構いません。私もやります!」
魔法使い組は手いっぱいのようだ。
「もう少しで目的地です!」
僕は皆を鼓舞するように声を上げる。
ドラゴンの攻撃を紙一重でかわし続けながら、道なき道を進む。
「領主邸はここです!」
ドラゴンのしっぽが、周囲のがれきを全て吹き飛ばした。
「ちょうどいい空間ができた!ハービット!ドラゴンを拘束しろ!他のメンバーもドラゴンを押さえておいてくれ!」
団長が指示を飛ばすと、ハービットさんが魔法を詠唱し始める。
「『砂鉄鎖』!」
地面から鎖が飛び出ると、ドラゴンに巻き付いて地面に拘束し始める。
「ゴー君、レムちゃん、お願い!」
フィーネさんがゴーレムたちに指示を出すと、ハービットさんが魔法で出した鎖を体に巻き付けて、ドラゴンの拘束をサポートする。
他のメンバーも、次々とドラゴンに取りつき、行動の自由を奪っていく。
ドラゴンの頭が地に伏したのを確認して、団長がドラゴンに突っ込んでいく。
ここで決まる、そう思った時に、不意にドラゴンの口から炎が立ち上っているのが見えてしまった。
ドラゴンはまっすぐ団長を見据えている。炎の息吹を打つつもりだ!
僕がとっさに警戒を口にするよりも早く、団長はドラゴンの頭部に走っていく。
団長はこの一撃にかけるつもりのようだ。
他のメンバーはドラゴンを押さえるのに必死で、炎の息吹に気が付いていない。
万全は尽くした。あとは団長に任せよう。
そう思った時に、腰に下げている弓に手が当たった。
同時に、ハービットさんの言葉が頭をよぎる。
『最適解というものは存在せず、良かれと思った行動も悪手になるかもしれません。それでも我々は、最善を尽くして行動し続けるしかないのです。』
僕は、冷や水を浴びたように血液が冷たくなるのを感じた。
まだ、最善を尽くしていない!
僕は弓を手に持つと、いつものように矢をつがえた。
「真」正しい動作で。
「善」今できる最善をもって
「美」今なお追求する理想の弓を射る。
ビュン!
己の手から離れた弓矢が、高速でドラゴンに向かっていく。
狙いはドラゴンの瞳だ。
バリスタと違い、ドラゴンに傷一つつけることはできないだろうが、ほんの一瞬でも注意が引ければ良いと、自分の最善を信じて放った一矢だ。
ドラゴンにとっては取るに足らない一矢だ。
それこそ、瞬きでもすれば防げてしまうだろう。
そんな弱者の一撃を受けたドラゴンは…。
なんと回避を選択した。




